〘1378㌻〙
第1章
1 ああ哀しいかな古昔は人のみちみちたりし此都邑 いまは凄しき樣にて坐し 寡婦󠄃のごとくになれり 嗟もろもろの民の中にて大いなりし者 もろもろの州の中に女王たりし者 いまはかへつて貢をいるる者となりぬ
2 彼よもすがら痛く泣きかなしみて淚面にながる その戀人の中にはこれを慰むる者ひとりだに無く その朋これに背きてその仇となれり
3 ユダは艱難の故によりまた大いなる苦役のゆゑによりて擄はれゆき もろもろの國に住󠄃ひて安息を得ず これを追󠄃ふものみな狹隘にてこれに追󠄃しきぬ
4 シオンの道󠄃路は節󠄄會の上り來る者なきがために哀しみ その門はことごとく荒れ その祭司は歎き その處女は憂へ シオンもまた自から苦しむ
5 その仇は首となり その敵は享ゆ その愆の多きによりてヱホバこれをなやませたまへるなり そのわかき子等は擄はれて仇の前󠄃にゆけり
6 シオンの女よりはその榮華ことごとく離れされり またその牧伯等は草を得ざる鹿のごとくに成り おのれを追󠄃ふものの前󠄃に力つかれて步みゆけり
7 ヱルサレムはその艱難と窘迫󠄃の時むかしの代にありしもろもろの樂しき物を思ひ出づ その民仇の手におちいり誰もこれを助くるものなき時 仇人これを見てその荒はてたるを笑ふ
8 ヱルサレムははなはだしく罪ををかしたれば汚穢たる者のごとくになれり 前󠄃にこれを尊󠄅とびたる者もその裸體を見しによりて皆これをいやしむ 是もまたみづから嗟き身をそむけて退󠄃ぞけり
9 その汚穢これが裾にあり 彼その終󠄃局をおもはざりき 此故に驚ろくまでに零落たり 一人の慰さむる者だに無し ヱホバよわが艱難をかへりみたまへ 敵は勝󠄃ほこれり
10 敵すでに手を伸てその財寳をことごとく奪ひたり 汝さきに異邦人等はなんぢの公會にいるべからずと命じおきたまひしに 彼らが聖󠄄所󠄃を侵しいるをシオンは見たり
1378㌻
11 その民はみな哀きて食󠄃物をもとめ その生命を支へんがために財寳を出して食󠄃にかへたり ヱホバよ見そなはし我のいやしめらるるを顧󠄃りみたまへ
12 すべて行路人よ なんぢら何ともおもはざるか ヱホバその烈しき震怒の日に我をなやましてわれに降したまへるこの憂苦にひとしき憂苦また世にあるべきや考がへ見よ
13 ヱホバ上より火をくだしわが骨にいれて之を克服󠄃せしめ 網を張りわが足をとらへて我を後にむかしめ 我をして終󠄃日心さびしくかつ疾わづらはしめたまふ〘1056㌻〙
14 わが愆尤の軛は主の御手にて結ばれ諸の愆あひ纒はりてわが項にのれり 是はわが力をしておとろへしむ 主われを敵たりがたき者の手にわたしたまへり
15 主われの中なる勇士をことごとく除き 節󠄄會をもよほして我を攻め わが少き人を打ほろぼしたまへり 主酒榨をふむがごとくにユダの處女をふみたまへり
16 これがために我なげく わが目やわが目には水ながる わがたましひを活すべき慰さむるものわれに遠󠄄ければなり わが子等は敵の勝󠄃るによりて滅びうせにき
17 シオンは手をのぶれども誰もこれを慰さむる者なし ヤコブにつきてはヱホバ命をくだしてその周󠄃圍の民をこれが敵とならしめたまふ ヱルサレムは彼らの中にありて汚れたる者のごとくなりぬ
18 ヱホバは正し 我その命令にそむきたるなり 一切の民よわれに聽け わが憂苦をかへりみよ わが處女もわかき男も俘囚て徃り
19 われわが戀人を呼たれども彼らはわれを欺むけり わが祭司およびわが長老は生命を繋がんとて食󠄃物を求むる間に都邑の中にて氣息たえたり
