〘1556㌻〙
第1章
1 ニネベに關る重き預言 エルコシ人ナホムの異象の書
2 ヱホバは妬みかつ仇を報ゆる神 ヱホバは仇を報ゆる者また忿怒の主 ヱホバは己に逆󠄃らふ者に仇を報い己に敵する者にむかひて憤恨を含む者なり
3 ヱホバは怒ることの遲く能力の大なる者 また罰すべき者をば必ず赦すことを爲ざる者 ヱホバの道󠄃は旋風に在り 大風に在り 雲はその足の塵なり
4 彼海を指斥て之を乾かし河々をしてことごとく涸しむ バシヤンおよびカルメルの草木は枯れレバノンの花は凋む
5 彼の前󠄃には山々ゆるぎ嶺々溶く 彼の前󠄃には地墳上り世界およびその中に住󠄃む者皆ふきあげらる
6 誰かその憤恨に當ることを得ん 誰かその燃る忿怒に堪ることを得ん 其震怒のそそぐこと火のごとし 巖も之がために裂く
7 ヱホバは善なる者にして患難の時の要󠄃害󠄅なり 彼は己に倚賴む者を善知たまふ
8 彼みなぎる洪水をもてその處を全󠄃く滅し己に敵する者を幽暗󠄃處に逐󠄃やりたまはん
9 汝らヱホバに對ひて何を謀るや 彼全󠄃く滅したまふべし 患難かさねて起󠄃らじ
10 彼等むすびからまれる荊棘のごとくなるとも酒に浸りをるとも乾ける藁のごとくに焚つくさるべし
11 ヱホバに對ひて惡事を謀る者一人汝の中より出て邪曲なる事を勸む
12 ヱホバかく言たまふ 彼等全󠄃くしてその數夥多しかるとも必ず芟たふされて皆絕ん 我前󠄃にはなんぢを苦めたれども重て汝を苦めじ
13 いま我かれが汝に負󠄅せし軛を碎き汝の縛を切はなすべし
1556㌻
14 ヱホバ汝の事につきて命令を下す 汝の名を負󠄅ふ者再び播るること有じ 汝の神々の室より我雕像および鑄像を除き絕べし 我汝の墓を備へん 汝輕ければなり
15 嘉音󠄃信を傳ふる者の脚山の上に見ゆ 彼平󠄃安を宣ぶ ユダよ汝の節󠄄筵を行ひ汝の誓願を果せ 邪曲なる者重て汝の中を通󠄃らざるべし 彼は全󠄃く絕る
第2章
1 擊破者攻のぼりて汝の前󠄃に至る 汝城を守り路を窺ひ腰を强くし汝の力を大に强くせよ
2 ヱホバはヤコブの榮を舊に復してイスラエルの榮のごとくしたまふ 其は掠奪者これを掠めその葡萄蔓を壞ひたればなり
3 その勇士は楯を紅にしその軍兵は紅に身を甲ふ 其行伍を立つる時には戰車の鐵灼燦て火のごとし 鎗また閃めきふるふ〘1191㌻〙
4 戰車街衢に狂ひ奔り大路に推あふ 其形狀火炬のごとく其疾く馳すること電光の如し
5 彼その將士を憶ひいだす 彼らはその途󠄃にて躓き仆れその石垣に奔ゆき大楯を備ふ
6 河々の門啓け宮消󠄃うせん
7 この事定まれり 彼は裸にせられて擄はれゆきその宮女胸を打て鴿のごとくに啼くべし
8 ニネベはその建し日より以來水の滿る池に似たりしがその民今は逃󠄄奔る 止れ止れと呼ども後を顧󠄃みる者なし
9 白銀を奪へよ 黄金を奪へよ その寳物限なく諸の貴とき噐用夥多し
10 滅亡たり 空󠄃虛なれり 荒果たり 心は消󠄃え膝は慄ひ腰には凡て劇しき痛あり 面はみな色を失ふ
11 獅子の穴󠄄は何處ぞや 少き獅子の物を食󠄃ふ處は何處ぞや 雄獅子雌獅子その小獅子とともに彼處に步むに之を懼れしむる者なし
