〘435㌻〙
第1章
1 神の御意󠄃により、キリスト・イエスにある生命の約束に循ひて、キリスト・イエスの使徒になれるパウロ、
2 書を我が愛する子テモテに贈る。願はくは父󠄃なる神および我らの主キリスト・イエスより賜ふ、恩惠と憐憫と平󠄃安と、汝に在らんことを。
3 われ夜も晝も祈の中に絕えず汝を思ひて、わが先祖に效ひ淸き良心をもて事ふる神に感謝す。
4 我なんぢの淚を憶え、わが歡喜の滿ちん爲に汝を見んことを欲す。
5 是なんぢに在る虛僞なき信仰をおもひ出すに因りてなり。その信仰の曩に汝の祖母ロイス及び母ユニケに宿りしごとく、汝にも然るを確信す。
6 この故に、わが按手に因りて汝の內に得たる神の賜物をますます熾んにせんことを勸む。
7 そは神の我らに賜ひたるは、臆する靈にあらず、能力と愛と謹愼との靈なればなり。
8 されば汝われらの主の證をなす事と主の囚人たる我とを恥とすな、ただ神の能力に隨ひて福音󠄃のために我とともに苦難を忍󠄄べ。
9 神は我らを救ひ聖󠄄なる召をもて召し給へり。是われらの行爲に由るにあらず、神の御旨にて創世の前󠄃にキリスト・イエスをもて我らに賜ひし恩惠に由るなり。
10 この恩惠は今われらの救主キリスト・イエスの現れ給ふに因りて顯れたり。彼は死をほろぼし、福音󠄃をもて生命と朽ちざる事とを明かに爲給へり。
11 我はこの福音󠄃のために立てられて宣傳者・使徒・敎師となれり。
12 之がために我これらの苦難に遭󠄃ふ。されど之を恥とせず、我わが依賴む者を知り、且わが《[*]》委ねたる者を、かの日に至るまで守り得給ふことを確信すればなり。[*或は「我に」と譯す。]
435㌻
13 汝キリスト・イエスにある信仰と愛とをもて、我より聽きし健全󠄃なる言の模範を保ち、
14 かつ委ねられたる善きものを、我等のうちに宿りたまふ聖󠄄靈に賴りて守るべし。
15 アジヤに居る者みな我を棄てしは、汝の知る所󠄃なり、その中にフゲロとヘルモゲネとあり。
16 願はくは主オネシポロの家に憐憫を賜はんことを。彼はしばしば我を慰め、又󠄂わが鎖を恥とせず。
17 そのロマに居りし時には懇ろに尋󠄃ね來りて遂󠄅に逢ひたり。
18 願くは主かの日にいたり主の憐憫を彼に賜はんことを、彼がエペソにて我に事へしことの如何許なりしかは、汝の能く知るところなり。〘316㌻〙
第2章
1 わが子よ、汝キリスト・イエスにある恩惠によりて强かれ。
2 且おほくの證人の前󠄃にて我より聽きし所󠄃のことを他の者に敎へ得る忠實なる人々に委ねよ。
3 汝キリスト・イエスのよき兵卒として我とともに苦難を忍󠄄べ。
4 兵卒を務むる者は生活のために纒はるる事なし、これ募れる者を喜ばせんと爲ればなり。
5 技を競ふ者、もし法に隨ひて競はずば冠冕を得ず。
6 勞する農夫まづ實の分󠄃配を得べきなり。
7 汝わが言ふ所󠄃をおもへ、主なんぢに凡ての事に就きて悟を賜はん。
8 わが福音󠄃に云へる如くダビデの裔にして死人の中より甦へり給へるイエス・キリストを憶えよ。
9 我はこの福音󠄃のために苦難を受けて惡人のごとく繋がるるに至れり、然れど神の言は繋がれたるにあらず。
