〘321㌻〙
第1章
1 是はモーセがヨルダンの此旁の曠野紅海に對する平󠄃野に在てバラン、トベル、ラバン、ハゼロテ、デザハブの間にてイスラエルの一切の人に吿たる言語なり
2 ホレブよりセイル山の路を經てカデシバルネアに至るには十一日路あり
3 第四十年の十一月にいたりその月の一日にモーセはイスラエルの子孫にむかひてヱホバが彼等のために自己に授けたまひし命令を悉く吿たり
4 是はモーセがヘシボンに住󠄃るアモリ人の王シホン及びエデレイのアシタロテに住󠄃るバシヤンの王オグを殺したる後なりき
5 即ちモーセ、ヨルダンの此旁なるモアブの地においてこの律法を解明すことを爲し始めたり曰く
6 我らの神ヱホバ、ホレブにて我らに吿て言たまへり汝らはこの山に居こと日すでに久し
7 汝ら身を轉らして途󠄃に進󠄃みアモリ人の山に徃き其に鄰れる處々に徃き平󠄃野 山地 窪地 南の地 海邊 カナン人の地レバノンおよび大河ユフラテ河に到れ
8 我この地を汝らの前󠄃に置り入てこの地を獲よ是はヱホバが汝らの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓ひて之を彼らとその後の子孫に與へんと言たまひし者なりと
9 彼時我なんぢらに語りて言り我は一人にては汝らをわが任として負󠄅ことあたはず
10 汝らの神ヱホバ汝らを衆多ならしめたまひたれば汝ら今日は天空󠄃の星のごとくに衆し
11 願くは汝らの先祖の神ヱホバ汝らをして今あるよりは千倍も多くならしめ又󠄂なんぢらに約束せしごとく汝らを祝福たまはんことを
12 我一人にては爭で汝らを吾任となしまた汝らの重負󠄅と汝らの爭競に當ることを得んや
13 汝らの支派の中より智慧󠄄あり知識ありて人に識れたる人々を簡べ我これを汝らの首長となさんと
14 時に汝ら答へて言り汝が言ところの事を爲は善しと
321㌻
15 是をもて我汝らの支派の首長なる智慧󠄄ありて人に知れたる者等を取て汝らの首長となせり即ち之をもて千人の長百人の長五十人の長十人の長となしまた汝らの支派の中の官吏となせり
16 また彼時に我汝らの士師等に命じて言り汝らその兄弟の中の訴訟を聽き此人と彼人の間を正く審判󠄄くべし他國の人においても然り
17 汝ら人を視て審判󠄄すべからず小き者にも大なる者にも聽べし人の面を懼るべからず審判󠄄は神の事なればなり汝らにおいて斷定がたき事は我に持きたれ我これを聽ん〘245㌻〙
18 我かの時に汝らの爲べき事をことごとく汝らに命じたりき
19 我等の神ヱホバの我等に命じたまひしごとくに我等はホレブより出たち汝らが見知るかの大なる畏しき曠野を通󠄃りアモリ人の山を指てガデシバルネアに至れり
20 時に我なんぢらに言り汝らは我らの神ヱホバの我らに與へたまへるアモリ人の山に至れり
21 視よ汝の神ヱホバこの地を汝の前󠄃に置たまふ汝の先祖の神ヱホバの汝に言たまふごとく上り徃てこれを獲よ懼るゝなかれ猶豫なかれと
22 汝らみな我に近󠄃りて言り我等人を我らの先に遣󠄃してその地を伺察しめ彼らをして返󠄄て何の途󠄃より上るべきか何の邑々に入べきかを我らに吿しめんと
23 この言わが目に善と見ければ我汝らの中より十二人の者を取り即ち一の支派より一人宛なりき
24 彼等前󠄃みゆきて山に登りエシコルの谷にいたり之を伺ひ
25 その地の菓物を手に取てわれらの許に持くだり我らに復命して言り我等の神ヱホバの我等に與へたまへる地は善地なりと
26 然るに汝等は上り徃ことを好まずして汝らの神ヱホバの命令に背けり
27 すなはち汝らその天幕にて呟きて言りヱホバわれらを惡むが故に我らをアモリ人の手に付して滅ぼさんとてエジプトの國より我らを導󠄃き出せり
28 我等は何方に徃べきや我らの兄弟等は言ふその民は我らよりも大にして身長たかく邑々は大にしてその石垣は天に達󠄃る我らまたアナクの子孫を其處に見たりと斯いひて我らの氣を挫けりと
322㌻
29 時に我なんぢらに言り怖る勿れ懼るゝなかれ
30 汝らに先ち行たまふ汝らの神ヱホバ、エジプトにおいて汝らの爲に汝らの目の前󠄃にて諸の事をなしたまひし如く今また汝らのために戰ひたまはん
31 曠野においては汝また汝の神ヱホバが人のその子を抱くが如くに汝を抱きたまひしを見たり汝らが此處にいたるまでその路すがら常に然ありしなりと
32 この言をなせども汝らはなほその神ヱホバを信ぜざりき
33 ヱホバは途󠄃にありては汝らに先ちゆきて汝らが營を張べき處を尋󠄃ね夜は火の中にあり晝は雲の中にありて汝らの行べき途󠄃を示したまへる者なり
34 ヱホバ汝らの言語の聲を聞て怒り誓て言たまひけらく
35 この惡き代の人々の中には我が汝らの先祖等に與へんと誓ひしかの善地を見る者一人も有ざるべし〘246㌻〙
36 只ヱフンネの子カルブのみ之を見ることを得ん彼が踐たりし地をもて我かれとかれの子孫に與ふべし其は彼まったくヱホバに從ひたればなり
37 ヱホバまた汝らの故をもて我をも怒て言たまへり汝もまた彼處に入ことを得ず
38 汝の前󠄃に侍るヌンの子ヨシユアかしこに入べし彼に力をつけよ彼イスラエルをして之を獲しむべし
39 また汝等が掠められんと言たりしその汝らの子女および當日になほ善惡を辨へざりし汝らの幼兒等彼ら即ちかしこに入べし我これを彼らに與へて獲さすべし
40 汝らは身をめぐらし紅海の途󠄃より曠野に進󠄃みいるべしと
