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〘302㌻〙

第1章

1 キリスト・イエスのしもべされて使徒しととなり、かみ福音󠄃ふくいんのために選󠄄えらわかたれたるパウロ―― 2 この福音󠄃ふくいんかみその預言者よげんしゃたちにより、聖󠄄書せいしょうちあらかじめ御子みこきてやくたまひしものなり。 3 御子みこにくによれば、ダビデのすゑよりうまれ、 4 潔󠄄きよれいによれば、死人しにん復活よみがへりにより大能たいのうをもてかみさだめられたまへり、すなはわれらのしゅイエス・キリストなり。 5 我等われらその御名みなためにもろもろの國人くにびと信仰しんかう從順じゅうじゅんならしめんとて、かれより恩惠めぐみ使徒しとつとめとをけたり。 6 なんぢもそのうちにありてイエス・キリストのものとならんためされたるなり―― 7 われふみをロマにりてかみあいせられ、されて聖󠄄徒せいととなりたるすべてのものおくる。ねがはくはわれらの父󠄃ちちなるかみおよびしゅイエス・キリストよりたま恩惠めぐみ平󠄃安へいあんなんぢらにらんことを。

8 なんぢらの信仰しんかう全󠄃世界ぜんせかいつたへられたれば、われまづなんぢ一同いちどうためにイエス・キリストによりてかみ感謝かんしゃす。 9 その御子みこ福音󠄃ふくいんおいれいをもてつかふるかみは、わがえずいのりのうちになんぢらをおぼえ、 10 如何いかにしてか御意󠄃みこゝろ適󠄄かなひ、いつかなんぢらにいたるべき途󠄃みちんと、つねこひねがふことをがためにあかしたまふなり。 11 われなんぢらをんことをせつ望󠄇のぞむは、なんぢらのかたうせられんためれい賜物たまもの分󠄃あたへんとてなり。 12 すなはわれなんぢらのうちにありてたがひ信仰しんかうによりあひともなぐさめられんためなり。
 302㌻ 
13 兄弟きゃうだいよ、われほかの異邦人いはうじんうちよりしごとくなんぢらのうちよりもんとて屡次しばしばなんぢらにかんとしたれど、いまいたりてなほさまたげらる、ことなんぢらのらざるをほっせず。 14 われはギリシヤびとにも夷人えびすにもかしこものにもおろかなるものにも負󠄅債おひめあり。 15 このゆゑわれはロマになんぢらにも福音󠄃ふくいん宣傳のべつたへんことをしきりにねがふなり。 16 われ福音󠄃ふくいんはぢとせず、この福音󠄃ふくいんはユダヤびとはじめギリシヤびとにも、すべしんずるものすくひさするかみちからたればなり。 17 かみはその福音󠄃ふくいんのうちにあらはれ、信仰しんかうよりでて信仰しんかう進󠄃すゝましむ。しるして『義人ぎじん信仰しんかうによりてくべし』とあるごとし。

18 それかみいかりは、不義ふぎをもて眞理まことはばひとの、もろもろの不虔ふけん不義ふぎとにむかひててんよりあらはる。 19 そのゆゑかみにつきてべきことはかれらに顯著あらはなればなり、かみこれをあらはたまへり。 20 それかみるべからざる永遠󠄄とこしへ能力ちから神性しんせいとは造󠄃つくられたるものによりはじめよりさとりえてあきらかにるべければ、かれのがるるすべなし。〘220㌻〙 21 かみりつつもなほこれをかみとしてあがめず、感謝かんしゃせず、そのおもひむなしく、そのおろかなるこゝろ暗󠄃くらくなれり。 22 みづかかしこしととなへておろかとなり、 23 つることなきかみ榮光えいくわうへてつべきひとおよび禽獸とりけものものたるかたちとなす。

24 このゆゑかみかれらをこゝろよくにまかせて、たがひにそのはづかしむる汚穢けがれわたたまへり。 25 かれらはかみまことへて虛僞いつはりとなし、造󠄃物主つくりぬしきて造󠄃つくられたるものはいし、かつこれにつかふ、造󠄃物主つくりぬし永遠󠄄とこしへむべきものなり、アァメン。

 303㌻ 
26 これによりてかみかれらをづべきよくわたたまへり。すなはをんな順性じゅんせいようへて逆󠄃性ぎゃくせいようとなし、 27 をとこもまたおなじくをんな順性じゅんせいようててたがひ情󠄃じゃうよくもやし、をとこをとこづることをおこなひて、その迷󠄃まよひあたひすべきむくいおのけたり。

28 またかみこゝろむるをしとせざれば、かみもその邪曲よこしまなるこゝろまゝまじきことをするにまかたまへり。 29 すなはちもろもろの不義ふぎあく慳貪むさぼり惡意󠄃あくいにて滿つるもの、また嫉妬ねたみ殺意󠄃さつい紛爭あらそひ詭計たばかり惡念あくねん溢󠄃あふるるもの 30 讒言ざんげんするものそしものかみ憎にくまるるものあなどものたかぶるものほこもの惡事あくじくはだつるもの父󠄃母ふぼ逆󠄃さからもの 31 無知むち違󠄇約ゐやく無情󠄃むじゃう慈悲じひなるものにして、 32 かゝことどもをおこなもの死罪しざいあたるべきかみさだめりながら、たゞ自己みづからこれらのことおこなふのみならず、またひとこれおこなふをしとせり。

第2章

1 ればすべひとさばものよ、なんぢのがるるすべなし、ほかひとさばくは、まさしくおのれつみするなり。ひとをさばくなんぢもみづからおなことおこなへばなり。 2 かゝことをおこなふものつみするかみ審判󠄄さばき眞理まことかなへりとわれらはる。 3 かゝことをおこなふものさばきて自己みづからこれをおこなひとよ、なんぢかみ審判󠄄さばきのがれんとおもふか。 4 かみ仁慈なさけなんぢを悔改くいあらため導󠄃みちびくをらずして、その仁慈なさけ忍󠄄耐にんたい寛容くわんようとのゆたかなるをかろんずるか。 5 なんぢ頑固かたくな悔改くいあらためぬこゝろとによりおのれのためにかみいかりみて、そのたゞしき審判󠄄さばきあらはるるいかりおよぶなり。 6 かみはおのおのの所󠄃作しわざしたがひてむくい、 7 たへ忍󠄄しのびてぜんをおこない光榮くわうえい尊󠄅貴たふときちざることとをもとむるものには永遠󠄄とこしへ生命いのちをもてむくい、
 304㌻ 
8 徒黨とたうにより眞理まことしたがはずして不義ふぎにしたがうものにはいかり憤恚いきどほりとをもてむくたまはん。 9 すべてあくをおこなふひとには、ユダヤびとはじめギリシヤびとにも患難なやみ苦難くるしみとあり。〘221㌻〙 10 すべぜんをおこなふひとには、ユダヤびとはじめギリシヤびとにも光榮くわうえい尊󠄅貴たふとき平󠄃安へいあんとあらん。 11 そはかみには偏󠄃かたよたまふことければなり。 12 おほよ律法おきてなくしてつみをかしたるもの律法おきてなくしてほろび、律法おきてありてつみをかしたるもの律法おきてによりてさばかるべし。 13 律法おきてくものかみ前󠄃まへたるにあらず、律法おきてをおこなふもののみとせらるべし。―― 14 律法おきてたぬ異邦人いはうじん、もし本性うまれつきのまま律法おきてせたる所󠄃ところをおこなふときは、律法おきてたずともおのづからおの律法おきてたるなり。 15 すなは律法おきてめいずる所󠄃ところのそのこゝろしるされたるをあらはし、おのが良心りゃうしんもこれをあかしをなして、そのおもひ、たがひにあるひうったあるひ辯明べんめいす―― 16 これわが福音󠄃ふくいんへるごとかみのキリスト・イエスによりて人々ひとびとかくれたることさばきたまふるべし。

