〘789㌻〙
第1章
1 ダビデの子ソロモン堅くその國にたてりその神ヱホバこれとともに在して之を甚だ大ならしめたまひき
2 茲にソロモン、イスラエルの一切の人々すなはち千人の長百人の長裁判󠄄人ならびにイスラエルの全󠄃地の諸の牧伯等宗家の長などに吿る所󠄃あり
3 而してソロモンおよび全󠄃會衆ともにギベオンなる崇邱に徃りヱホバの僕モーセが荒野にて作りたる神の集會の幕屋かしこにあればなり
4 されど神の契󠄅約の櫃はダビデすでにキリアテヤリムよりこれが爲に備へたる處に携へ上れりダビデ曩にヱルサレムにて之が爲に幕屋を張まうけたりき
5 またホルの子ウリの子なるベザレルが作りたる銅の壇彼處においてヱホバの幕屋の前󠄃にありソロモンおよび會衆これに就きて求む
6 即ちソロモン彼處に上りゆき集會の幕屋の中にあるヱホバの前󠄃なる銅の壇に就き燔祭一千を其上に献げたり
7 その夜神ソロモンに顯れてこれに言たまひけるは我なんぢに何を與ふべきか求めよ
8 ソロモン神に申しけるは汝は我父󠄃ダビデに大なる恩惠をほどこし又󠄂我をして彼に代りて王とならしめたまへり
9 今ヱホバ神よ願くは我父󠄃ダビデに宣ひし事を堅うしたまへ其は汝地の塵のごとき衆多の民の上に我を王となしたまへばなり
10 我が此民の前󠄃に出入することを得んために今我に智慧󠄄と智識とを與へたまへ斯のごとき大なる汝の民を誰か鞫きえんや
11 神ソロモンに言たまひけるは此事なんぢの心にあり汝は富有をも財寶をも尊󠄅貴をも汝を惡む者の生命をも求めずまた壽長からんことをも求めず惟智慧󠄄と智識とを己のためにもとめて我が汝を王となしたる我民を鞫かんとすれば
12 智慧󠄄と智識は已に汝に授かれり我また汝の前󠄃の王等の未だ得たること有ざる程の富有と財寳と尊󠄅貴とを汝に與へん汝の後の者もまた是のごときを得ざるべし
789㌻
13 斯てソロモンはギベオンの崇邱を去り集會の幕屋の前󠄃を去りてヱルサレムに歸りイスラエルを治めたり
14 ソロモン戰車と騎兵とを集めしに戰車一千四百輛騎兵一萬二千人ありきソロモンこれを戰車の邑々に置き又󠄂ヱルサレムにて王の所󠄃に置り
15 王銀と金とを石のごとくヱルサレムに多からしめまた香柏を平󠄃野の桑樹のごとく多からしめたり
16 ソロモンの有る馬は皆エジプトよりひききたれり王の商買一群一群となして之を取いだし群ごとに價金をはらへり〘608㌻〙
17 エジプトより取いだして携へ上る戰車一輛は銀六百馬一匹は百五十なりき是のごとくヘテ人の諸の王等およびスリアの王等のためにもその手をもて取いだせり
第2章
1 茲にソロモン、ヱホバの名のために一の家を建てまた己の國のために一の家を建んとし
2 ソロモンすなはち荷を負󠄅べき者七萬人山において木や石を斫べき者八萬人是等を監督すべき者三千六百人を數へ出せり
3 ソロモンまづツロの王ヒラムに人を遣󠄃して言しめけるは汝はわが父󠄃ダビデにその住󠄃むべき家を建る香柏をおくれり請󠄃ふ彼になせしごとく亦我にもせよ
4 今我わが神ヱホバの名のために一の家を建て之を聖󠄄別て彼に奉つり彼の前󠄃に馨しき香を焚き常に供前󠄃のパンを供へ燔祭を朝󠄃夕に献げまた安息日月朔ならびに我らの神ヱホバの節󠄄期などに献げんとす是はイスラエルの永く行ふべき事
5 我建る家は大なり其は我らの神は諸の神よりも大なればなり
6 然ながら天も諸天の天も彼を容ること能はざれば誰か彼のために家を建ることを得んや我は何人ぞや爭か彼のために家を建ることを得ん唯彼の前󠄃に香を焚くためのみ
7 然ば請󠄃ふ今金銀銅鐵の細工および紫赤靑の製造󠄃に精しく雕刻の術に巧なる工人一箇を我に遣󠄃り我父󠄃ダビデが備へおきたるユダとヱルサレムのわが工人とともに操作しめよ
790㌻
8 請󠄃ふ汝また香柏松木および白檀をレバノンより我におくれ我なんぢの僕等がレバノンにて木を斫ることを善するを知るなり我僕また汝の僕と共に操作べし
9 是のごとくして我ために材木を多く備へしめよ其は我が建んとする家は高大を極むる者なるべければなり
10 我は木を斫る汝の僕に搗麥二萬石大麥二萬石酒二萬バテ油二萬バテを與ふべしと
11 是においてツロの王ヒラム書をソロモンにおくりて之に答へて云ふヱホバその民を愛するが故に汝をもて之が王となせりと
12 ヒラムまた言けるは天地の造󠄃主なるイスラエルの神ヱホバは讃べきかな彼はダビデ王に賢き子を與へて之に分󠄃別と才智とを賦け之をしてヱホバのために家を建てまた己の國のために家を建ることを得せしむ
13 今我わが達󠄃人ヒラムといふ才智ある工人一人を汝におくる
14 彼はダンの子孫たる婦󠄃の產る者にて其父󠄃はツロの人なるが金銀銅鐵木石の細工および紫布靑布細布赤布の織法に精しく又󠄂能く各種の雕刻を爲し奇巧を凝して諸の工をなすなり然ば彼を用ひてなんぢの工人《〘609㌻〙
15 是については我主の宣まへる小麥大麥油および酒をその僕等に遣󠄃りたまへ
16 汝の凡て需むるごとく我らレバノンより木を斫いだしこれを筏にくみて海よりヨツバにおくるべければ汝これをヱルサレムに運󠄃びのぼりたまへと
17 ここにおいてソロモンその父󠄃ダビデが核數しごとくイスラエルの國にをる異邦人をことごとく核數みるに合せて十五萬三千六百人ありければ
18 その七萬人をもて荷を負󠄅ふ者となし八萬人をもて山にて木や石を斫る者となし三千六百人をもて民を操作かしむる監督者となせり
791㌻
第3章
1 ソロモン、ヱルサレムのモリア山にヱホバの家を建ることを始む彼處はその父󠄃ダビデにヱホバの顯はれたまひし所󠄃にて即ちヱブス人オルナンの打場の中にダピデが備へし處なり
2 之を建ることを始めたるはその治世の四年の二月二日なり
3 神の家を建るためにソロモンの置たる基は是のごとし長六十キユビト濶二十キユビト皆古の尺に循がふ
4 家の前󠄃の廊は家の濶にしたがひてその長二十キユビトまたその高は百二十キユビトその內は純金をもて蔽ふ
5 またその大殿は松の木をもて張つめ美金をもて之を蔽ひその上に棕櫚と鏈索の形を施こし
6 また寶石をもてその家を美しく飾󠄃るその金はパルワイムの金なり
7 彼また金をもてその家その樑その閾その壁およびその戶を蔽ひ壁の上にケルビムを刻つく
8 また至聖󠄄所󠄃の家を造󠄃りしがその長は家の濶にしたがひて二十キユビトその濶も二十キユビト、美金をもてこれを蔽ふその金六百タラント
9 その釘の金は重五十シケルまた上の室も金にて覆ふ
10 また至聖󠄄所󠄃の家の內に刻鐫めたる二のケルビムを造󠄃り金をこれに覆ふ
11 そのケルビムの翼は長二十キユビト此ケルブの一の翼は五キユビトにして家の壁に達󠄃しその他の翼も五キユビトにして彼のケルブの翼に達󠄃す
12 また彼ケルブの一の翼は五キユビトにして家の壁に達󠄃しその他の翼も五キユビトにして此ケルブの翼と相接はる
13 是等のケルビムの翼はその舒ひろがること二十キユビト共にその足にて立ちその面を家に向く
14 彼また靑紫赤の布および細布をもて障蔽の幕を作りケルビムをその上に繍ふ
〘610㌻〙
15 また家の前󠄃に柱二本を作るその高は三十五キユビトその頂の頭は五キユビト
16 また環飾󠄃を造󠄃り鏈索を之に繞らしてこれを柱の頂に施こし石榴一百をつくりてその鏈索の上に施こす
17 この柱を拜殿の前󠄃に竪て一本を右に一本を左に置ゑ右なる者をヤキンと名け左なる者をボアズと名く
792㌻
第4章
1 ソロモンまた銅の壇を作れりその長二十キユビト濶二十キユビトその高十キユビト
2 また海を鑄造󠄃れり此邊より彼邊まで十キユビトにしてその周󠄃圍は圓くその高は五キユビトその周󠄃圍には三十キユビトの繩をめぐらすべし
3 その下には牛の像ありてその周󠄃圍を繞る即ち一キユビトに十宛ありて海の周󠄃圍を繞れり此牛は二行にして海を鑄る時に鑄付たるなり
4 その海は十二の牛の上に立りその三は北にむかひ三は西にむかひ三は南にむかひ三は東にむかふ海はその上にありて牛の後はみな內にむかふ
5 その厚は手寛その邊は百合花形にして杯の邊の如くに作れり是は三千バテを受容る
6 彼また洗盤十箇を作りて五箇を右に五箇を左に置たり是はものを洗ふ所󠄃にして燔祭の品をその中にて灌ぐ海は祭司が其身を洗ふ處なり
7 また金の燈臺十をその例規に從ひて作り拜殿の中に五を右に五を左に置き
8 また案十を作りて拜殿の中に五を右に五を左に据ゆ又󠄂金の鉢一百を作れり
9 彼また祭司の庭と大庭および庭の戶を作り銅をもてその扉を覆ふ
10 海は東のかた右の方に置て南に向はしむ
11 ヒラムまた鍋と火鏟と鉢とを作れり
斯ヒラムはソロモン王のためになせる神の家の諸の工事を終󠄃たり
12 即ち二の柱と毬とその二の柱の頂の頭およびその柱の頂なる頭の二の毬を包む二の網工
13 ならびに其ふたつの網工の上にほどこす石榴四百この石榴は各々の網工の上に二行づつありて柱の頂なる頭の二の毬を包む
14 また臺を作り臺の上の洗盤を作れり
15 また一の海とその下なる十二の牛
16 および鍋火鏟肉叉などヱホバの家の諸の器具󠄄を達󠄃人ヒラム ソロモン王の爲に作りたり是みな磨銅なり
793㌻
17 王ヨルダンの窪地に於てスコテとゼレダタの間の黏土の地にて是等を鑄させたり
18 是のごとくソロモン是らの諸の器皿を甚だ多く造󠄃りたればその銅の重は測られざりき
19 ソロモン神の家の一切の器皿を造󠄃れり即ち金の壇供前󠄃のパンを載る案〘611㌻〙
20 また定規のごとく神殿の前󠄃にて火をともすべき純金の燈臺およびその燈盞
21 その花その燈盞その燈鉗是等は金の純精なる者なり
22 また剪刀鉢匙火盤是等も純金なり又󠄂家の內の戶すなはち至聖󠄄所󠄃の戶および拜殿の戶の肘鈕是も金なり
第5章
1 斯ソロモンがヱホバの家のために爲る一切の工事をはれり是においてソロモンその父󠄃ダビデが奉納󠄃たる物なる金銀および諸の器皿を携へいりて神の家の府庫の中に置り
2 茲にソロモン、ヱホバの契󠄅約の櫃をダビデの邑シオンより舁のぼらんとてイスラエルの長老者と諸の支派の長等イスラエルの子孫の宗家の長をヱルサレムに召集めければ
3 イスラエルの人みな七月の節󠄄筵に當りて王の所󠄃に集まり
4 イスラエルの長老等みな至りレビ人契󠄅約の櫃を執あげ
5 その契󠄅約の櫃と集會の幕屋と幕屋にありし諸の聖󠄄器を舁のぼれり即ち祭司レビ人これを舁のぼりぬ
6 時にソロモン王および彼の許に集まれるイスラエルの會衆契󠄅約の櫃の前󠄃にありて羊と牛を献げたりしがその數多くして書すことも數ふることも能はざりき
7 かくて祭司等ヱホバの契󠄅約の櫃をその處に舁いれたり即ち室の神殿なる至聖󠄄所󠄃の中のケルビムの翼の下に舁いりぬ
8 ケルビムは翼を契󠄅約の櫃の所󠄃の上に舒べケルビム上より契󠄅約の櫃とその杠を掩ふ
9 杠長かりければ杠の末は神殿の前󠄃の契󠄅約の櫃より見えたり然れども外には見えざりき其は今日まで彼處にあり
10 契󠄅約の櫃の內には二枚の板の外何もあらず是はイスラエルの子孫のエジプトより出たる時ヱホバが彼らと契󠄅約を結びたまへる時にモーセがホレブにて藏めたる者なり
794㌻
11 斯て祭司等は聖󠄄所󠄃より出たり此にありし祭司はみな身を潔󠄄めその班列によらずして職務をなせり
12 またレビ人の謳歌者すなはちアサフ、ヘマン、ヱドトン及び彼らの子等と兄弟等はみな細布を纒ひ鐃鈸と瑟と琴とを操て壇の東に立りまた祭司百二十人彼らとともにありて喇叭を吹り
13 喇叭を吹く者と謳歌者とは一人のごとくに聲を齊うしてヱホバを讃かつ頌へたりしが彼ら喇叭鐃鈸等の樂器をもちて聲をふりたて善かなヱホバその矜憫は世々限なしと言てヱホバを讃ける時に雲その室すなはちヱホバの室に充り
14 祭司は雲の故をもて立て奉事をなすことを得ざりきヱホバの榮光神の室に充たればなり〘612㌻〙
第6章
1 是においてソロモン言けるはヱホバは濃き雲の中に居んと言たまひしが
2 我汝のために住󠄃むべき家永久に居べき所󠄃を建たりと
3 而して王その面をふりむけてイスラエルの全󠄃會衆を祝せり時にイスラエルの會衆は皆立をれり
4 彼いひけるはイスラエルの神ヱホバは讃べき哉ヱホバはその口をもて吾父󠄃ダビデに言ひその手をもて之を成とげたまへり
5 即ち言たまひけらく我はわが民をエジプトの地より導󠄃き出せし日より我名を置べき家を建しめんためにイスラエルの諸の支派の中より何の邑をも選󠄄みしこと無く又󠄂何人をも選󠄄みて我民イスラエルの君となせしこと無し
6 只我はわが名を置くためにヱルサレムを選󠄄みまた我民イスラエルを治めしむるためにダビデを選󠄄めり
7 夫イスラエルの神ヱホバの名のために家を建ることは我父󠄃ダビデの心にありき
8 然るにヱホバわが父󠄃ダビデに言たまひけるは我名のために家を建ること汝の心にあり汝の心にこの事あるは善し
795㌻
9 然れども汝はその家を建べからず汝の腰より出る汝の子その人わが名のために家を建べしと
10 而してヱホバその言たまひし言をおこなひたまへり即ち我わが父󠄃ダビデに代りて立ちヱホバの言たまひしごとくイスラエルの位に坐しイスラエルの神ヱホバの名のために家を建て
11 その中にヱホバがイスラエルの子孫になしたまひし契󠄅約を容る櫃ををさめたりと
12 ソロモン、イスラエルの全󠄃會衆の前󠄃にてヱホバの壇の前󠄃に立てその手を舒ぶ
13 ソロモンさきに長五キユビト濶五キユビト高三キユビトの銅の臺を造󠄃りてこれを庭の眞中に据おきたりしが乃ちその上に立ちイスラエルの全󠄃會衆の前󠄃にて膝をかがめ其手を天に舒て
14 言けるはイスラエルの神ヱホバ天にも地にも汝のごとき神なし汝は契󠄅約を保ちたまひ心を全󠄃うして汝の前󠄃に步むところの汝の僕等に恩惠を施こしたまふ
15 汝は汝の僕わが父󠄃ダビデにのたまひし所󠄃を保ちたまへり汝は口をもて言ひ手をもて成就たまへること今日のごとし
16 イスラエルの神ヱホバよ然ば汝が僕わが父󠄃ダビデに語りて若し汝の子孫その道󠄃を愼みて汝がわが前󠄃に步めるごとくに我律法にあゆまばイスラエルの位に坐する人わが前󠄃にて汝に缺ること無るべしと言たまひし事をダビデのために保ちたまへ〘613㌻〙
17 然ばイスラエルの神ヱホバよ汝が僕ダビデに言たまへるなんぢの言に效驗あらしめたまへ
18 但し神果して地の上に人とともに居たまふや夫天も諸天の天も汝を容るに足ず况て我が建たる此家をや
19 然れども我神ヱホバよ僕の祈禱と懇願をかへりみて僕が今汝の前󠄃に祈るその號呼と祈禱を聽たまへ
20 願くは汝の目を夜晝此家の上即ち汝が其名を置んと言たまへる所󠄃の上に開きたまへ願くは僕がこの處にむかひて祈らん祈禱を聽たまへ
796㌻
21 願くは僕と汝の民イスラエルがこの處にむかひて祈る時にその懇願を聽たまへ請󠄃ふ汝の住󠄃處なる天より聽き聽て赦したまへ
22 人その隣人にむかひて罪を犯せることありてその人誓をもて誓ふことを要󠄃められんに若し來りてこの家において汝の壇の前󠄃に誓ひなば