41 然るに汝ら對て我にいへり我等はヱホバにむかひて罪を犯せり然ばわれらの神ヱホバの凡て我らに命じたまへるがごとく我ら上りゆきて戰はんと汝らおのおの武器を身に帶て輕々しく山に登らんとせり
42 時にヱホバわれに言たまひけるは汝かれらに言へ汝ら上りゆくなかれ又󠄂戰ふなかれ我なんぢらの中間に居ざればなり汝ら恐らくはその敵に打敗られんと
323㌻
43 われかく汝らに吿たるに汝ら聽ずしてヱホバの命令に背き自檀に山に登りたりしが
44 その山に住󠄃るアモリ人汝等にむかひて出きたり蜂の驅がごとくに汝らを驅ちらしなんぢらをセイルに打敗りてホルマにおよべり
45 斯りしかばなんぢら還󠄃りきたりてヱホバの前󠄃に哭きたりしがヱホバなんぢらの聲を聽たまはず汝らに耳を傾むけたまはざりき
46 是をもてなんぢらは日久しくカデシに居りなんぢらが其處に居たる日數のごとし
第2章
1 斯て我らは身を轉らしヱホバの我に命じたまへる如く紅海の途󠄃より曠野に進󠄃みいりて日久しくセイル山を行めぐりたりしが
2 ヱホバつひに我に吿て言たまはく
3 汝等はこの山を行めぐること旣に久し今よりは北に轉りて進󠄃め
4 汝また民に命じて言へ汝らはセイルに住󠄃るヱサウの子孫なる汝らの兄弟の境界を通󠄃らんとす彼らはなんぢらを懼れん汝ら深く自ら謹むべし
5 彼らを攻る勿れ彼らの地は足の跖に踐ほどをも汝らに與へじ其は我セイル山をエサウにあたへて產業となさしめたればなり
6 汝ら金をもて彼らより食󠄃物を買て食󠄃ひまた金をもて彼らより水をもとめて飮め
7 汝の神ヱホバ汝が手に作ところの諸の事において汝をめぐみ汝がこの大なる曠野を通󠄃るを看そなはしたまへり汝の神ヱホバこの四十年のあひだ汝とともに在したれば汝は乏しき所󠄃あらざりしなり
8 我らつひにセイル山に住󠄃るエサウの子孫なる我らの兄弟を離れてアラバの路を通󠄃りエラテとエジオンゲベルを經て
轉りてモアブの曠野の路に進󠄃みいれり〘247㌻〙
9 時にヱホバわれに言たまひけるはモアブ人をなやますなかれまた之を攻て戰ふなかれ彼らの地をば我なんぢらの產業に與へじ其は我ロトの子孫にアルをあたへて產業となさしめたればなりと
324㌻
10 (昔エミ人こゝに住󠄃り是民は大にして數多くアナク人のごとくに身長高かり
11 アナク人とおなじくレパイムと呼なされたりしがモアブ人はこれをエミ人とよべり
12 ホリ人もまた昔セイルに住󠄃をりしがエサウの子孫これを逐󠄃滅し之にかはりて其處に住󠄃りイスラエルがヱホバに賜はりしその產業の地になせるが如し)
13 茲に汝等今たちあがりゼレデ川を渉れとありければ我らすなはちゼレデ川を渉れり
14 カデシバルネアを出てよりゼレデ川を渉るまでの間の日は三十八年にしてその代の軍人はみな亡果て營中にあらずなりぬヱホバのかれらに誓ひたまひし如し
15 誠にヱホバ手をもて之を攻めこれを營中より滅ぼしたまひければ終󠄃にみな亡はてたり
16 かく軍人みなその民の中より死亡たる時にあたりて
17 ヱホバ我に吿て言たまひけらく
18 汝は今日モアブの境なるアルを通󠄃らんとす
19 汝アンモンの子孫に近󠄃く時に之をなやます勿れ之を攻るなかれアンモンの子孫の地は我これを汝らの產業に與へじ其は我これをロトの子孫にあたへて產業となさしめたればなり
20 (是もまたレパイムの國とよびなされたり昔レパイムこゝに住󠄃ゐたればなりアンモン人はかれらをザムズミ人とよべり
21 この民は大にして數多くアナク人のごとくに身長たかかりしがヱホバ、アンモン人の前󠄃に之を滅ぼしたまひたればアンモン人これを逐󠄃はらひて之にかはりて住󠄃り
22 その事はセイルに住󠄃るエサウの子孫の前󠄃にホリ人を滅ぼしたまひしが如し彼らはホリ人を逐󠄃はらひ之にかはりて今日まで其處に住󠄃をるなり
23 カフトルより出たるカフトリ人はまたかの村々に住󠄃ひてガザにまで到るところのアビ人を滅ぼし之にかはりて其處に居る)
24 汝ら起󠄃あがり進󠄃みてアルノン河を渉れ我ヘシボンの王アモリ人シホンとこれが國を汝らの手に付す進󠄃んで之を獲よ彼を攻て戰へ
325㌻
25 今日我一天下の國人に汝を畏ぢ汝を懼れしめん彼らは汝の名聲を聞て慄ひ汝の爲に心を苦めんと
〘248㌻〙
26 茲に我ケデモテの曠野よりヘシボンの王シホンに使者をおくり和好の言を述󠄃しめたり云く
27 我に汝の國を通󠄃らしめよ我は大路を通󠄃りて行ん右にも左にも轉らじ
28 汝金をとりて食󠄃物を我に賣て食󠄃はせ金をとりて水を我にあたへて飮せよ我はたゞ徒步にて通󠄃らんのみ
29 セイルに住󠄃るエサウの子孫とアルに住󠄃るモアブ人とが我になしたる如くせよ然せば我はヨルダンを濟りて我らの神ヱホバの我らに賜ひし地にいたらんと
30 然るにヘシボンの王シホンは我らの通󠄃ることを容さゞりき是は汝の神ヱホバ彼を汝の手に付さんとてその氣を頑梗しその心を剛愎にしたまひたればなり今日見るが如し
31 時にヱホバ我に言たまひけるは視よ我いまシホンとこれが地を汝に與へんとす進󠄃んでその地を獲て汝の產業とせよと
32 茲にシホンその民をことごとく率󠄃ゐて出きたりヤハヅに於て戰ひけるが
33 我らの神ヱホバ彼をわれらに付したまひたれば我らかれとその子等とその一切の民を擊殺せり
34 その時に我らは彼の邑々を盡く取りその一切の邑の男女および兒童を滅して一人をも遺󠄃さゞりき
35 只その家畜および邑々より取たる掠取物は我らこれを獲て自分󠄃の物となせり