17 なんぢユダヤびととなへられ、律法おきてやすんじ、かみほこり、 18 その御意󠄃みこゝろ律法おきてをしへられて善惡よしあしわきまへ、 19 また律法おきてのうちに知識ちしき眞理しんりとのかたてりとして盲人めしひ手引てびき暗󠄃黑くらきにをるもの光明ひかり 20 おろかなるもの守役もりやく幼兒をさなご敎師けうしなりとみづかしんずるものよ、 21 なにゆゑひとをしへておのれをしへぬか、ぬすなかれとべてみづかぬすむか、 22 姦淫かんいんするなかれとひて姦淫かんいんするか、偶像ぐうざうにくみてみやものうばふか、 23 律法おきてほこりて律法おきてやぶかみかろんずるか。 24 しるして『かみなんぢらのゆゑによりて異邦人いはうじんなかけがさる』とあるがごとし。 25 なんぢ律法おきてまもらば割󠄅禮かつれいえきあり、律法おきてやぶらばなんぢ割󠄅禮かつれい割󠄅禮かつれいとなるなり。 26 割󠄅禮かつれいなきもの律法おきてまもらば、その割󠄅禮かつれい割󠄅禮かつれいとせらるるにあらずや。
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27 本性うまれつきのまま割󠄅禮かつれいなくして律法おきて全󠄃まったうするものは、儀文ぎぶん割󠄅禮かつれいとありてなほ律法おきてをやぶるなんぢさばかん。 28 それ表面うはべのユダヤびとはユダヤびとたるにあらず、にく表面うはべ割󠄅禮かつれい割󠄅禮かつれいたるにあらず。 29 ひそかなるユダヤびとはユダヤびとなり、儀文ぎぶんによらず、れいによるこゝろ割󠄅禮かつれい割󠄅禮かつれいなり、そのほまれひとよりにあらずかみよりきたるなり。

第3章

1 らばユダヤびとなにすぐるる所󠄃ところありや、また割󠄅禮かつれいなにえきありや。 2 すべてのことえきおほし、第一だいいちかれらはかみことばゆだねられたり。 3 されど如何いかん、ここにしんぜざるものありとも、そのしんかみ眞實しんじつつべきか。 4 けっしてしからず、ひとをみな虛僞いつはりものとすともかみ誠實まこととすべし。しるして 『なんぢはことばにてとせられ、 さばかるるとき勝󠄃かち得給えたまはんためなり』とあるがごとし。〘222㌻〙 5 れどわれらの不義ふぎかみあらはすとせばなにはんか、いかりくはへたまふかみ不義ふぎなるか(こはひとふごとくふなり) 6 けっしてしからず、しかあらばかみ如何いかにしてさばたまふべき。 7 わが虛僞いつはりによりてかみ誠實まこといよいよあらはれ、その榮光えいくわうとならんには、いかわれなほ罪人つみびととしてさばかるることあらん。 8 また『ぜんきたらせんためあくをなすはからずや』(あるものわれらをそしりてこれわれらのことばなりといふ)かゝひとつみさだめらるるはたゞし。

9 さらば如何いかん、われらの勝󠄃まさ所󠄃ところありや、ることなし。われすでにユダヤびともギリシヤびともみなつみしたりとげたり。 10 しるして 『義人ぎじんなし、一人ひとりだになし、 11 さとものなく、 かみもとむるものなし。 12 みな迷󠄃まよひてあひとも空󠄃むなしくなれり、 ぜんをなすものなし、一人ひとりだになし。 13 かれらののどひらきたるはかなり、 したには詭計たばかりあり、 口唇くちびるのうちにはまむしどくあり、
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14 そのくちのろひにがきとにて滿つ。 15 そのあしながすに速󠄃はやし、 16 破壞やぶれ艱難なやみとその道󠄃みちにあり、 17 かれらは平󠄃和へいわ道󠄃みちらず。 18 その眼前󠄃めのまへかみをおそるるおそれなし』とあるがごとし。

19 それ律法おきてふところは律法おきてしたにあるものかたるとわれらはる、これはすべてのくちふさがり、かみ審判󠄄さばき全󠄃世界ぜんせかい服󠄃ふくせんためなり。 20 律法おきて行爲おこなひによりては、一人ひとりだにかみのまへにとせられず、律法おきてによりてつみらるるなり。

21 しかるにいま律法おきてほかかみあらはれたり、これ律法おきて預言者よげんしゃとにりてあかしせられ、 22 イエス・キリストをしんずるにりてすべしんずるものあたへたまふかみなり。これにはなに差別さべつあるなし。 23 すべてのひとつみをかしたればかみ榮光えいくわうくるにらず、 24 いさおなくしてかみ恩惠めぐみにより、キリスト・イエスにある贖罪あがなひによりてとせらるるなり。 25 すなはかみ忍󠄄耐にんたいをもて過󠄃來すぎこしかたのつみ見遁みのがたまひしが、おのれあらはさんとて、キリストをて、そのによりて信仰しんかうによれるなだめ供物そなへものとなしたまへり。 26 これいまおのれのあらはして、みづかたらんため、またイエスをしんずるものとしたまはんためなり。〘223㌻〙 27 らばほこるところ何處いづこにあるか。すでのぞかれたり、なに律法おきてりてか、行爲おこなひ律法おきてか、しからず、信仰しんかう律法おきてりてなり。 28 われらはおもふ、ひととせらるるは、律法おきて行爲おこなひによらず、信仰しんかうるなり。 29 かみはただユダヤびとのみのかみなるか、また異邦人いはうじんかみならずや、しかり、また異邦人いはうじんかみなり。 30 かみ唯一ゆゐいつにして割󠄅禮かつれいあるもの信仰しんかうによりてとし、割󠄅禮かつれいなきものをも信仰しんかうによりてとしたまへばなり。 31 らばわれ信仰しんかうをもて律法おきて空󠄃むなしくするか、けっしてしからず、かへつて律法おきてかたうするなり。
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第4章

1 らば《[*]》われらの先祖せんぞアブラハムはにくにつきてなにたりとはんか。[*或は「肉によれる我らの先祖アブラハム何を……」と譯す。] 2 アブラハム行爲おこなひによりてとせられたらんにはほこるべき所󠄃ところあり、れどかみ前󠄃まへにはることなし。 3 聖󠄄書せいしょなにへるか『アブラハムかみしんず、その信仰しんかう認󠄃みとめられたり』と。 4 それはたらものへの報酬むくい恩惠めぐみといはず、負󠄅債おひめ認󠄃みとめらる。 5 されどはたらことなくとも、敬虔けいけんならぬものとしたまふかみしんずるものは、その信仰しんかう認󠄃みとめらるるなり。 6 ダビデもまた行爲おこなひなくしてかみ認󠄃みとめらるるひと幸福さいはひにつきてへり。いはく、 7不法ふほふゆるされ、 つみおほはれたるもの幸福さいはひなるかな、 8 しゅつみ認󠄃みとたまはぬひと幸福さいはひなるかな』 9 れば幸福さいはひはただ割󠄅禮かつれいあるものにのみあるか、また割󠄅禮かつれいなきものにもあるか、われらはふ『アブラハムはその信仰しんかう認󠄃みとめられたり』と。 10 如何いかなるときに認󠄃みとめられたるか、割󠄅禮かつれいののちか、割󠄅禮かつれいのときか、割󠄅禮かつれいのちならず、割󠄅禮かつれいときなり。 11 しかして割󠄅禮かつれいのときの信仰しんかうによれるいんとして割󠄅禮かつれいしるしけたり、これ割󠄅禮かつれいにしてしんずるすべてのもの認󠄃みとめられんために、その父󠄃ちちとなり、 12 また割󠄅禮かつれいのみにらず、われらの父󠄃ちちアブラハムの割󠄅禮かつれいのときの信仰しんかうあとをふむ割󠄅禮かつれいあるもの父󠄃ちちとならんためなり。 13 アブラハム世界せかい世嗣よつぎたるべしとの約束やくそくを、アブラハムとそのすゑとのあたへられしは、律法おきてらず、信仰しんかうれるなり。 14 もし律法おきてによるものども世嗣よつぎたらば、信仰しんかう空󠄃むなしく約束やくそくすたるなり。 15 それ律法おきていかりまねく、律法おきてなき所󠄃ところにはつみをかすこともなし。 16 このゆゑ世嗣よつぎたることの恩惠めぐみあづからんために信仰しんかうるなり、これかの約束やくそくのアブラハムのすべてのすゑ、すなはち律法おきてによるすゑのみならず、かれ信仰しんかうならすゑにもかたうせられんためなり。
 308㌻ 
17 かれはそのしんじたる所󠄃ところかみ、すなはち死人しにんいかし、きものをるもののごとびたまふかみ前󠄃まへにて我等われらすべてのもの父󠄃ちちたるなり。しるして『われなんぢてておほくの國人くにびと父󠄃ちちとせり』とあるがごとし。〘224㌻〙 18 かれ望󠄇のぞむべくもあらぬときになほ望󠄇のぞみてしんじたり、これなんぢのすゑかくごとくなるべしとたまひしにしたがひておほくの國人くにびと父󠄃ちちとならんためなりき。 19 かくおほよ百歳ひゃくさいおよびておのにたるがごときさまなると、サラのたいにたるがごときとを認󠄃みとむれども、その信仰しんかうよわらず、 20 しんをもてかみ約束やくそくうたがはず、信仰しんかうによりつよくなりてかみ榮光えいくわうし、 21 そのやくたまへることを得給えたまふと確信かくしんせり。 22 これりて信仰しんかう認󠄃みとめられたり。 23 く『認󠄃みとめられたり』としるしたるは、アブラハムのためのみならず、またわれらのためなり。 24 われらのしゅイエスを死人しにんうちよりよみがへらせたまひしものしんずるわれらも、その信仰しんかう認󠄃みとめられん。 25 しゅわれらのつみのためにわたされ、われらのとせられんためよみがへらせられたまへるなり。