23 汝天より聽て行ひ汝の僕等を鞫き惡き者に返󠄄報をなしてその道󠄃をその首に歸し義者を義としてその義にしたがひて之を待ひたまへ
24 汝の民イスラエルなんぢに罪を犯したるがために敵の前󠄃に敗れんに若なんぢに歸りて汝の名を崇め此家にて汝の前󠄃に祈り願ひなば
25 汝天より聽て汝の民イスラエルの罪を赦し汝が彼等とその先祖に與へし地に彼等を歸らしめたまへ
26 彼らが汝に罪を犯したるがために天閉て雨なからんに彼ら若この處にむかひて祈り汝の名を崇め汝が彼らを苦しめたまふ時にその罪を離れなば
27 汝天より聽きて汝の僕等なんぢの民イスラエルの罪を赦したまへ汝旣にかれらにその步むべき善道󠄃を敎へたまへり汝の民に與へて產業となさしめたまひし汝の地に雨を降したまへ
28 若くは國に饑饉あるか若くは疫病枯死朽腐蟊賊稲蠧あるか若くは其敵かれらをその國の邑に圍む等如何なる災禍如何なる疾病あるとも
29 もし一人或は汝の民イスラエルみな各々おのれの災禍と憂患を知てこの家にむかひて手を舒なば如何なる祈禱如何なる懇願をなすとも
30 汝の住󠄃處なる天より聽て赦し各々の人にその心を知たまふごとくその道󠄃々にしたがひて報いたまへ其は汝のみ人々の心を知たまへばなり
31 汝かく彼らをして汝が彼らの先祖に與へたまへる地に居る日の間つねに汝を畏れしめ汝の道󠄃に步ましめたまへ
797㌻
32 且汝の民イスラエルの者にあらずして汝の大なる名と强き手と伸たる腕とのために遠󠄄き國より來れる異邦人においてもまた若來りてこの家にむかひて祈らば〘614㌻〙
33 汝の住󠄃處なる天より聽き凡て異邦人の汝に龥もとむるごとく成たまへ汝かく地の諸の民をして汝の名を知らしめ汝の民イスラエルの爲ごとくに汝を畏れしめ又󠄂わが建たる此家は汝の名をもて稱らるるといふことを知しめたまへ
34 汝の民その敵と戰はんとて汝の遣󠄃はしたまふ道󠄃に進󠄃める時もし汝が選󠄄びたまへるこの邑およびわが汝の名のために建たる家にむかひて汝に祈らば
35 汝天より彼らの祈禱と懇願を聽て彼らを助けたまへ
36 人は罪を犯さざる者なければ彼ら汝に罪を犯すことありて汝かれらを怒り彼らをその敵に付したまひて敵かれらを虜として遠󠄄き地または近󠄃き地に曵ゆかん時
37 彼らその擄れゆきし地において自ら心に了るところあり其俘擄の地において飜へりて汝に祈り我らは罪を犯し悖れる事を爲し惡き事を行ひたりと言ひ
38 その擄へゆかれし俘擄の地にて一心一念に汝に立歸り汝がその先祖に與へたまへる地にむかひ汝が選󠄄びたまへる邑と我が汝の名のために建たる家にむかひて祈らば
39 汝の住󠄃處なる天より彼らの祈禱と懇願を聽て彼らを助け汝の民が汝にむかひて罪を犯したるを赦したまへ
40 然ば我神よ願くは此處にて爲す祈禱に汝の目を開き耳を傾むけたまヘ
41 ヱホバ神よ今汝および汝の力ある契󠄅約の櫃起󠄃て汝の安居の所󠄃にいりたまへヱホバ神よ願くは汝の祭司等に拯救の衣を纒はせ汝の聖󠄄徒等に恩惠を喜こばせたまヘ
42 ヱホバ神よ汝の膏そそぎし者の面を黜ぞけたまふ勿れ汝の僕ダビデの德行を記念たまへ
第7章
1 ソロモン祈ることを終󠄃し時天より火くだりて燔祭と犧牲とを焚きヱホバの榮光その家に充り
798㌻
2 ヱホバの榮光ヱホバの家に充しに因て祭司はヱホバの家に入ことを得ざりき
3 イスラエルの子孫は皆火の降れるを見またヱホバの榮光のその家にのぞめるを見て敷石の上にて地に俯伏て拜しヱホバを讃て云り善かなヱホバその恩惠は世々限なしと
4 斯て王および民みなヱホバの前󠄃に犧牲を献ぐ
5 ソロモン王の献げたる犧牲は牛二萬二千羊十二萬斯王と民みな神の家を開けり
6 祭司は立てその職をなしレビ人はヱホバの樂器を執て立つ其樂器はダビデ王彼らの手によりて讃美をなすに當り自ら作りてヱホバの恩惠は世々限なしと頌へしめし者なり祭司は彼らの前󠄃にありて喇叭を吹きイスラエルの人は皆立をる〘615㌻〙
7 ソロモンまたヱホバの家の前󠄃なる庭の中を聖󠄄め其處にて燔祭と酬恩祭の脂とを献げたり是はソロモンの造󠄃れる銅の壇その燔祭と素祭と脂とを受るに足ざりしが故なり
8 その時ソロモン七日の間節󠄄筵をなしけるがイスラエル全󠄃國の人々すなはちハマテの入口よりエジプトの河までの人々あつまりて彼とともにあり其會はなはだ大なりき
9 かくて第八日に聖󠄄會を開けり彼らは七日のあひだ壇奉納󠄃の禮をおこなひまた七日のあひだ節󠄄筵を守りけるが
10 七月の二十三日にいたりてソロモン民をその天幕に歸せり皆ヱホバがダビデ、ソロモンおよびその民イスラエルに施こしたまひし恩惠のために喜こび且心に樂しみて去り
11 ソロモン、ヱホバの家と王の家とを造󠄃了へヱホバの家と己の家とにつきて爲んと心に思ひし事を盡く成就たり
12 時にヱホバ夜ソロモンに顯れて之に言たまひけるは我すでに汝の祈禱を聽きまた此處をわがために選󠄄びて犧牲を献ぐる家となす
13 我天を閉て雨なからしめ又󠄂は蟊賊に命じて地の物を食󠄃はしめ又󠄂は疫病を我民の中におくらんに
799㌻
14 我名をもて稱らるる我民もし自ら卑くし祈りてわが面を求めその惡き道󠄃を離れなば我天より聽てその罪を赦しその地を醫さん
15 今より我この處の祈禱に目を啓き耳を傾むけん
16 今我すでに此家を選󠄄びかつ聖󠄄別む我名は永く此にあるべしまた我目もわが心も恒に此にあるべし
17 汝もし汝の父󠄃ダビデの步みしごとく我前󠄃に步み我が汝に命じたるごとく凡て行ひてわが法度と律例を守らば
18 我は汝の父󠄃ダビデに契󠄅約してイスラエルを治むる人汝に缺ること無るべしと言しごとく汝の國の祚を堅うすべし
19 然ど汝ら若ひるがへり我が汝らの前󠄃に置たる法度と誡命を棄て徃て他の神々に事へかつ之を拜まば
20 我かれらを我が與へたる地より拔さるべし又󠄂我名のために我が聖󠄄別たる此家は我これを我前󠄃より投棄て萬國の中に諺語となり嘲笑とならしめん
21 且又󠄂この家は高くあれども終󠄃にはその傍を過󠄃る者は皆これに驚きて言んヱホバ何故に此地に此家に斯なしたるやと
22 人これに答へて言ん彼ら己の先祖をエジプトの地より導󠄃き出ししその神ヱホバを棄て他の神々に附從がひ之を拜み之に事へしによりてなりヱホバ之がためにこの諸の災禍を彼らに降せりと〘616㌻〙
第8章
1 ソロモン二十年を經てヱホバの家と己の家を建をはりけるが
2 ヒラム邑幾何をソロモンに歸しければソロモンまた之を建なほしイスラエルの子孫をしてその中に住󠄃しむ
3 ソロモンまたハマテゾバに徃て之に勝󠄃り
4 彼また曠野のタデモルを建てハマテの諸の府庫邑を建つ
5 また上ベテホロンおよび下ベテホロンを建つ是は堅固の邑にして石垣あり門あり關木あり
6 ソロモンまたバアラテとおのが有る府庫の邑々と戰車の諸の邑々と騎兵の邑々ならびにそのエルサレム、レバノンおよび己が治むるところの全󠄃地に建んと望󠄇みし者を盡く建つ
800㌻
7 凡てイスラエルの子孫にあらざるヘテ人アモリ人ペリジ人ヒビ人ヱブス人の遺󠄃れる者
8 その地にありて彼らの後に遺󠄃れるその子孫即ちイスラエルの子孫の滅ぼし盡さざりし民はソロモンこれを使役して今日にいたる
9 然れどもイスラエルの子孫をばソロモン一人も奴隸となして其工事に使ふことをせざりき彼らは軍人となり軍旅の長となり戰車と騎兵の長となれり
10 ソロモン王の有司の首は二百五十人ありて民を統ぶ
11 ソロモン、パロの女をダビデの邑より携へのぼりて曩にこれがために建おきたる家にいたる彼すなはち言り我妻はイスラエルの王ダビデの家に居べからずヱホバの契󠄅約の櫃のいたれる處は皆聖󠄄ければなりと
12 茲にソロモン曩に廊の前󠄃に築きおきたるヱホバの壇の上にてヱホバに燔祭を献ぐることをせり
13 即ちモーセの命令にしたがひて每日例のごとくに之を献げ安息日月朔および年に三次の節󠄄會すなはち酵いれぬパンの節󠄄と七週󠄃の節󠄄と結茅節󠄄とに之を献ぐ
14 ソロモンその父󠄃ダビデの定めたる所󠄃にしたがひて祭司の班列を定めてその職に任じ又󠄂レビ人をその勤務に任じて日々例のごとく祭司の前󠄃にて頌讃をなし奉事をなさしめ又󠄂門を守る者をしてその班列にしたがひて諸門を守らしむ神の人ダビデの命ぜしところ是
15 祭司とレビ人は諸の事につきまた府庫の事につきて王に命ぜられたる所󠄃に違󠄇ざりき
16 ソロモンはヱホバの家の基を置る日までにその工事の準備をことごとく爲しおきて遂󠄅に之を成をへたればヱホバの家は全󠄃備せり
〘617㌻〙
801㌻
17 茲にソロモン、ヱドムの地の海邊にあるエジオンゲベルおよびエロテに徃り
18 時にヒラムその僕等の手に託て船を彼に遣󠄃りまた海の事を知る僕等を遣󠄃りけるが彼等すなはちソロモンの僕とともにオフルに徃て彼處より金四百五十タラントを取てソロモン王の許に携へ來れり
第9章
1 茲にシバの女王ソロモンの風聞を聞および難問をもてソロモンを試みんとて甚だ衆多の部從をしたがへ香物と夥多き金と寶石とを駱駝に負󠄅せてヱルサレムに來りソロモンの許にいたりてその心にある所󠄃をことごとく之に陳けるに
2 ソロモンこれが問に盡く答へたりソロモンの知ずして答へざる事は無りき
3 シバの女王ソロモンの智慧󠄄とその建たる家を觀
4 またその席の食󠄃物とその諸臣の列坐る狀とその侍臣の伺候狀と彼らの衣服󠄃およびその酒人とその衣服󠄃ならびに彼がヱホバの家に上りゆく昇道󠄃を觀におよびて全󠄃くその氣を奪はれたり
5 是において彼王に言けるは我が自己の國にて汝の行爲と汝の智慧󠄄とにつきて聞およびたる言は眞實なりき
6 然るに我は來りて目に觀るまではその言を信ぜざりしが今視ば汝の智慧󠄄の大なる事我が聞たるはその半󠄃分󠄃にも及ばざりき汝は我が聞たる風聞に愈れり
7 汝の人々は幸福なるかな汝の前󠄃に常に立て汝の智慧󠄄を聽る此なんぢの臣僕等は幸福なるかな
8 汝の神ヱホバは讃べき哉彼なんぢを悅こびてその位に上らせ汝の神ヱホバの爲に汝を王となしたまへり汝の神イスラエルを愛して永く之を堅うせんとするが故に汝を之が王となして公平󠄃と正義を行はせたまふなりと
9 すなはち金百二十タラントおよび莫大の香物と寶石とを王に饋れりシバの女王がソロモン王に饋りたるが如き香物は未だ曾て有ざりしなり
10 (かのオフルより金を取きたりしヒラムの臣僕とソロモンの臣僕等また白檀木と寶石とをも携さへいたりければ
802㌻
11 王その白檀木をもてヱホバの家と王の宮とに段階を作りまた謳歌者のために琴と瑟とを作れり是より前󠄃には是のごとき者ユダの地に見しこと無りき)
12 ソロモン王シバの女王に物を饋りてその携へきたれる所󠄃に報いたるが上にまた之が望󠄇にまかせて凡てその求むる者を與へたり斯て彼はその臣僕とともに去てその國に還󠄃りぬ
〘618㌻〙
13 一年にソロモンの所󠄃に來れる金の重量は六百六十六タラントなり
14 この外にまた商賣および商旅の携へきたる者ありアラビアの一切の王等および國の知事等もまた金銀をソロモンに携へ至れり
15 ソロモン王展金の大楯二百を作れりその大楯一枚には展金六百シケルを用ふ
16 また展金の小干三百を作れり其小干一枚には金三百シケルを用ふ王これらをレバノン森の家に置り
17 王また象牙をもて大なる寳座一を造󠄃り純金をもて之を蔽へり
18 その寳座には六の階級あり又󠄂金の足臺ありて共にその寳座に連󠄃なりその坐する處の此旁彼旁に按手ありて按手の側に二頭の獅子立をり
19 その六の階級に十二の獅子ありて此旁彼旁に立り是のごとき者を作れる國は未だ曾て有ざりしなり
20 ソロモン王の用ゐる飮料の器は皆金なりまたレバノン森の家の器もことごとく精金なり銀はソロモンの世には何とも算ざりしなり
21 其は王の舟ヒラムの僕を乘てタルシシに徃き三年每に一回その舟タルシシより金銀象牙猿および孔雀を載て來りたればたり
22 ソロモン王は天下の諸王に勝󠄃りて富有と智慧󠄄とをもちたれば
23 天下の諸王みな神がソロモンの心に授けたまへる智慧󠄄を聽んとてソロモンの面を見んことを求め
24 各々その禮物を携さへ來る即ち銀の器金の器衣服󠄃甲冑香物馬騾など年々定分󠄃ありき
25 ソロモン戰車の馬四千廐騎兵一萬二千あり王これを戰車の邑々に置きまたヱルサレムにて自己の所󠄃に置り
26 彼は河よりペリシテの地とエジプトの界までの諸王を統治めたり
803㌻
27 王は銀を石のごとくヱルサレムに多からしめまた香柏を平󠄃野の桑木のごとく多からしめたり
28 また人衆エジプトなどの諸國より馬をソロモンに率󠄃いたれり
29 ソロモンのその餘の始終󠄃の行爲は預言者ナタンの書とシロ人アヒヤの預言と先見者イドがネバテの子ヤラベアムにつきて述󠄃たる默旨の中に記さるるにあらずや
30 ソロモンはヱルサレムにて四十年の間イスラエルの全󠄃地を治めたり
31 ソロモンその先祖等と俱に寢りてその父󠄃ダビデの邑に葬られ其子レハベアムこれに代りて王となれり
第10章
1 爰にレハベアム、シケムに徃り其はイスラエルみな彼を王となさんとてシケムに到りたればたり
2 ネバテの子ヤラベアムはさきにソロモン王の面を避󠄃てエジプトに逃󠄄れ居しがこのことを聞てエジプトより歸れり〘619㌻〙
3 人衆人を遣󠄃はして之を招きたるなり斯てヤラベアムとイスラエルの人みな來りてレハベアムに語りて言けるは
4 汝の父󠄃我らの軛を苦しくせり然ば汝今汝の父󠄃の苦しき役とその我らに蒙むらせたる重き軛を輕くしたまへ然れば我儕なんぢに事へん
5 レハベアムかれらに言けるは汝ら三日を經て再び我に來れと民すなはち去り
6 是においてレハベアム王その父󠄃ソロモンの生る間これが前󠄃に立たる老人等に計りて言けるは汝ら如何に敎へて此民に答へしむるや
7 彼らレハベアムに語りて言けるは汝もし此民を厚く待ひ之を悅こばせ善言を之に語らば永く汝の僕たらんと
8 然るに彼その老人等の敎へし敎を棄て自己とともに生長て己の前󠄃に立ところの少年等と計れり
9 即ち彼らに言けるは汝ら如何に敎へて我らをして此我に語りて汝の父󠄃の我らに蒙むらせし軛を輕くせよと言ふ民に答へしむるやと
804㌻
10 彼とともに生長たる少年等かれに語りて言けるは汝に語りて汝の父󠄃我らの軛を重くしたれば汝これを我らのために輕くせよと言たる此民に汝かく答へ斯これに言べし吾小指は我父󠄃の腰よりも太し
11 我父󠄃は汝らに重き軛を負󠄅せたりしが我は更に汝らの軛を重くせん我父󠄃は鞭をもて汝らを懲せしが我は蠍をもて汝らを懲さんと
12 偖またヤラベアムと民等は皆王の吿て第三日に再び我にきたれと言しごとく第三日にレハベアムに詣りしに
13 王荒々しく彼らに答へたり即ちレハベアム王老人の敎を棄て
14 少年の敎のごとく彼らに吿て言けるは我父󠄃は汝らの軛を重くしたりしが我は更に之を重くせん我父󠄃は鞭をもて汝らを懲せしが我は蠍をもて汝らを懲さんと
15 王かく民に聽ことをせざりき此事は神より出たる者にしてその然るはヱホバかつてシロ人アヒヤによりてネバテの子ヤラベアムに吿たる言を成就んがためなり
