〘500㌻〙
第1章
1 イエス・キリストの僕にしてヤコブの兄弟なるユダ、書を召されたる者、すなはち父󠄃なる神に愛せられ、イエス・キリストの爲に守らるる者に贈る。
2 願くは、憐憫と平󠄃安と愛と、なんぢらに增さんことを。
3 愛する者よ、われ我らが共に與る救につき勵みて汝らに書き贈らんとせしが、聖󠄄徒の一たび傳へられたる信仰のために戰はんことを勸むる書を、汝らに贈るを必要󠄃と思へり。
4 そは敬虔ならずして我らの神の恩惠を好色に易へ、唯一の主なる我らの主イエス・キリストを否むものども潜入りたればなり。彼らが此の審判󠄄を受くべきことは昔より預じめ錄されたり。
5 汝らは固より凡ての事を知れど、我さらに汝等をして思ひ出さしめんとする事あり、即ち主エジプトの地より民を救ひ出して、後に信ぜぬ者を亡し給へり。
6 又󠄂おのが位を保たずして己が居所󠄃を離れたる御使を、大なる日の審判󠄄まで闇黑のうちに長久の繩目をもて看守し給へり。
7 ソドム、ゴモラ及びその周󠄃圍の町々も亦これと同じく、淫行に耽り、背倫の肉慾に走り、永遠󠄄の火の刑罰をうけて鑒とせられたり。
8 斯のごとく、かの夢見る者どもも肉を汚し、權威ある者を輕んじ、尊󠄅き者を罵る。
9 御使の長ミカエル惡魔󠄃と論じてモーセの屍體を爭ひし時に、敢て罵りて審かず、唯『ねがはくは主なんぢを戒め給はんことを』と云へり。
500㌻
10 されど此の人々は知らぬことを罵り、無知の獸のごとく、自然に知る所󠄃によりて亡ぶるなり。
11 禍害󠄅なるかな、彼らはカインの道󠄃にゆき、利のためにバラムの迷󠄃に走り、またコラの如き謀反によりて亡びたり。
12 彼らは汝らと共に宴席に與り、その愛餐󠄃の暗󠄃礁たり、憚らずして自己をやしなふ牧者、風に逐󠄃はるる水なき雲、枯れて又󠄂かれ、根より拔かれたる果なき秋の木、
13 おのが恥を湧き出す海のあらき波、さまよふ星なり。彼らの爲に暗󠄃き闇、とこしへに蓄へ置かれたり。
14 アダムより七代に當るエノク彼らに就きて預言せり。曰く『視よ、主はその聖󠄄なる千萬の衆を率󠄃ゐて來りたまへり。
15 これ凡ての人の審判󠄄をなし、すべて敬虔ならぬ者の、不敬虔を行ひたる不敬虔の凡ての業と、敬虔ならぬ罪人の、主に逆󠄃ひて語りたる凡ての甚だしき言とを責め給はんとてなり』
16 彼らは呟くもの、不滿をならす者にして、己が慾に隨ひて步み、口に誇をかたり、利のために人に諂ふなり。
〘365㌻〙
17 愛する者よ、汝らは我らの主イエス・キリストの使徒たちの預じめ言ひし言を憶えよ。
18 即ち汝らに曰らく『末の時に嘲る者おこり、己が不敬虔なる慾に隨ひて步まん』と。
19 彼らは分󠄃裂をなし、情󠄃慾に屬し、御靈を有たぬ者なり。
20 されど愛する者よ、なんぢらは己が甚潔󠄄き信仰の上に德を建て、聖󠄄靈によりて祈り、
21 神の愛のうちに己をまもり、永遠󠄄の生命を得るまで我らの主イエス・キリストの憐憫を待て。
22 また彼らの中なる《[*]》疑ふ者をあはれみ、[*異本「爭ふ者を言伏せ」とあり。]
23 或者を火より取出して救ひ、或者をその肉に汚れたる下衣をも厭ひ、かつ懼れつつ憐め。
501㌻
24 願はくは汝らを守りて躓かしめず、瑕なくして榮光の御前󠄃に歡喜をもて立つことを得しめ給ふ者、
25 即ち我らの救主なる唯一の神に、榮光・稜威・權力・權威、われらの主イエス・キリストに由りて、萬世の前󠄃にも今も萬世までも在らんことを、アァメン〘366㌻〙
502㌻