第5章

1 われ信仰しんかうによりてとせられたれば、われらのしゅイエス・キリストにり、かみたいして平󠄃和へいわたり。 2 またかれにより信仰しんかうによりていまつところの恩惠めぐみることをかみ榮光えいくわう望󠄇のぞみてよろこぶなり。 3 しかのみならず患難なやみをもよろこぶ、そは患難なやみ忍󠄄耐にんたいしゃうじ、 4 忍󠄄耐にんたい練達󠄃れんたつしゃうじ、練達󠄃れんたつ希望󠄇きばうしゃうずとればなり。 5 希望󠄇きばうはぢきたらせず、われらにたまひたる聖󠄄せいれいによりてかみあい、われらのこゝろそゝげばなり。 6 我等われらのなほ弱󠄃よわかりしとき、キリストさだまりたるおよびて敬虔けいけんならぬもののためにたまへり。 7 それ義人ぎじんのためにぬるものほとんどなし、仁者じんしゃのためにはぬることをいとはぬものもやあらん。
 309㌻ 
8 れど我等われらがなほ罪人つみびとたりしとき、キリスト我等われらのためにたまひしにりて、かみわれらにたいするあいをあらはしたまへり。 9 いまそのりてわれとせられたらんには、ましかれによりていかりよりすくはれざらんや。 10 我等われらもしてきたりしとき御子みこりてかみやはらぐことをたらんには、ましやはらぎてのちその生命いのちによりてすくはれざらんや。 11 しかのみならずいまわれらに和睦やはらぎさせたまへるわれらのしゅイエス・キリストにりてかみよろこぶなり。

12 それ一人ひとりひとによりてつみり、またつみによりてり、すべてのひとつみをかししゆゑすべてのひとおよべり。〘225㌻〙 13 律法おきてのきたる前󠄃さきにもつみにありき、れど律法おきてなくばつみ認󠄃みとめらるることし。 14 しかるにアダムよりモーセにいたるまで、アダムのとがひとしきつみをかさぬものうへにもわうたりき。アダムはきたらんとするものかたなり。 15 れど恩惠めぐみ賜物たまものは、かのとがごときにあらず、一人ひとりとがによりておほくのひとにたらんには、ましかみ恩惠めぐみ一人ひとりひとイエス・キリストによる恩惠めぐみ賜物たまものとは、おほくのひと溢󠄃あふれざらんや。 16 又󠄂またこの賜物たまものつみをかしし一人ひとりよりきたれるもののごときにあらず、審判󠄄さばき一人ひとりよりしてつみさだむるにいたりしが、恩惠めぐみ賜物たまものおほくのとがよりしてとするにいたるなり。 17 もし一人ひとりとがのために一人ひとりによりてわうとなりたらんには、まし恩惠めぐみ賜物たまものとをゆたかくるもの一人ひとりのイエス・キリストにより生命いのちりてわうたらざらんや。 18 さればひとつのとがによりてつみさだむることのすべてのひとおよびしごとく、ひとつのたゞしき行爲おこなひによりてとせられ、生命いのちるにいたることもすべてのひとおよべり。
 310㌻ 
19 それは一人ひとり從順じゅうじゅんによりておほくのひと罪人つみびととせられしごとく、一人ひとり從順じゅうじゅんによりておほくのひと義人ぎじんとせらるるなり。 20 律法おきてきたりしはとがさんためなり。れどつみすところには恩惠めぐみ彌增いやませり。 21 これつみによりてわうたりしごとく、恩惠めぐみによりてわうとなり、われらのしゅイエス・キリストにりて永遠󠄄とこしへ生命いのちいたらんためなり。

第6章

1 さればなにをかはん、恩惠めぐみさんためにつみのうちにとゞまるべきか、 2 けっしてしからず、つみきてにたるわれらはいかなほそのうちきんや。 3 なんぢららぬか、おほよそキリスト・イエスにふバプテスマをけたるわれらは、そのふバプテスマをけしを。 4 われらはバプテスマによりてかれとともにはうむられ、そのあはせられたり。これキリスト父󠄃ちち榮光えいくわうによりて死人しにんうちよりよみがへらせられたまひしごとく、われらもあたらしき生命いのちあゆまんためなり。 5 われらキリストにがれて、そのさまにひとしくば、その復活よみがへりにもひとしかるべし。 6 われらはる、われらのふるひと、キリストととも十字架じふじかにつけられたるは、つみからだほろびて、ののちつみつかへざらんためなるを。 7 そはにしものつみより脫󠄁のがるるなり。 8 我等われらもしキリストとともにしならば、またかれとともにきんことをしんず。 9 キリスト死人しにんうちよりよみがへりてまたたまはず、もまたかれしゅとならぬをわれればなり。 10 そのたまへるはつみにつきてひとたびたまへるにて、そのたまへるはかみにつきてたまへるなり。〘226㌻〙 11 かくのごとくなんぢらもおのれつみにつきてはにたるもの、かみにつきては、キリスト・イエスにりてきたるものおもふべし。

 311㌻ 
12 ればつみなんぢらのぬべきからだわうたらしめてよくしたがふことなく、 13 なんぢらの肢體したいつみさゝげて不義ふぎの《[*]》うつはとなさず、かへつて死人しにんうちより返󠄄かへりたるもののごとくおのれかみにささげ、その肢體したいうつはとしてかみさゝげよ。[*或は「武器」と譯す。] 14 なんぢらは律法おきてしたにあらずして恩惠めぐみしたにあれば、つみなんぢらにしゅとなることなきなり。

15 らば如何いかに、われらは律法おきてしたにあらず、恩惠めぐみしたにあるがゆゑつみをかすべきか、けっしてしからず。 16 なんぢららぬか、おのれさゝしもべとなりて、たれしたがふともしもべたることを。あるひつみしもべとなりていたり、あるひ從順じゅうじゅんしもべとなりてにいたる。 17 れどかみ感謝かんしゃす、なんぢはもとつみしもべなりしが、つたへられしをしへのりこゝろよりしたがひ、 18 つみより解放ときはなされてしもべとなりたり。 19 ひとことをかりてふは、なんぢらのにくよわきゆゑなり。なんぢらもとその肢體したいをささげ、けがれ不法ふほふとのしもべとなりて不法ふほふいたりしごとく、いまその肢體したいをささげ、しもべとなりて潔󠄄きよきいたれ。 20 なんぢらつみしもべたりしときはたいして自由じいうなりき。 21 そのときいまはぢとする所󠄃ところことによりてなにしか、これらのことはてなり。 22 れどいまつみより解放ときはなされてかみしもべとなりたれば、潔󠄄きよきにいたるたり、そのはて永遠󠄄とこしへ生命いのちなり。 23 それつみはらあたひなり、れどかみ賜物たまものわれらのしゅキリスト・イエスにありてくる永遠󠄄とこしへ生命いのちなり。