36 アルノンの河邊のアロエルおよび河の傍なる邑よりギレアデにいたるまで我らの攻取がたき邑とては一もあらざりき我らの神ヱホバこれを盡くわれらに付したまへり
37 第アンモンの子孫の地ヤボク川の全󠄃岸山地の邑々など凡てわれらの神ヱホバが我らの徃を禁じたまへる處には汝いたらざりき
326㌻
第3章
1 斯てわれら身をめぐらしてバシヤンの路に上り行けるにバシヤンの王オグその民をことごとく率󠄃ゐ出てエデレイに戰はんとせり
2 時にヱホバわれに言たまひけらく彼を懼るゝなかれ我かれとその一切の民とその地とを汝の手に付さん汝かのヘシボンに住󠄃たるアモリ人の王シホンになせし如く彼に爲べしと
3 我らの神ヱホバすなはちバシヤンの王オグとその一切の民を我らの手に付したまひしかば我ら之を擊ころして一人をも遺󠄃さゞりき
4 その時に我らこれが邑々をことごとく取り取ざる邑は一も有ざりきその取る邑は六十是すなはちアルゴブの地にしてバシヤンにおけるオグの國なり
5 この邑々はみな高き石垣あり門あり關ありて堅固なりき外にまた石垣あらざる邑甚だ多くありき
6 我らはヘシボンの王シホンになせし如く之を滅しその一切の邑の男女および兒童をことごとく滅せり〘249㌻〙
7 惟その一切の家畜とその邑々よりの掠取物とはこれを獲てわれらの物となせり
8 その時我らヨルダンの此旁の地をアルノン河よりヘルモン山までアモリ人の王二人の手より取り
9 (ヘルモンはシドン人これをシリオンと呼びアモリ人これをセニルと呼ぶ)
10 すなはち平󠄃野の一切の邑ギレアデの全󠄃地バシヤンの全󠄃地サルカおよびエデレイなどバシヤンに於るオグの國をことごとく取り
11 彼レパイムの遺󠄃れる者はバシヤンの王オグ只一人なりき彼の寢臺は鐵の寢臺なりき是は今なほアンモンの子孫のラバにあるに非ずや人の肘によれば是はその長九キユビトその寛四キユビトあり
12 その時に我らこの地を獲たりしがアルノン河の邊なるアロエルよりの地とギレアデの山地の半󠄃とその中の邑々とは我これをルベン人とガド人に與へたり
13 またオグの國なりしギレアデの殘餘の地とバシヤンの全󠄃地とは我これをマナセの半󠄃支派に與へたりアルゴブの全󠄃地すなはちバシヤンの全󠄃體はレパイムの國と稱へらる
14 マナセの子ヤイルはアルゴブの全󠄃地を取てゲシユルの境界とマアカの境界にまで至り自分󠄃の名にしたがひてバシヤンをハヲテヤイルと名けたりその名今日にいたる
327㌻
15 またマキルには我ギレアデを與へ
16 ルベン人とガド人にはギレアデよりアルノン河までを與へその河の眞中をもて界となしまたアンモンの子孫の地の界なるヤボク河にまで至り
17 またアラバおよびヨルダンとその邊の地をキンネレテよりアラバの海すなはち鹽海まで之にあたへて東の方ピスガの麓にいたる
18 その時我なんぢらに命じて言り汝らの神ヱホバこの地を汝らに與へて產業となさしめたまへば汝ら軍人に身をよろひて汝らの兄弟なるイスラエルの子孫に先だちて渉りゆくべし
19 但し汝らの妻と子女と家畜は我が汝らに與へし邑に止るべし我なんぢらが衆多の家畜を有を知なり
20 ヱホバなんぢらに賜ひしごとく汝らの兄弟にも安息を賜ひて彼らもまたヨルダンの彼旁にて汝らの神ヱホバにたまはるところの地を獲て產業となすに至らば汝らおのおの我なんぢらに與へし產業に歸るべし
21 かの時に我ヨシユアに命じて言り汝はこの二人の王に汝らの神ヱホバのおこなひたまふ所󠄃の事を目に視たりヱホバまた汝が徃ところの諸の國にも斯のごとく行ひたまはん
22 汝これを懼るゝ勿れ汝らの神ヱホバ汝らのために戰ひたまはんと
〘250㌻〙
23 當時われヱホバに求めて言り
24 主ヱホバよ汝は汝の大なる事と汝の强き手を僕に見すことを始めたまへり天にても地にても何の神か能なんぢの如き事業を爲し汝のごとき能力を有んや
25 願くは我をして渉りゆかしめヨルダンの彼旁なる美地美山およびレバノンを見ことを得させたまへと
26 然るにヱホバなんぢらの故をもて我を怒り我に聽ことを爲たまはずヱホバすなはち我に言たまひけるは旣に足りこの事を重て我に言なかれ
328㌻
27 汝ピスガの嶺にのぼり目を擧て西 北 南 東を望󠄇み汝の目をもて其地を觀よ汝はヨルダンを濟ることを得ざるべければなり
28 汝ヨシユアに命じ之に力をつけ之を堅うせよ其はこの民を率󠄃ゐて渉りゆき之に汝が見るところの地を獲さする者は彼なればなりと
29 かくて我らはベテペオルに對する谷に居る
第4章
1 今イスラエルよ我が汝らに敎ふる法度と律法を聽てこれを行へ然せば汝らは生ることを得汝らの先祖の神ヱホバの汝らに賜ふ地にいりて之を產業となすを得べし
2 我が汝らに命ずる言は汝らこれを增しまたは減すべからず我が汝らに命ずる汝らの神ヱホバの命令を守るべし
3 汝らはヱホバがバアルペオルの事によりて行ひたまひし所󠄃を目に觀たり即ちバアルペオルに從ひたる人々は汝の神ヱホバことごとく之を汝らの中間より滅し去たまひしが
4 汝らの神ヱホバに附て離れざりし汝等はみな今日までも生ながらへ居るなり
5 我はわが神ヱホバの我に命じたまひし如くに法度と律法を汝らに敎へ汝らをしてその徃て獲ところの地において之を行はしめんとせり
6 然ば汝ら之を守り行ふべし然する事は國々の民の目の前󠄃において汝らの智慧󠄄たり汝らの知識たるなり彼らこの諸の法度を聞て言んこの大なる國人は必ず智慧󠄄あり知識ある民なりと