20 ヱホバよかへりみたまへ 我はなやみてをり わが膓わきかへり わが心わが衷に顚倒す 我甚しく悖りたればなり 外には劍ありてわが子を殺し 內には死のごとき者あり
1379㌻
21 かれらはわが嗟歎をきけり 我をなぐさむるもの一人だに无し わが敵みなわが艱難をききおよび 汝のこれを爲たまひしを喜こべり 汝はさきに吿しらせしその日を來らせたまはん 而して彼らもつひに我ごとくに成るべし
22 ねがはくは彼等が與へし艱難をことごとくなんぢの御前󠄃にあらはし 前󠄃にわがもろもろの罪愆のために我におこなひし如く彼らにも行ひたまへ わが嗟歎は多くわが心はうれひかなしむなり
第2章
1 ああヱホバ震怒をおこし 黑雲をもてシオンの女を蔽ひたまひ イスラエルの榮光を天より地におとし その震怒の日に己の足凳を心にとめたまはざりき
2 主ヤコブのすべての住󠄃居を呑つくしてあはれまず 震怒によりてユダの女の保砦を毀ち これを地にたふし その國とその牧伯等を辱かしめ
3 烈しき震怒をもてイスラエルのすべての角を絕ち 敵の前󠄃にて己の右の手をひきちぢめ 四面を焚きつくす燃る火のごとくヤコブを焚き
4 敵のごとく弓を張り 仇のごとく右の手を挺て立ち 凡て目に喜こばしきものを滅し シオンの女の幕屋に火のごとくその怒をそそぎたまへり
5 主敵のごとくに成たまひてイスラエルを呑ほろぼし その諸の殿を呑ほろぼし そのもろもろの保砦をこぼち ユダの女の上に憂愁と悲哀を增くはへ〘1057㌻〙
6 園のごとく己の幕屋を荒し その集會の所󠄃をほろぼしたまへり ヱホバ節󠄄會と安息日とをシオンに忘れしめ 烈しき怒によりて王と祭司とをいやしめ棄たまへり
7 主その祭壇を忌棄て その聖󠄄所󠄃を嫌󠄃ひ憎みて その諸の殿の石垣を敵の手にわたしたまへり 彼らは節󠄄會の日のごとくヱホバの室にて聲をたつ
8 ヱホバ、シオンの女の石垣を毀たんと思ひさだめ 繩を張り こぼち進󠄃みてその手をひかず 壕と石垣とをして哀しましめたまふ 是らは共に憂ふ
1380㌻
9 その門は地に埋もれ ヱホバその關木をこぼちくだき その王ともろもろの牧伯は律法なき國人の中にあり その預言者はヱホバより異象を蒙らず
10 シオンの女の長老等は地に坐りて默し 首に灰󠄃をかむり 身に麻󠄃をまとふ ヱルサレムの處女は首を地に低る
11 わが目は淚の爲に潰れんとし わが膓は沸かへり わが肝は地に塗る わが民の女ほろぼされ 幼少ものや乳󠄃哺子は疲れはてて邑の街衢に氣息たへなんとすればなり
12 かれらは疵を負󠄅る者の如く邑のちまたにて氣息たえなんとし 母の懷にその靈魂をそそがんとし 母にむかひて言ふ 穀物と酒とはいづくにあるやと
13 ヱルサレムの女よ 我なにをもて汝にあかしし 何をもて汝にならべんや シオンの處女よ われ何をもて汝になぞらへて汝をなぐさめんや 汝のやぶれは海のごとく大なり 嗟たれか能く汝を醫さんや
14 なんぢの預言者は虛しき事と愚なることとなんぢに預言し かつて汝の不義をあらはしてその俘囚をまぬかれしめんとはせざりき その預言するところは唯むなしき重荷および追󠄃放たるる根本となるべき事のみ
15 すべて徃來の人なんぢにむかひて手を拍ち ヱルサレムの女にむかひて嘲りわらひ かつ頭をふりて言ふ 美麗の極全󠄃地の欣喜ととなへたりし邑は是なるかと
16 なんぢのもろもろの敵はなんぢに對ひて口を開け あざけり笑ひて切齒をなす 斯て言ふわれら之を呑つくしたり 是われらが望󠄇みたりし日なり 我ら已に之にあへり 我らすでに之を見たりと