第7章

1 兄弟きゃうだいよ、なんぢららぬか、(われ律法おきてものかたる)律法おきてひとけるあひだのみ、これしゅたるなり。
 312㌻ 
2 をっとある婦󠄃をんな律法おきてによりてをっとけるうちこれしばらる。れどをっとなばをっと律法おきてよりかるるなり。 3 ればをっとけるうちほかひと適󠄄かば淫婦󠄃いんぷとなへらるれど、をっとなば、その律法おきてより解放ときはなさるるゆゑほかひと適󠄄くとも淫婦󠄃いんぷとはならぬなり。 4 わが兄弟きゃうだいよ、かくのごとくなんぢもキリストのからだにより律法おきてきてにたり。これほかものすなは死人しにんうちよりよみがへらせられたまひしもの適󠄄き、かみのためにむすばんためなり。 5 われらにくりしとき、律法おきてれるつみ情󠄃じゃうわれらの肢體したいのうちにはたらきて、のためにむすばせたり。〘227㌻〙 6 れどしばられたる所󠄃ところきて我等われらいまにて律法おきてよりかれたれば、儀文ぎぶんふるきによらず、れいあたらしきにしたがひてつかふることをるなり。

7 らばなにをかはん、律法おきてつみなるか、けっしてしからず、律法おきてらでは、われつみらず、律法おきてに『むさぼなかれ』とはずば、慳貪むさぼりらざりき。 8 れどつみをりじょう誡命いましめによりて各樣さまざま慳貪むさぼりがうちに起󠄃おこせり、律法おきてなくばつみにたるものなり。 9 われかつ律法おきてなくしてきたれど、誡命いましめきたりしときつみき、われにたり。 10 しかしてわれ生命いのちにいたるべき誡命いましめかへつていたらしむるを見出みいだせり。 11 これつみをりじょう誡命いましめによりてわれあざむき、かつこれによりてわれころせり。 12 それ律法おきて聖󠄄せいなり、誡命いましめもまた聖󠄄せいにしてたゞしく、かつぜんなり。 13 ればぜんなるものわれとなりたるか。けっしてしからず、つみつみたることのあらはれんためにぜんなるものによりてうちきたらせたるなり。これ誡命いましめによりてつみはなはだしきあくとならんためなり。 14 われら律法おきてれいなるものとる、されどわれにくなるものにてつみしたられたり。 15 わがおこなふことはわれしらず、ほっする所󠄃ところこれをなさず、かへつて憎にくむところはこれすなり。
 313㌻ 
16 わがほっせぬ所󠄃ところすときは律法おきてぜんなるを認󠄃みとむ。 17 ればこれおこなふはわれにあらず、うち宿やどつみなり。 18 われはわがうち、すなわちにくのうちにぜん宿やどらぬをる、ぜんほっすることわれにあれど、これおこなことなければなり。 19 わがほっする所󠄃ところぜんこれをなさず、かへつてほっせぬ所󠄃ところあくこれをなすなり。 20 われもしほっせぬ所󠄃ところことをなさば、これおこなふはわれにあらず、うち宿やどつみなり。 21 ればぜんをなさんとほっするわれあくありとののりを、われ見出みいだせり。 22 われうちなるひとにてはかみ律法おきてよろこべど、 23 わが肢體したいのうちにほかのりありて、こゝろのりたゝかひ、われ肢體したいうちにあるつみのりしたとりことするをる。 24 あゝわれなやめるひとなるかな、からだよりわれすくはんものたれぞ。 25 われらのしゅイエス・キリストにりてかみ感謝かんしゃす、ればわれみづからこゝろにてはかみ律法おきてにつかへ、うちにてはつみのりつかふるなり。

第8章

1 このゆゑいまやキリスト・イエスにものつみさだめらるることなし。 2 キリスト・イエスに生命いのち御靈みたまのりは、なんぢをつみとののりより解放ときはなしたればなり。 3 にくによりて弱󠄃よわくなれる律法おきてあたはぬ所󠄃ところかみたまへり、すなはおのれつみあるにくかたちにてつみのために遣󠄃つかはし、にくおいつみさだめたまへり。〘228㌻〙 4 これにくしたがはず、れいしたがひてあゆわれらのうち律法おきてまったうせられんためなり。 5 にくにしたがふものにくことをおもひ、れいにしたがふものれいことをおもふ。 6 にくおもひなり、れいおもひ生命いのちなり、平󠄃安へいあんなり。 7 にくおもひかみ逆󠄃さからふ、それはかみ律法おきて服󠄃したがはず、いなしたがふことあたはず、 8 またにくものかみよろこばすことあたはざるなり。 9 れどかみ御靈みたまなんぢらのうち宿やどたまはば、なんぢらはにくらでれいらん、キリストの御靈みたまなきものはキリストにぞくするものにあらず。
 314㌻ 
10 しキリストなんぢらにいまさばからだつみによりてにたるものなれどれいによりて生命いのちらん。 11 しイエスを死人しにんうちよりよみがへらせたまひしもの御靈みたまなんぢらのうち宿やどたまはば、キリスト・イエスを死人しにんうちよりよみがへらせたまひしものは、なんぢらのうち宿やどりたまふ御靈みたまによりてなんぢらのぬべきからだをもいかたまはん。

12 されば兄弟きゃうだいよ、われらは負󠄅債おひめあれど、にく負󠄅ものならねば、にくしたがひてくべきにあらず。 13 なんぢもしにくしたがひてきなば、なん。もしれいによりてからだ行爲おこなひころさばくべし。 14 すべてかみ御靈みたま導󠄃みちびかるるものは、これかみなり。 15 なんぢらはふたゝおそれいだくためにしもべたるれいけしにあらず、とせられたるものれいけたり、これによりてわれらはアバ父󠄃ちちぶなり。 16 御靈みたまみづからわれらのれいとともにわれらがかみたることをあかしす。 17 もしたらば世嗣よつぎたらん、かみ嗣子よつぎにしてキリストととも世嗣よつぎたるなり。これはキリストとともに榮光えいくわうけんために、その苦難くるしみをもともくるにる。

18 われおもうに、いまとき苦難くるしみは、われらのうへあらはれんとする榮光えいくわうにくらぶるにらず。 19 それ造󠄃つくられたるものせつしたひてかみたちのあらはれんことをつ。 20 造󠄃つくられたるものの虛無むなしき服󠄃ふくせしは、おのねがひによるにあらず、服󠄃ふくせしめたまひしものによるなり。 21 れどなほ造󠄃つくられたるものにも滅亡ほろびしもべたるさまよりかれて、かみたちの光榮くわうえい自由じいう望󠄇のぞみのこれり。 22 われらはる、すべて造󠄃つくられたるもののいまいたるまでともなげき、ともにくるしむことを。
 315㌻ 
23 しかのみならず、御靈みたまはじめをもつわれらもみづかこゝろのうちになげきてとせられんこと、すなはちおのがからだあがなはれんことをつなり。 24 われらは望󠄇のぞみによりてすくはれたり、ゆる望󠄇のぞみ望󠄇のぞみにあらず、ひとそのるところをいかでなほ望󠄇のぞまんや。 25 我等われらもしぬところを望󠄇のぞまば、忍󠄄耐にんたいをもてこれたん。
〘229㌻〙
26 かくのごとく御靈みたまわれらの弱󠄃よわきたすけたまふ。われらは如何いかいのるべきかをらざれども、御靈みたまみづからかたなげきをもて執成とりなたまふ。 27 またひとこゝろきはめたまふもの御靈みたまおもひをもりたまふ。御靈みたまかみ御意󠄃みこゝろ適󠄄かなひて聖󠄄徒せいとのために執成とりなたまへばなり。 28 かみあいするもの、すなはち御旨みむねによりてされたるものためには、すべてのことあひはたらきてえきとなるをわれらはる。 29 かみあらかじめりたまふもの御子みこかたちかたどらせんとあらかじめさだたまへり。これおほくの兄弟きゃうだいのうちに、御子みこ嫡子ちゃくしたらせんがためなり。 30 又󠄂またそのあらかじめさだめたるものし、したるものとし、としたるものには光榮くわうえいさせたまふ。