7 われらの神ヱホバは我らがこれに龥もとむるに常に我らに近󠄃く在すなり何の國人か斯のごとく大にして神これに近󠄃く在すぞ
8 また何の國人か斯のごとく大にして今日我が汝らの前󠄃に立るこの一切の律法の如き正しき法度と律法とを有るぞ
9 汝深く自ら愼み汝の心を善く守れ恐くは汝その目に觀たる事を忘れん恐くは汝らの生存らふる日の中に其等の事汝の心を離れん汝それらの事を汝の子汝の孫に敎へよ
329㌻
10 汝がホレブにおいて汝の神ヱホバの前󠄃に立る日にヱホバわれに言たまひけらく我ために民を集めよ我これに吾言を聽しめ之をしてその世に存らふる日の間我を畏るゝことを學ばせまたその子女を敎ふることを爲しめんとすと〘251㌻〙
11 是において汝らは前󠄃みよりて山の麓に立ちけるが山は火にて燒てその燄は中天に沖り暗󠄃くして雲あり黑雲深かりき
12 時にヱホバ火の中より汝らに言ひたまひしが汝らは言詞の聲を聞る而已にて聲の外は何の像をも見ざりし
13 ヱホバすなはち其契󠄅約を汝らに述󠄃て汝らに之を守れと命じたまへり是すなはち十誡にしてヱホバこれを二枚の石の板に書したまふ
14 かの時にヱホバ我に命じて汝らに法度と律法を敎へしめたまへり是汝らにその徃て獲ところの地にて之を爲しめんとてなりき
15 ホレブにおいてヱホバ火の中より汝らに言ひたまひし日には汝ら何の像をも見ざりしなり然ば汝ら深く自ら愼み
16 道󠄃をあやまりて自己のために偶像を刻む勿れ物の像は男の形にもあれ女の形にもあれ凡て造󠄃るなかれ
17 即ち地の上にをる諸の獸の像空󠄃に飛ぶ諸の鳥の像
18 地に匍ふもろもろの物の像地の下の水の中に居る諸の魚の像など凡て造󠄃る勿れ
19 汝目をあげて天を望󠄇み日月星辰など凡て天の衆群を觀誘はれてこれを拜み之に事ふる勿れ是は汝の神ヱホバが一天下の萬國の人々に分󠄃ちたまひし者なり
20 ヱホバ汝らを取り汝らを鐵の爐の中すなはちエジプトより導󠄃きいだして自己の產業の民となしたまへること今日のごとし
21 然るにヱホバなんぢらの故によりて我を怒り我はヨルダンを濟りゆくことを得ずまた汝の神ヱホバが汝の產業に賜ひしその美地に入ことを得ずと誓ひたまへり
22 我はこの地に死ざるを得ず我はヨルダンを濟りゆくことあたはずなんぢらは濟りゆきて之を獲て產業となすことを得ん
330㌻
23 汝ら自ら愼み汝らの神ヱホバが汝らに立たまひし契󠄅約を忘れて汝の神ヱホバの禁じたまふ偶像など凡て物の像を刻むことを爲なかれ
24 汝の神ヱホバは燬盡す火嫉妬神なり
25 汝ら子を擧け孫を得てその地に長く居におよびて若し道󠄃をあやまりて偶像など凡て物の像を刻み汝の神ヱホバの惡と觀たまふ事をなしてその震怒を惹おこすことあらば
26 我今日天と地を呼て證となす汝らはかならずそのヨルダンを濟りゆきて獲たる地より速󠄃かに滅亡うせん汝らはその上に汝らの日を永うする能はず必ず滅びうせん
27 ヱホバなんぢらを國々に散したまべしヱホバの汝らを逐󠄃やりたまふ國々の中に汝らの遺󠄃る者はその數寡なからん
28 其處にて汝らは人の手の作なる見ことも聞ことも食󠄃ふことも嗅こともなき木や石の神々に事へん〘252㌻〙
29 但しまた其處にて汝その神ヱホバを求むるあらんに若し心をつくし精神を盡してこれを求めなば之に遇󠄃ん
30 後の日にいたりて汝艱難にあひて此もろもろの事の汝に臨まん時に汝もしその神ヱホバにたち歸りてその言にしたがはゞ
31 汝の神ヱホバは慈悲ある神なれば汝を棄ず汝を滅さずまた汝の先祖に誓ひたりし契󠄅約を忘れたまはざるべし
32 試に問へ汝の前󠄃に過󠄃さりし日神が地の上に人を造󠄃りたまひし日より已來天の此極より彼極までに曾て斯のごとき大なる事ありしや是のごとき事の聞えたる事ありしや
33 曾て人神が火の中より言ふ聲を汝らが聞るごとくに聞て尙生る者ありしや
34 汝らの神ヱホバがエジプトにおいて汝らの目の前󠄃にて汝らの爲に諸の事を爲たまひし如く曾て試探と徴證と奇蹟と戰爭と强き手と伸たる腕と大なる恐嚇をもて來りこの民をかの民の中より領いださんとせし神ありしや
331㌻
35 汝にこの事を示しゝはヱホバはすなはち神にしてその外には有ことなしと汝に知しめんがためなりき
36 汝を敎へんためにヱホバ天より汝に聲を聞しめ地に於てはまたその大なる火を汝に示したまへり即ち汝はその言の火の中より出るを聞り
37 ヱホバ汝の先祖等を愛したまひしが故にその後の子孫を選󠄄び大なる能力をもて親ら汝をエジプトより導󠄃き出したまひ
38 汝よりも大にして强き國々の民を汝の前󠄃より逐󠄃はらひ汝をその地に導󠄃きいりて之を汝の產業に與へんとしたまふこと今日のごとくなり
39 然ば汝今日知て心に思念べし上は天下は地においてヱホバは神にいましその外には神有こと無し
40 今日わが汝に命ずるヱホバの法度と命令を守るべし然せば汝と汝の後の子孫祥を得汝の神ヱホバの汝にたまふ地において汝その日を永うすることを得て疆なからん
41 斯てモーセ、ヨルダンの此旁日の出る方において邑三を別てり
42 是素より怨なきに誤りて人を殺せる者をして其處に逃󠄄れしむる爲なり其邑の一に逃󠄄るゝ時はその人生命を全󠄃うするを得べし
43 即ち一は曠野の內の平󠄃野にあるベゼル是はルベン人のためなり一はギレアデのラモテ是はガド人のためなり一はバシヤンのゴラン是はマナセ人のためなり