17 ヱホバはその定めたまへることを成し いにしへより其命じたまひし言を果したまへり ヱホバはほろぼして憐れまず 敵をして汝にかちほこらしめ汝の仇の角をたかくしたまへり
18 かれらの心は主にむかひて呼はれり シオンの女の墻垣よ なんぢ夜も晝も河の如く淚をながせ みづから安んずることをせず 汝の瞳子を休むることなかれ〘1058㌻〙
1381㌻
19 なんぢ夜の初更に起󠄃いでて呼さけべ 主の御前󠄃に汝の心を水のごとく灌げ 街衢のほとりに饑たふるるなんぢの幼兒の生命のために主にむかひて兩手をあげよ
20 ヱホバよ視たまへ 汝これを誰におこなひしか 願はくは顧󠄃みたまへ 婦󠄃人おのが實なるその懷き育てし孩兒を食󠄃ふべけんや 祭司預言者等主の聖󠄄所󠄃において殺さるべけんや
21 をさなきも老たるも街衢にて地に臥し わが處女も若き男も刄にかかりて斃れたり なんぢはその震怒の日にこれを殺し これを屠りて恤れみたまはざりき
22 なんぢ節󠄄會の日のごとくわが懼るるところの者を四方より呼あつめたまへり ヱホバの震怒の日には遁れたる者なく又󠄂のこりたる者なかりき わが懷き育てし者はみなわが敵のためにほろぼされたり
第3章
1 我はかれの震怒の笞によりて艱難に遭󠄃たる人なり
2 かれは我をひきて黑暗󠄃をあゆませ光明にゆかしめたまはず
3 まことに屢々その手をむけて終󠄃日われを攻なやまし
4 わが肉と肌膚をおとろへしめ わが骨を摧き
5 われにむかひて患苦と艱難を築きこれをもて我を圍み
6 われをして長久に死し者のごとく暗󠄃き處に住󠄃しめ
7 我をかこみて出ること能はざらしめわが鏈索を重くしたまへり
8 我さけびて助をもとめしとき彼わが祈禱をふせぎ
9 斫たる石をもてわが道󠄃を塞ぎわが途󠄃をまげたまへり
10 その我に對することは伏て伺がふ熊のごとく潜みかくるる獅子のごとし
11 われに路を離れしめ 我をひきさきて獨くるしましめ
12 弓を張りてわれを矢先の的となし
13 矢筒の矢をもてわが腰を射ぬきたまへり
14 われはわがすべての民のあざけりとなり 終󠄃日うたひそしらる
1382㌻
15 かれ我をして苦き物に飽󠄄しめ茵蔯を飮しめ
16 小石をもてわが齒を摧き灰󠄃をもて我を蒙ひたまへり
17 なんぢわが靈魂をして平󠄃和を遠󠄄くはなれしめたまへば我は福祉をわすれたり
18 是において我みづから言り わが氣力うせゆきぬ ヱホバより何を望󠄇むべきところ無しと
19 ねがはくは我が艱難と苦楚茵蔯と膽汁とを心に記たまへ
20 わがたましひは今なほ是らの事を想ひてわが衷に鬱ぐ
21 われこの事を心におもひ起󠄃せり この故に望󠄇をいだくなり
22 われらの尙ほろびざるはヱホバの仁愛によりその憐憫の盡ざるに因る
23 これは朝󠄃ごとに新なり なんぢの誠實はおほいなるかな
24 わが靈魂は言ふ ヱホバはわが分󠄃なり このゆゑに我彼を待ち望󠄇まん
25 ヱホバはおのれを待ち望󠄇む者とおのれを尋󠄃ねもとむる人に恩惠をほどこしたまふ〘1059㌻〙
26 ヱホバの救拯をのぞみて靜にこれを待は善し
27 人わかき時に軛を負󠄅は善し
28 ヱホバこれを負󠄅せたまふなれば獨坐して默すべし
29 口を塵につけよ あるひは望󠄇あらん
30 おのれを擊つ者に頬をむけ 充足れるまでに恥辱をうけよ
31 そは主は永久に棄ることを爲たまはざるべければなり
32 かれは患難を與へ給ふといへどもその慈悲おほいなればまた憐憫を加へたまふなり
33 心より世の人をなやましかつ苦しめ給ふにはあらざるなり
34 世のもろもろの俘囚人を脚の下にふみにじり
35 至高者の面の前󠄃にて人の理を抂げ
