前に戻る ピリピ書 🔝

 

〘401㌻〙

第1章

1 キリスト・イエスのしもべたるわれら、パウロとテモテと、ふみをピリピにをるキリスト・イエスにすべての聖󠄄徒せいとおよび監督かんとくたちと執事しつじたちとにおくる。 2 ねがはくはわれらの父󠄃ちちなるかみおよびしゅイエス・キリストよりたま恩惠めぐみ平󠄃安へいあんと、なんぢらにらんことを。

3 われなんぢらをおもふごとに、かみ感謝かんしゃし、 4 つねなんぢすべてのために、ねがひのつどつどよろこびてねがひをなす。 5 これなんぢらはじめよりいまいたるまで福音󠄃ふくいんひろむることにあづかるがゆゑなり。 6 われなんぢらのうちわざはじたまひしものの、キリスト・イエスのまでこれ全󠄃まったうしたまふべきことを確信かくしんす。 7 わがくもなんぢすべておもふは當然たうぜんことなり、縲絏なはめにあるときにも、福音󠄃ふくいん辯明べんめいしてこれかたうするときにも、なんぢらはみなわれととも恩惠めぐみあづかるによりて、こゝろにあればなり。 8 われいかにキリスト・イエスのこゝろをもてなんぢすべてしたふか、そのあかしをなしたまものかみなり。 9 われいのる、なんぢらのあい知識ちしきともろもろのさとりとによりていやうへにもくははり、 10 善惡よしあしわきまり、キリストのいたるまで潔󠄄いさぎよくして《[*]》つまづくことなく、[*或は「顚躓となる事なく」と譯す。] 11 イエス・キリストによるみたして、かみ榮光えいくわうほまれとをあらはさんことを。

12 兄弟きゃうだいよ、われはわがにありしことかへつて福音󠄃ふくいん進󠄃步しんぽたすけとなりしをなんぢらがらんことをほっするなり。 13 すなは縲絏なはめのキリストのためなることは、近󠄃衞このゑ全󠄃營ぜんえいにも、ほかすべてのひとにもあらはれ、 14 かつ兄弟きゃうだいのうちのおほくのものは、わが縲絏なはめによりてしゅしんずるこゝろあつくし、おそるることなく、ますますいさみてかみことばかたるにいたれり。 15 あるもの嫉妬ねたみ分󠄃爭あらそひとによりて、キリストを宣傳のべつたへ、あるものはこゝろによりてこれ宣傳のべつたふ。
 401㌻ 
16 これは福音󠄃ふくいん辯明べんめいするためにてられたることをり、あいによりてキリストをべ、 17 かれは縲絏なはめ患難なやみくはへんとおもひ、誠意󠄃せいいによらず、徒黨とたうによりてこれぶ。 18 さらば如何いかん外貌うはべにもあれ、まことにもあれ、いづれぶる所󠄃ところはキリストなれば、われこれをよろこぶ、またこれよろこばん。 19 そはのことのなんぢらのいのりとイエス・キリストの御靈みたま賜物たまものとによりてすくひとなるべきをればなり。 20 これは何事なにごとをもぢずして、いまつねのごとくいさゝかもおくすることなく、くるにもぬるにもによりて、キリストのあがめられたまはんことをせつねがひ、また望󠄇のぞむところに適󠄄かなへるなり。〘291㌻〙 21 われにとりて、くるはキリストなり、ぬるもまたえきなり。 22 されど肉體にくたいにてくること、わが勤勞はたらきとなるならば、いづれ選󠄄えらぶべきか、われこれをらず。 23 われはこのふたつのあひだはさまれたり。わがねがひりてキリストとともらんことなり、これはるか勝󠄃まさるなり。 24 されどわれなほ肉體にくたいとゞまるはなんぢらのため必要󠄃ひつえうなり。 25 われこれを確信かくしんするゆゑに、なほながらへてなんぢらの信仰しんかう進󠄃步しんぽ喜悅よろこびとのためになんぢすべてのものともとゞまらんことをる。 26 これはふたゝなんぢらにいたることにより、なんぢらキリスト・イエスにりてわれにかかはるほこりさんためなり。 27 なんぢただキリストの福音󠄃ふくいん相應ふさはしく過󠄃すごせ、らばきてなんぢらをるも、はなれゐてなんぢらのことをきくも、なんぢらがれいひとつにしてかたち、こゝろひとつにして福音󠄃ふくいん信仰しんかうのためにともたゝかひ、 28 すべてのことにおいて逆󠄃さからものをどろかされぬをることをん。そのをどろかされぬは、かれらにはほろびしるし、なんぢらにはすくひしるしにてこれかみよりづるなり。 29 なんぢはキリストのためにたゞかれしんずることのみならず、またかれのためにくるしむことをもたまはりたればなり。 30 なんぢらが遭󠄃戰鬪たゝかひは、さきわれうへしところ、いままたわれきてくところにおなじ。
 402㌻ 