16 イスラエルの民みな王の己に聽ざるを見しかば王に答へて言けるは我らダビデの中に何の分󠄃あらんやヱッサイの子の中には所󠄃有なしイスラエルよ汝ら各々その天幕に歸れダビデ族よ今おのれの家を顧󠄃みよと斯イスラエルは皆その天幕に歸れり
17 但しユダの邑々に住󠄃るイスラエルの子孫の上にはレハベアムなほ王たりき
18 レハベアム王役夫の頭なるアドラムを遣󠄃はしけるにイスラエルの子孫石をもてこれを擊て死しめたればレハベアム王急󠄃ぎてその車に登りてエルサレムに逃󠄄かへれり〘620㌻〙
19 是のごとくイスラエルはダビデの家に背きて今日にいたる
第11章
1 茲にレハベアム、ヱルサレムに至りてユダとベニヤミンの家より倔强の武者十八萬を集め而してレハベアム國を己に歸さんためにイスラエルと戰はんとせしに
2 ヱホバの言神の人シマヤに臨みて云ふ
805㌻
3 ソロモンの子ユダの王レハベアムおよびユダとベニヤミンにあるイスラエルの人々に吿て言べし
4 ヱホバかく言ふ汝ら攻上るべからず又󠄂なんぢらの兄弟と戰ふべからず各々その家に歸れ此事は我より出たる者なりと彼ら乃はちヱホバの言にしたがひヤラベアムに攻ゆくことを止て歸れり
5 斯てレハベアム、ヱルサレムに居りユダに守衞の邑々を建たり
6 即ちその建たる者はベテレヘム、エタム、テコア
7 ベテズル`シヨコ、アドラム
8 ガテ、マレシヤ、ジフ
9 アドライム、ラキシ、アゼカ
10 ゾラ、アヤロン、ヘブロン是等はユダとベニヤミンにありて守衞の邑なり
11 彼その守衞の邑々を堅固にし之に軍長を置き糧食󠄃と油と酒とを貯はへ
12 またその一切の邑に盾と矛とを備へて之を甚だ强からしむユダとベニヤミンこれに附り
13 イスラエルの全󠄃地の祭司とレビ人は四方の境より來りてレハベアムに投ず
14 即ちレビ人はその郊地と產業とを離れてユダとヱルサレムに至れり是はヤラベアムとその子等かれらを廢して祭司の職をヱホバの前󠄃に爲しめざりし故なり
15 ヤラベアムは崇邱と牡山羊と己が作れる犢とのために自ら祭司を立つ
16 またイスラエルの一切の支派の中凡てその心を傾むけてイスラエルの神ヱホバを求むる者はその先祖の神ヱホバに禮物を献げんとてレビ人にしたがひてヱルサレムに至れり
17 是のごとく彼等ユダの國を固うしソロモンの子レハベアムをして三年の間强からしめたり即ち民は三年の間ダビデとソロモンの道󠄃に步めり
18 レハベアムはダビデの子ヱレモテの女マハラテを妻に娶れりマハラテはヱッサイの子エリアブの女アビハイルの產し者なり
19 彼ヱウシ、シヤマリヤおよびザハムの三子を產む
20 また之が後にアブサロムの女マアカを娶れり彼アビヤ、アツタイ、ジザおよびシロミテを產む
806㌻
21 レハベアムはアブサロムの女マアカをその一切の妻と妾とにまさりて愛せり彼は妻十八人妾六十人を取り男子二十八人女子六十人を擧く
22 レハベアム、マアカの子アビヤを王となさんと思ふが故に之を立て首となしその兄弟の長となせり〘621㌻〙
23 斯るが故に慧󠄄く取行ひ其男子等を盡くユダとベニヤミンの地なる守衞の邑々に散し置き之に糧食󠄃を多く與へかつ衆多の妻を求得させたり
第12章
1 レハベアムその國を固くしその身を强くするに及びてヱホバの律法を棄たりイスラエルみな之に傚ふ
2 彼ら斯ヱホバにむかひて罪を犯すによりてレハベアムの五年にエジプトの王シシヤク、ヱルサレムに攻のぼれり
3 その戰車は一千二百騎兵は六萬また彼に從がひてエジプトより來れる民ルビ人スキ人エテオピヤ人等は數しれず
4 彼すなはちユダの守衞の邑々を取り進󠄃てヱルサレムに至る
5 是においてレハベアムおよびユダの牧伯等シシヤクの故によりてヱルサレムに集まり居けるに預言者シマヤこれが許にいたりて之に言けるはヱホバかく言たまふ汝等は我を棄たれば我も汝らをシシヤクの手に遺󠄃おけりと
6 是をもてイスラエルの牧伯等および王は自ら卑くしてヱホバは義と言り
7 ヱホバかれらが自ら卑くするを見たまひければヱホバの言シマヤに臨みて言ふ彼等は自ら卑くしたれば我かれらを滅ぼさず少く拯救を彼らに施こさん我シシヤクの手をもて我忿怒をヱルサレムに洩さじ
8 然ながら彼等は之が臣とならん是彼らが我に事ふる事と國々の王等に事ふる事との辨をしらん爲なりと
9 エジプトの王シシヤクすなはちヱルサレムに攻のぼりヱホバの家の寶物と王の家の寶物とを奪ひて盡くこれを取り又󠄂ソロモンの作りたる金の楯を奪ひされり
807㌻
10 是をもてレハベアム王その代に銅の楯を作り王の家の門を守る侍衞の長等の手にこれを交し置けるが
11 王ヱホバの家に入る時には侍衞きたりて之を負󠄅ひまた侍衞の房にこれを持かへれり
12 レハベアム自ら卑くしたればヱホバの忿怒かれを離れこれを盡く滅ぼさんとは爲たまはず又󠄂ユダにも善事ありき
13 レハベアム王はヱルサレムにありてその力を强くし世を治めたり即ちレハベアムは四十一歳のとき位に即き十七年の間ヱルサレムにて世を治む是すなはちヱホバがその名を置んとてイスラエルの一切の支派の中より選󠄄びたまへる邑なり彼の母はアンモニ人にしてその名をナアマといふ
14 レハベアムはヱホバを求むる事に心を傾けずして惡き事を行へり
〘622㌻〙
15 レハベアムの始終󠄃の行爲は預言者シマヤの書および先見者イドの書の中に系圖の形に記さるるに非ずやレハベアムとヤラベアムの間には絕ず戰爭ありき
16 レハベアムその先祖等とともに寢りてダビデの邑に葬られ其子アビヤ之にかはりて王となれり
第13章
1 ヤラベアム王の十八年にアビヤ、ユダの王となり
2 ヱルサレムにて三年の間世を治めたり其母はギベアのウリエルの女にして名をミカヤといふ茲にアビヤとヤラベアムの間に戰爭あり
3 アビヤは四十萬の軍勢をもて戰鬪に備ふ是みな倔强の猛き武夫なり又󠄂ヤラベアムは倔强の人八十萬をもて之にむかひて戰爭の行伍を立つ是また大勇士なり
808㌻
4 時にアビヤ、エフライムの山地なるゼマライム山の上に立て言けるはヤラベアムおよびイスラエルの人々皆聽よ
5 汝ら知ずやイスラエルの神ヱホバ鹽の契󠄅約をもてイスラエルの國を永くダビデとその子孫に賜へり
6 然るにダビデの子ソロモンの臣たるネバテの子ヤラベアム興りてその主君に叛き
7 邪曲なる放蕩者これに集り附き自ら强くしてソロモンの子レハベアムに敵せしがレハベアムは少くまた心弱󠄃くして之に當る力なかりき
8 今またなんぢらはダビデの子孫の手にあるヱホバの國に敵對せんとす汝らは大軍なり又󠄂ヤラベアムが作りて汝らの神と爲たる金の犢なんぢらと偕にあり
9 汝らはアロンの子孫たるヱホバの祭司とレビ人とを逐󠄃放ち國々の民の爲がごとくに祭司を立るにあらずや即ち誰にもあれ少き牡牛一匹牡羊七匹を携へきたりて手に充す者は皆かの神ならぬ者の祭司となることを得るなり
10 然ど我儕に於てはヱホバ我儕の神にましまして我儕は之を棄ずまたヱホバに事ふる祭司はアロンの子孫にして役事をなす者はレビ人なり
11 彼ら朝󠄃ごと夕ごとにヱホバに燔祭を献げ香を焚くことを爲し又󠄂供前󠄃のパンを純精の案の上に供へまた金の燈臺とその燈盞を整へて夕ごとに點すなり斯われらは我らの神ヱホバの職守を守れども汝らは却て彼を棄たり
12 視よ神みづから我らとともに在して我らの大將となりたまふまた其祭司等は喇叭を吹ならして汝らを攻むイスラエルの子孫よ汝らの先祖の神ヱホバに敵して戰ふ勿れ汝ら利あらざるべければなりと
13 ヤラベアム伏兵を彼らの後に回らせたればイスラエルはユダの前󠄃にあり伏兵は其後にあり
14 ユダ後を顧󠄃みるに敵前󠄃後にありければヱホバにむかひて號呼り祭司等喇叭を吹り〘623㌻〙
15 ユダの人々すなはち吶喊を擧けるがユダの人々吶喊を擧るにあたりて神ヤラベアムとイスラエルの人々をアビヤとユダの前󠄃に打敗り給ひしかば
16 イスラエルの子孫はユダの前󠄃より逃󠄄はしれり神かく彼らを之が手に付したまひければ
17 アビヤとその民彼らを夥多く擊殺せりイスラエルの殺されて倒れし者は五十萬人みな倔强の人なりき
809㌻
18 是時にはイスラエルの子孫打負󠄅されユダの子孫勝󠄃を得たり是は彼らその先祖の神ヱホバを賴みしが故なり
19 アビヤすなはちヤラベアムを追󠄃擊て邑數箇を彼より取れり即ちベテルとその郷里ヱシヤナとその郷里エフロンとその郷里是なり
20 ヤラベアムはアビヤの世に再び權勢を奮ふことを得ずヱホバに擊れて死り
21 然どアビヤは權勢を得妻十四人を娶り男子二十二人女子十六人を擧けたり
22 アビヤのその餘の作爲とその行爲とその言は預言者イドの註釋に記さる
第14章
1 アビヤその先祖等とともに寢りてダビデの邑に葬られその子アサこれに代りて王となれりアサの代になりて其國十年の間平󠄃穩なりき
2 アサはその神ヱホバの目に善と視正義と視たまふ事を行へり
3 即ち異なる祭壇を取のぞき諸の崇邱を毀ち柱像を打碎きアシラ像を斫倒し
4 ユダに命じてその先祖等の神ヱホバを求めしめその律法と誡命を行はしめ
5 ユダの一切の邑々より崇邱と日の像とを取除けり而して國は彼の前󠄃に平󠄃穩なりき
6 彼また守衞の邑數箇をユダに建たり是はその國平󠄃安を得て此年頃戰爭なかりしに因る即ちヱホバ彼に安息を賜ひしなり
7 彼すなはちユダに言けるは我儕是等の邑を建てその四周󠄃に石垣を築き戌樓を起󠄃し門と門閂とを設けん我儕の神ヱホバを我儕求めしに因て此國なほ我儕の前󠄃にあり我ら彼を求めたれば四方において我らに平󠄃安を賜へりと斯彼ら阻滯《とどこ
8 アサの軍勢はユダより出たる者三十萬ありて楯と戈とを執りベニヤミンより出たる者二十八萬ありて小楯を執り弓を彎く是みな大勇士なり
9 茲にエテオピア人ゼラ軍勢百萬人戰車三百輌を率󠄃ゐて攻きたりマレシヤに至りければ
10 アサこれにむかひて進󠄃み出で共にマレシヤのゼパタの谷において戰爭の陣列を立つ
810㌻
11 時にアサその神ヱホバにむかひて呼はりて言ふヱホバよ力ある者を助くるも力なき者を助くるも汝においては異ること無し我らの神ヱホバよ我らを助けたまへ我らは汝に倚賴み汝の名に託りて徃て此群集に敵るヱホバよ汝は我らの神にましませり人をして汝に勝〘624㌻〙
12 ヱホバすなはちアサの前󠄃とユダの前󠄃においてエテオピア人を擊敗りたまひしかばエテオピア人逃󠄄はしりけるに
13 アサと之に從がふ民かれらをゲラルまで追󠄃擊り斯エテオピア人は倒れて再び振ふことを得ざりき其は彼等ヱホバとその軍旅に打敗られたればなりユダの人々の得たる掠取物は甚だ多りき
14 かれらはまたゲラルの四周󠄃の邑々を盡く擊やぶれり是その邑々ヱホバを畏れたればなり是において彼らその一切の邑より物を掠めたりしがその中より得たる掠取物は夥多かりき
15 また家畜のをる天幕を襲ふて羊と駱駝を多く奪ひ取り而してヱルサレムに歸りぬ
第15章
1 茲に神の靈オデデの子アザリヤに臨みければ
2 彼出ゆきてアサを迎󠄃へ之に言けるはアサおよびユダとベニヤミンの人々よ我に聽け汝等がヱホバと偕にをる間はヱホバも汝らと偕に在すべし汝ら若かれを求めなば彼に遇󠄃ん然どかれを棄なば彼も汝らを棄たまはん
3 抑イスラエルには眞の神なく敎訓を施こす祭司なく律法なきこと日久しかりしが
4 患難の時にイスラエルの神ヱホバに立かへりて之を求めたれば即ちこれに遇󠄃り
5 當時は出る者にも入る者にも平󠄃安なく惟大なる苦患くにぐにの民に臨めり
6 國は國に邑は邑に擊碎かる其は神諸の患難をもて之を苦しめたまへばなり
7 然ば汝ら强かれよ汝らの手を弱󠄃くする勿れ汝らの行爲には賞賜あるべければなりと
811㌻
8 アサこれらの言および預言者オデデの預言を聽て力を得憎むべき者をユダとベニヤミンの全󠄃地より除きまた其エフライムの山地に得たる邑々より除きヱホバの廊の前󠄃なるヱホバの壇を再興せり
9 彼またユダとベニヤミンの人々およびエフライム、マナセ、シメオンより來りて寄寓る者を集めたりイスラエルの人々の中ヱホバ神のアサと偕に在すを見てアサに降れる者夥多しかりしなり
10 彼等すなはちアサの治世の十五年の三月にヱルサレムに集り
11 其たづさへ來れる掠取物の中より牛七百羊七千をその日ヱホバに献げ
12 皆契󠄅約を結びて曰く心を盡し精神を盡して先祖の神ヱホバを求めん
13 凡てイスラエルの神ヱホバを求めざる者は大小男女の區別なく之を殺さんと
14 而して大聲を擧げ號呼をなし喇叭を吹き角を鳴してヱホバに誓を立て
15 ユダみなその誓を喜べり即ち彼ら一心をもて誓を立て一念にヱホバを求めたればヱホバこれに遇󠄃ひ四方において之に安息をたまへり
〘625㌻〙
16 偖またアサ王の母マアカ、アシラ像を作りしこと有ければアサこれを貶して太后たらしめずその像を斫たふして粉々に碎きキデロン川にてこれを焚り
17 但し崇邱は尙イスラエルより除かざりき然どもアサの心は一生の間全󠄃かりしなり
18 彼はまたその父󠄃の納󠄃めたる物および己が納󠄃めたる物すなはち金銀ならびに器皿等をヱホバの家に携へいれり
19 アサの治世の三十五年までは再び戰爭あらざりき
第16章
1 アサの治世の三十六年にイスラエルの王バアシヤ、ユダに攻のぼりユダの王アサの所󠄃に誰をも徃來せざらしめんとてラマを建たり
2 是においてアサ、ヱホバの家と王の家との府庫より金銀を取いだしダマスコに住󠄃るスリアの王ベネハダデに餽りて言けるは
3 我父󠄃と汝の父󠄃の間の如く我と汝の間に約を立ん視よ我今汝に金銀を餽れり徃て汝とイスラエルの王バアシヤとの約を破り彼をして我を離れて去しめよ
812㌻
4 ベネハダデすなはちアサ王に聽き自己の軍勢の長等をイスラエルの邑々に攻遣󠄃ければ彼等イヨン、ダン、アベルマイムおよびナフタリの一切の府庫の邑々を擊たり
5 バアシヤ聞てラマを建ることを罷めその工事を廢せり
6 是においてアサ王ユダ全󠄃國の人を率󠄃ゐバアシヤがラマを建るに用ひたる石と材木を運󠄃びきたらしめ之をもてゲバとミズパを建たり
7 その頃先見者ハナニ、ユダの王アサの許にいたりて之に言けるは汝はスリアの王に倚賴みて汝の神ヱホバに倚賴まざりしに因てスリア王の軍勢は汝の手を脱せり
8 かのエテオピア人とルビ人は大軍にして戰車および騎兵はなはだ多かりしにあらずや然るも汝ヱホバに倚賴みたればヱホバかれらを汝の手に付したまへり
9 ヱホバは全󠄃世界を徧く見そなはし己にむかひて心を全󠄃うする者のために力を顯したまふこの事において汝は愚なる事をなせり故に此後は汝に戰爭あるべしと
10 然るにアサその先見者を怒りて之を獄舍にいれたり其は烈しくこの事のために彼を怒りたればなりアサまた其頃民を虐󠄃げたる事ありき
11 アサの始終󠄃の行爲はユダとイスラエルの列王の書に記さる
12 アサはその治世の三十九年に足を病みその病患つひに劇しくなりしがその病患の時にもヱホバを求めずして醫師を求めたり