10 この故に我えらばれたる者のために凡ての事を忍󠄄ぶ。これ彼等をして永遠󠄄の光榮と共にキリスト・イエスによる救を得しめんとてなり。
11 爰に信ずべき言あり『我等もし彼と共に死にたる者ならば、彼と共に生くべし。
436㌻
12 もし耐へ忍󠄄ばば彼と共に王となるべし。若し彼を否まば、彼も我らを否み給はん。
13 我らは眞實ならずとも、彼は絕えず眞實にましませり、彼は己を否み給ふこと能はざればなり』
14 汝かれらに此等のことを思出さしめ、かつ言爭する事なきやう神の前󠄃にて嚴かに命ぜよ、言爭は益なくして聞く者を滅亡に至らしむ。
15 なんぢ眞理の言を正しく敎へ、恥づる所󠄃なき勞動人となりて神の前󠄃に鍊達󠄃せる者とならんことを勵め。
16 また妄りなる虛しき物語を避󠄃けよ。斯る者はますます不敬虔に進󠄃み、
17 その言は脫󠄁疽のごとく腐れひろがるべし、ヒメナオとピレトとは斯のごとき者の中にあり。
18 彼らは眞理より外れ、復活ははや過󠄃ぎたりと云ひて或人々の信仰を覆へすなり。
19 されど神の据ゑ給へる堅き基は立てり、之に印あり、記して曰ふ『主おのれの者を知り給ふ』また『凡て主の名を稱ふる者は不義を離るべし』と。
20 大なる家の中には金銀の器あるのみならず、木また土の器もあり、貴きに用ふるものあり、また賤しきに用ふるものあり。
21 人もし賤しきものを離れて自己を潔󠄄よくせば、貴きに用ひらるる器となり、淨められて主の用に適󠄄ひ、凡ての善き業に備へらるべし。
22 汝わかき時の慾を避󠄃け、主を淸き心にて呼び求むる者とともに義と信仰と愛と平󠄃和とを追󠄃求めよ。〘317㌻〙
23 愚なる無學の議論を棄てよ、これより分󠄃爭の起󠄃るを知ればなり。
24 主の僕は爭ふべからず、凡ての人に優しく能く敎へ忍󠄄ぶことをなし、
25 逆󠄃ふ者をば柔和をもて戒むべし、神あるひは彼らに悔改むる心を賜ひて眞理を悟らせ給はん。
26 彼ら一度は惡魔󠄃に囚はれたれど、醒めてその羂をのがれ神の御心を行ふに至らん。
437㌻
第3章
1 されど汝これを知れ、末の世に苦しき時きたらん。
2 人々おのれを愛する者・金を愛する者・誇るもの・高ぶる者・罵るもの・父󠄃母に逆󠄃ふもの・恩を忘るる者・潔󠄄からぬ者、
3 無情󠄃なる者・怨を解かぬ者・譏る者・節󠄄制なき者・殘刻なる者・善を好まぬ者、
4 友を賣る者・放縱なる者・傲慢なる者・神よりも快樂を愛する者、
5 敬虔の貌をとりてその德を捨つる者とならん、斯かる類の者を避󠄃けよ。
6 彼らの中には人の家に潜り入りて愚なる女を虜にする者あり、斯くせらるる女は罪を積み重ねて各樣の慾に引かれ、
7 常に學べども眞理を知る知識に至ること能はず。
8 彼の者らはヤンネとヤンブレとがモーセに逆󠄃ひし如く、眞理に逆󠄃ふもの、心の腐れたる者、また信仰につきて棄てられたる者なり。
9 されど此の上になほ進󠄃むこと能はじ、そはかの二人のごとく彼らの愚なる事も亦すべての人に顯るべければなり。
10 汝は我が敎誨・品行・志望󠄇・信仰・寛容・愛・忍󠄄耐・迫󠄃害󠄅、および苦難を知り、
11 またアンテオケ、イコニオム、ルステラにて起󠄃りし事、わが如何なる迫󠄃害󠄅を忍󠄄びしかを知る。主は凡てこれらの中より我を救ひ出したまへり。