44 モーセがイスラエルの子孫の前󠄃に示しゝ律法は是なり
45 イスラエルの子孫のエジプトより出たる後モーセこの誡命と法度と律法を之に述󠄃たり〘253㌻〙
46 即ちヨルダンの此旁なるアモリ人の王シホンの地にありベテペオルに對する谷に於て之を述󠄃たりシホンはヘシボンに住󠄃をりしがモーセとイスラエルの子孫エジプトより出きたりし後これを擊ほろぼして
47 之が地を獲またバシヤンの王オグの地を獲たり彼ら二人はアモリ人の王にしてヨルダンの此旁日の出る方に居り
332㌻
48 その獲たる地はアルノン河の邊なるアロエルよりヘルモンといふシオン山にいたり
49 ヨルダンの此旁すなはちその東の方なるアラバの全󠄃部を括てアラバの鹽海に達󠄃しピスガの麓におよべり
第5章
1 茲にモーセ、イスラエルをことごとく召て之に言ふイスラエルよ今日我がなんぢらの耳に語るところの法度と律法とを聽きこれを學びこれを守りて行へよ
2 我らの神ヱホバ、ホレブに於て我らと契󠄅約を結びたまへり
3 この契󠄅約はヱホバわれらの先祖等とは結ばずして我ら今日此に生存へをる者と結びたまへり
4 ヱホバ山において火の中より汝らと面をあはせて言ひたまひしが
5 その時我はヱホバと汝らの間にたちてヱホバの言を汝らに傳へたり汝ら火に懼れて山にのぼり得ざりければなり
6 ヱホバすなはち言たまひけらく我は汝の神ヱホバ汝をエジプトの地その奴隸たる家より導󠄃き出せし者なり
7 汝わが面の前󠄃に我の外何物をも神とすべからず
8 汝自己のために何の偶像をも彫むべからず又󠄂上は天にある者下は地にある者ならびに地の下の水の中にある者の何の形狀をも作るべからず
9 之を拜むべからず之に事ふべからず我ヱホバ汝の神は嫉む神なれば我を惡む者にむかひては父󠄃の罪を子に報いて三四代におよぼし
10 我を愛しわが誡命を守る者には恩惠を施して千代にいたるなり
11 汝の神ヱホバの名を妄に口にあぐべからずヱホバは己の名を妄に口にあぐる者を罰せではおかざるべし
12 安息日を守りて之を聖󠄄潔󠄄すること汝の神ヱホバの汝に命ぜしごとくすべし
13 六日のあひだ勞きて汝の一切の業を爲べし
333㌻
14 七日は汝の神ヱホバの安息なれば何の業務をも爲べからず汝も汝の男子女子も汝の僕婢も汝の牛驢馬も汝の諸の家畜も汝の門の中にをる他國の人も然り斯なんぢ僕婢をして汝とおなじく息ましむべし
15 汝誌ゆべし汝かつてエジプトの地に奴隸たりしに汝の神ヱホバ强き手と伸べたる腕とをもて其處より汝を導󠄃き出したまへり是をもて汝の神ヱホバなんぢに安息日を守れと命じたまふなり
〘254㌻〙
16 汝の神ヱホバの汝に命じたまふごとく汝の父󠄃母を敬へ是汝の神ヱホバの汝に賜ふ地において汝の日の長からんため汝に祥のあらんためなり
17 汝殺す勿れ
18 汝姦淫する勿れ
19 汝盜むなかれ
20 汝その隣に對して虛妄の證據をたつる勿れ
21 汝その隣人の妻を貧󠄃るなかれまた隣人の家 田野 僕 婢牛 驢馬ならびに凡て汝の隣人の所󠄃有を貧󠄃るなかれ
22 是等の言をヱホバ山において火の中雲の中黑雲の中より大なる聲をもて汝らの全󠄃會衆に吿たまひしが此外には言ことを爲ず之を二枚の石の版に書して我に授けたまへり
23 時にその山は火にて燒をりしが汝ら黑暗󠄃の中よりその聲の出るを聞におよびて汝らの支派の長および長老等我に進󠄃みよりて
24 言けるは視よ我らの神ヱホバその榮光とその大なる事を我らに示したまひて我らその聲の火の中より出るを聞り我ら今日ヱホバ人と言ひたまふてその人の尙生るを見る
25 我らなんぞ死にいたるべけんや此大なる火われらを燒ほろぼさんとするなり我らもし此上になほ我らの神ヱホバの聲を聞ば死べし
26 凡そ肉身の者の中誰か能く活神の火の中より言ひたまふ聲を我らのごとくに聞てなほ生る者あらんや
27 請󠄃ふ汝進󠄃みゆきて我らの神ヱホバの言たまふところを都て聽き我らの神ヱホバの汝に吿給ふところを都て我らに吿よ我ら聽て行はんと
334㌻
28 ヱホバなんぢらが我に語れる言の聲を聞てヱホバ我に言たまひけるは我この民が汝に語れる言の聲を聞り彼らの言ところは皆善し
29 只願しきは彼等が斯のごとき心を懷いて恒に我を畏れ吾が誡命を守りてその身もその子孫も永く福祉を得にいたらん事なり
30 汝ゆきて彼らに言へ汝らおのおのその天幕にかへるべしと
31 然ど汝は此にて我傍に立て我なんぢに諸の誡命と法度と律法とを吿しめさん汝これを彼らに敎へ我が彼らに與へて產業となさしむる地において彼らにこれを行はしむべしと
32 然ば汝らの神ヱホバの汝等に命じたまふごとくに汝ら謹みて行ふべし右にも左にも曲るべからず
33 汝らの神ヱホバの汝らに命じたまふ一切の道󠄃に步め然せば汝らは生ることを得かつ福祉を得て汝らの產業とする地に汝らの日を長うすることを得ん〘255㌻〙
第6章
1 是すなはち汝らの神ヱホバが汝らに敎へよと命じたまふところの誡命と法度と律法とにして汝らがその濟りゆきて獲ところの地にて行ふべき者なり
2 是は汝と汝の子および汝の孫をしてその生命ながらふる日の間つねに汝の神ヱホバを畏れしめて我が汝らに命ずるその諸の法度と誡命とを守らしめんため又󠄂なんぢの日を永からしめんための者なり
3 然ばイスラエルよ聽て謹んでこれを行へ然せば汝は福祉を獲汝の先祖の神ヱホバの汝に言たまひしごとく乳󠄃と蜜の流るゝ國にて汝の數おほいに增ん