13 アサその先祖等と偕に寢りその治世の四十一年に死り〘626㌻〙
14 人衆これをその己のためにダビデの邑に堀おける墓に葬り製香の術をもて製したる種々の香物を盈せる床の上に置き之がために夥多しく焚物をなせり
第17章
1 アサの子ヨシヤパテ、アサに代りて王となりイスラエルにむかひて力を强くし
2 ユダの一切の堅固なる邑々に兵を置きユダの地およびその父󠄃アサが取たるエフライムの邑々に鎭臺を置く
813㌻
3 ヱホバ、ヨシヤパテとともに在せり其は彼その父󠄃ダビデの最初の道󠄃に步みてバアル等を求めず
4 その父󠄃の神を求めてその誡命に步みイスラエルの行爲に傚はざればなり
5 このゆゑにヱホバ國を彼の手に堅く立たまへりまたユダの人衆みなヨシヤパテに禮物を餽れり彼は富と貴とを極めたり
6 是において彼ヱホバの道󠄃にその心を勵まし遂󠄅に崇邱とアシラ像とをユダより除けり
7 彼またその治世の三年にその牧伯ベネハイル、オバデヤ、ゼカリヤ、ネタンエルおよびミカヤを遣󠄃はしてユダの邑々にて敎誨をなさしめ
8 またレビ人の中よりシマヤ、ネタニヤ、ゼバデヤ、アサヘル、セミラモテ、ヨナタン、アドニヤ、トビヤ、トバドニヤなどいふレビ人を遣󠄃して之と偕ならしめ且祭司エリシヤマとヨラムをも之と偕に遣󠄃はしけるが
9 彼らはヱホバの律法の書を携ヘユダにおいて敎誨をなしユダの邑々を盡く行めぐりて民を敎へたり。
10 是においてユダの周󠄃圍の地の國々みなヱホバを懼れてヨシヤパテを攻ることをせざりき
11 またペリシテ人の中に禮物および貢の銀をヨシヤパテに餽れる者あり且又󠄂アラビヤ人は家畜をこれに餽れり即ち牡羊七千七百牡山羊七千七百
12 ヨシヤパテは益々大になりゆきてユダに城および府庫邑を多く建て
13 ユダの邑々に多くの工事を爲し大勇士たる軍人をヱルサレムに置り
14 彼等を數ふるにその宗家に循へば左のごとしユダより出たる千人の長の中にはアデナといふ軍長あり大勇士三十萬これに從がふ
15 その次は軍長ヨハナン之に從ふ者は二十八萬人
16 その次はジクリの子アマシヤ彼は悅びてその身をヱホバに献げたり大勇士二十萬これに從がふ
814㌻
17 ベニヤミンより出たる者の中にはエリアダといふ大勇士あり弓および楯を持もの二十萬これに從がふ
18 その次はヨザバデ戰門の準備をなせる者十八萬これに從がふ
19 是等は皆王に事ふる者等なり此外にまたユダ全󠄃國の堅固なる邑々に王の置る者あり〘627㌻〙
第18章
1 ヨシヤパテは富と貴とを極めアハブと緣を結べり
2 かれ數年の後サマリアに下りてアハブを訪ければアハブ彼およびその部從のために牛羊を多く宰りギレアデのラモテに俱に攻上らんことを彼に勸む
3 すなはちイスラエルの王アハブ、ユダの王ヨシヤパテに言けるは汝我とともにギレアデのラモテに攻ゆくやヨシヤパテこれに答へけるは我は汝のごとく我民は汝の民のごとし汝とともに戰門に臨まんと
4 ヨシヤパテまたイスラエルの王に言けるは請󠄃ふ今日ヱホバの言を問たまへと
5 是においてイスラエルの王預言者四百人を集めて之に言けるは我らギレアデのラモテに徃て戰ふべきや又󠄂は罷べきや彼等いひけるは攻上りたまへ神これを王の手に付したまふべしと
6 ヨシヤパテいひけるは此外に我らの由て問べきヱホバの預言者此にあらざるや
7 イスラエルの王こたへてヨシヤパテに言けるは外になほ一人あり我ら之によりてヱホバに問ことを得ん然ど彼は今まで我につきて善事を預言せず恒に惡き事のみを預言すれば我彼を惡むなり其者は即ちイムラの子ミカヤなりと然るにヨシヤパテこたへて王しか宣ふ勿れと言ければ
8 イスラエルの王一人の官吏を呼てイムラの子ミカヤを急󠄃ぎ來らしめよと言り
9 イスラエルの王およびユダの王ヨシヤパテは朝󠄃衣を纒ひサマリアの門の入口の廣場にて各々その位に坐し居り預言者は皆その前󠄃に預言せり
10 時にケナアナの子ゼデキヤ鐵の角を造󠄃りて言けるはヱホバかく言たまふ汝是等をもてスリア人を衝て滅ぼし盡すべしと
11 預言者みな斯預言して云ふギレアデのラモテに攻上りて勝󠄃利を得たまへヱホバこれを王の手に付したまふべしと
815㌻
12 茲にミカヤを召んとて徃たる使者これに語りて言けるは預言者等の言は一の口より出るがごとくにして王に善し請󠄃ふ汝の言をも彼らの一人のごとくなして善事を言ヘ
13 ミカヤ言けるはヱホバは活く我神の宣ふ所󠄃を我は陳べんと
14 かくて王に至るに王彼に言けるはミカヤよ我らギレアデのラモテに徃て戰かふべきや又󠄂は罷べきや彼言けるは上りゆきて利を得たまへ彼らは汝の手に付されんと
15 王かれに言けるは我幾度なんぢを誓はせたらば汝ヱホバの名をもて唯眞實のみを我に吿るや
16 彼言けるは我イスラエルが皆牧者なき羊のごとく山に散をるを見たるがヱホバ是等の者は主なし各々やすらかに其家に歸るべしと言たまへり〘628㌻〙
17 イスラエルの王是においてヨシヤパテに言けるは我なんぢに吿て彼は善事を我に預言せず只惡き事のみを預言せんと言しに非ずやと
18 ミカヤまた言けるは然ば汝らヱホバの言を聽べし我視しにヱホバその位に坐し居たまひて天の萬軍その傍に右左に立をりしが
19 ヱホバ言たまひけるは誰かイスラエルの王アハブを誘ひて彼をしてギレアデのラモテにのぼりゆきて彼處に斃れしめんかと即ち一は此ごとくせんと言ひ一は彼ごとくせんと言ければ
20 遂󠄅に一の靈すすみ出てヱホバの前󠄃に立ち我かれを誘はんと言たればヱホバ何をもてするかと之に問たまふに
21 我いでて虛言を言ふ靈となりてその諸の預言者の口にあらんと言りヱホバ言たまひけるは汝は誘なひ且これを成就ん出て然すべしと
22 故に視よヱホバ虛言を言ふ靈を汝のこの預言者等の口に入たまへり而してヱホバ汝に災禍を降さんと定めたまふと
23 時にケナアナの子ゼデキヤ近󠄃よりてミカヤの頬を批て言けるはヱホバの靈何の途󠄃より我を離れゆきて汝と言ふや
24 ミカヤ言けるは汝奧の室にいりて身を匿す日に見るべし
25 イスラエルの王いひけるはミカヤを取てこれを邑の宰アモンおよび王の子ヨアシに曵かへりて言べし
816㌻
26 王かく言ふ我が安然に歸るまで比者を牢にいれて苦惱のパンを食󠄃せ苦惱の水を飮せよと
27 ミカヤ言けるは汝もし眞に平󠄃安に歸るならばヱホバ我によりて斯宣ひし事あらずと而してまた言り汝ら民よ皆聽べしと
28 かくてイスラエルの王およびユダの王ヨシヤパテはギレアデのラモテに上りゆけり
29 イスラエルの王時にヨシヤパテに言けるは我は服󠄃裝を變て戰陣の中にいらん汝は朝󠄃衣を纒ひたまへとイスラエルの王すなはち服󠄃裝を變へ二人俱に戰陣の中にいれり
30 スリアの王その戰車の長等にかねて命じおけり云く汝ら小き者とか大なる者とも戰ふなかれ惟イスラエルの王とのみ戰へと
31 戰車の長等ヨシヤパテを見て是はイスラエルの王ならんと言ひ身をめぐらして之と戰はんとせしがヨシヤパテ號呼ければヱホバこれを助けたまへり即ち神彼らを感動して之を離れしめたまふ
32 戰車の長等彼がイスラエルの王にあらざるを見しかば之を追󠄃ことをやめて引返󠄄せり
33 茲に一箇の人何心なく弓を彎てイスラエルの王の胸當と草摺の間に射あてたれば彼その御者に言けるは我傷を受たれば汝手を旋らして我を軍中より出せと〘629㌻〙
34 此日戰爭烈しくなりぬイスラエルの王は車の中に自ら扶持て立ち薄暮までスリア人をささへをりしが日の沒る頃にいたりて死り
第19章
1 ユダの王ヨシヤパテは恙なくヱルサレムに歸りてその家に至れり
2 時に先見者ハナニの子ヱヒウ、ヨシヤパテ王を出むかへて之に言けるは汝惡き者を助けヱホバを惡む者を愛して可らんや之がためにヱホバの前󠄃より震怒なんぢの上に臨む
3 然ながら善事もまた汝の身に見ゆ即ち汝はアシラ像を國中より除きかつ心を傾けて神を求むるなりと
4 ヨシヤパテはヱルサレムに住󠄃をりしが復出てベエルシバよりエフライムの山地まで民の間を行めぐりその先祖の神ヱホバにこれを導󠄃き歸せり
817㌻
5 彼またユダの一切の堅固なる邑に裁判󠄄人を立つ國中の邑々みな然り
6 而して裁判󠄄人に言けるは汝等その爲ところを愼め汝らは人のために裁判󠄄するに非ずヱホバのために裁判󠄄するなり裁判󠄄する時にはヱホバ汝らと偕にいます
7 然ば汝らヱホバを畏れ愼みて事をなせ我らの神ヱホバは惡き事なく人を偏󠄃視ことなく賄賂を取こと無ればなり
8 ヨシヤパテまたレビ人祭司およびイスラエルの族長を選󠄄びてヱルサレムに置きヱホバの事および訴訟を審判󠄄しむ彼らはヱルサレムにかへれり
9 ヨシヤパテこれに命じて云く汝らヱホバを畏れ眞實と誠心をもて斯おこなふべし
10 凡てその邑々に住󠄃む汝らの兄弟血を相流せる事または律法と誡命法度と條例などの事につきて汝らに訴へ出ること有ばこれを諭してヱホバに罪を犯さざらしめよ恐らくは震怒なんぢと汝らの兄弟にのぞまん汝ら斯おこなはば愆なかるべし
11 視よ祭司の長アマリヤ汝らの上にありてヱホバの事を凡て司どりユダの家の宰イシマエルの子ゼバデヤ王の事を凡て司どる亦レビ人汝らの前󠄃にありて官吏とならん汝ら心を强くして事をなせヱホバ善人を祐けたまふべし
第20章
1 この後モアブの子孫アンモンの子孫およびマオニ人等ヨシヤパテと戰はんとて攻きたれり
2 時に或人きたりてヨシヤパテに吿て云ふ海の彼旁スリアより大衆汝に攻きたる視よ今ハザゾンタマルにありとハザゾンタマルはすなはちエンゲデなり
3 是においてヨシヤパテ懼れ面をヱホバに向てその助を求めユダ全󠄃國に斷食󠄃を布令しめたれば〘630㌻〙
4 ユダ擧て集りヱホバの助を求めたり即ちユダの一切の邑より人々きたりてヱホバを求む
818㌻
5 時にヨシヤパテ、ヱホバの室の新しき庭の前󠄃においてユダとヱルサレムの會衆の中に立ち
6 言けるは我らの先祖の神ヱホバよ汝は天の神にましますに非ずや異邦人の諸國を統たまふに非ずや汝の手には能力あり權勢ありて誰もなんぢを禦ぐこと能はざるに非ずや
7 我らの神よ汝は此國の民を汝の民イスラエルの前󠄃より逐󠄃はらひて汝の友アブラハムの子孫に之を永く與へたまひしに非ずや
8 彼らは此に住󠄃み汝の名のために此に聖󠄄所󠄃を建て言へり
9 刑罰の劍疫病饑饉などの災禍われらに臨まん時は我らこの家の前󠄃に立て汝の前󠄃にをりその苦難の中にて汝に呼號らんしかして汝聽て助けたまはん汝の名はこの家にあればなりと
10 今アンモン、モアブおよびセイル山の子孫を視たまへ在昔イスラエル、エジプトの國より出きたれる時汝イスラエルに是等を侵さしめたまはざりしかば之を離れさりて滅ぼさざりしなり
11 かれらが我らに報ゆる所󠄃を視たまへ彼らは汝がわれらに有たしめたまへる汝の產業より我らを逐󠄃はらはんとす
12 我らの神よ汝かれらを鞫きたまはざるや我らは此斯く攻よせたる此の大衆に當る能力なく又󠄂爲ところを知ず唯汝を仰ぎ望󠄇むのみと
13 ユダの人々はその小者および妻子とともに皆ヱホバの前󠄃に立をれり
14 時に會衆の中にてヱホバの靈アサフの子孫たるレビ人ヤハジエルに臨めりヤハジエルはゼカリヤの子ゼカリヤはベナヤの子ベナヤはヱイエルの子ヱイエルはマツタニヤの子なり
15 ヤハジエルすなはち言けるはユダの人衆およびヱルサレムの居民ならびにヨシヤパテ王よ聽べしヱホバかく汝らに言たまふ此大衆のために懼るる勿れ慄くなかれ汝らの戰に非ずヱホバの戰なればなり
16 なんぢら明日彼らの所󠄃に攻くだれ彼らはヂヅの坡より上り來る汝らヱルエルの野の前󠄃なる谷の口にて之に遇󠄃ん
819㌻
17 この戰爭には汝ら戰ふにおよばずユダおよびヱルサレムよ汝ら惟進󠄃みいでて立ち汝らとともに在すヱホバの拯救を見よ懼る勿れ慄くなかれ明日彼らの所󠄃に攻いでよヱホバ汝らとともに在せばなりと
18 是においてヨシヤパテ首をさげて地に俯伏りユダの人衆およびヱルサレムの民もヱホバの前󠄃に伏てヱホバを拜す
19 時にコハテの子孫およびコラの子孫たるレビ人立あがり聲を高くあげてイスラエルの神ヱホバを讃美せり
〘631㌻〙
20 かくて皆朝󠄃はやく起󠄃てテコアの野に出ゆけり其いづるに當りてヨシヤパテ立て言けるはユダの人衆およびヱルサレムの民よ我に聽け汝らの神ヱホバを信ぜよ然ば汝ら堅くあらんその預言者を信ぜよ然ば汝ら利あらん
21 彼また民と議りて人々を選󠄄び之をして聖󠄄き飾󠄃を著て軍勢の前󠄃に進󠄃ましめヱホバにむかひて歌をうたひ且これを讃美せしめヱホバに感謝せよ其恩惠は世々かぎりなしと言しむ
22 その歌を歌ひ讃美をなし始むるに當りてヱホバ伏兵を設けかのユダに攻きたれるアンモン、モアブ、セイル山の子孫をなやましたまひければ彼ら打敗られたり
23 即ちアンモンとモアブの子孫起󠄃てセイル山の民にむかひ盡くこれを殺して滅ししがセイルの民を殺し盡すに及びて彼らも亦力をいだして互に滅ぼしあへり
24 ユダの人々野の觀望󠄇所󠄃に至りてかの群衆を觀たりければ唯地に仆れたる死屍のみにして一人だに逃󠄄れし者なかりき
25 是においてヨシヤパテおよびその民彼らの物を奪はんとて來り觀にその死屍の間に財寳衣服󠄃および珠玉などおびただしく在たれば則ち各々これを剝とりけるが餘に多くして携さへ去こと能はざる程なりき其物多かりしに因て之を取に三日を費しけるが
26 第四日にベラカ(感謝)の谷に集り其處にてヱホバに感謝せり是をもてその處の名を今日までベラカ(感謝)の谷と呼ぶ
820㌻
27 而してユダとヱルサレムの人々みな各々歸りきたりヨシヤパテの後にしたがひ歡びてヱルサレムに至れり其はヱホバ彼等をしてその敵の故によりて歡喜を得させたまひたればなり
28 即ち彼ら瑟と琴および喇叭を合奏してヱルサレムに徃てヱホバの室にいたる
29 諸の國の民ヱホバがイスラエルの敵を攻擊たまひしことを聞て神を畏れたれば
30 ヨシヤパテの國は平󠄃穩なりき即ちその神四方において之に安息を賜へり
31 ヨシヤパテはユダの王となり三十五歳のときその位に即き二十五年の間ヱルサレムにて世を治めたり其母はシルヒの女にして名をアズバといふ
32 ヨシヤパテはその父󠄃アサの道󠄃にあゆみて之を離れずヱホバの目に善と觀たまふ事を行へり
33 然れども崇邱はいまだ除かず又󠄂民はいまだその先祖の神に心を傾けざりき
34 ヨシヤパテのその餘の始終󠄃の行爲はハナニの子ヱヒウの書に記さるヱヒウの事はイスラエルの列王の書に載す
〘632㌻〙
35 ユダの王ヨシヤパテ後にイスラエルの王アハジアと相結べりアハジアは大に惡を行ふ者なりき
36 ヨシヤパテ、タルシシに遣󠄃る舟を造󠄃らんとて彼と相結びてエジオンゲベルにて共に舟數隻を造󠄃れり
37 時にマレシヤのドダワの子エリエゼル、ヨシヤパテにむかひて預言して云ふ汝アハジアと相結びたればヱホバなんぢの作りし者を毀ちたまふと即ちその舟は皆壞れてタルシシに徃くことを得ざりき
第21章
1 ヨシヤパテその先祖等とともに寢りてダビデの邑にその先祖等とともに葬られその子ヨラムこれに代て王となる