31 ればこれことにつきてなにをかはん、かみもしわれらの味方みかたならば、たれわれらにてきせんや。 32 おのれ御子みこをしまずしてわれすべてのためにわたたまひしものは、などかこれにそへて萬物ばんもつわれらにたまはざらんや。 33 たれかみ選󠄄えらたまへるものうったへん、かみこれとしたまふ。 34 たれこれつみさだめん、にてよみがへりたまひしキリスト・イエスはかみみぎいまして、われらのため執成とりなたまふなり。 35 我等われらをキリストのあいよりはなれしむるものたれぞ、患難なやみか、苦難くるしみか、迫󠄃害󠄅はくがいか、飢󠄄うゑか、はだかか、危險あやふきか、つるぎか。
 316㌻ 
36 しるして 『なんぢのためにわれらは、終󠄃日ひねもすころされて ほふらるべきひつじごときものとられたり』とあるがごとし。 37 れどすべてこれらのことうちにありても、われらをあいしたまふものり、勝󠄃あまりあり。 38 われかたしんず、生命いのちも、御使みつかひも、權威けんゐあるものも、いまあるもののちあらんものも、ちからあるものも、 39 たかきもふかきも、ほか造󠄃つくられたるものも、われらのしゅキリスト・イエスにあるかみあいより、われらをはなれしむるをざることを。

第9章

1 われキリストにりてまことをいひ虛僞いつはりはず、 2 われおほいなるうれひあることとこゝろえざるいたみあることとを良心りゃうしん聖󠄄せいれいによりてあかしす。 3 もし兄弟きゃうだいわが骨肉こつにくためにならんには、われみづからのろはれてキリストにてらるるもまたねがふ所󠄃ところなり。 4 かれはイスラエルびとにして、かれらにはかみとせられたることと、榮光えいくわうと、もろもろの契約けいやくと、さづけられたる律法おきてと、禮拜れいはいと、もろもろの約束やくそくとあり。 5 先祖せんぞたちもかれのものなり、にくによれば、キリストもかれよりたまひたり。《[*]》キリストは萬物ばんもつうへにあり、永遠󠄄とこしへむべきかみなり、アァメン。[*或は「萬物の上に在す神は永遠󠄄に讃むベきかな」と譯す。] 6 それかみことばすたりたるにあらず。イスラエルよりづるものみなイスラエルなるにあらず。〘230㌻〙 7 またかれはアブラハムのすゑなればとてみなそのたるにあらず『イサクよりづるものは、なんぢのすゑとなへらるべし』とあり。 8 すなはにくらはかみらにあらず、ただ約束やくそくのみすゑ認󠄃みとめらるるなり。 9 約束やくそく御言みことばこれなり、いはく『ときふたたび巡󠄃めぐきたらば、われきたりてサラに男子なんしあらん』と。 10 しかのみならず、レベカもわれらの先祖せんぞイサク一人ひとりによりてみごもりたるとき 11 そのいまだうまれず、ぜんあくもなさぬうちに、かみ選󠄄えらび御旨みむねうごかず、 12 行爲おこなひによらでものによらんために『あに次弟おとうとつかふべし』と、レベカにのたまへり。
 317㌻ 
13 『われヤコブをあいしエザウを憎にくめり』としるされたるごとし。

14 らばなにをかはん、かみには不義ふぎあるか。けっしてしからず。 15 モーセにたまふ『われあはれまんとするものをあはれみ、慈悲じひほどこさんとするもの慈悲じひほどこすべし』と。 16 さればほっするものにもらず、はしものにもらず、ただあはれみたまふかみるなり。 17 パロにつきて聖󠄄書せいしょたまふ『わがなんぢ起󠄃おこしたるはためなり、すなは能力ちからなんぢによりてあらはし、かつわが全󠄃世界ぜんせかいつたへられんためなり』と。 18 さればかみはそのあはれまんとほっするものあはれみ、その頑固かたくなにせんとほっするもの頑固かたくなにしたまふなり。

19 らばなんぢあるいはわれはん『かみなんぞなほひととがたまふか、たれかその御定みさだめもとものあらん』 20 ああひとよ、なんぢたれなればかみ逆󠄃さからふか、造󠄃つくられしもの、造󠄃つくりたるものむかひて『なんぢなにわれ造󠄃つくりし』とふべきか。 21 陶工すゑつくりおな土塊つちくれをもてこれたふときにもちふるうつはとし、かれいやしきにもちふるうつはとするのけんなからんや。 22 もしかみいかりをあらはし權力ちからしめさんとおぼしつつも、なほおほいなる寛容くわんようをもて、滅亡ほろびそなはれるいかりうつは忍󠄄しのび、 23 また光榮くわうえいのためにあらかじめそなたまひし憐憫あはれみうつはむかひて、その榮光えいくわうとみしめさんとしたまひしならば如何いかに。 24 この憐憫あはれみうつは我等われらにしてユダヤびとうちよりのみならず、異邦人いはうじんうちよりもたまひしものなり。 25 ホゼヤのふみに 『われわがたみたらざるものたみび、 あいせられざるものあいせらるるものばん、 26 「なんぢらたみにあらず」とひしところにて、 かれらはけるかみばるべし』とのたまへるごとし。
 318㌻ 
27 イザヤもイスラエルにきてさけべり『イスラエルの子孫しそんかずうみすなのごとくなりともすくはるるは、ただのこりもののみならん。〘231㌻〙 28 しゅうへ御言みことばをなしへ、これを遂󠄅げ、これを速󠄃すみやかにしたまはん』 29 また 『萬軍ばんぐんしゅ、われらにすゑ遺󠄃のこたまはずば、 我等われらソドムのごとくになり、ゴモラとひとしかりしならん』とイザヤの預言よげんせしがごとし。 30 らばなにをかはん、追󠄃もとめざりし異邦人いはうじんたり、すなは信仰しんかうによるなり。 31 イスラエルは律法おきて追󠄃もとめたれど、その律法おきていたらざりき。 32 なにゆゑか、かれらは信仰しんかうによらず、行爲おこなひによりて追󠄃おひもとめたるゆゑなり。かれらはつまづいしつまづきたり。 33 しるして 『よ、われつまづくいしさまたぐるいはをシオンにく、 これ依賴よりたのものはづかしめられじ』とあるがごとし。

第10章

1 兄弟きゃうだいよ、わがこゝろのねがひ、かみたいするいのりは、かれらのすくはれんことなり。 2 われかれらがかみのために熱心ねっしんなることをあかしす、されど熱心ねっしん知識ちしきによらざるなり。 3 それはかみらず、おのれてんとして、かみ服󠄃したがはざればなり。 4 キリストはすべしんずるものとせられんため律法おきて終󠄃をはりとなりたまへり。 5 モーセは、律法おきてによるをおこなふひとこれによりてくべしとしるしたり。 6 れど信仰しんかうによるくいふ『なんぢこゝろに「たれてんのぼらん」とふなかれ』と。 7 これキリストを引下ひきおろさんとするなり『また「たれかそこなき所󠄃ところくだらん」とふなかれ』と。これキリストを死人しにんうちより引上ひきあげんとするなり。 8 さらばなにふか『御言みことばは、なんぢに近󠄃ちかし、なんぢのくちにあり、なんぢこゝろにあり』と。これわれらがぶる信仰しんかうことばなり。 9 すなはち、なんぢくちにてイエスをしゅひあらはし、こゝろにてかみこれ死人しにんうちよりよみがへらせたまひしことをしんぜば、すくはるべし。
 319㌻ 
10 それひとこゝろしんじてとせられ、くちひあらはしてすくはるるなり。 11 聖󠄄書せいしょにいふ『すべてかれしんずるものはづかしめられじ』と。 12 ユダヤびととギリシヤびととの區別わかちなし、同一どういつしゅ萬民ばんみんしゅにましまして、すべもとむるものたいしてゆたかなり。 13 『すべてしゅ御名みなもとむるものすくはるべし』とあればなり。 14 れどいましんぜぬものいかもとむることをせん、いまかぬものいかしんずることをせん、宣傳のべつたふるものなくばいかくことをせん。〘232㌻〙 15 遣󠄃つかはされずばいか宣傳のべつたふることをん『ああうるわしきかな、ことぐるものあしよ』としるされたるごとし。