12 雄獅子は小獅子のために物を噛ころし雌獅子の爲に物をくびり殺しその掠獲たる物をもて穴󠄄に充しその裂殺しし物をもて住󠄃所󠄃に滿す
13 萬軍のヱホバ言たまふ 視よ我なんぢに臨む 我なんぢの戰車を焚て烟となすべし 汝の少き獅子はみな劍の殺す所󠄃とならん 我また汝の獲物を地より絕べし 汝の使者の聲かさねて聞ゆること無らん
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第3章
1 禍なるかな血を流す邑 その中には全󠄃く詭譎および暴行充ち掠め取ること息まず
2 鞭の音󠄃あり輪の轟く音󠄃あり 馬は躍󠄃り跳ね車は輾り行く
3 騎兵馳のぼり劍きらめき鎗ひらめく 殺さるる者夥多しくして死屍山を爲し死骸限なし 皆死屍に躓きて倒る
4 是はかの魔󠄃術の主なる美しき妓女多く淫行を行ひその淫行をもて諸國を奪ひその魔󠄃術をもて諸族を惑したるに因てなり
5 萬軍のヱホバ言たまふ 視よ我なんぢに臨む 我なんぢの裳裾を掲げて面の上にまで及ぼし汝の陰所󠄃を諸民に見し汝の羞る所󠄃を諸國に見すべし
6 我また穢はしき物を汝の上に投かけて汝を辱しめ汝をして賽物とならしめん
7 凡て汝を見る者はみな汝を避󠄃て奔り去りニネベは亡びたりと言ん 誰か汝のために哀かんや 何處よりして我なんぢを弔ふ者を尋󠄃ね得んや
8 汝あにノアモンに愈らんや ノアモンは河々の間に立ち水をその周󠄃圍に環らし海をもて壕となし海をもて垣となせり
9 かつその勢力たる者はエテオピア人およびエジプト人などにして限あらず フテ人ルビ人等汝を助けたりき〘1192㌻〙
10 然るに是も俘囚となりて擄はれてゆきその子女は一切の衢の隅々にて投付られて碎け又󠄂その尊󠄅貴者は籤にて分󠄃たれ其大なる者はみな鏈に繋がれたり
11 汝もまた醉せられて終󠄃に隱匿ん 汝もまた敵を避󠄃て逃󠄄るる處を尋󠄃ね求めん
12 汝の城々はみな初に結びし果のなれる無花果樹のごとし 之を撼がせばその果落て食󠄃はんとする者の口にいる
13 汝の中にある民は婦󠄃人のごとし 汝の地の門はみな汝の敵の前󠄃に廣く開きてあり 火なんぢの關を焚ん
1558㌻
14 汝水を汲て圍まるる時の用に備へ汝の城々を堅くし泥の中に入て踐て石灰󠄃を作りかつ瓦燒窰を修理へよ
15 其處にて火汝を燒き劍なんぢを斬ん 其なんぢを滅すこと吸蝗のごとくなるべし 汝吸蝗のごとく數多からば多かれ 汝群蝗のごとく數多からば多かれ
16 汝はおのれの商賣を空󠄃の星よりも多くせり 吸蝗掠めて飛さる
17 汝の重臣は群蝗のごとく汝の軍長は蝗の群のごとし 寒き日には垣に巢窟を構へ日出きたれば飛て去る その在る處を知る者なし
18 アッスリヤの王よ汝の牧者は睡り汝の貴族は臥す 又󠄂なんぢの民は山々に散さる 之を聚むる者なし
19 汝の傷は愈ること無し 汝の創は重し 汝の事を聞およぶ者はみな汝の故によりて手を拍ん 誰か汝の惡行を恒に身に受ざる者やある〘1193㌻〙
1559㌻