2 ヨシヤパテの子たるその兄弟はアザリヤ、ヱヒエル、ゼカリヤ、アザリヤ、ミカエルおよびシバテヤ是みなイスラエルの王ヨシヤパテの子なり
3 その父󠄃彼らに金銀寶物の賜物を多く與へまたユダの守衞の邑々を與へけるが國はヨラムに與へたりヨラム長子なりければなり
821㌻
4 ヨラムその父󠄃の位に登りて力つよくなりければその兄弟等をことごとく劍にかけて殺し又󠄂イスラエルの牧伯等數人を殺せり
5 ヨラムは三十二歳の時位に即ヱルサレムにて八年の間世を治めたり
6 彼はアハブの家のなせるごとくイスラエルの王等の道󠄃にあゆめりアハブの女を妻となしたればなり斯かれヱホバの目に惡と觀たまふ事をなせしかども
7 ヱホバ曩にダビデに契󠄅約をなし且彼とその子孫とに永遠󠄄に光明を與へんと言たまひし故によりてダビデの家を滅ぼすことを欲み給はざりき
8 ヨラムの世にエドム人叛きてユダの手に服󠄃せず自ら王を立たれば
9 ヨラム其牧伯等および一切の戰車をしたがへて渉りゆき夜の中に起󠄃いでて自己を圍めるエドム人を擊ちその戰車の長等を擊り
10 エドム人は斯叛きてユダの手に服󠄃せずなりしが今日まで然り此時にあたりてリブナもまた叛きてユダの手に服󠄃せずなりぬ是はヨラムその先祖の神ヱホバを棄たるに因てなり
11 彼またユダの山々に崇邱を作りてヱルサレムの民に姦淫をおこなはせユダを惑はせり
12 時に預言者エリヤの書ヨラムの許に達󠄃せり其言に云く汝の先祖ダビデの神ヱホバかく言たまふ汝はその父󠄃ヨシヤパテの道󠄃にあゆまずまたユダの王アサの道󠄃にあゆまずして
13 イスラエルの王等の道󠄃にあゆみユダの人とヱルサレムの民をしてアハブの家の姦淫をなせるごとくに姦淫を行はしめまた汝の父󠄃の家の者にて汝に愈れるところの汝の兄弟等を殺せり〘633㌻〙
14 故にヱホバ大なる災禍をもて汝の民汝の子女汝の妻等および汝の一切の所󠄃有を擊たまふべし
15 汝はまた臓腑の疾を得て大病になりその疾日々に重りて臓腑つひに墜んと
822㌻
16 即ちヱホバ、ヨラムを攻させんとてエテオピアに近󠄃きところのペリシテ人とアラビヤ人の心を振起󠄃したまひければ
17 彼らユダに攻のぼりて之を侵し王の家に在ところの貨財を盡く奪ひ取りまたヨウムの子等と妻等をも携へ去れり是をもてその末子ヱホアハズの外には一人も遺󠄃れる者なかりき
18 此もろもろの事の後ヱホバ彼を擊て臓腑に愈ざる疾を生ぜしめたまひければ
19 月日を送󠄃り二年を經るにおよびてその臓腑疾のために墜ち重き病苦によりて死ねり民かれの先祖のために焚物をなせし如く彼のためには焚物をなさざりき
20 彼は三十二歳の時位に即き八年の間ヱルサレムにて世を治めて終󠄃に薨去れり之を惜む者なかりき人衆これをダビデの邑に葬れり但し王等の墓にはあらず
第22章
1 ヱルサレムの民ヨラムの季子アハジアを王となして之に繼しむ其は曾てアラビヤ人とともに陣營に攻きたりし軍兵その長子をことごとく殺したればなり是をもてユダの王ヨラムの子アハジア王となれり
2 アハジアは四十二歳の時位に即きヱルサレムにて一年の間世を治めたりその母はオムリの女にして名をアタリヤといふ
3 アハジアもまたアハブの家の道󠄃に步めり其母かれを敎へて惡をなさしめたるなり
4 即ち彼はアハブの家のごとくにヱホバの目の前󠄃に惡をおこなへり其父󠄃の死し後彼かくアハブの家の者の敎にしたがひたれば終󠄃に身を滅ぼすに至れり
5 アハジアまた彼らの敎にしたがひイスラエルの王アハブの子ヨラムとともにギレアデのラモテにゆきてスリアの王ハザエルと戰ひけるにスリア人ヨラムに傷を負󠄅せたり
6 是においてヨラムはそのスリアの王ハザエルと戰ふにあたりてラムにて負󠄅たる傷を療さんとてヱズレルに歸れりユダの王ヨラムの子アザリヤはアハブの子ヨラムが病をるをもてヱズレルに下りてこれを訪ふ
823㌻
7 アハジアがヨラムを訪ふて害󠄅に遇󠄃しは神の然らしめたまへるなり即ちアハジアは來り居てヨラムとともに出てニムシの子ヱヒウを迎󠄃へたりヱヒウはヱホバが曩にアハブの家を絕去しめんとて膏を沃ぎたまひし者なり〘634㌻〙
8 ヱヒウ、アハブの家を罰するに方りてユダの牧伯等およびアハジアの兄弟等の子等がアハジアに奉へをるに遇󠄃て之を殺せり
9 アハジアはサマリヤに匿れたりしがヱヒウこれを探求めければ人々これを執ヘヱヒウの許に曵きたりて之を殺せり但し彼は心を盡してヱホバを求めたるヨシヤパテの子なればとてこれを葬れり斯りしかばアハジアの家は國を統治むる力なくなりぬ
10 茲にアハジアの母アタリヤその子の死たるを見て起󠄃てユダの家の王子をことごとく滅ぼしたりしが
11 王の女ヱホシバ、アハジアの子ヨアシを王の子等の殺さるる者の中より竊み取り彼とその乳󠄃媼を夜衣の室におきて彼をアタリヤに匿したればアタリヤかれを殺さざりきヱホシバはヨラム王の女アハジアの妹にして祭司ヱホヤダの妻なり
12 かくてヨアシはヱホバの家に匿れて彼らとともにをること六年アタリヤ國に王たりき
第23章
1 第七年にいたりヱホヤダ力を强してヱロハムの子アザリヤ、ヨハナンの子イシマエル、オベデの子アザリア、アダヤの子マアセヤ、ジクリの子エシヤパテなどいふ百人の長等を招きて己と契󠄅約を結ばしむ
2 是において彼らユダを行めぐりてユダの一切の邑よりレビ人を集めまたイスラエルの族長を集めてヱルサレムに歸り
3 而してその會衆みな神の家において王と契󠄅約を結べり時にヱホヤダかれらに言けるけるはダビデの子孫の事につきてヱホバの宣まひしごとく王の子位に即べきなり
4 然ば汝ら斯なすべし汝ら祭司およびレビ人の安息日に入きたる者は三分󠄃の一は門を守り
5 三分󠄃の一は王の家に居り三分󠄃の一は基礎の門に居り民はみなヱホバの室の庭に居べし
824㌻
6 祭司と奉事をするレビ人の外は何人もヱホバの家に入べからず彼らは聖󠄄者なれば入ことを得るなり民はみなヱホバの殿を守るべし
7 レビ人はおのおの手に武器を執て王を繞りて立べし家に入る者をば凡て殺すべし汝らは王の出る時にも入る時にも王とともに居れと
8 是においてレビ人およびユダの人衆は祭司ヱホヤダが凡て命じたる如くに行ひ各々その手の人の安息日に入來べき者と安息日に出ゆくべき者とを率󠄃ゐ居れり祭司ヱホヤダ班列の者を去せざればなり
9 祭司ヱホヤダすなはち神の家にあるダビデ王の鎗および大楯小楯を百人の長等に交し
10 一切の民をして各々武器を手に執て王の四周󠄃に立ち殿の右の端より殿の左の端におよびて壇と殿にそふて居しむ〘635㌻〙
11 斯て人衆王の子を携へ出し之に冠冕を戴かせ證詞をわたして王となし祭司ヱホヤダおよびその子等これに膏をそそげり而して皆王長壽かれと言ふ
12 茲にアタリヤ民と近󠄃衞兵と王を讃る者との聲を聞きヱホバの室に入て民の所󠄃に至り
13 視に王は入口にてその柱の傍に立ち王の側に軍長と喇叭手立をり亦國の民みな喜びて喇叭を吹き謳歌者樂を奏し先だちて讃美を歌ひをりしかばアタリヤその衣を裂き叛逆󠄃なり叛逆󠄃なりと言り
14 時に祭司ヱホヤダ軍兵を統る百人の長等を呼出してこれに言ふ彼をして列の間を通󠄃りて出しめよ凡て彼に從がふ者をば劍をもて殺すべしと祭司は彼をヱホバの室に殺すべからずとて斯いへるなり
15 是をもて之がために路をひらき王の家の馬の門の入口まで徃しめて其處にて之を殺せり
16 斯てヱホヤダ己と一切の民と王との間にわれらは皆ヱホバの民とならんことの契󠄅約を結べり
17 是において民みなバアルの室にゆきて之を毀ちその壇とその像を打碎きバアルの祭司マツタンを壇の前󠄃に殺せり
825㌻
18 ヱホヤダまたヱホバの室の職事を祭司レビ人の手に委ぬ昔ダビデ、レビ人を班列にわかちてヱホバの室におきモーセの律法に記されたる所󠄃にしたがひて歡喜と謳歌とをもてヱホバの燔祭を献げしめたりき今このダビデの例に傚ふ
19 彼またヱホバの室の門々に看守者を立せ置き身の汚れたる者には何によりて汚れたるにもあれ凡て入ことを得ざらしむ
20 斯てヱホヤダ百人の長等と貴族と民の牧伯等および國の一切の民を率󠄃ゐてヱホバの家より王を導󠄃きくだり上の門よりして王の家にいり王を國の位に坐せしめたり
21 斯りしかば國の民みな喜こびて邑は平󠄃穩なりきアタリヤは劍にて殺さる
第24章
1 ヨアシは七歳の時位に即きヱルサレムにて四十年の間世を治めたりその母はベエルシバより出たる者にして名をヂビアといふ
2 ヨアシは祭司ヱホヤダの世にある日の間は恒にヱホバの善と觀たまふことを行へり
3 ヱホヤダ彼のために二人の妻を娶れり男子女子生る
4 此後ヨアシ、ヱホバの室を修繕んと志し
5 祭司とレビ人を集めて之に言けるは汝ら出てユダの邑々に徃き汝らの神ヱホバの室を歳々修繕ふべき金子をイスラエルの人衆より聚むべし其事を亟にせよと然るにレビ人これを亟にせざりき〘636㌻〙
6 王ヱホヤダ長を召てこれに言けるは汝なんぞレビ人に求めてヱホバの僕モーセおよびイスラエルの會衆の古昔證詞の幕屋のために集めたるが如き税をユダとヱルサレムより取きたらせざるやと
7 かの惡き婦󠄃アタリヤの子等神の家を壞りかつヱホバの家の諸の奉納󠄃物をバアルに供へたり
8 是において王の命にしたがひて一箇の匱を作りヱホバの室の門の外にこれを置き
9 ユダとヱルサレムに宣布て汝ら神の僕モーセが荒野にてイスラエルに課したる如き税をヱホバに携へきたれと言けるに
826㌻
10 一切の牧伯等および一切の民みな喜びて携へきたりその匱に投いれて遂󠄅に納󠄃めをはれり
11 レビ人その匱に金の多くあるを見てこれを王の廳に携へゆく時は王の書記と祭司の長の下役きたりてその匱を傾むけ復これを取て本の處に持ゆけり日々に斯のごとくして金を聚むること夥多し
12 而して王とヱホヤダこれをヱホバの家の工事を爲す者に付し石工および木匠を雇ひてヱホバの室を修繕はせまた鐵工および銅工を雇ひてヱホバの室を修復せしめけるが
13 工人動作てその工事を成をへ神の室を本の狀に復してこれを堅固にす
14 その旣に成るにおよびて餘れる金を王とヱホヤダの前󠄃に持いたりければ其をもてヱホバの室のために器皿を作れり即ち奉事の器献祭の器および匙ならびに金銀の器を作れりヱホヤダが世に在る日の間はヱホバの室にて燔祭をささぐること絕ざりき
15 ヱホヤダは年邁み日滿て死りその死る時は百三十歳なりき
16 人衆ダビデの邑にて王等の中間にこれを葬むる其は彼イスラエルの中において神とその殿とにむかひて善事をおこなひたればなり
17 ヱホヤダの死たる後ユダの牧伯等きたりて王を拜す是において王これに聽したがふ
18 彼らその先祖の神ヱホバの室を棄てアシラ像および偶像に事へたればその愆のために震怒ユダとヱルサレムに臨めり
19 ヱホバかれらを己にひきかへさんとて預言者等を遣󠄃はし之にむかひて證をたてさせたまひしかども聽ことをせざりき
20 是において神の靈祭司ヱホヤダの子ゼカリヤに臨みければ彼民の前󠄃に高く起󠄃あがりて之に言けるは神かく宣ふ汝らヱホバの誡命を犯して災禍を招くは何ぞや汝らヱホバを棄たればヱホバも汝らを棄たまふと〘637㌻〙
21 然るに人衆かれを害󠄅せんと謀り王の命によりて石をもてこれをヱホバの室の庭にて擊殺せり
22 斯ヨアシ王はゼカリヤの父󠄃ヱホヤダが己にほどこせし恩を念ずしてその子を殺せり彼死る時にヱホバこれを顧󠄃みこれを問討したまへと言り
827㌻
23 かくてその年の終󠄃るにおよびてスリアの軍勢かれにむかひて攻のぼりユダとヱルサレムにいたりて民の牧伯等をことごとく民の中より滅ぼし絕ちその掠取物を凡てダマスコの王に遣󠄃れり
24 この時スリアの軍勢は小勢にて來りけるにヱホバ大軍をこれが手に付したまへり是はその先祖の神ヱホバを棄たるが故なり斯かれらヨアシを罰せり
25 スリア人ヨアシに大傷をおはせて遺󠄃去けるがヨアシの臣僕等祭司ヱホヤダの子等の血のために黨をむすびて之に叛き之をその床の上に弑して死しめたり人衆これをダビデの邑に葬れり但し王の墓には葬らざりき
26 黨をむすびて之に叛きし者はアンモンの婦󠄃シメアテの子ザバデおよびモアブの婦󠄃シムリテの子ヨザバデなりき
27 ヨアシの子等の事ヨアシの吿られし預言および神の室を修繕し事などは列王の書の註釋に記さるヨアシの子アマジヤこれに代りて王となれり
第25章
1 アマジヤは二十五歳の時位に即きヱルサレムにて二十九年の間世を治めたりその母はヱルサレムの者にして名をヱホアダンといふ
2 アマジヤはヱホバの善と視たまふ事を行なひしかども心を全󠄃うしてこれを爲ざりき
3 彼國のおのが手に堅く立つにおよびてその父󠄃王を弑せし臣僕等を殺せり
4 然どその子女等をば殺さずしてモーセの書の律法に記せるごとく爲り即ちヱホバ命じて言たまはく父󠄃はその子女の故によりて殺さるべからず子女はその父󠄃の故によりて殺さるべからず各々おのれの罪によりて殺さるべきなりと
828㌻
5 アマジヤ、ユダの人を集めその父󠄃祖の家にしたがひて或は千人の長に附屬せしめ或に百人の長に附屬せしむユダとベニヤミンともに然り且二十歳以上の者を數へ戈と楯とを執て戰鬪に臨む倔强の士三十萬を得
6 また銀百タラントをもてイスラエルより大勇士十萬を傭へり
7 時に神の人かれに詣りて言けるは王よイスラエルの軍勢をして汝とともに徃しむる勿れヱホバはイスラエル人すなはちエフライムの子孫とは偕にいまさざるなり
8 汝もし徃ば心を强くして戰鬪を爲せ神なんぢをして敵の前󠄃に斃れしめたまはん神は助くる力ありまた倒す力あるなり〘638㌻〙
9 アマジヤ神の人にいひけるは然ば已にイスラエルの軍隊に與へたる百タラントを如何にすべきや神の人答へけるはヱホバは其よりも多き者を汝に賜ふことを得るなりと
10 是においてアマジヤかのエフライムより來りて己に就る軍隊を分󠄃離してその處に歸らしめければ彼らユダにむかひて烈しく怒を發し火のごとくに怒りてその處に歸れり
11 かくてアマジヤは力を强くしその民を率󠄃ゐて鹽の谷に徃きセイル人一萬を擊殺せり
12 ユダの子孫またこの外に一萬人を生擒て磐の頂に曵ゆき磐の頂よりこれを投おとしければ皆微塵に碎けたり
13 前󠄃にアマジヤが己とともに戰鬪に徃べからずとして歸し遣󠄃たる軍卒等サマリアよりベテホロンまでのユダの邑々を襲ひ人三千を擊ころし物を多く奪ふ
14 アマジヤ、エドム人を戮して歸る時にセイル人の神々を携さへ來り之を安置して己の神となしその前󠄃に禮拜をなし之に香を焚り
15 是をもてヱホバ、アマジヤにむかひて怒を發し預言者をこれに遣󠄃はして言しめたまひけるは彼民の神々は己の民を汝の手より救ふことを得ざりし者なるに汝なにとて之を求むるや
16 彼かく王に語れる時王これにむかひ我儕汝を王の議官となせしや止よ汝なんぞ擊殺されんとするやと言ければ預言者すなはち止て言り我知る汝この事を行びて吾諫を聽いれざるによりて神なんぢを滅ぼさんと決めたまふと