16 れど、みな福音󠄃ふくいんしたがひしにはあらず、イザヤいふ『しゅよ、われらにきたることたれしんぜし』 17 信仰しんかうくにより、くはキリストのことばによる。 18 されどわれいふ、かれきこえざりしか、しからず 『そのこゑ全󠄃地ぜんちにゆきわたり、 ことば世界せかいはてにまでおよべり』 19 われまたふ、イスラエルはらざりしか、づモーセふ『われたみならぬものをもてなんぢらにねたみ起󠄃おこさせ、おろかなるたみをもてなんぢらをいからせん』 20 またイザヤはゞからずしてふ 『われもとめざるものに、われ見出みいだされ、 われ尋󠄃たづねざるものわれあらはれたり』 21 さらにイスラエルにきては『われ服󠄃したがはずしてひさからふたみ終󠄃日ひねもすべたり』とへり。

第11章

1 ればわれいふ、かみはそのたみたまひしか。けっしてしからず。われもイスラエルびとにしてアブラハムのすゑベニヤミンのやからものなり。 2 かみはそのあらかじめたまひしたみたまひしにあらず。なんぢらエリヤにきて聖󠄄書せいしょへることをらぬか、かれイスラエルをかみうったへてふ、 3しゅよ、かれらはなんぢ預言者よげんしゃたちをころし、なんぢの祭壇さいだんこぼち、われひとり遺󠄃のこりたるに、またわが生命いのちをももとめんとするなり』と。
 320㌻ 
4 しかるに御答みこたへなにへるか『われバアルにひざかがめぬものしちせんにんがために遺󠄃のこけり』と。 5 かくのごとくいまもなほ恩惠めぐみ選󠄄えらびによりて遺󠄃のこれるものあり。 6 もし恩惠めぐみによるとせば、もはや行爲おこなひによるにあらず。しからずば恩惠めぐみは、もはや恩惠めぐみたらざるべし。 7 らば如何いかに、イスラエルはそのもとむる所󠄃ところず、選󠄄えらばれたるものこれたり、そのほかものにぶくせられたり。 8かみ今日こんにちいたるまでかれらにねむれるこゝろえぬきこえぬみゝあたたまへり』としるされたるがごとし。 9 ダビデもまたいふ 『かれらの食󠄃卓しょくたくわなとなれ、あみとなれ、 躓物つまづきとなれ、むくいとなれ、 10 そのくらみてえずなれ、 つねにそのかゞめしめたまへ』 11 ればわれいふ、かれらのつまづきしはたふれんがためなりや。けっしてしからず、かへつて落度おちどによりてすくひ異邦人いはうじんおよべり、これイスラエルをはげまさんためなり。 12 もしかれらの落度おちどとみとなり、その衰微おとろへ異邦人いはうじんとみとなりたらんには、ましかれらのかず滿つるにおいてをや。
〘233㌻〙
13 われ異邦人いはうじんなるなんぢにいふ、われ異邦人いはうじん使徒しとたるによりておのつとめおもんず。 14 これあるひ骨肉こつにくものはげまし、そのうち幾許いくばくかをすくはんためなり。 15 もしかれらのてらるること平󠄃和へいわとなりたらんには、納󠄃れらるるは、死人しにんうちよりくるとひとしからずや。 16 もし初穗はつほこな潔󠄄きよくば、パンの團塊かたまり潔󠄄きよく、潔󠄄きよくば、そのえだ潔󠄄きよからん。 17 しオリブの幾許いくばくえだきりおとされて、のオリブなるなんぢそのうちがれ、ともにその液汁うるほひあるあづからば、 18 かのえだむかひてほこるな、たとひほこるともなんぢさゝへず、かへつてなんぢさゝふるなり。 19 なんぢあるひはん『えだられしはがれんためなり』と。
 321㌻ 
20 しかり、かれらはしんによりてられ、なんぢ信仰しんかうによりててるなり、たかぶりたるおもひをもたず、かへつておそれよ。 21 もしかみもとえだをしたまはざりしならば、なんぢをもをしたまはじ。 22 かみ仁慈なさけと、その嚴肅きびしきとをよ。嚴肅きびしきたふれしものにあり、仁慈なさけはその仁慈なさけとゞまなんぢにあり、しその仁慈なさけとゞまらずば、なんぢらるべし。 23 かれらもしんとゞまらずば、がるることあらん、かみふたゝかれらを得給えたまふなり。 24 なんぢ生來せいらいのオリブよりられ、その生來せいらいもとりてきオリブにがれたらんには、ましもとのままなるえだおのがオリブにがれざらんや。

25 兄弟きゃうだいよ、われなんぢらが自己みづからさとしとすることなからんために、この奧義おくぎらざるをほっせず、すなは幾許いくばくのイスラエルのにぶくなれるは、異邦人いはうじんきたりてかず滿つるにおよときまでなり。 26 かくしてイスラエルはことごとくすくはれん。しるして 『すくものシオンよりきたりて、 ヤコブより不虔ふけんのぞかん、 27 われそのつみのぞくときにかれらにつる契約けいやくこれなり』とあるがごとし。 28 福音󠄃ふくいんにつきてへば、なんぢのためにかれらはてきとせられ、選󠄄えらびにつきてへば、先祖せんぞたちのためかれらはあいせらるるなり。 29 それかみ賜物たまものめしとはかはることなし。 30 なんぢ前󠄃さきにはかみしたがはざりしが、いまかれらの不順ふじゅんによりてあはれまれたるごとく、 31 かれらもなんぢらのくる憐憫あはれみによりてあはれまれんためいましたがはざるなり。 32 かみすべてのひとあはれまんためにすべてのひと不順ふじゅんうち取籠とりこたまひたり。〘234㌻〙 33 ああかみ智慧󠄄ちゑ知識ちしきとのとみふかいかな、その審判󠄄さばきはかがたく、その途󠄃みち尋󠄃たづかたし。 34 『たれかしゅこゝろりし、たれかその議士はかりびととなりし。 35 たれかしゅあたへてむくいけんや』
 322㌻ 
36 これすべてのものかみよりかみによりてり、かみすればなり、榮光えいくわうとこしへにかみにあれ。アァメン。

第12章

1 されば兄弟きゃうだいよ、われかみのもろもろの慈悲じひによりてなんぢらにすゝむ、おのかみよろこびたまふ潔󠄄きよける供物そなへものとしてさゝげよ、これれいまつりなり。 2 又󠄂またこのならふな、かみ御意󠄃みこゝろぜんにしてよろこぶべく、かつ全󠄃まったきことをわきまらんためにこゝろへてあらたにせよ。

3 われあたへられし恩惠めぐみによりて、なんぢおのおのにぐ、おもふべき所󠄃ところえて自己みづからたかしとすな。かみのおのおのに分󠄃わかたまひし信仰しんかうはかりにしたがひつゝしみておもふべし。 4 ひとひとからだにおほくのえだあれども、すべてのえだその運󠄃用はたらきおなじうせぬごとく、 5 われらもおほくあれど、キリストにりてひとからだにして各人おのおのたがひにえだたるなり。 6 われらがてる賜物たまものはおのおのあたへられし恩惠めぐみによりてことなるゆゑに、あるひ預言よげんあらば信仰しんかうはかりにしたがひて預言よげんをなし、 7 あるひつとめあらばつとめをなし、あるひをしへをなすものをしへをなし、 8 あるひすゝめをなすものすゝめをなし、ほどこものはをしみなくほどこし、をさむるものこゝろつくしてをさめ、憐憫あはれみをなすものよろこびて憐憫あはれみをなすべし。 9 あいには虛僞いつはりあらざれ、あくはにくみ、ぜんはしたしみ、 10 兄弟きゃうだいあいをもてたがひいつくしみ、禮儀れいぎをもてあひゆずり、 11 つとめておこたらず、こゝろあつくし、しゅにつかへ、 12 望󠄇のぞみてよろこび、患難なやみにたへ、いのりつねにし、 13 聖󠄄徒せいと缺乏とぼしきにぎはし、旅人たびびとねんごろにもてなせ、 14 なんぢらをむるものしくし、これをしくしてのろふな。
 323㌻ 
15 よろこものともによろこび、ものともになけ。 16 あひたがひこゝろおなじうし、たかぶりたるおもひをなさず、かへつてひくきにけ。なんぢらおのれさとしとな。 17 あくをもてあくむくいず、すべてのひとのまへにからんことをはかり、 18 なんぢらのるかぎりつとめてすべてのひとあひやはらげ。 19 あいするものよ、みづか復讐ふくしうすな、ただ《[*]》かみいかりまかせまつれ。しるして『しゅいひたまふ、復讐ふくしうするはわれにありわれこれにむくいん』とあり。[*或は「その怒るに任せよ」と譯す。] 20 『もしなんぢあた飢󠄄ゑなばこれ食󠄃はせ、かわかばこれませよ、なんぢかくするはあつかれかうべむなり』 21 あく勝󠄃たるることなく、ぜんをもてあく勝󠄃て。〘235㌻〙