第2章

1 このゆゑしキリストによるすゝめあいによる慰安なぐさめ御靈みたま交際まじはり、また憐憫あはれみ慈悲じひとあらば、 2 なんぢらおもひおなじうし、あいおなじうし、こゝろあはせ、おもふことをひとつにして、喜悅よろこびみたしめよ。 3 何事なにごとにまれ、徒黨とたうまた虛榮きょえいのためにな、おのおの謙󠄃遜けんそんをもてたがひひとおのれ勝󠄃まされりとよ。 4 おのおのおのことのみを顧󠄃かへりみず、ひとことをも顧󠄃かへりみよ。 5 なんぢらキリスト・イエスのこゝろこゝろとせよ。 6 すなはかれかみかたちにて居給ゐたまひしが、《[*]》かみひとしくあることかたたもたんとはおもはず、[*或は「神と等しき事を强ひ執らんとせず」と譯す。] 7 かへつておのれ空󠄃むなしうししもべかたちをとりてひとごとくなれり。 8 すでひとさまにてあらはれ、おのれひくうしていたるまで、十字架じふじかいたるまでしたがたまへり。 9 このゆゑかみかれたかげて、これ諸般もろもろにまさるたまひたり。 10 これてんるもの、るもの、したにあるもの、ことごとくイエスのによりてひざかゞめ、 11 かつもろもろのしたの『イエス・キリストはしゅなり』とひあらはして、榮光えいくわう父󠄃ちちなるかみせんためなり。

12 さればあいするものよ、なんぢらつね服󠄃したがひしごとく、ときのみならず、らぬいまもますます服󠄃したがひ、おそおのゝきておのすくひ全󠄃まったうせよ。〘292㌻〙 13 かみ御意󠄃みこゝろさんためになんぢらのうちにはたらき、なんぢをして志望󠄇こゝろざしをたて、わざおこなはしめたまへばなり。 14 なんぢらつぶやかず、うたがはずしてすべてのことをおこなへ。 15 これなんぢらむべき所󠄃ところなく素直すなほにしてまがれる邪惡よこしまなる時代じだいりてかみきずなきとならんためなり。なんぢらは生命いのちことばたもちて、ひかりのごとく時代じだいかゞやく。
 403㌻ 
16 かくはしりしところ、らうせしところ、空󠄃むなしからず、キリストのに、われほこることをん。 17 さらばなんぢらの信仰しんかう供物そなへものまつりとにくはへて、そゝぐともわれよろこばん、なんぢらすべてともよろこばん。 18 なんぢもよろこべ、われとともによろこべ。

19 われなんぢらのことりて慰安なぐさめんとて、速󠄃すみやかにテモテをなんぢらに遣󠄃つかはさんことをしゅイエスにりて望󠄇のぞむ。 20 そはかれのほかにわれおなこゝろをもて眞實しんじつなんぢらのことをおもんぱかるものなければなり。 21 ひとみなイエス・キリストのこともとめず、ただおのれのことのみをもとむ。 22 されどテモテの鍊達󠄃れんたつなるは、なんぢらの所󠄃ところなり、すなは父󠄃ちちけるごとわれとともに福音󠄃ふくいんのためにつとめたり。 23 このゆゑわれわが成行なりゆきば、たゞちにかれ遣󠄃つかはさんことを望󠄇のぞむ。 24 われもまた速󠄃すみやかにくべきをしゅによりて確信かくしんす。 25 されどいままづわれとともはたらき、ともたゝかひし兄弟きゃうだい、すなはちなんぢらの使つかひとして窮乏ともしきおぎなひしエパフロデトをなんぢらに遣󠄃つかはすを必要󠄃ひつえうのこととおもふ。 26 かれなんぢすべてのものひしたひ、又󠄂またおのがみたることのなんぢらにきこえしをかなしみるにりてなり。 27 かれじつやまひにかかりてぬばかりなりしが、かみかれあはれみたまへり、たゞかれのみならず、われをもあはれみ、うれひうれひかさねしめたまはざりき。 28 このゆゑ急󠄃いそぎてかれ遣󠄃つかはす、なんぢらがふたゝかれよろこばんためなり。又󠄂またわがうれひすくなうせんためなり。 29 さればなんぢしゅにありて歡喜よろこびつくしてかれ迎󠄃むかへ、かつかくのごときひと尊󠄅たふとべ。 30 かれなんぢらがわれたすくるにあたり、なんぢらのらぬをおぎなはんとて、おの生命いのちけ、キリストの事業じげふのためにぬばかりにりたればなり。