4 イスラエルよ聽け我らの神ヱホバは惟一のヱホバなり
5 汝心を盡し精神を盡し力を盡して汝の神ヱホバを愛すべし
6 今日わが汝に命ずる是らの言は汝これをその心にあらしめ
7 勤て汝の子等に敎へ家に坐する時も路を步む時も寢る時も興る時もこれを語るべし
335㌻
8 汝またこれを汝の手に結びて號となし汝の目の間におきて誌となし
9 また汝の家の柱と汝の門に書記すべし
10 汝の神ヱホバその汝の先祖アブラハム、イサク、ヤコブにむかひて汝に與んと誓ひたりし地に汝を入しめん時は汝をして汝が建たる者にあらざる大なる美しき邑々を得させ
11 汝が盈せるに非る諸の佳物を盈せる家を得させ汝が堀たる者にあらざる堀井を得させ汝が植えしにあらざる葡萄園と橄欖の樹とを得させたまふべし汝は食󠄃ひて飽󠄄ん
12 然る時は汝愼め汝をエジプトの地奴隸たる家より導󠄃き出しゝヱホバを忘るゝ勿れ
13 汝の神ヱホバを畏れてこれに事へその名を指て誓ふことをすべし
14 汝ら他の神々すなはち汝の四周󠄃なる民の神々に從ふべからず
15 汝らの中にいます汝の神ヱホバは嫉妬神なれば恐くは汝の神ヱホバ汝にむかひて怒を發し汝を地の面より滅し去たまはん
16 汝マツサにおいて試みしごとく汝の神ヱホバを試むるなかれ
17 汝らの神ヱホバの汝らに命じたまへる誡命と律法と法度とを汝ら謹みて守るべし
18 汝ヱホバの義と視善と視たまふ事を行ふべし然せば汝福祉を獲かつヱホバの汝の先祖に誓ひたまひしかの美地に入てこれを產業となすことを得ん
19 ヱホバまたその言たまひし如く汝の敵をことごとく汝の前󠄃より逐󠄃はらひたまはん
20 後の日に至りて汝の子なんぢに問てこの汝らの神ヱホバが汝らに命じたまひし誡命と法度と律法とは何のためなるやと言ば〘256㌻〙
21 汝その子に吿て言べし我らは昔エジプトにありてパロの奴隸たりしがヱホバ强き手をもて我らをエジプトより導󠄃き出したまへり
22 卽ちヱホバわれらの目の前󠄃において大なる畏るべき徴と奇蹟をエジプトとパロとその全󠄃家とに示したまひ
336㌻
23 我らを其處より導󠄃き出して其曾て我等の先祖に誓ひし地に我らを入せて之を我らに與へたまへり
24 而してヱホバ我らにこの諸の法度を守れと命じたまふ是われらをして我らの神ヱホバを畏れて常に幸ならしめんため又󠄂ヱホバ今日のごとく我らを守りて生命を保たしめんとてなりき
25 我らもしその命ぜられたるごとく此一切の誡命を我らの神ヱホバの前󠄃に謹んで守らば是われらの義となるべしと
第7章
1 汝の神ヱホバ汝が徃て獲べきところの地に汝を導󠄃きいり多の國々の民ヘテ人ギルガシ人アモリ人カナン人ペリジ人ヒビ人ヱブス人など汝よりも數多くして力ある七の民を汝の前󠄃より逐󠄃はらひたまはん時
2 すなはち汝の神ヱホバかれらを汝に付して汝にこれを擊せたまはん時は汝かれらをことごとく滅すべし彼らと何の契󠄅約をもなすべからず彼らを憫むべからず
3 また彼らと婚姻をなすべからず汝の女子を彼の男子に與ふべからず彼の女子を汝の男子に娶るべからず
4 其は彼ら汝の男子を惑はして我を離れしめ之をして他の神々に事へしむるありてヱホバこれがために汝らにむかひて怒を發し俄然に汝を滅したまふにいたるべければなり
5 汝らは反て斯かれらに行ふべし即ちかれらの壇を毀ちその偶像を打摧きそのアシラ像を斫たふし火をもてその雕像を焚べし
6 其は汝は汝の神ヱホバの聖󠄄民なればなり汝の神ヱホバは地の面の諸の民の中より汝を擇びて己の寶の民となしたまへり
7 ヱホバの汝らを愛し汝らを擇びたまひしは汝らが萬の民よりも數多かりしに因にあらず汝らは萬の民の中にて最も小き者なればなり
8 但ヱホバ汝らを愛するに因りまた汝らの先祖等に誓し誓を保たんとするに因てヱホバ强き手をもて汝らを導󠄃きいだし汝らを其奴隸たりし家よりエジプトの王パロの手より贖ひいだしたまへるなり
337㌻
9 汝知べし汝の神ヱホバは神にましまし眞實の神にましまして之を愛しその誡命を守る者には契󠄅約を保ち恩惠をほどこして千代にいたり
10 また之を惡む者には覿面にその報をなしてこれを滅ぼしたまふヱホバは己を惡む者には緩ならず覿面にこれに報いたまふなり〘257㌻〙
11 然ば汝わが今日汝に命ずるところの誡命と法度と律法とを守りてこれを行ふべし
12 汝らもし是らの律法を聽きこれを守り行はゞ汝の神ヱホバ汝の先祖等に誓ひし契󠄅約を保ちて汝に恩惠をほどこしたまはん
13 即ち汝を愛し汝を惠み汝の數を增したまひその昔なんぢに與へんと汝らの先祖等に誓たりし地において汝の兒女をめぐみ汝の地の產物 穀物 酒 油等を殖し汝の牛の產汝の羊の產を增たまふべし
14 汝は惠まるゝこと萬の民に愈らん汝らの中および汝らの家畜の中には男も女も子なき者は無るべし
15 ヱホバまた諸の疾病を汝の身より除きたまひ汝らが知る彼のエジプトの惡き病を汝の身に臨ましめず但汝を惡む者に之を臨ませたまふべし
16 汝は汝の神ヱホバの汝に付したまはんところの民をことごとく滅しつくすべし彼らを憫み見べからずまた彼らの神に事ふべからずその事汝の罟となればなり
17 汝是らの民は我よりも衆ければ我いかでか之を逐󠄃はらふことを得んと心に謂ふか
18 汝かれらを懼るゝなかれ汝の神ヱホバがパロとエジプトに爲たまひしところの事を善く憶えよ