第13章

1 すべてのひとうへにある權威けんゐ服󠄃したがふべし。そはかみによらぬ權威けんゐなく、あらゆる權威けんゐかみによりててらる。 2 このゆゑ權威けんゐにさからふものかみさだめもとるなり、もとものみづからその審判󠄄さばきまねかん。 3 をさたるものわざおそれにあらず、しきわざおそれなり、なんぢ權威けんゐおそれざらんとするか、ぜんをなせ、らばかれよりほまれん。 4 かれはなんぢえきせんためのかみ役者えきしゃなり。れどあくをなさばおそれよ、かれいたづらにつるぎをおびず、かみ役者えきしゃにしてあくをなすものいかりをもてむくゆるなり。 5 れば服󠄃したがはざるべからず、たゞいかりためのみならず、良心りゃうしんのためなり。 6 またこれがためになんぢみつぎ納󠄃をさむ、かれらはかみ仕人つかへびとにしてつとめはげむなり。 7 なんぢその負󠄅債おひめをおのおのにつくのへ、みつぎくべきものみつぎををさめ、ぜいくべきものぜいををさめ、おそるべきものをおそれ、尊󠄅たふとぶべきものをたふとべ。

8 なんぢたがひにあい負󠄅ふのほかなにをもひと負󠄅ふな。ひとあいするもの律法おきて全󠄃まったうするなり。 9 それ『姦淫かんいんするなかれ、ころすなかれ、ぬすむなかれ、むさぼるなかれ』とへるこのほかなほ誡命いましめありとも『おのれのごととなりあいすべし』といふことばうちにみなこもるなり。
 324㌻ 
10 あいとなり害󠄅そこなはず、このゆゑあい律法おきて完全󠄃まったきなり。

11 なんぢらときゆゑに、いよいよしかなすべし。いまねむりよりむべきときなり。はじめてしんぜしときよりもいまわれらのすくひ近󠄃ちかければなり。 12 ふけて近󠄃ちかづきぬ、ればわれ暗󠄃黑くらきわざをすてて光明ひかりよろひるべし。 13 ひるのごとくたゞしくあゆみて宴樂えんらく醉酒すゐしゅに、淫樂いんらく好色かうしょくに、爭鬪あらそひ嫉妬ねたみあゆむべきにあらず。 14 ただなんぢしゅイエス・キリストをよ、にくよくのためにそなへすな。

第14章

1 なんぢら信仰しんかう弱󠄃よわものれよ、そのおもふところをなじるな。 2 あるひとすべてのもの食󠄃くらふをしとしんじ、弱󠄃よわひとはただ野菜やさい食󠄃くらふ。 3 食󠄃くらもの食󠄃くらはぬものなみすべからず、食󠄃くらはぬもの食󠄃くらものさばくべからず、かみかれたまへばなり。 4 なんぢ如何いかなるものなれば、他人たにんしもべさばくか、かれつもたふるるも主人しゅじんれり。かれかならてられん、しゅこれたせたまふべし。 5 あるひと勝󠄃まさるとおもひ、あるひとすべてのひとしとおもふ、各人おのおのおのがこゝろうちかたさだむべし。 6 おもんずるものしゅのためにこれおもんず。食󠄃くらものしゅのために食󠄃くらふ、これかみ感謝かんしゃすればなり。食󠄃くらはぬものしゅのために食󠄃くらはず、かつかみ感謝かんしゃするなり。〘236㌻〙 7 我等われらのうちおのれのためにけるものなく、おのれのためにぬるものなし。 8 われらくるもしゅのためにき、ぬるもしゅのためにぬ。ればくるもぬるもわれらはしゅものなり。 9 それキリストのにてまたたまひしは、にたるものけるものとのしゅとならんためなり。 10 なんぢなにぞその兄弟きゃうだいさばくか、なんぢなんぞ兄弟きゃうだいなみするか、我等われらはみなかみ審判󠄄さばき前󠄃まへつべし。
 325㌻ 
11 しるして 『しゅいひたまふ、われくるなり、 すべてのひざは、わが前󠄃まへかゞみ、 すべてのしたは、かみほめたゝへん』とあり。 12 我等われらおのおのかみのまへにおのれことぶべし。

13 ればいまよりのち、われらたがひさばくべからず、むし兄弟きゃうだいのまへに妨碍さまたげまたは躓物つまづきかぬようにこゝろさだめよ。 14 われ如何いかなるものみづか潔󠄄きよからぬことなきをしゅイエスにりてり、かつかたしんず。ただ潔󠄄きよからずとおもひとにのみ潔󠄄きよからぬなり。 15 もし食󠄃物しょくもつによりて兄弟きゃうだいうれひしめば、なんぢあいによりてあゆまざるなり、キリストのかわりてたまひしひとなんぢ食󠄃物しょくもつによりてほろぼすな。 16 なんぢらのきことのそしられぬやうによ。 17 それかみくに飮食󠄃いんしょくにあらず、平󠄃和へいわ聖󠄄せいれいによれる歡喜よろこびとにるなり。 18 かくしてキリストにつかふるものかみよろこばれ、人々ひとびとしとらるるなり。 19 ればわれ平󠄃和へいわのこととたがひとくつることとを追󠄃おひもとむべし。 20 なんぢ食󠄃物しょくもつのためにかみ御業みわざこぼつな。すべてのもの潔󠄄きよし、されどこれ食󠄃くらひてひとつまづかするものにはあくとならん。 21 にく食󠄃くらはず、葡萄酒ぶだうしゅまず、そのほかなんぢの兄弟きゃうだいつまづかすることをせぬはし。 22 なんぢのてる信仰しんかうおのれみづからかみ前󠄃まへたもて。しとする所󠄃ところにつきてみづかとがめなきもの幸福さいはひなり。 23 うたがひつつ食󠄃くらものつみせらる。これ信仰しんかうによらぬゆゑなり、すべ信仰しんかうによらぬことつみなり。

第15章

1 われらつよものはおのれをよろこばせずして、ちからなきもの弱󠄃よわき負󠄅ふべし。 2 おのおのとなりひととくてんために、そのえきはかりて、これよろこばすべし。 3 キリストだにおのれよろこばせたまはざりき。しるして『なんぢをそしものそしりわれおよべり』とあるがごとし。
 326㌻ 
4 はやくよりしるされたる所󠄃ところは、みなわれらの敎訓をしへのためにしるししものにして聖󠄄書せいしょ忍󠄄耐にんたい慰安なぐさめとによりて希望󠄇のぞみたもたせんとてなり。 5 ねがはくは忍󠄄耐にんたい慰安なぐさめとのかみ、なんぢらをしてキリスト・イエスにならひ、たがひおもひおなじうせしめたまはんことを。〘237㌻〙 6 これなんぢらがこゝろひとつにしくちひとつにしてわれらのしゅイエス・キリストの父󠄃ちちなるかみあがめんためなり。

7 ゆゑにキリストなんぢらをたまひしごとく、なんぢらもたがひあひれてかみ榮光えいくわうあらはすべし。 8 われふ、キリストはかみ眞理まことのために割󠄅禮かつれい役者えきしゃとなりたまへり。これ先祖せんぞたちのかうむりし約束やくそくかたうしたまはんため 9 また異邦人いはうじん憐憫あはれみによりてかみあがめんためなり。しるして 『このゆゑに、われ異邦人いはうじんうちにてなんぢめたたへ、 又󠄂またなんぢのうたはん』とあるがごとし。 10 またいはく 『異邦人いはうじんよ、しゅたみとともによろこべ』 11 又󠄂またいはく 『もろもろの國人くにびとよ、しゅまつれ、 もろもろのたみよ、しゅたゝまつれ』 12 又󠄂またイザヤふ 『エツサイの萌薛ひこばえしゃうじ、 異邦人いはうじんをさむるものおこらん。 異邦人いはうじんかれ望󠄇のぞみをおかん』 13 ねがはくは希望󠄇のぞみかみ信仰しんかうよりづるすべての喜悅よろこび平󠄃安へいあんとをなんぢらに滿たしめ、聖󠄄せいれい能力ちからによりて希望󠄇のぞみゆたかならしめたまはんことを。