36 人の詞訟を屈むることは主のよろこび給はざるところなり
37 主の命じたまふにあらずば誰か事を述󠄃んにその事即ち成んや
38 禍も福もともに至高者の口より出るにあらずや
39 活る人なんぞ怨言べけんや 人おのれの罪の罰せらるるをつぶやくべけんや
40 我等みづからの行をしらべかつ省みてヱホバに歸るべし
41 我ら天にいます神にむかひて手とともに心をも擧べし
1383㌻
42 われらは罪ををかし我らは叛きたり なんぢこれを赦したまはざりき
43 なんぢ震怒をもてみづから蔽ひ 我らを追󠄃攻め殺してあはれまず
44 雲をもてみづから蔽ひ 祈禱をして通󠄃ぜざらしめ
45 もろもろの民の中にわれらを塵埃となしたまへり
46 敵は皆われらにむかひて口を張れり
47 恐懼と陷阱また暴行と滅亡我らに來れり
48 わが民の女の滅亡によりてわが眼には淚の河ながる
49 わが目は斷ず淚をそそぎて止ず
50 天よりヱホバの臨み見て顧󠄃みたまふ時にまで至らん
51 わが邑の一切の女等の故によりてわが眼はわが心をいたましむ
52 故なくして我に敵する者ども鳥を追󠄃ごとくにいたく我をおひ
53 わが生命を坑の中にほろぼし わが上に石を投かけ
54 また水わが頭の上に溢󠄃る 我みづから言り滅びうせぬと
55 ヱホバよ われ深き坑の底より汝の名を呼り
56 なんぢ我が聲を聽たまへり わが哀歎と祈求に耳をおほひたまふなかれ
57 わが汝を龥たりし時なんぢは近󠄃よりたまひて恐るるなかれと宣へり
58 主よなんぢはわが靈魂の訴を助け伸べ わが生命を贖ひ給へり
59 ヱホバよ なんぢは我がかうむりたる不義を見たまへり 願はくは我に正しき審判󠄄を與へたまへ
60 なんぢは彼らが我を怨み われを害󠄅せんとはかるを凡て見たまへり
61 ヱホバよなんぢは彼らが我を詈り 我を害󠄅せんとはかるを凡て聞たまへり
62 かの立て我に逆󠄃らふ者等の言語およびその終󠄃日われを攻んとて運󠄃らす謀計もまた汝これを聞たまへり〘1060㌻〙
63 ねがはくは彼らの起󠄃居をかんがみたまへ 我はかれらに歌ひそしらる
64 ヱホバよ なんぢは彼らが手に爲すところに循がひて報をなし
65 かれらをして心くらからしめたまはん なんぢの呪詛かれらに歸せよ
66 なんぢは震怒をもてかれらを追󠄃ひ ヱホバの天の下よりかれらをほろぼし絕たまはん
1384㌻
第4章
1 ああ黄金は光をうしなひ純金は色を變じ 聖󠄄所󠄃の石はもろもろの街衢の口に投すてられたり
2 ああ精金にも比ぶべきシオンの愛子等は陶噐師の手の作なる土の器のごとくに見做る
3 山犬さへも乳󠄃房をたれてその子に乳󠄃を哺す 然るにわが民の女は殘忍󠄄荒野の鴕鳥のごとくなれり
4 乳󠄃哺兒の舌は渇きて上顎にひたと貼き 幼兒はパンをもとむるも擘てあたふる者なし
5 肥甘物をくらひ居りし者はおちぶれて街衢にあり 紅の衣服󠄃にて育てられし者も今は塵堆を抱く
6 今我民の女のうくる愆の罰はソドムの罪の罰よりもおほいなり ソドムは古昔人に手を加へらるることなくして瞬く間にほろぼされしなり
7 わが民の中なる貴き人は從前󠄃には雪󠄃よりも咬潔󠄄に乳󠄃よりも白く 珊瑚よりも躰紅色にしてその形貌のうるはしきこと藍玉のごとくなりしが
8 いまはその面くろきが上に黑く 街衢にあるとも人にしられず その皮は骨にひたと貼き 乾きて枯木のごとくなれり
9 劍にて死る者は饑て死る者よりもさいはひなり そは斯る者は田圃の產物の罄るによりて漸々におとろへゆき刺れし者のごとくに成ばなり