829㌻
17 斯てユダの王アマジヤ相議りて人をヱヒウの子ヱホアハズの子なるイスラエルの王ヨアシに遣󠄃し來れ我儕たがひに面をあはせんと言しめければ
18 イスラエルの王ヨアシ、ユダの王アマジヤに言おくりけるはレバノンの荊蕀かつてレバノンの香柏に汝の女子を我子の妻に與へよと言おくりたること有しにレバノンの野獸とほりてその荊蕀を踏たふせり
19 汝はエドム人を擊破れりと謂ひ心にたかぶりて誇る然ば汝家に安んじ居れ何ぞ禍を惹おこして自己もユダもともに亡びんとするやと
20 然るにアマジヤ聽ことをせざりき此事は神より出たる者にて彼らをその敵の手に付さんがためなり是は彼らエドムの神々を求めしに因る
21 是においてイスラエルの王ヨアシ上りきたりユダのベテシメシにてユダの王アマジヤと面をあはせたりしが
22 ユダ、イスラエルに擊敗られて各々その天幕に逃󠄄かへりぬ〘639㌻〙
23 時にイスラエルの王ヨアシはヱホアハズの子ヨアシの子なるユダの王アマジヤをベテシメシに執へてヱルサレムに携へゆきヱルサレムの石垣をエフライムの門より隅の門まで四百キユビト程を毀ち
24 また神の室の中にてオベデエドムが守り居る一切の金銀および諸の器皿ならびに王の家の財寳を取りかつ人質をとりてサマリアに歸れり
25 ユダの王ヨアシの子アマジヤはイスラエルの王ヱホアハズの子ヨアシの死てより後なほ十五年生存らへたり
26 アマジヤのその餘の始終󠄃の行爲はユダとイスラエルの列王の書に記さるるにあらずや
27 アマジヤ飜へりてヱホバに從がはずなりし後ヱルサレムにおいて黨を結びて彼に敵する者ありければ彼ラキシに逃󠄄ゆきけるにその人々ラキシに人をやりて彼を其處に殺さしめたり
28 人衆これを馬に負󠄅せてきたりユダの邑にてその先祖等とともにこれを葬りぬ
830㌻
第26章
1 是においてユダの民みなウジヤをとりて王となしてその父󠄃アマジヤに代らしめたり時に年十六なりき
2 彼エラテの邑を建てこれを再びユダに歸せしむ是はかの王がその先祖等とともに寢りし後なりき
3 ウジヤは十六歳の時位に即きヱルサレムにて五十二年の間世を治めたりその母はヱルサレムの者にして名をヱコリアといふ
4 ウジヤはその父󠄃アマジヤが凡てなしたる如くヱホバの善と觀たまふ事を行ひ
5 神の默示に明なりしかのゼカリヤの世にある日の間心をこめてヱホバを求めたりそのヱホバを求むる間は神これをして幸福ならしめたまへり
6 彼いでてペリシテ人と戰ひガテの石垣ヤブネの石垣およびアシドドの石垣を圮しアシドドの地ならびにペリシテ人の中間に邑を建つ
7 神かれを助けてペリシテ人グルバアルに住󠄃むアラビヤ人およびメウニ人を攻擊しめたまへり
8 アンモニ人はまたウジヤに貢を納󠄃るウジヤの名つひにエジプトの入口までも廣まれり其は甚だ强くなりければなり
9 ウジヤ、ヱルサレムの隅の門谷の門および角隅に戌樓を建てこれを堅固にし
10 また荒野に戌樓を建て許多の水溜を掘り其は家畜を多く有たればなり亦平󠄃野にも平󠄃地にも家畜を有り又󠄂山々およびカルメルには農夫と葡萄を修る者を有り農事を好みたればなり
11 ウジヤ戰士一旅團あり書記ヱイエルと牧伯マアセヤの數調査によりて隊々にわかれて戰爭に出づ皆王の軍長ハナニヤの手に屬す〘640㌻〙
12 大勇士の族長の數は都合二千六百
13 その手に屬する軍勢は三十萬七千五百人みな大なる力をもて戰ひ王を助けて敵に當る
14 ウジヤその全󠄃軍のために楯戈兜鎧弓および投石器の石を備ふ
15 彼またヱルサレムにおいて工人に機械を案へ造󠄃らしめ之を戌樓および石垣に施こし之をもて矢ならびに大石を射出せり是においてその名遠󠄄く廣まれり其は非常の援助を蒙りて旺盛になりたればなり
831㌻
16 然るに彼旺盛になるにおよびその心に高ぶりて惡き事を行なへり即ち彼その神ヱホバにむかひて罪を犯しヱホバの殿に入て香壇の上に香を焚んとせり
17 時に祭司アザリヤ、ヱホバの祭司たる勇者八十人を率󠄃ゐて彼の後にしたがひ入り
18 ウジヤ王を阻へてこれに言けるはウジヤよヱホバに香を焚ことは汝のなすべき所󠄃にあらずアロンの子孫にして香を焚ために潔󠄄められたる祭司等のなすべき所󠄃なり聖󠄄所󠄃より出よ汝は罪を犯せりヱホバ神なんぢに榮を加へたまはじと
19 是においてウジヤ怒を發し香爐を手にとりて香を焚んとせしがその祭司にむかひて怒を發しをる間に癩病その額に起󠄃れり時に彼はヱホバの室にて祭司等の前󠄃にあたりて香壇の側にをる
20 祭司の長アザリヤおよび一切の祭司等彼を見しに已にその額に癩病生じゐたれば彼を其處より速󠄃にいだせり彼もまたヱホバの己を擊たまへるを見て自ら急󠄃ぎて出去り
21 ウジヤ王はその死る日まで癩病人となり居しがその癩病人となるにおよびては別殿に住󠄃りヱホバの室より斷れたればなり其子ヨタム王の家を管理て國の民を審判󠄄り
22 ウジヤのその餘の始終󠄃の行爲はアモツの子預言者イザヤこれを書記したり
23 ウジヤその先祖等とともに寢りたれば彼は癩病人なりとて王等の墓に連󠄃接る地にこれを葬りてその先祖等とともならしむその子ヨタムこれに代りて王となれり
第27章
1 ヨタムは二十五歳の時位に即きヱルサレムにて十六年の間世を治めたり其母はザドクの女にして名をヱルシヤといふ
2 ヨタムはその父󠄃ウジヤの凡て爲たるごとくヱホバの善と視たまふ事をなせり但しヱホバの殿には入ざりき民は尙惡き事を爲り
3 彼ヱホバの家の上の門を建なほしオペルの石垣を多く築き增し
832㌻
4 ユダの山地に數箇の邑を建て林の間に城および戌樓を築けり
5 彼アンモニ人の王と戰ひこれに勝󠄃り其年アンモンの子孫銀百タラント小麥一萬石大麥一萬石を彼におくれりアンモンの子孫は第二年にも第三年にも是のごとく彼に貢をいる〘641㌻〙
6 ヨタムその神ヱホバの前󠄃においてその行を堅うしたるに因て權能ある者となれり
7 ヨタムのその餘の行爲その一切の戰鬪およびその行などはイスラエルとユダの列王の書に記さる
8 彼は二十五歳の時位に即きヱルサレムにて十六年の間世を治めたり
9 ヨタムその先祖等とともに寢りたればダビデの邑にこれを葬れりその子アハズこれに代りて王となる
第28章
1 アハズは二十歳の時位に即きヱルサレムにて十六年の間世を治めたりしがその父󠄃ダビデと異にしてヱホバの善と觀たまふ所󠄃を行はず
2 イスラエルの王等の道󠄃にあゆみ亦諸のバアルのために像を鑄造󠄃り
3 ベンヒンノムの谷にて香を焚きその子を火に燒きなどしてヱホバがイスラエルの子孫の前󠄃より逐󠄃はらひたまひし異邦人の行ふところの憎むべき事に傚ひ
4 また崇邱の上丘の上一切の靑木の下にて犧牲をささげ香を焚り
5 是故にその神ヱホバかれをスリアの王の手に付したまひてスリア人つひに彼を擊破りその人々を衆く虜囚としてダマスコに曵ゆけり彼はまたイスラエルの王の手にも付されたればイスラエルの王かれを擊て大にその人を殺せり
6 すなはちレマリヤの子ペカ、ユダにおいて一日の中に十二萬人を殺せり皆勇士なりき是は彼らその先祖の神ヱホバを棄しによるなり
7 その時にエフライムの勇士ジクリといふ者王の子マアセヤ宮內卿アズリカムおよび王に亞ぐ人エルカナを殺せり
833㌻
8 イスラエルの子孫つひにその兄弟の中より婦󠄃人ならびに男子女子など合せて二十萬人を俘擄にしまた衆多の掠取物を爲しその掠取物をサマリアに携へゆけり
9 時に彼處にヱホバの預言者ありその名をオデデといふ彼サマリアに歸れる軍勢の前󠄃に進󠄃みいでて之に言けるは汝らの先祖の神ヱホバ、ユダを怒りてこれを汝らの手に付したまひしが汝らは天に達󠄃するほどの忿怒をもて之を殺せり
10 然のみならず汝ら今ユダとヱルサレムの子孫を壓つけて己の奴婢となさんと思ふ然ども汝ら自身もまた汝らの神ヱホバに罪を獲たる身にあらずや
11 然ば今我に聽き汝らがその兄弟の中より擄へ來りし俘擄を放ち歸せヱホバの烈しき怒なんぢらの上に臨まんとすればなりと
12 是においてエフライム人の長たる人々すなはちヨハナンの子アザリヤ、メシレモテの子ベレキヤ、シヤルムの子ヒゼキヤ、ハデライの子アマサ等戰爭より歸れる者等の前󠄃に立ふさがりて〘642㌻〙
13 之にいひけるは汝ら俘擄を此に曵いるべからず汝らは我らをしてヱホバに愆を得せしめて更に我らの罪愆を增んとす我らの愆は大にして烈しき怒イスラエルにのぞまんとするなりと
14 是において兵卒等その俘擄と掠取物を牧伯等と全󠄃會衆の前󠄃に遺󠄃おきければ
15 上に名を擧げたる人々たちて俘擄を受取り掠取物の中より衣服󠄃を取てその裸なる者に着せ之に靴を穿せ食󠄃飮を爲しめ膏油を沃ぎ等しその弱󠄃き者をば盡く驢馬に乘せ斯して之を棕櫚の邑ヱリコに導󠄃きゆきてその兄弟に詣《い
16 當時アハズ王人をアツスリヤの王等に遣󠄃はして援助を乞しむ
17 其はエドム人また來りてユダを攻擊ち民を擄へて去たればなり
18 ペリシテ人もまた平󠄃野の邑々およびユダの南の邑々を侵してベテシメシ、アヤロン、ゲデロテおよびシヨコとその郷里テムナとその郷里ギムゾとその郷里を取て其處に住󠄃めり
19 イスラエルの王アハズの故をもてヱホバかくユダを卑くしたまふ其は彼ユダの中に淫逸なる事を行ひかつヱホバにむかひて大に罪を犯したればなり
834㌻
20 アツスリヤの王テグラテピレセルは彼の所󠄃に來りしかども彼に力をそへずして反てこれを煩はせり
21 アハズ、ヱホバの家と王の家および牧伯等の家の物を取てアツスリヤの王に與へけれどもアハズを援くることをせざりき
22 このアハズ王はその困難の時に當りてますますヱホバに罪を犯せり
23 即ち彼おのれを擊るダマスコの神々に犧牲を献げて言ふスリアの王等の神々はその王等を助くれば我もこれに犧牲を献げん然ば彼ら我を助けんと然れども彼等はかへつてアハズとイスラエル全󠄃國を仆す者となれり
24 アハズ神の室の器皿を取聚めて神の室の器皿を切やぶりヱホバの室の戶を閉ぢヱルサレムの隅々に凡て祭壇を造󠄃り
25 ユダの一切の邑々に崇邱を造󠄃りて別神に香を焚き等してその先祖の神ヱホバの忿怒を惹おこせり
26 アハズのその餘の始終󠄃の行爲およびその一切の行跡はユダとイスラエルの列王の書に記さる
27 アハズその先祖等とともに寢りたればエルサレムの邑にこれを葬れり然どイスラエルの王等の墓にはこれを持ゆかざりき其子ヒゼキヤこれに代りて王となる〘643㌻〙
第29章
1 ヒゼキヤは二十五歳の時位に即きヱルサレムにて二十九年の間世を治めたりその母はゼカリヤの女にして名をアビヤといふ
2 ヒゼキヤはその父󠄃ダビデの凡てなしたる如くヱホバの目に善と視たまふ事をなせり
3 即ち彼その治世の第一年一月にヱホバの室の戶を開きかつ之を修繕ひ
4 祭司およびレビ人を携さへいりて東の廣場にこれを集め
5 而して之にいひけるはレビ人よ我に聽け汝等いま身を潔󠄄めて汝等の先祖の神ヱホバの室を潔󠄄め汚穢を聖󠄄所󠄃より除きされ
6 夫我らの先祖は罪を犯し我らの神ヱホバの目に惡しと見たまふことを行ひてヱホバを棄てヱホバの住󠄃所󠄃に面を背けて後をこれに向け
835㌻
7 また廊の戶を閉ぢ燈火を消󠄃し聖󠄄所󠄃にてイスラエルの神に香を焚ず燔祭を献けざりし
8 是をもてヱホバの忿怒ユダとヱルサレムに臨みヱホバ彼等をして打ただよはされしめ詑異とならしめ胡盧とならしめたまへり汝らが目に覩るごとし
9 即ち我儕の父󠄃は劍に斃れ我らの男子女子及び妻等はこれがために俘擄となれり
10 今我イスラエルの神ヱホバと契󠄅約を結ばんとする意󠄃志ありその烈しき怒我らを離るることあらん
11 我子等よ今は怠たる勿れヱホバ汝らを擇びて己の前󠄃に立て事へしめ己に事ふる者となし香を焚く者となしたまひたればなりと
12 是においてレビ人起󠄃り即ちコハテの子孫の中にてはアマサイの子マハテおよびアザリヤの子ヨエル、メラリの子孫の中にてはアブデの子キシおよびヱハレレルの子アザリヤ、ゲルシヨン人の中にてはジンマの子ヨアおよびヨアの子エデン
13 エリザパンの子孫の中にてはシムリおよびヱイエル、アサフの子孫の中にてはゼカリヤおよびマツタニヤ
14 ヘマンの子孫の中にてはヱヒエルおよびシメイ、ヱドトンの子孫の中にてはシマヤおよびウジエル
15 かれらその兄弟を集へて身を潔󠄄めヱホバの言に依りて王の傳へし命令にしたがひてヱホバの室を潔󠄄めんとて入きたり
16 祭司等ヱホバの室の奧に入りてこれを潔󠄄めヱホバの殿にありし汚穢をことごとくヱホバの室の庭に携へいだせばレビ人それを受て外にいだしキデロン河に持いたる
17 彼ら正月の元日に潔󠄄むることを始めてその月の八日にヱホバの廊におよびまたヱホバの家を潔󠄄むるに八日を費し正月の十六日にいたりて之を終󠄃れり
18 かくて彼らヒゼキヤ王の處に入て言ふ我らヱホバの室をことごとく潔󠄄めまた燔祭の壇とその一切の器具󠄄および供前󠄃のパンの案とその一切の器皿とを潔󠄄めたり〘644㌻〙
19 またアハズ王がその治世に罪を犯して棄たりし一切の器皿をも整へてこれを潔󠄄めヱホバの壇の前󠄃にこれを据置りと
836㌻
20 是においてヒゼキヤ王蚤に起󠄃いで邑の牧伯等をあつめてヱホバの家にのぼり徃き
21 牡牛七匹牡羊七匹羔羊七匹牡山羊七匹を牽きたらしめ國と聖󠄄所󠄃とユダのためにこれを罪祭となしアロンの子孫たる祭司等に命じてこれをヱホバの壇の上に献げしむ
22 即ち牡牛を宰れば祭司等その血を受て壇に灑ぎまた牡羊を宰ればその血を壇に灑ぎまた羔羊を宰ればその血を壇に灑げり
23 かくて人々罪祭の牡山羊を王と會衆の前󠄃に牽きたりければ彼らその上に手を按り
24 而して祭司これを宰りその血を罪祭として壇の上に献げてイスラエル全󠄃國のために贖罪をなせり是は王イスラエル全󠄃國の爲に燔祭および罪祭を献ぐることを命じたるに因る
25 王レビ人をヱホバの室に置きダビデおよび王の先見者ガデと預言者ナタンの命令にしたがひて之に鐃鈸瑟および琴を執しむ是はヱホバがその預言者によりて命じたまひし所󠄃なり
26 是においてレビ人はダビデの樂器をとり祭司は喇叭をとりて立つ
27 時にヒゼキヤ燔祭を壇の上に献ぐることを命ぜり燔祭をささげ始むるときヱホバの歌をうたひ喇叭を吹きイスラエルの王ダビデの樂器をならしはじめたり
28 しかして會衆みな禮拜をなし謳歌者歌をうたひ喇叭手喇叭を吹ならし燔祭の終󠄃るまで凡て斯ありしが
29 献ぐる事の終󠄃るにおよびて王および之と偕に在る者皆身をかがめて禮拜をなせり
30 かくて又󠄂ヒゼキヤ王および牧伯等レビ人に命じダビデと先見者アサフの詞をもてヱホバを讃美せしむ彼等喜樂をもて讃美し首をさげて禮拜す
31 時にヒゼキヤこたへて言けるは汝らすでにヱホバに事へんために身を潔󠄄めたれば進󠄃みよりてヱホバの室に犧牲および感謝祭を携へきたれと會衆すなはち犧牲および感謝祭を携へきたる又󠄂志ある者はみな燔祭を携ふ
837㌻