第3章

1 終󠄃をはりはん、兄弟きゃうだいよ、なんぢらしゅりてよろこべ。なんぢらにおなじことをきおくるは、われわづらはしきことなく、なんぢには安然あんぜんなり。

 404㌻ 
2 なんぢらいぬこゝろせよ、しき勞動人はたらきびとこゝろせよ、にく割󠄅禮かつれいあるものこゝろせよ。〘293㌻〙 3 かみ御靈みたまによりて禮拜れいはいをなし、キリスト・イエスによりてほこり、にくたのまぬわれらはまこと割󠄅禮かつれいあるものなり。 4 されどわれにくにもたのむことをるなり。もしほかひとにくたの所󠄃ところありとおもはば、われさらたの所󠄃ところあり。 5 われ八日やうかめに割󠄅禮かつれいけたるものにして、イスラエルの血統ちすぢ、ベニヤミンのやから、ヘブルびとよりでたるヘブルびとなり。律法おきてきてはパリサイびと 6 熱心ねっしんにつきては敎會けうくわい迫󠄃害󠄅はくがいしたるもの、律法おきてによれるきてはむべき所󠄃ところなかりしものなり。 7 されどさきえきたりしことはキリストのためにそんおもふにいたれり。 8 しかり、われはわがしゅキリスト・イエスをることのすぐれたるために、すべてのものそんなりとおもひ、かれのためにすですべてのものそんせしが、これ塵芥あくたのごとくおもふ。 9 これキリストを、かつ律法おきてによるおのならで、たゞキリストをしんずる信仰しんかうによる、すなはち信仰しんかうもとづきてかみよりたまはたもち、キリストにるを認󠄃みとめられ、 10 キリストとその復活よみがへりちからとをり、又󠄂またそのならひてかれ苦難くるしみにあづかり、 11 如何いかにもして死人しにんうちよりよみがへることをんがためなり。 12 われすでれり、すで全󠄃まったうせられたりとふにあらず、たゞこれをとらへんとて追󠄃おひもとむ。キリストはこれさせんとてわれとらへたまへり。 13 兄弟きゃうだいよ、われはすでとらへたりとおもはず、たゞこの一事いちじつとむ、すなはうしろのものをわすれ、前󠄃まへのものにむかひてはげみ、 14 標準めあてして進󠄃すゝみ、かみのキリスト・イエスにりてうへしたまふめしにかかはる褒美はうびんとてこれ追󠄃おひもとむ。 15 されば我等われらのうち成人せいじんしたるものは、みなかくのごときおもひいだくべし、なんぢもし何事なにごとにてもことなるおもひいだらば、かみこれをもしめたまはん。
 405㌻ 
16 ただ我等われらはそのいたれる所󠄃ところしたがひてあゆむべし。

17 兄弟きゃうだいよ、なんぢら諸共もろともわれならふものとなれ、かつなんぢらの模範もはんとなるわれらにしたがひてあゆむものをよ。 18 そはわれしばしばなんぢらにげ、いままたなみだながしてぐるごとく、キリストの十字架じふじかてきしてあゆものおほければなり。 19 かれらの終󠄃をはり滅亡ほろびなり。おのがはらかみとなし、おのはぢ光榮くわうえいとなし、ただことのみをおもふ。 20 されどわれらの國籍こくせきてんり、われらはしゅイエス・キリストの救主すくひぬしとしてところよりきたりたまふをつ。 21 かれ萬物ばんもつおのれ服󠄃したがはせ能力ちからによりて、われらのいやしきさまからだへておの榮光えいくわうからだかたどらせたまはん。