14 わが兄弟きゃうだいよ、われはなんぢらがみづかぜん滿ち、もろもろの知識ちしき滿ちてたがひ訓戒くんかいることをかたしんず。 15 れどわれなほなんぢらにおもいださせんために、ここかしこすこしくはゞからずしてきたる所󠄃ところあり、これかみわれたまひたる恩惠めぐみる。 16 すなは異邦人いはうじんのためにキリスト・イエスの仕人つかへびととなり、かみ福音󠄃ふくいんにつきて祭司さいしつとめをなす。これ異邦人いはうじん聖󠄄せいれいによりて潔󠄄きよめられ、御心みこゝろ適󠄄かな獻物さゝげものとならんためなり。 17 れば、われかみことにつきては、キリスト・イエスによりてほこ所󠄃ところあり。
 327㌻ 
18 われはキリストの異邦人いはうじん服󠄃したがはせんためわれもちひてことばわざと、 19 またしるし不思議ふしぎとの能力ちから、および聖󠄄せいれい能力ちからにてはたらたまひしことのほかはあへかたらず、エルサレムよりイルリコの地方ちはういたるまであまねくキリストの福音󠄃ふくいんたせり。 20 われつとめて他人たにんゑたる基礎もといのうへにてじとていまだキリストの御名みなとなへられぬ所󠄃ところにのみ福音󠄃ふくいん宣傅のべつたへたり。 21 しるして 『いまかれのことをつたへられざりしもの、 いまだかざりしものさとるべし』とあるがごとし。
〘238㌻〙
22 このゆゑに、われなんぢらにかんとしが、しばしばさまたげられたり。 23 れどいま地方ちはうはたらくべきところなく、かつなんぢらにかんことを多年たねんせつ望󠄇のぞみゐたれば、 24 イスパニヤにおもむかんとき立寄たちよりてなんぢらを、ほぼ意󠄃こゝろ滿つるをてのちなんぢらに送󠄃おくられんとを望󠄇のぞむなり。 25 されどいま聖󠄄徒せいとつかへんためにエルサレムにかんとす。 26 マケドニアとアカヤとの人々ひとびとはエルサレムに聖󠄄徒せいと貧󠄃まづしきもの幾許いくばくかの施與ほどこしをするをしとせり。 27 これしとせり、また聖󠄄徒せいとたいしてかくする負󠄅債おひめあり。異邦人いはうじんもしかれらのれいものあづかりたらんには、にくものをもてかれらにつかふべきなり。 28 さればことへ、このわたしてのち、なんぢらをてイスパニヤにかん。 29 われなんぢらにいたるときは、キリストの滿れる祝福しくふくをもていたらんことをる。

30 兄弟きゃうだいよ、われらのしゅイエス・キリストにより、また御靈みたまあいによりてなんぢらにすゝむ、なんぢらのいのりのうちに、われとともにちからつくしてがためにかみいのれ。 31 これユダヤにをるしたがはぬものうちよりすくはれ、又󠄂またエルサレムにたいするつとめ聖󠄄徒せいとこゝろ適󠄄かなひ、
 328㌻ 
32 かつかみ御意󠄃みこゝろにより、歡喜よろこびをもてなんぢにいたり、ともやすんぜんためなり。 33 ねがはくは平󠄃和へいわかみなんぢらすべてともいまさんことを、アァメン。

第16章

1 われケンクレヤの敎會けうくわい執事しつじなるわれらの姉妹しまいフィベをなんぢらにすゝむ。 2 なんぢらしゅりて聖󠄄徒せいとたるに相應ふさはしく、かれれ、なににても要󠄃えうする所󠄃ところたすけよ、かれはやくよりおほくのひと保護者ほごしゃまた保護者ほごしゃたり。

3 プリスカとアクラとに安否あんぴへ、かれらはキリスト・イエスに同勞者どうらうしゃにして、 4 わが生命いのちのためにおのれくびをもをしまざりき。かれらに感謝かんしゃするは、ただわれのみならず、異邦人いはうじんしょ敎會けうくわいもまたしかり。 5 又󠄂またそのいへにある敎會けうくわいにも安否あんぴへ。又󠄂またわがあいするエパネトに安否あんぴへ。かれはアジヤにてむすべるキリストのはじめなり。 6 なんぢのためにいたらうせしマリヤに安否あんぴへ。 7 われとともに囚人めしうどたりし同族どうぞくアンデロニコとユニアスとに安否あんぴへ、かれらは使徒しとたちのうち名聲きこえあり、かつわれさきだちてキリストにせしものなり。 8 しゅにありてあいするアンプリヤに安否あんぴへ。 9 キリストにあるわれらの同勞者どうらうしゃウルパノとあいするスタキスとに安否あんぴへ。 10 キリストにりて鍊達󠄃れんたつせるアペレに安否あんぴへ。アリストブロのいへもの安否あんぴへ。〘239㌻〙 11 わが同族どうぞくヘロデオンに安否あんぴへ。ナルキソのいへなるしゅもの安否あんぴへ。 12 しゅりてらうせしツルパナとツルポサとに安否あんぴへ。しゅりていたらうせしあいするペルシスに安否あんぴへ。 13 しゅりて選󠄄えらばれたるルポスとはゝとに安否あんぴへ、かれははわれにもまたははなり。 14 アスンクリト、フレゴン、ヘルメス、パトロバ、ヘルマスおよかれらととも兄弟きゃうだいたちに安否あんぴへ。
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15 ピロロゴおよびユリヤ、ネレオおよびその姉妹しまい、またオルンパおよかれらとともすべての聖󠄄徒せいと安否あんぴへ。 16 潔󠄄きよ接吻くちつけをもてたがひ安否あんぴへ。キリストのしょ敎會けうくわいみななんぢらに安否あんぴふ。

17 兄弟きゃうだいよ、われなんぢらにすゝむ、おほよそなんぢらのまなびしをしへそむきて分󠄃離ぶんりしゃうじ、顚躓つまづきをおこすものこゝろしてこれ遠󠄄とほざかれ。 18 かゝものわれらのしゅキリストにつかへず、かへつておのはらつかへ、またあまことば媚諂こびへつらひとをもて質朴しつぼくなるひとこゝろあざむくなり。 19 なんぢらの從順じゅうじゅんすべてのひときこえたれば、われなんぢらのためよろこべり。しかしてほっする所󠄃ところなんぢらがぜんかしこく、あくうとからんことなり。 20 平󠄃和へいわかみ速󠄃すみやかにサタンをなんぢらのあししたくだたまふべし。
   ねがはくはわれらのしゅイエスの恩惠めぐみ、なんぢらとともらんことを。
21 わが同勞者どうらうしゃテモテおよ同族どうぞくルキオ、ヤソン、ソシパテロなんぢらに安否あんぴふ。 22 このふみけるわれテルテオもしゅにありてなんぢらに安否あんぴふ。 23 われ全󠄃ぜん敎會けうくわいとの家主いへあるじガイオなんぢらに安否あんぴふ。まち庫司くらづかさエラストと兄弟きゃうだいクワルトとなんぢらに安否あんぴふ。 24 [なし]《[*]》[*異本二四節に「願くは我らの主イエス・キリストの恩惠汝等すべてと偕にあらん事をアァメン」とありて、二〇節に同義の句を缺く。] 25 ねがはくはながのあひだかくれたれども、 26 いまあらはれて、永遠󠄄とこしへかみめいにしたがひ、預言者よげんしゃたちのふみによりて信仰しんかう從順じゅうじゅんしめんために、もろもろの國人くにびとしめされたる奧義おくぎ默示もくししたがへる福音󠄃ふくいんと、イエス・キリストをぶることとによりて、なんぢらをかたうしる、 27 唯一ゆゐいつかしこかみ榮光えいくわう世々よよかぎりなくイエス・キリストにりてらんことを、アァメン。〘240㌻〙
 330㌻