32 會衆の携へきたりし燔祭の數は牡牛七十牡羊一百羔羊二百是みなヱホバに燔祭として奉つる者なり
33 また奉納󠄃物は牛六百羊三千なりき
34 然るに祭司寡くしてその燔祭の物の皮を剝つくすこと能はざりければその兄弟たるレビ人これを助けてその工を終󠄃ふ斯る間に他の祭司等も身を潔󠄄むレビ人は祭司よりも心正しくして身を潔󠄄めたり〘645㌻〙
35 燔祭夥多しくあり酬恩祭の脂及びすべての燔祭の酒も然り斯ヱホバの室の奉事備はれり
36 この事俄なりしかども神かく民の爲に備をなしたまひしに因てヒゼキヤおよび一切の民喜べり
第30章
1 茲にヒゼキヤ、イスラエルとユダに遍󠄃ねく人を遣󠄃しまた書をエフライムとマナセに書おくりヱルサレムなるヱホバの室に來りてイスラエルの神ヱホバに逾越節󠄄を行はんことを勸む
2 王すでにその牧伯等およびヱルサレムにある會衆と議り二月をもて逾越節󠄄を行はんと定めたり
3 其は祭司の身を潔󠄄めし者足ず民またヱルサレムに集らざりしに因て彼時にこれを行ふことを得ざればなり
4 王も會衆もこの事を見て善となし
5 即ちこの事を定めてベエルシバよりダンまでイスラエルに遍󠄃ねく宣布しめしヱルサレムに來りてイスラエルの神ヱホバに逾越節󠄄を行はんことを勸む是はその錄されたるごとくにこれを行ふ事久しく無りしが故なり
6 飛脚すなはち王とその牧伯等が授けし書をもちてイスラエルとユダを遍󠄃ねく行めぐり王の命を傳へて云ふイスラエルの子孫よ汝らアブラハム、イサク、イスラエルの神ヱホバに起󠄃歸れ然ばヱホバ、アツスリヤの王等の手より逃󠄄れて遺󠄃るところの汝らに歸りたまはん
7 汝らの父󠄃および兄弟の如くならざれ彼らその先祖の神ヱホバにむかひて罪を犯したればこれを滅亡に就しめたまへり汝らが見るごとし
8 然ば汝らの父󠄃のごとく汝ら項を强くせずしてヱホバに歸服󠄃しその永久に聖󠄄別たまひし聖󠄄所󠄃に入り汝らの神ヱホバに事へよ然ればその烈しき怒なんぢらを離れん
838㌻
9 汝ら若ヱホバに歸らば汝らの兄弟および子女その己を擄へゆきし者の前󠄃に衿憫を得て遂󠄅にまた此國にかへらん汝らの神ヱホバは恩惠あり憐憫ある者にましませば汝らこれに起󠄃かへるにおいては面を汝らに背けたまはじと
10 かくのごとく飛脚エフライム、マナセの國にいりて邑より邑に行めぐりて遂󠄅にゼブルンまで至りしが人衆これを嘲り笑へり
11 但しアセル、マナセおよびゼブルンの中より身を卑くしてヱルサレムに來りし者もあり
12 またユダに於ては神その力をいだして人々に心を一にせしめ王と牧伯等がヱホバの言に依て傳へし命令を之に行はしむ
13 斯りしかば二月にいたりて民酵いれぬバンの節󠄄をおこなはんとて多くヱルサレムに來り集れりその會はなはだ大なりき〘646㌻〙
14 彼等すなはち起󠄃てヱルサレムにある諸の壇を取のぞきまた一切の香壇を取のぞきてこれをキデロン川に投すて
15 二月の十四日に逾越の物を宰れり是において祭司等およびレビ人は自ら恥ぢ身を潔󠄄めてヱホバの室に燧祭を携へきたり
16 神の人モーセの律法に循ひ例に依て各々その所󠄃に立ち而して祭司等レビ人の手より血を受て灑げり
17 時に會衆の中に未だ身を潔󠄄めざる者多かりければレビ人その潔󠄄からざる一切の人々に代りて逾越の物を宰りてヱホバに潔󠄄め献ぐ
18 また衆多の民すたはちエフライム、マナセ、イツサカル、ゼブルンより來りし衆多の者未だ身を潔󠄄むる事をせずその書錄されし所󠄃に違󠄇ひて逾越の物を食󠄃へり是をもてヒゼキヤこれがために祈りて云ふ
19 惠ふかきヱホバよ凡そその心を傾けて神を求めその先祖の神ヱホバを求むる者は假令聖󠄄所󠄃の潔󠄄齋に循はざるとも願くは是を赦したまへと
839㌻
20 ヱホバ、ヒゼキヤに聽て民を醫したまへり
21 ヱルサレムにきたれるイスラエルの子孫は大なる喜悅をいだきて七日の間酵いれぬパンの節󠄄をおこなへり又󠄂レビ人と祭司は日々にヱホバを讃美し高聲の樂を奏してヱホバを頌へたり
22 ヒゼキヤ、ヱホバの奉事に善通󠄃じをる一切のレビ人を深く勞らふ斯人衆酬恩祭を献げその先祖の神ヱホバに感謝して七日のあひだ節󠄄の物を食󠄃へり
23 かくて又󠄂全󠄃會あひ議りて更に七日を守らんと決め喜悅をいだきてまた七日を守れり
24 時にユダの王ヒゼキヤは牡牛一千羊七千を會衆に餽り又󠄂牧伯等は牡牛一千羊一萬を會衆に餽れり祭司もまた衆く身を潔󠄄めたり
25 ユダの全󠄃會衆および祭司レビ人ならびにイスラエルより來れる全󠄃會衆およびイスラエルの地より來れる異邦人とユダに住󠄃む異邦人みな喜べり
26 かくヱルサレムに大なる喜悅ありきイスラエルの王ダビデの子ソロモンの時より以來かくのごとき事ヱルサレムに在ざりしなり
27 この時祭司レビ人起󠄃て民を祝しけるにその言聽れその祈禱ヱホバの聖󠄄き住󠄃所󠄃なる天に達󠄃せり
第31章
1 この事すべて終󠄃りしかば其處に在しイスラエル人みなユダの邑々に出ゆき柱像を碎きアシラ像を斫たふしユダとベニヤミンの全󠄃地より崇邱と祭壇を崩󠄃し絕ちエフライム、マナセにも及ぼして遂󠄅にまつたく之を毀ち而してイスラエルの子孫おのおのその邑々に還󠄃りて己の產業に〘647㌻〙
2 ヒゼキヤ祭司およびレビ人の班列を定めその班列にしたがひて各々にその職を行はしむ即ち祭司とレビ人をして燔祭および酬恩祭を献げしめヱホバの營の門において奉事をなし感謝をなし讃美をなさしめ
3 また己の財產の中より王の分󠄃を出して燔祭のためにす即ち朝󠄃夕の燔祭および安息日朔日節󠄄會などの燔祭のために之を出してヱホバの律法に記さるる如くす
840㌻
4 彼またヱルサレムに住󠄃む民に祭司とレビ人にその分󠄃を與へんことを命ず是かれらをしてヱホバの律法に身を委ねしめんとてなり
5 其命令の傳はるや否やイスラエルの子孫穀物酒油蜜ならびに田野の諸の產物の初を多く献げまた一切の物の什一を夥多しく携へきたる
6 ユダの邑々に住󠄃るイスラエルとユダの子孫もまた牛羊の什一ならびにその神ヱホバに納󠄃むべき聖󠄄物の什一を携へきたりてこれを積疊ぬ
7 三月に之を積疊ぬることを始め七月にいたりて之を終󠄃れり
8 ヒゼキヤおよび牧伯等きたりて其積疊ねたる物を見ヱホバとその民イスラエルを祝せり
9 ヒゼキヤその積疊ねたる物の事を祭司とレビ人に問尋󠄃ねければ
10 ザドクの家より出し祭司の長アザリヤ彼に應へて言けるは民ヱホバの室に禮物を携ふることを始めしより以來我儕飽󠄄までに食󠄃ひしがその餘れる所󠄃はなはだ多しヱホバその民をめぐみたまひたればなりその餘れる所󠄃かくのごとく夥多しと
11 ヒゼキヤ、ヱホバの家の內に室を設くることを命じければ則ちこれを設け
12 忠實にその禮物什一および奉納󠄃物を携へいれりレビ人コナニヤこれを主どりその兄弟シメイこれに副ふ
13 ヱヒエル、アザジヤ、ナハテ、アサヘル、ヱレモテ、ヨザバデ、ヱリエル、イスマキヤ、マハテ、ベナヤ等ヒゼキヤ王および神の室の宰アザリヤの命に依りコナニヤ及びその兄弟シメイの手下につきてこれが監督者となる
14 東の門を守る者レビ人ヱムナの子コレ神に献ぐる誠意󠄃よりの禮物を司どりてヱホバの献納󠄃物および至聖󠄄物を頒つ
15 その手につく者はエデン、ミニヤミン、ヱシユア、シマヤ、アマリヤおよびシカニヤみな祭司の邑々に居てその職を盡しその兄弟に班列に依て之を頒つ大小ともに均し
16 此外にまた凡て名簿に載たる男子三歳以上にしてヱホバの室に入りその班列にしたがひて日々の職分󠄃を盡し擔任の勤務を爲すところの者に之を頒つ
841㌻
17 またその宗家にしたがひて名簿に載られその班列にしたがひて擔任の事を執行ふところの祭司および二十歳以上のレビ人〘648㌻〙
18 ならびに名簿に載たるその小き者その妻その男子その女子などに盡く之を頒つ會中すべて然り即ち彼等は潔󠄄白忠實にその職を盡せり
19 また邑々の郊地に居るアロンの子孫たる祭司等のためには邑ごとに人を名指し選󠄄び祭司の中の一切の男およびレビ人の中の名簿に載せたる一切の者にその分󠄃を予へしむ
20 ヒゼキヤ、ユダ全󠄃國に斯のごとく爲し善事正き事忠實なる事をその神ヱホバの前󠄃に行へり
21 凡てその神の室の職務につき律法につき誡命につきて行ひ始めてその神を求めし工は悉く心をつくして行ひてこれを成就たり
第32章
1 ヒゼキヤが此等の事を行ひ且つ忠實なりし後アツスリヤの王セナケリブ來りてユダに入り堅固なる邑々にむかひて陣を張り之を攻取んとす
2 ヒゼキヤ、セナケリブの旣に來りヱルサレムに攻むかはんとするを見
3 その牧伯等および勇士等と謀りて邑の外なる一切の泉水を塞がんとす彼等これを助く
4 衆多の民あつまりて一切の泉水および國の中を流れわたる溪河を塞ぎていひけるはアツスリヤの王等來りて水を多く得ば豈で可らんやと
5 ヒゼキヤまた力を强くし破れたる石垣をことごとく建なほして之を戌樓まで築き上げその外にまた石垣をめぐらしダビデの邑のミロを堅くし戈盾を多く造󠄃り
6 軍長を多く民の上に立て邑の門の廣場に民を集めてこれを努ひて言ふ
7 汝ら心を强くし且勇めアツスリヤの王のためにも彼とともなる群衆のためにも懼るる勿れ慄く勿れ我らとともなる者は彼とともになる者よりも多きぞかし
8 彼とともなる者は肉の腕なり然れども我らとともなる者は我らの神ヱホバにして我らを助け我らに代りて戰かひたまふべしと民はユダの王ヒゼキヤの言に安んず
842㌻
9 此後アツスリヤの王セナケリブその全󠄃軍をもてラキシを攻圍み居りて臣僕をヱルサレムに遣󠄃はしてユダの王ヒゼキヤおよびヱルサレムにをる一切のユダ人に吿しめて云く
10 アツスリヤの王セナケリブかく言ふ汝ら何を恃みてヱルサレムに閉籠りをるや
11 ヒゼキヤ我らの神ヱホバ、アツスリヤの王の手より我らを救ひ出したまはんと言て汝らを浚かし汝らをして饑渇て死しめんとするに非ずや
12 此ヒゼキヤはすなはちヱホバの諸の崇邱と祭壇を取のぞきユダとヱルサレムとに命じて汝らは唯一の壇の前󠄃にて崇拜を爲しその上に香を焚べしと言し者にあらずや〘649㌻〙
13 汝らは我およびわが先祖等が諸の國の民に爲したる所󠄃を知ざるか其等の國々の民の神少許にてもその國をわが手より救ひ取ることを得しや
14 わが先祖等の滅ぼし盡せし國民の諸の神の中誰か己の民をわが手より救ひ出すことを得し者あらんや然れば汝らの神いかでか汝らをわが手より救ひいだすことを得ん
15 然れば斯ヒゼキヤに欺かるる勿れ浚かさるる勿れまた彼を信ずる勿れ何の民何の國の神もその民を我手または我父󠄃祖の手より救ひ出すことを得ざりしなれば况て汝らの神いかでか我手より汝らを救ひ出すことを得んと
16 セナケリブの臣僕等この外にも多くヱホバ神およびその僕ヒゼキヤを誹れり
17 セナケリブまた書をかきおくりてイスラエルの神ヱホバを嘲りかつ誹り諸國の民の神々その民をわが手より救ひいださざりし如くヒゼキヤの神もその民をわが手より救ひ出さじと云ふ
18 彼ら遂󠄅に大聲を擧げユダヤ語をもて石垣の上なるヱルサレムの民に語ひ之を威しかつ擾せり是は邑を取んとてなり
19 斯かれらはヱルサレムの神を論ずること人の手の作なる地上の民の神々を論ずるがごとくせり
843㌻
20 是によりてヒゼキヤ王およびアモツの子預言者イザヤともに祈禱て天に呼はりければ
21 ヱホバ天の使一箇を遣󠄃はしてアツスリヤ王の陣營にある一切の大勇士および將官軍長等を絕しめたまへり斯りしかば王面を赧らめて己の國に還󠄃りけるがその神の家にいりし時其身より出たる者等劍をもて之を其處に弑せり
22 是のごとくヱホバ、ヒゼキヤとヱルサレムの民をアツスリヤの王セナケリブの手および諸人の手より救ひいだし四方において之を守護たまへり
23 是において衆多の人献納󠄃物をヱルサレムに携へきたりてヱホバに奉りまた財寳をユダの王ヒゼキヤに餽れり此後ヒゼキヤは萬國の民に尊󠄅び見らる
24 當時ヒゼキヤ病て死んとせしがヱホバに祈りければヱホバこれに吿をなし之に休徴を賜へり
25 然るにヒゼキヤその蒙むりし恩に酬ゆることをせずして心に高ぶりければ震怒これに臨まんとしまたユダとヱルサレムに臨まんとせしが
26 ヒゼキヤその心に高慢を悔て身を卑くしヱルサレムの民も同じく然なしたるに因てヒゼキヤの世にはヱホバの震怒かれらに臨まざりき
〘650㌻〙
27 ヒゼキヤは富と貴を極め府庫を造󠄃りて金銀寶石香物楯および各種の寶貴き器物を藏め
28 また倉廩を造󠄃りて穀物酒油などの產物を藏め圈を造󠄃りて種々の家畜を置き牢を造󠄃りて羊の群を置き
29 また許多の邑を設けかつ牛羊を夥多しく有り是は神貨財を甚だ多くこれに賜ひしが故なり
30 このヒゼキヤまたギホンの水の上の源を塞ぎてこれを下より眞直にダビデの邑の西の方に引り斯ヒゼキヤはその一切の工を善なし就たり
31 但しバビロンの君等が使者を遣󠄃はしてこの國にありし奇蹟を問しめたる時には神かれを棄おきたまへり是その心に有ところの事を盡く知んがために之を試みたまへるなり
844㌻
32 ヒゼキヤのその餘の行爲およびその德行はユダとイスラエルの列王紀の書の中なるアモツの子預言者イザヤの默示の中に記さる
33 ヒゼキヤその先祖等と偕に寢りたればダビデの子孫の墓の中なる高き處にこれを葬りユダの人々およびヱルサレムの民みな厚くその死を送󠄃れり其子マナセこれに代りて王となる
第33章
1 マナセは十二歳の時位に即きヱルサレムにて五十五年の間世を治めたり
2 彼はヱホバの目に惡と觀たまふことを爲しイスラエルの子孫の前󠄃よりヱホバの逐󠄃はらひたまひし國人の行ふところの憎むべき事に傚へり
3 即ちその父󠄃ヒゼキヤの毀ちたりし崇邱を改ため築き諸のバアルのために壇を設けアシラ像を作り天の衆群を拜みて之に事へ
4 またヱホバが我名は永くヱルサレムに在べしと宣まひしヱホバの室の內に數箇の壇を築き
5 天の衆群のためにヱホバの室の兩の庭に壇を築き
6 またベンヒンノムの谷にてその子女に火の中を通󠄃らせかつ占卜を行ひ魔󠄃術をつかひ禁厭を爲し憑鬼者と卜筮師を取用ひなどしてヱホバの目に惡と視たまふ事を多く行ひてその震怒を惹起󠄃せり
7 彼またその作りし偶像を神の室に安置せり神此室につきてダビデとその子ソロモンに言たまひし事あり云く我この室と我がイスラエルの諸の支派の中より選󠄄びたるヱルサレムとに我名を永く置ん
8 彼らもし我が凡て命ぜし事すなはちモーセが傳へし一切の律法と法度と例典を謹みて行はば我が汝らの先祖のために定めし地より我これが足を重てうつさじと
9 マナセかくユダとヱルサレムの民とを迷󠄃はして惡を行はしめたり其狀イスラエルの子孫の前󠄃にヱホバの滅ぼしたまひし異邦人よりも甚だし
〘651㌻〙
10 ヱホバ、マナセおよびその民を諭したまひしかども聽ことをせざりき
11 是をもてヱホバ、アッスリヤの王の軍勢の諸將をこれに攻來らせたまひて彼等つひにマナセを鉤にて擄へ之を杻械に繋ぎてバビロンに曵ゆけり
845㌻