第4章

1 このゆゑあいするところ、したふところの兄弟きゃうだい、われの喜悅よろこび、われの冠冕かんむりたるあいするものよ、かくのごとくしゅにありてかたて。
〘294㌻〙
2 われユウオデヤにすゝめ、スントケにすゝむ、しゅにありてこゝろおなじうせんことを。 3 また《[*]》眞實しんじつわれくびきともにするものよ、なんぢにもとむ。この二人ふたりをんなたすけよ。かれらはクレメンスのほか生命いのちふみしるされたる同勞者どうらうしゃおなじく、福音󠄃ふくいんのためにわれとともにつとめたり。[*或は「眞實なるスンズゲよ」と譯す。]

4 なんぢつねしゅにありてよろこべ、われまたふ、なんぢらよろこべ。 5 すべてのひとなんぢらの寛容くわんようらしめよ、しゅ近󠄃ちかし。 6 何事なにごとをもおもわづらふな、ただことごとにいのりをなし、ねがひをなし、感謝かんしゃしてなんぢらのもとめかみげよ。 7 さらばすべひとおもひにすぐるかみ平󠄃安へいあんなんぢらのこゝろおもひとをキリスト・イエスによりてまもらん。

 406㌻ 
8 終󠄃をはりはん兄弟きゃうだいよ、おほよまことなること、おほよ尊󠄅たふとぶべきこと、おほよたゞしきこと、おほよ潔󠄄いさぎよきこと、おほよあいすべきこと、おほよ令聞よききこえあること、如何いかなるとく、いかなるほまれにてもなんぢこれをおもへ。 9 なんぢらわれまなびしところ、けしところ、きしところ、所󠄃ところみなおこなへ、らば平󠄃和へいわかみ、なんぢらとともいまさん。

10 なんぢらがわれおもこゝろいままたきざしたるを、われしゅにありていたよろこぶ。なんぢらはもとよりわれおもひゐたるなれど、をりざりしなり。 11 われ窮乏ともしきによりてこれふにあらず、われ如何いかなるさまるとも、ることをまなびたればなり。 12 われ卑賤いやしきにをる道󠄃みちり、とみにをる道󠄃みちる。また飽󠄄くことにも、飢󠄄うることにも、むことにも、ともしきことにも、一切いっさい祕訣ひけつたり。 13 われつよくしたまものによりて、すべてのことをなしるなり。 14 されどなんぢらが患難なやみあづかりしはことなり。 15 ピリピびとよ、なんぢらもる、わがなんぢらに福音󠄃ふくいんつたふるはじめ、マケドニヤをはなるとき、授受やりとりしてことあづかりしは、なんぢのみにしてほか敎會けうくわいにはかりき。 16 なんぢらはがテサロニケにりしときに、一度いちどならず二度にどまでも窮乏ともしきものおくれり。 17 これ贈物おくりものもとむるにあらず、たゞなんぢらのえきとなるしげからんことをもとむるなり。 18 われにはすべてのものそなはりてあまりあり、すでにエパフロデトよりなんぢらの贈物おくりものけたれば、飽󠄄れり。これはかうばしきにほひにしてかみたまふところ、よろこびたまふ所󠄃ところ供物そなへものなり。 19 かくて、わがかみおのれとみしたがひ、キリスト・イエスによりて、なんぢらのすべての窮乏ともしき榮光えいくわうのうちにおぎなたまはん。 20 ねがはくは榮光えいくわう世々よゝかぎりなく、われらの父󠄃ちちなるかみにあれ、アァメン。

 407㌻ 
21 なんぢらキリスト・イエスにりて聖󠄄徒せいとおのおのに安否あんぴへ、われともにある兄弟きゃうだいたち、なんぢらに安否あんぴふ。〘295㌻〙 22 すべての聖󠄄徒せいとことにカイザルのいへのもの、なんぢらに安否あんぴふ。

23 ねがはくはしゅイエス・キリストの恩惠めぐみ、なんぢらのれいともらんことを。〘296㌻〙
 408㌻