19 即ち汝が眼に見たる大なる試煉と徴證と奇蹟と强き手と伸たる腕とを憶えよ汝の神ヱホバこれをもて汝を導󠄃き出したまへり是のごとく汝の神ヱホバまた汝が懼るゝ一切の民に爲たまふべし
338㌻
20 即ち汝の神ヱホバ黄蜂を彼らの中に遣󠄃りて終󠄃に彼らの遺󠄃れる者と汝の面を避󠄃て匿れたる者とを滅したまはん
21 汝かれらを懼るゝ勿れ其は汝の神ヱホバ能力ある畏るべき神汝らの中にいませばなり
22 汝の神ヱホバ是等の國人を漸々に汝の前󠄃より逐󠄃はらひたまはん汝は急󠄃速󠄃に彼らを滅しつくす可らず恐くは野の獸殖て汝に逼らん
23 汝の神ヱホバかれらを汝に付し大にこれを惶れ慄かしめて終󠄃にこれを滅し盡し
24 彼らの王等を汝の手に付したまはん汝かれらの名を天が下より削るべし汝には當ることを得る者なくして汝つひに之を滅ぼし盡すに至らん
25 汝かれらの神の雕像を火にて焚べし之に著せたる銀あるひは金を貧󠄃るべからず之を己に取べからず恐くは汝これに因て罟にかゝらん是は汝の神ヱホバの憎みたまふ者なれば也
26 憎むべき物を汝の家に携へいるべからず恐くは汝も其ごとくに詛はるゝ者とならん汝これを大に忌み痛く嫌󠄃ふべし是は詛ふべき者なればなり〘258㌻〙
第8章
1 我が今日なんぢに命ずるところの諸の誡命を汝ら謹んで行ふべし然せば汝ら生ることを得かつ殖增しヱホバの汝の先祖等に誓たまひし地に入てこれを產業となすことを得ん
2 汝記念べし汝の神ヱホバこの四十年の間汝をして曠野の路に步ましめたまへり是汝を苦しめて汝を試驗み汝の心の如何なるか汝がその誡命を守るや否やを知んためなりき
3 即ち汝を苦しめ汝を饑しめまた汝も知ず汝の先祖等も知ざるところのマナを汝らに食󠄃はせたまへり是人はパン而已にて生る者にあらず人はヱホバの口より出る言によりて生る者なりと汝に知しめんが爲なり
4 この四十年のあひだ汝の衣服󠄃は古びて朽ず汝の足は腫ざりし
5 汝また心に念ふべし人のその子を懲戒ごとく汝の神ヱホバも汝を懲戒たまふなり
339㌻
6 汝の神ヱホバの誡命を守りその道󠄃にあゆみてこれを畏るべし
7 汝の神ヱホバ汝をして美地に到らしめたまふ是は谷にも山にも水の流あり泉あり瀦水ある地
8 小麥 大麥 葡萄 無花果および石榴ある地油 橄欖および蜜のある地
9 汝の食󠄃ふ食󠄃物に缺るところなく汝に何も乏しきところあらざる地なりその地の石はすなはち鐵その山よりは銅を掘とるべし
10 汝は食󠄃ひて飽󠄄き汝の神ヱホバにその美地を己にたまひし事を謝すべし
11 汝わが今日なんぢに命ずるヱホバの誡命と律法と法度とを守らずして汝の神ヱホバを忘るゝにいたらざるやう愼めよ
12 汝食󠄃ひて飽󠄄き美しき家を建て住󠄃ふに至り
13 また汝の牛羊殖增し汝の金銀殖增し汝の所󠄃有みな殖增にいたらん時に
14 恐くは汝心に驕りて汝の神ヱホバを忘れんヱホバは汝をエジプトの地奴隸たる家より導󠄃き出し
15 汝をみちびきて彼の大にして畏るべき曠野すなはち蛇火の蛇蠍などありて水あらざる乾ける地を通󠄃り汝らのために堅き磐の中より水を出し
16 汝の先祖等の知ざるマナを曠野にて汝に食󠄃せたまへり是みな汝を苦しめ汝を試みて終󠄃に福祉を汝にたまはんとてなりき
17 汝我力とわが手の動作によりて我この資財を得たりと心に謂なかれ
18 汝の神ヱホバを憶えよ其はヱホバ汝に資財を得の力をたまふなればなり斯したまふは汝の先祖等に誓し契󠄅約を今日の如く行はんとてなり
19 汝もし汝の神ヱホバを忘れ果て他の神々に從がひ之に事へこれを拜むことを爲ば我今日汝らに證をなす汝らはかならず滅亡ん
20 ヱホバの汝らの前󠄃に滅ぼしたまひし國々の民のごとく汝らも滅亡べし是なんぢらの神ヱホバの聲に汝らしたがはざればなり〘259㌻〙
第9章
1 イスラエルよ聽け汝は今日ヨルダンを濟りゆき汝よりも大にして强き國々に入てこれを取んとすその邑々は大にして石垣は天に達󠄃り
340㌻
2 その民は汝が知ところのアナクの子孫にして大くかつ身長たかし汝また人の言るを聞り云く誰かアナクの子孫の前󠄃に立ことを得んと
3 汝今日知る汝の神ヱホバは燬つくす火にまして汝の前󠄃に進󠄃みたまふとヱホバかならず彼らを滅ぼし彼らを汝の前󠄃に攻伏たまはんヱホバの汝に言たまひし如く汝かれらを逐󠄃はらひ速󠄃かに彼らを滅ぼすべし
4 汝の神ヱホバ汝の前󠄃より彼らを逐󠄃はらひたまはん後に汝心に言なかれ云く我の義がためにヱホバ我をこの地に導󠄃きいりてこれを獲させたまへりとそはこの國々の民の惡きがためにヱホバ之を汝の前󠄃より逐󠄃はらひたまふなり
5 汝の徃てその地を獲は汝の義きによるにあらず又󠄂なんぢの心の直によるに非ずこの國々の民惡きが故に汝の神ヱホバこれを汝の前󠄃より逐󠄃はらひたまふなりヱホバの斯したまふはまた汝の先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓たりし言を行はんとてなり
6 汝知る汝の神ヱホバの汝に此美地を與へて獲させたまふは汝の義きによるに非ず汝は項の强き民なればなり
7 汝曠野に於て汝の神ヱホバを怒せし事を憶えて忘るゝ勿れ汝らはエジプトの地を出し日より此處にいたる日まで常にヱホバに悖れり
8 ホレブにおいて汝らヱホバを怒せたればヱホバ汝らを怒りて汝らを滅ぼさんとしたまへり
9 かの時われ石の板すなはちヱホバの汝らに立たまへる契󠄅約を載る石の板を受んとて山に上り四十日四十夜山に居りパンも食󠄃ず水も飮ざりき