12 然るに彼患難に罹るにおよびてその神ヱホバを和めその先祖の神の前󠄃に大に身を卑くして
13 神に祈りければその祈禱を容れその懇願を聽きこれをヱルサレムに携へかへりて再び國に莅ましめたまへり是によりてマナセ、ヱホバは誠に神にいますと知り
14 この後かれダビデの邑の外にてギホンの西の方なる谷の內に石垣を築き魚門の入口までに及ぼし又󠄂オベルに石垣を環らして甚だ高く之を築き上げユダの一切の堅固なる邑に軍長を置き
15 またヱホバの室より異邦の神々および偶像を取除きヱホバの室の山とヱルサレムとに自ら築きし一切の壇を取のぞきて邑の外に投すて
16 ヱホバの壇を修復ひて酬恩祭および感謝祭をその上に献げユダに命じてイスラエルの神ヱホバに事へしめたり
17 然れども民は猶崇邱にて犧牲を献ぐることなを爲り但しその神ヱホバに而已なりき
18 マナセのその餘の行爲その神になせし祈禱およびイスラエルの神ヱホバの名をもて彼を諭せし先見者等の言はイスラエルの列王の言行錄に見ゆ
19 またその祈禱を爲たる事その聽れたる事その諸の罪愆その身を卑くする前󠄃に崇邱を築きてアシラ像および刻たる像を立たる處々などはホザイの言行錄の中に記さる
20 マナセその先祖とともに寢りたれば之をその家に葬れり其子アモンこれに代りて王となる
21 アモンは二十二歳の時位に即きヱルサレムにて二年の間世を治めたり
22 彼は其父󠄃マナセの爲しごとくヱホバの目に惡と觀たまふ事を爲り即ちアモンその父󠄃マナセが作りたる諸の刻たる像に犧牲を献げてこれに事へ
23 その父󠄃マナセが身を卑くせしごとくヱホバの前󠄃に身を卑くすることを爲ざりき斯このアモン愈その愆を增たりしが
24 その臣僕黨を結びて之に叛きこれをその家の內に弑せり
25 然るに國の民その黨を結びてアモン王に叛きし者等を盡く誅し而して國の民その子ヨシアを王となしてその後を嗣しむ
846㌻
第34章
1 ヨシアは八歳の時位に即きヱルサレムにて三十一年の間世を治めたり
2 彼はヱホバの善と觀たまふ事を爲しその父󠄃ダビデの道󠄃にあゆみて右にも左にも曲らざりき
3 即ち尙若かりしかどもその治世の八年にその父󠄃ダビデの神を求むる事を始めその十二年には崇邱アシラ像刻たる像鑄たる像などを除きてユダとヱルサレムを潔󠄄むることを始め〘652㌻〙
4 諸のバアルの壇を己の前󠄃にて毀たしめ其上に立る日の像を斫たふしアシラ像および雕像鑄像を打碎きて粉々にし是等に犧牲を献げし者等の墓の上に其を撒ちらし
5 祭司の骨をその諸の壇の上に焚き斯してユダとヱルサレムを潔󠄄めたり
6 またマナセ、エフライム、シメオンおよびナフタリの荒たる邑々にも斯なし
7 諸壇を毀ちアシラ像および諸の雕像を微塵に打碎きイスラエル全󠄃國の日の像を盡く斫たふしてヱルサレムに歸りぬ
8 ヨシアその治世の十八年にいたりて已に國と殿とを潔󠄄め了りその神ヱホバの家を修繕はしめんとてアザリヤの子シヤパン邑の知事マアセヤおよびヨアハズの子史官ヨアを遣󠄃せり
9 彼ら祭司の長ヒルキヤの許に至りてヱホバの室に入し金を交せり是は門守のレビ人がマナセ、エフライムおよび其餘の一切のイスラエル人ならびにユダとベニヤミンの人およびヱルサレムの民の手より斂めたる者なり
10 やがてヱホバの室を監督するところの工師等の手にこれを交しければ彼等ヱホバの室にて操作ところの工人にこれを交して室を繕ひ修めしむ
11 即ち木匠および建築者に之を交しユダの王等が壞りたる家々のために琢石および骨木を買しめ梁木をととのはしむ
12 その人々忠實に操作けりその監督者はメラリの子孫たるヤハテ、オバデヤおよびコハテの子孫たるゼカリヤ、メシユラムなどのレビ人なりき彼等すなはち之を主どる又󠄂樂器を弄ぶに精巧なるレビ人凡て之に伴󠄃なふ
847㌻
13 彼等亦荷を負󠄅ものを監督し種々の工事に操作ところの諸の工人をつかさどれり別のレビ人書記となり役人となり門守となれり
14 ヱホバの室にいりし金を取いだすに當りて祭司ヒルキヤ、モーセの傳へしヱホバの律法の書を見いだせり
15 ヒルキヤ是において書記官シヤパンにきて言けるは我ヱホバの室にて律法の書を見いだせりと而してヒルキヤその書をシヤパンに付しければ
16 シヤパンその書を王の所󠄃に持ゆき王に復命まうして言ふ僕等その手に委ねられし所󠄃を盡く爲し
17 ヱホバの室にありし金を打あけて之を監督者の手および工人の手に交せりと
18 書記官シヤパン亦王に吿て祭司ヒルキヤ我に一の書を交せりと言ひシヤパンそれを王の前󠄃に讀けるに〘653㌻〙
19 王その律法の言を聞て衣服󠄃を裂り
20 而して王ヒルキヤとシヤパンの子アヒカムとミカの子アブドンと書記官シヤパンと王の內臣アサヤとに命じて言ふ
21 汝ら徃てこの見當りし書の言につきて我の爲またイスラエルとユダに遺󠄃れる者等のためにヱホバに問へ我らの先祖等はヱホバの言を守らず凡て此書に記されたる所󠄃を行ふことを爲ざりしに因てヱホバ我等に大なる怒を斟ぎ給ふべければなりと
22 是においてヒルキヤおよび王の人々シヤルムの妻なる女預言者ホルダの許に徃りシヤルムはハルハスの子なるテクワの子にして衣裳を守る者なり時にホルダはヱルサレムの第二の邑に住󠄃をれり彼等すなはちホルダに斯と語りしかば
23 ホルダこれに答へけるはイスラエルの神ヱホバかく言たまふ汝らを我に遣󠄃はせる人に吿よ
24 ヱホバかく言たまふユダの王の前󠄃に讀し書に記されたる諸の呪詛に循ひて我この處と此に住󠄃む者に災害󠄅を降さん
848㌻
25 其は彼ら我を棄て他の神に香を焚きおのが手にて作れる諸の物をもて我怒を惹起󠄃さんとしたればなりこの故にわが震怒この處に斟ぎて滅ざるべし
26 されど汝らを遣󠄃はしてヱホバに問しむるユダの王には汝ら斯いふべしイスラエルの神ヱホバかく言たまふ汝が聞る言につきては
27 汝此處と此にすむ者を責る神の言を聞し時に心やさしくして神の前󠄃に於て身を卑くし我前󠄃に身を卑くし衣服󠄃を裂て我前󠄃に泣たれば我も汝に聽りとヱホバ宣まふ
28 然ば我汝をして汝の先祖等に列ならしめん汝は安然に墓に歸する事を得べし汝は我が此處と此に住󠄃む者に降すところの諸の災害󠄅を目に見る事あらじと彼等即ち王に復命まうしぬ
29 是において王人を遣󠄃はしてユダとヱルサレムの長老をことごとく集め
30 而して王ヱホバの室に上りゆけりユダの人々ヱルサレムの民祭司レビ人及び一切の民大より小にいたるまでことごとく之にともなふ王すなはちヱホバの室に見あたりし契󠄅約の書の言を盡く彼らの耳に讀聞せ
31 而して王己の所󠄃に立ちてヱホバの前󠄃に契󠄅約を立てヱホバにしたがひて步み心を盡し精神を盡してその誡命と證詞と法度を守り此書にしるされたる契󠄅約の言を行はんと言ひ
32 ヱルサレムおよびベニヤミンの有ゆる人々をみな之に加はらしめたりヱルサレムの民すなはちその先祖の神にまします御神の契󠄅約にしたがひて行へり
33 かくてヨシア、イスラエルの子孫に屬する一切の地より憎むべき者を盡く取のぞきイスラエルの有ゆる人をしてその神ヱホバに事まつらしめたりヨシアの世にある日の間は彼らその先祖の神ヱホバに從ひて離れざりき〘654㌻〙
第35章
1 茲にヨシア、ヱルサレムにおいてヱホバに逾越節󠄄を行はんとし正月の十四日に逾越の物を宰らしめ
2 祭司をしてその職を執行はせ之を勵してヱホバの室の務をなさしめ
3 またヱホバの聖󠄄者となりてイスラエルの人衆を誨ふるレビ人に言ふ汝らイスラエルの王ダビデの子ソロモンが建たる家に聖󠄄契󠄅約の匱を放け再び肩に擔ふこと有ざるべし然ば今汝らの神ヱホバおよびその民イスラエルに事ふべし
849㌻
4 汝らまたイスラエルの王ダビデの書およびその子ソロモンの書に本づきて父󠄃祖の家に循がひその班列に依て自ら準備をなし
5 汝らの兄弟なる民の人々の宗家の區分󠄃に循ひて聖󠄄所󠄃に立ち之にレビ人の宗族の分󠄃缺ること無らしむべし
6 汝ら逾越の物を宰り身を潔󠄄め汝らの兄弟のために準備をなしモーセが傳へしヱホバの言のごとく行ふべしと
7 ヨシアすなはち羔羊および羔山羊を民の人々に餽る其數三萬また牡牛三千を餽る是みな王の所󠄃有の中より出して其處に居る一切の人のために逾越の祭物となせるなり
8 その牧伯等も民と祭司とレビ人に誠意󠄃より與ふる所󠄃ありまた神の室の長等ヒルキヤ、ゼカリヤ、ヱヒエルも綿羊二千六百牛三百を祭司に與へて逾越の祭物と爲す
9 またレビ人の長たる人々すなはちコナニヤおよびその兄弟シマヤ、ネタンエル並にハシヤビヤ、ヱイエル、ヨザバデなども綿羊五千牛五百をレビ人に餽りて逾越の祭物となす
10 是のごとく献祭の事備はりぬれば王の命にしたがひて祭司等はその擔任場に立ちレビ人はその班列に循がひ居り
11 やがて逾越の物を宰りければ祭司その血をこれが手より受て洒げりレビ人その皮を剝り
12 かくて燔祭の物を移して民の人々の父󠄃祖の家の區分󠄃に付してヱホバに献げしむモーセの書に記されたるが如し其牛に行ふところも亦是のごとし
13 而して例規のごとくに逾越の物を火にて炙りその他の聖󠄄物を鍋釜鼎などに烹て一切の民の人々に奔配れり
14 かくて後かれら自身のためと祭司等のために備ふ其はアロンの子孫たる祭司等は燔祭と脂を献げて夜に入たればなり是に因て斯レビ人自分󠄃のためとアロンの子孫たる祭司等のために備ふるなり
15 アサフの子孫たる謳歌者等はダビデ、アサフ、ヘマンおよび王の先見者ヱドトンの命にしたがひてその擔任場に居り門を守る者等は門々に居てその職務を離るるに及ばざりき其はその兄弟たるレビ人これがために備へたればなり
〘655㌻〙
850㌻
16 斯のごとく其日ヱホバの献祭の事ことごとく備はりければヨシア王の命にしたがひて逾越節󠄄を行ひヱホバの壇に燔祭を献げたり
17 即ち其處に來れるイスラエルの子孫その時逾越節󠄄を行ひ七日の間酵いれぬパンの節󠄄を行へり
18 預言者サムエルの日より以來イスラエルにて是のごとくに逾越節󠄄を行ひし事なし又󠄂イスラエルの諸王の中にはヨシアが祭司レビ人ならびに來りあつまれるユダとイスラエルの諸人およびヱルサレムの民とともに行ひし如き逾越節󠄄を行ひし者一人もあらず
19 この逾越節󠄄はヨシアの治世の十八年に行ひしなり
20 是のごとくヨシア殿をととのへし後エジプトの王ネコ、ユフラテの邊なるカルケミシを攻擊んとて上り來りけるにヨシアこれを禦がんとて出徃り
21 是においてネコ使者をかれに遣󠄃はして言ふユダの王よ是あに汝の與る所󠄃ならんや今日は汝を攻んとには非ず我敵の家を攻んとするなり神われに命じて急󠄃がしむ神われとともにあり汝神に逆󠄃ふことを罷よ恐らくは彼なんぢを滅ぼしたまはんと
22 然るにヨシア面を轉して去ことを肯はず却てこれと戰はんとて服󠄃裝を變へ神の口より出しネコの言を聽いれずしてメギドンの谷に到りて戰ひけるが
23 射手の者等ヨシア王に射中たれば王その臣僕にむかひて我を扶け出せ我太痍を負󠄅ふと言り
24 是においてその臣僕等かれをその車より扶けおろし其引せたる次の車に乘てヱルサレムにつれゆきけるが遂󠄅に死たればその先祖の墓にこれを葬りぬユダとヱルサレムみなヨシアのために哀しめり
25 時にヱレミヤ、ヨシアのために哀歌を作れり謳歌男謳歌女今日にいたるまでその哀歌の中にヨシアの事を述󠄃べイスラエルの中に之を例となせりその詞は哀歌の中に書さる
26 ヨシアのその餘の行爲そのヱホバの律法に錄されたる所󠄃にしたがひて爲し德行
27 およびその始終󠄃の行爲などはイスラエルとユダの列王の書に記さる
851㌻
第36章
1 是において國の民ヨシアの子ヱホアハズを取りヱルサレムにてその父󠄃にかはりて王とならしむ
2 ヱホアハズは二十三歳の時位に即きヱルサレムにて三月が間世を治めけるが〘656㌻〙
3 エジプトの王ヱルサレムにて彼を廢し且銀百タラント金一タラントの罰金を國に課せり
4 而してエジプトの王ネコ彼の兄弟エリアキムをもてユダとヱルサレムの王となして之が名をヱホヤキムと改めその兄弟ヱホアハズを執へてエジプトに曵ゆけり
5 ヱホヤキムは二十五歳の時位に即きヱルサレムにて十一年の間世を治めその神ヱホバの惡と視たまふことを爲り
6 彼の所󠄃にバビロンの王ネブカデネザル攻のぼりバビロンに曵ゆかんとて之を杻械に繋げり
7 ネブカデネザルまたヱホバの家の器具󠄄をバビロンに携へゆきてバビロンにあるその宮にこれを藏めたり
8 ヱホヤキムのその餘の行爲その行ひし憎むべき事等およびその心に企みし事などはイスラエルとユダの列王の書に記さる其子ヱホヤキンこれに代りて王となる
9 ヱホヤキンは八歳の時位に即きヱルサレムにて三月と十日の間世を治めヱホバの惡と視たまふ事を爲けるが
10 歳の歸るにおよびてネブカデネザル王人を遣󠄃はして彼とヱホバの室の貴き器皿とをバビロンに携へいたらしめ之が兄弟ゼデキヤをもてユダとヱルサレムの王となせり
11 ゼデキヤは二十一歳の時位に即きヱルサレムにて十一年の間世を治めたり
12 彼はその神ヱホバの惡と視たまふ事を爲しヱホバの言を傳ふる預言者ヱレミヤの前󠄃に身を卑くせざりき
13 ネブカデネザル彼をして神を指て誓はしめたりしにまた之にも叛けり彼かくその項を强くしその心を剛愎にしてイスラエルの神ヱホバに立かへらざりき
852㌻
14 祭司の長等および民もまた凡て異邦人の中にある諸の憎むべき事に傚ひて太甚しく大に罪を犯しヱホバのヱルサレムに聖󠄄め置たまへるその室を汚せり
15 其先祖の神ヱホバその民とその住󠄃所󠄃とを恤むが故に頻りにその使者を遣󠄃はして之を諭したまひしに
16 彼ら神の使者等を嘲けり其御言を輕んじその預言者等を罵りたればヱホバの怒その民にむかひて起󠄃り遂󠄅に救ふべからざるに至れり
17 即ちヱホバ、カルデヤ人の王を之に攻きたらせたまひければ彼その聖󠄄所󠄃の室にて劍をもて少者を殺し童男をも童女をも老人をも白髮の者をも憐まざりき皆ひとしく彼の手に付したまへり
18 神の室の諸の大小の器皿ヱホバの室の貨財王とその牧伯等の貨財など凡て之をバビロンに携へゆき
19 神の室を焚きヱルサレムの石垣を崩󠄃しその中の宮殿を盡く火にて焚きその中の貴き器を盡く壞なへり〘657㌻〙
20 また劍をのがれし者等はバビロンに擄れゆきて彼處にて彼とその子等の臣僕となりペルシヤの國の興るまで斯てありき
21 是ヱレミヤの口によりて傳はりしヱホバの言の應ぜんがためなりき斯この地遂󠄅にその安息を享たり即ち是はその荒をる間安息して終󠄃に七十年滿ぬ
22 ペルシヤ王クロスの元年に當りヱホバ曩にヱレミヤの口によりて傳へたまひしその聖󠄄言を成んとてペルシヤ王クロスの心を感動したまひければ王すなはち宣命をつたへ詔書を出して徧く國中に吿示して云く
23 ペルシヤ王クロスかく言ふ天の神ヱホバ地上の諸國を我に賜へりその家をユダのエルサレムに建ることを我に命ず凡そ汝らの中もしその民たる者あらばその神ヱホバの助を得て上りゆけ〘658㌻〙
853㌻