〘409㌻〙
第1章
1 神の御心によりてキリスト・イエスの使徒となれるパウロ及び兄弟テモテ、
2 書をコロサイに居る聖󠄄徒、キリストにありて忠實なる兄弟に贈る。願くは我らの父󠄃なる神より賜ふ恩惠と平󠄃安と汝らに在らんことを。
3 我らは常に汝らの爲に祈りて我らの主イエス・キリストの父󠄃なる神に感謝す。
4 これキリスト・イエスを信ずる汝らの信仰と凡ての聖󠄄徒に對する汝らの愛とにつきて聞きたればなり。
5 斯く聖󠄄徒を愛するは、汝らの爲に天に蓄へあるものを望󠄇むに因る。この望󠄇のことは汝らに及べる福音󠄃の眞の言によりて汝らが曾て聞きし所󠄃なり。
6 この福音󠄃は全󠄃世界にも及び、果を結びて增々大になれり。汝らが神の恩惠をききて、眞に之を知りし日より、汝らの中に然りしが如し。
7 汝らが、我らと共に僕たる愛するエパフラスより學びたるは、この福音󠄃なり。彼は《[*]》汝らの爲にキリストの忠實なる役者にして、[*異本「我ら」とあり。]
8 汝らが御靈によりて懷ける愛を我らに吿げたり。
9 この故に我らこの事を聞きし日より汝等のために絕えず祈り、かつ求むるは、汝ら靈のもろもろの知慧󠄄と頴悟とをもて神の御意󠄃を具󠄄に知り、
10 凡てのこと主を悅ばせんが爲に、その御意󠄃に從ひて步み、凡ての善き業によりて果を結び、いよいよ神を知り、
11 また神の榮光の勢威に隨ひて賜ふもろもろの力によりて强くなり、凡ての事よろこびて忍󠄄び、かつ耐へ、
12 而して《[*]》我らを光にある聖󠄄徒の嗣業に與るに足る者とし給ひし父󠄃に感謝せん事なり。[*異本「汝ら」とあり。]
409㌻
13 父󠄃は我らを暗󠄃黑の權威より救ひ出して、その愛しみ給ふ御子の國に遷󠄇したまへり。
14 我らは御子に在りて贖罪すなはち罪の赦を得るなり。
15 彼は見得べからざる神の像にして、萬の造󠄃られし物の先に生れ給へる者なり。
16 萬の物は《[*]》彼によりて造󠄃らる、天に在るもの、地に在るもの、見ゆるもの、見えぬもの、或は位、あるひは支配、あるひは政治、あるひは權威、みな彼によりて造󠄃られ、彼のために造󠄃られたればなり。[*或は「彼の中に」と譯す。]
17 彼は萬の物より先にあり、萬の物は《[*]》彼によりて保つことを得るなり。[*或は「彼の中に」と譯す。]
18 而して彼はその體なる敎會の首なり、彼は始にして死人の中より最先に生れ給ひし者なり。これ凡ての事に就きて長とならん爲なり。
19 神は凡ての滿足れる德を彼に宿して、〘297㌻〙
20 その十字架の血によりて平󠄃和をなし、或は地にあるもの、或は天にあるもの、萬の物をして己と和がしむるを善しとし給ひたればなり。
21 汝等もとは惡しき業を行ひて神に遠󠄄ざかり、心にて其の敵となりしが、
22 今は神キリストの肉の體をもて其の死により汝等をして己と和がしめ、潔󠄄く瑕なく責むべき所󠄃なくして、己の前󠄃に立しめんと爲給ふなり。
23 汝等もし信仰に止り、之に基きて堅く立ち福音󠄃の望󠄇より移らずば、斯く爲らるることを得べし。此の福音󠄃は汝らの聞きし所󠄃、また天の下なる凡ての造󠄃られし物に宣傳へられたるものにして、我パウロはその役者となれり。
24 われ今なんぢらの爲に受くる苦難を喜び、又󠄂キリストの體なる敎會のために我が身をもてキリストの患難の缺けたるを補ふ。
25 われ神より汝等のために與へられたる職に隨ひて敎會の役者となれり。
26 これ神の言、すなはち歷世歷代かくれて今神の聖󠄄徒に顯れたる奧義を宣傳へんとてなり。
410㌻
27 神は聖󠄄徒をして異邦人の中なるこの奧義の榮光の富の如何許なるかを知らしめんと欲し給へり、此の奧義は汝らの中に在すキリストにして榮光の望󠄇なり。
28 我らは此のキリストを傳へ、知慧󠄄を盡して凡ての人を訓戒し、凡ての人を敎ふ。これ凡ての人をしてキリストに在り、全󠄃くなりて神の前󠄃に立つことを得しめん爲なり。