10 わが民の女のほろぶる時には情󠄃愛ふかき婦󠄃人等さへも手づから己の子等を煮て食󠄃となせり
11 ヱホバその憤恨をことごとく洩し 烈しき怒をそそぎ給ひ シオンに火をもやしてその基礎までも燒しめ給へり
12 地の諸王も世のもろもろの民もすべてヱルサレムの門に仇や敵の打いらんとは信ぜざりき
13 斯なりしはその預言者の罪によりその祭司の愆によれり かれらは即ち正しき者の血をその邑の中にながしたりき
14 今かれらは盲人のごとく街衢にさまよひ 身は血にて汚れをれば人その衣服󠄃にふるるあたはず
15 人かれらに向ひて呼はり言ふ 去れよ穢らはし 去れ去れ觸るなかれと 彼らはしり去りて流離ば異邦人の中間にても人々また言ふ 彼らは此に寓るべからずと
1385㌻
16 ヱホバ怒れる面をもてこれを散し給へり 再びこれを顧󠄃みたまはじ 人々祭司の面をも尊󠄅ばず長老をもあはれまざりき
17 われらは賴まれぬ救援を望󠄇みて目つかれおとろふ 我らは俟ゐたりしが救拯をなすこと能はざる國人を待をりぬ〘1061㌻〙
18 敵われらの脚をうかがへば我らはおのれの街衢をも步くことあたはず 我らの終󠄃ちかづけり 我らの日つきたり 即ち我らの終󠄃きたりぬ
19 我らを追󠄃ふものは天空󠄃ゆく鷲よりも迅󠄄し 山にて我らを追󠄃ひ 野に伏てわれらを伺ふ
20 かの我らが鼻の氣息たる者ヱホバに膏そそがれたるものは陷阱にて執へられにき 是はわれらが異邦にありてもこの蔭に住󠄃んとおもひたりし者なり
21 ウズの地に住󠄃むエドムの女よ悅び樂しめ 汝にもまたつひに杯めぐりゆかん なんぢも醉て裸になるべし
22 シオンの女よ なんぢが愆の罰はをはれり 重ねてなんぢを擄へゆきたまはじ エドムの女よ なんぢの愆を罰したまはん 汝の罪を露はしたまはん
第5章
1 ヱホバよ我らにありし所󠄃の事をおもひたまへ 我らの恥辱をかへりみ觀たまへ
2 われらの產業は外國人に歸し われらの家屋は他國人の有となれり
3 われらは孤子となりて父󠄃あらず われらの母は寡婦󠄃にひとし
4 われらは金を出して自己の水を飮み おのれの薪を得るにも價をはらふ
5 われらを追󠄃ふ者われらの頸に迫󠄃る 我らは疲れて休むことを得ず
6 食󠄃物を得て饑を凌がんとてエジプト人およびアッスリヤ人に手を與へたり
7 われらの父󠄃は罪ををかして已に世にあらず 我らその罪を負󠄅ふなり
8 奴僕等われらを制するに誰ありて我らを之が手よりすくひ出すものなし
9 荒野の刀兵の故によりて我ら死を冐して食󠄃物を得
10 饑饉の烈しき熱氣によりてわれらの皮膚は爐のごとく熱し
1386㌻
11 シオンにて婦󠄃人等をかされユダの邑々にて處女等けがさる
12 侯伯たる者も敵の手にて吊され 老たる者の面も尊󠄅とばれず
13 少き者は石磨を擔はせられ 童子は薪を負󠄅ふてよろめき
14 長老は門にあつまることを止め 少き者はその音󠄃樂を廢せり
15 我らが心の快樂はすでに罷み われらの跳舞はかはりて悲哀となり
16 われらの冠冕は首より落たり われら罪ををかしたれば禍なるかな
17 これが爲に我らの心うれへ これらのために我らが目くらくなれり
18 シオンの山は荒はて 山犬はその上を步くなり
19 ヱホバよなんぢは永遠󠄄に在す なんぢの御位は世々かぎりなし
20 何とて我らを永く忘れ われらを斯ひさしく棄おきたまふや
21 ヱホバよねがはくは我らをして汝に歸らしめたまへ われら歸るべし 我らの日を新にして昔日の日のごとくならしめたまへ
22 さりとも汝まつたく我らを棄てたまひしや 痛くわれらを怒りゐたまふや〘1062㌻〙
1387㌻