12 凡そキリスト・イエスに在りて敬虔をもて一生を過󠄃さんと欲する者は迫󠄃害󠄅を受くべし。
13 惡しき人と人を欺く者とは、ますます惡にすすみ、人を惑し、また人に惑されん。
14 然れど汝は學びて確信したる所󠄃に常に居れ。なんぢ誰より之を學びしかを知り、
15 また幼き時より聖󠄄なる書を識りし事を知ればなり。この書はキリスト・イエスを信ずる信仰によりて救に至らしむる知慧󠄄を汝に與へ得るなり。
16 聖󠄄書はみな神の感動によるものにして敎誨と譴責と矯正と義を薫陶するとに益あり。
438㌻
17 これ神の人の全󠄃くなりて、諸般の善き業に備を全󠄃うせん爲なり。
第4章
1 われ神の前󠄃また生ける者と死にたる者とを審かんとし給ふキリスト・イエスの前󠄃にて、その顯現と御國とをおもひて嚴かに汝に命ず。〘318㌻〙
2 なんぢ御言を宣傳へよ、機を得るも機を得ざるも常に勵め、寛容と敎誨とを盡して責め、戒め、勸めよ。
3 人々健全󠄃なる敎に堪へず、耳痒くして私慾のまにまに己がために敎師を增加へ、
4 耳を眞理より背けて昔話に移るとき來らん。
5 されど汝は何事にも愼み苦難を忍󠄄び、傳道󠄃者の業をなし、なんぢの職を全󠄃うせよ。
6 我は今供物として血を灑がんとす、わが去るべき時は近󠄃づけり。
7 われ善き戰鬪をたたかひ、走るべき道󠄃程を果し、信仰を守れり。
8 今よりのち義の冠冕わが爲に備はれり。かの日に至りて正しき審判󠄄主なる主、これを我に賜はん、啻に我のみならず、凡てその顯現を慕ふ者にも賜ふべし。
9 なんぢ勉めて速󠄃かに我に來れ。
10 デマスは此の世を愛し、我を棄ててテサロニケに徃き、クレスケンスはガラテヤに、テトスはダルマテヤに徃きて、
11 唯ルカのみ我とともに居るなり。汝マルコを連󠄃れて共に來れ、彼は職のために我に益あればなり。
12 我テキコをエペソに遣󠄃せり。
13 汝きたる時わがトロアスにてカルポの許に遺󠄃し置きたる外衣を携へきたれ、また書物、殊に羊皮紙のものを携へきたれ。
14 金細工人アレキサンデル大に我を惱せり。主はその行爲に隨ひて彼に報いたまふべし。
15 汝もまた彼に心せよ、かれは甚だしく我らの言に逆󠄃ひたり。
16 わが始の辯明のとき誰も我を助けず、みな我を棄てたり、願くはこの罪の彼らに歸せざらんことを。
17 されど主われと偕に在して我を强めたまへり。これ我によりて宣敎の全󠄃うせられ、凡ての異邦人のこれを聞かん爲なり。而して我は獅子の口より救ひ出されたり。
439㌻
18 また主は我を凡ての惡しき業より救ひ出し、その天の國に救ひ入れたまはん。願はくは榮光、世々限りなく彼にあらん事を、アァメン。
19 汝プリスカ及びアクラ、またオネシポロの家に安否を問へ。
20 エラストはコリントに留れり。トロピモは病ある故に我かれをミレトに遺󠄃せり。
21 なんぢ勉めて冬のまへに我に來れ、ユブロ、プデス、リノス、クラウデヤ、及び凡ての兄弟、なんぢに安否を問ふ。
22 願くは主なんぢの靈と偕に在し、御惠なんぢらと偕に在らんことを。〘319㌻〙
440㌻