29 われ之がために我が衷に能力をもて働き給ふものの活動にしたがひ、力を盡して勞するなり。
第2章
1 我なんぢら及びラオデキヤに居る人々、その他すべて我が肉體の顏をまだ見ぬ人のために如何に苦心するかを汝らの知らんことを欲す。
2 斯く苦心するは、彼らが心慰められ、愛をもて相列り、全󠄃き頴悟の凡ての富を得て、神の奧義なるキリストを知らん爲なり。
3 キリストには知慧󠄄と知識との凡ての寶藏れあり。
4 我これを言ふは、巧なる言をもて人の汝らを欺くこと勿らん爲なり。
5 われ肉體にては汝らと離れ居れど、靈にては汝らと偕に居りて喜び、また汝らの秩序あるとキリストに對する信仰の堅きとを見るなり。
6 汝らキリスト・イエスを主として受けたるにより、其のごとく彼に在りて步め。〘298㌻〙
7 また彼に根ざして、その上に建てられ、かつ敎へられし如く信仰を堅くし、溢󠄃るるばかり感謝せよ。
8 なんぢら心すべし、恐くはキリストに從はずして人の言傳と世の小學とに從ひ、人を惑す虛しき哲學をもて汝らを奪ひ去る者あらん。
9 それ神の滿足れる德はことごとく形體をなしてキリストに宿れり。
10 汝らは彼に在りて滿足れるなり。彼は凡ての政治と權威との首なり。
11 汝らまた彼に在りて手をもて爲ざる割󠄅禮を受けたり、即ち肉の體を脫󠄁ぎ去るものにして、キリストの割󠄅禮なり。
411㌻
12 汝らバプテスマを受けしとき、彼とともに葬られ、又󠄂かれを死人の中より甦へらせ給ひし神の活動を信ずるによりて、彼と共に甦へらせられたり。
13 汝ら前󠄃には諸般の咎と肉の割󠄅禮なきとに因りて死にたる者なりしが、神は汝らを彼と共に生かし、我らの凡ての咎を赦し、
14 かつ我らを責むる規の證書、すなはち我らに逆󠄃ふ證書を塗抹し、これを中間より取り去りて十字架につけ、
15 政治と權威とを褫ぎて之を公然に示し、十字架によりて凱旋し給へり。
16 然れば汝ら食󠄃物あるひは飮物につき、祭あるひは月朔あるひは安息日の事につきて、誰にも審かるな。
17 此等はみな來らんとする者の影にして、其の本體はキリストに屬けり。
18 殊更に謙󠄃遜をよそほひ、御使を拜する者に汝らの褒美を奪はるな。斯る者は見し所󠄃のものに基き、肉の念に隨ひて徒らに誇り、
19 首に屬くことを爲ざるなり。全󠄃體は、この首によりて節󠄄々維々に助けられ、相聯り、神の育にて生長するなり。
20 汝等もしキリストと共に死にて此の世の小學を離れしならば、何ぞなほ世に生ける者のごとく人の誡命と敎とに循ひて
21 『捫るな、味ふな、觸るな』と云ふ規の下に在るか。
22 (此等はみな用ふれば盡くる物なり)
23 これらの誡命は、みづから定めたる禮拜と謙󠄃遜と身を惜まぬ事とによりて知慧󠄄あるごとく見ゆれど、實は肉慾の放縱を防ぐ力なし。
第3章
1 汝等もしキリストと共に甦へらせられしならば、上にあるものを求めよ、キリスト彼處に在りて神の右に坐し給ふなり。
412㌻
2 汝ら上にあるものを念ひ、地に在るものを念ふな、
3 汝らは死にたる者にして其の生命はキリストとともに神の中に隱れ在ればなり。
4 我らの生命なるキリストの現れ給ふとき、汝らも之とともに榮光のうちに現れん。
〘299㌻〙
5 されば地にある肢體、すなはち淫行・汚穢・情󠄃慾・惡慾・また慳貪を殺せ、慳貪は偶像崇拜なり。
6 神の怒は、これらの事によりて《[*]》不從順の子らに來るなり。[*異本「不從順の子らに」の句なし]
7 汝らも斯る人の中に日を送󠄃りし時は、これらの惡しき事に步めり。
8 されど今は凡て此等のこと及び怒・憤恚・惡意󠄃を棄て、譏と恥づべき言とを汝らの口より棄てよ。
9 互に虛言をいふな、汝らは旣に舊き人とその行爲とを脫󠄁ぎて、
10 新しき人を著たればなり。この新しき人は、これを造󠄃り給ひしものの像に循ひ、いよいよ新になりて知識に至るなり。
11 斯てギリシヤ人とユダヤ人、割󠄅禮と無割󠄅禮、あるひは夷狄、スクテヤ人・奴隷・自主の別ある事なし、それキリストは萬の物なり、萬のものの中にあり。
12 この故に汝らは神の選󠄄民にして聖󠄄なる者また愛せらるる者なれば、慈悲の心・仁慈・謙󠄃遜・柔和・寛容を著よ。
13 また互に忍󠄄びあひ、若し人に責むべき事あらば互に恕せ、主の汝らを恕し給へる如く汝らも然すべし。
14 凡て此等のものの上に愛を加へよ、愛は德を全󠄃うする帶なり。
15 キリストの平󠄃和をして汝らの心を掌どらしめよ、汝らの召されて一體となりたるは、これが爲なり、汝ら感謝の心を懷け。
16 キリストの言をして豐に汝らの衷に住󠄃ましめ、凡ての知慧󠄄によりて、詩と讃美と靈の歌とをもて、互に敎へ、互に訓戒し、恩惠に感じて心のうちに神を讃美せよ。
413㌻
17 また爲す所󠄃の凡ての事あるひは言あるひは行爲みな主イエスの名に賴りて爲し、彼によりて父󠄃なる神に感謝せよ。
18 妻たる者よ、その夫に服󠄃へ、これ主にある者のなすべき事なり。
19 夫たる者よ、その妻を愛せよ、苦をもて之を待ふな。
20 子たる者よ、凡ての事みな兩親に順へ、これ主の喜びたまふ所󠄃なり。
21 父󠄃たる者よ、汝らの子供を怒らすな、或は落膽することあらん。
22 僕たる者よ、凡ての事みな肉につける主人にしたがへ、人を喜ばする者の如く、ただ眼の前󠄃の事のみを勤めず、主を畏れ、眞心をもて從へ。
23 汝ら何事をなすにも人に事ふる如くせず、主に事ふる如く心より行へ。
24 汝らは主より報として嗣業を受くることを知ればなり。汝らは主キリストに事ふる者なり。
25 不義を行ふ者はその不義の報を受けん、主は偏󠄃り視給ふことなし。〘300㌻〙
第4章
1 主人たる者よ、汝らも天に主あるを知れば、義と公平󠄃とをもて其の僕をあしらへ。
2 汝ら感謝しつつ目を覺して祈を常にせよ。
3 また我らの爲にも祈りて、神の我らに御言を傳ふる門をひらき、我等をしてキリストの奧義を語らしめ、
4 之を我が語るべき如く顯させ給はんことを願へ、我はこの奧義のために繋がれたり。
5 なんぢら機をうかがひ、外の人に對し知慧󠄄をもて行へ。
6 汝らの言は常に惠を用ひ、鹽にて味つけよ、然らば如何にして各人に答ふべきかを知らん。
7 愛する兄弟、忠實なる役者、主にありて我とともに僕たるテキコ、我がことを具󠄄に汝らに知らせん。
8 われ殊に彼を汝らに遣󠄃すは、我らの事を知らしめ、又󠄂なんぢらの心を慰めしめん爲なり。
414㌻
9 汝らの中の一人、忠實なる愛する兄弟オネシモを彼と共につかはす、彼等この處の事を具󠄄に汝らに知らせん。
10 我と共に囚人となれるアリスタルコ及びバルナバの從弟なるマルコ、汝らに安否を問ふ。此のマルコに就きては汝ら旣に命を受けたり、彼もし汝らに到らば之を接けよ。
11 またユストと云へるイエス汝らに安否を問ふ。割󠄅禮の者の中ただ此の三人のみ神の國のために働く我が同勞者にして、我が慰安となりたる者なり。
12 汝らの中の一人にてキリスト・イエスの僕なるエパフラス汝らに安否を問ふ。彼は常に汝らの爲に力を盡して祈をなし、汝らが全󠄃くなり、凡て神の御意󠄃を確信して立たんことを願ふ。
13 我かれが汝らとラオデキヤ及びヒエラポリスに在る者との爲に甚く心を勞することを證す。
14 愛する醫者ルカ及びデマス汝らに安否を問ふ。
15 汝らラオデキヤにある兄弟とヌンパ及びその家にある敎會とに安否を問へ。
16 この書を汝らの中にて讀みたらば、之をラオデキヤ人の敎會にも讀ませ、汝等はまたラオデキヤより來る書を讀め。
17 アルキポに言へ『主にありて受けし職を愼みて盡せ』と。
18 我パウロ手づから安否を問ふ。わが縲絏を記憶せよ。願くは御惠なんぢらと偕に在らんことを。〘301㌻〙
415㌻