10 ヱホバ我に神の指をもて書しるしたる文字ある石の板二枚を授けたまへりその上には集會の日にヱホバが山において火の中より汝らに吿たまひし言をことごとく載す
11 すなはち四十日四十夜過󠄃し時ヱホバ我にその契󠄅約を載る板なる石の板二枚を授け
12 而してヱホバ我に言たまひけるは汝起󠄃あがりて速󠄃かに此より下れ汝がエジプトより導󠄃き出しゝ民は惡き事を行ふなり彼らは早くもわが彼らに命ぜし道󠄃を離れて自己のために偶像を鑄造󠄃れりと
341㌻
13 ヱホバまた我に言たまひけるは我この民を觀たり視よ是は項の强き民なり
14 我を阻むるなかれ我かれらを滅ぼしその名を天が下より抹さり汝をして彼らよりも强くまた大なる民とならしむべし〘260㌻〙
15 是に於て我身をめぐらして山を下りけるが山は火にて燒をる又󠄂その契󠄅約の板二枚はわが兩の手にあり
16 斯て我觀しに汝らはその神ヱホバにむかひて罪を犯し自己のために犢を鑄造󠄃りて早くもヱホバの汝らに命じたまひし道󠄃を離れたりしかば
17 我その二枚の板をとりてわが兩の手よりこれを擲ち汝らの目の前󠄃にこれを碎けり
18 而して我は前󠄃のごとく四十日四十夜ヱホバの前󠄃に伏て居りパンも食󠄃ず水も飮ざりき是は汝らヱホバの目の前󠄃に惡き事をおこなひ之を怒せて大に罪を獲たればなり
19 ヱホバ忿怒を發し憤恨をおこし汝らを怒りて滅ぼさんとしたまひしかば我懼れたりしが此度もまたヱホバ我に聽たまへり
20 ヱホバまた痛くアロンを怒りてこれを滅ぼさんとしたまひしかば我その時またアロンのために祈れり
21 斯て我なんぢらが作りて罪を犯しし犢を取り火をもて之を燒きこれを搗きこれを善く打碎きて細き塵となしその塵を山より流れ下るところの溪流に投棄たり
22 汝らはタベラ、マッサおよびキブロテハツタワにおいてもまたヱホバを怒らせたり
23 またヱホバ、カデシバルネアより汝らを遣󠄃さんとせし時言たまひけるは汝ら上りゆきて我がなんぢらに與ふる地を獲て產業とせよと然るに汝らはその神ヱホバの命に悖り之を信ぜずまたその言を聽ざりき
24 我が汝らを識し日より以來汝らは常にヱホバに悖りしなり
342㌻
25 かの時ヱホバ汝らを滅さんと言たまひしに因て我最初に伏たる如く四十日四十夜ヱホバの前󠄃に伏し
26 ヱホバに祈りて言けるは主ヱホバよ汝その大なる權能をもて贖ひ强き手をもてエジプトより導󠄃き出しゝ汝の民汝の產業を滅したまふ勿れ
27 汝の僕アブラハム、イサク、ヤコブを念たまへ此民の剛愎と惡と罪とを鑒みたまふ勿れ
28 恐くは汝が我らを導󠄃き出したまひし國の人言んヱホバその約せし地にかれらを導󠄃きいること能はざるに因りまた彼らを惡むに因て彼らを導󠄃き出して曠野に殺せりと
29 抑かれらは汝の民汝の產業にして汝が强き能力をもて腕を伸て導󠄃き出したまひし者なり
第10章
1 かの時ヱホバ我に言たまひけるは汝石の板二枚を前󠄃のごとくに斫て作りまた木の匱一箇を作りて山に登り來れ
2 汝が碎きしかの前󠄃の板に載たる言を我その板に書さん汝これをその匱に藏むべし〘261㌻〙
3 我すなはち合歡木をもて匱一箇を作りまた石の板二枚を前󠄃のごとくに斫て作りその板二枚を手に執て山に登りしかば
4 ヱホバかの集會の日に山において火の中より汝らに吿たるその十誡を前󠄃に書したるごとくその板に書し而してヱホバこれを我に授けたまへり
5 是に於て我身を轉らして山より下りその板を我が造󠄃りしかの匱に藏めたり今なほその中にありヱホバの我に命じたまへる如し
6 斯てイスラエルの子孫はヤカン人の井より出たちてモセラにいたれりアロン其處に死て其處に葬られその子エレアザルこれに代りて祭司となれり
7 又󠄂其處より出たちてグデゴダにいたりグデゴダより出たちてヨテバにいたれりこの地には水の流多かりき
8 かの時ヱホバ、レビの支派を區分󠄃てヱホバの契󠄅約の匱を舁しめヱホバの前󠄃に立てこれに事へしめ又󠄂ヱホバの名をもて祝することを爲せたまへり其事今日にいたる
343㌻
9 是をもてレビはその兄弟等の中に分󠄃なくまた產業なし惟ヱホバその產業たり汝の神ヱホバの彼に言たまへる如し
10 我は前󠄃の日數のごとく四十日四十夜山に居しがヱホバその時にもまた我に聽たまへりヱホバ汝を滅すことを好みたまはざりき
11 斯てヱホバ我に言たまひけるは汝起󠄃あがり民に先だちて進󠄃み行き彼らをして我が之に與へんとその先祖に誓ひたる地に入てこれを獲せしめよ
12 イスラエルよ今汝の神ヱホバの汝に要󠄃めたまふ事は何ぞや惟是のみ即ち汝がその神ヱホバを畏れその一切の道󠄃に步み之を愛し心を盡し精神を盡して汝の神ヱホバに事へ
13 又󠄂我が今日汝らに命ずるヱホバの誡命と法度とを守りて身に福祉を得るの事のみ
14 夫天と諸天の天および地とその中にある者は皆汝の神ヱホバに屬す
15 然るにヱホバたゞ汝の先祖等を悅こびて之を愛しその後の子孫たる汝らを萬の民の中より選󠄄びたまへり今日のごとし
16 然ば汝ら心に割󠄅禮を行へ重て項を强くする勿れ
17 汝の神ヱホバは神の神主の主大にしてかつ權能ある畏るべき神にましまし人を偏󠄃り視ずまた賄賂を受ず
18 孤兒と寡婦󠄃のために審判󠄄を行ひまた旅客を愛してこれに食󠄃物と衣服󠄃を與へたまふ
19 汝ら旅客を愛すべし其は汝らもエジプトの國に旅客たりし事あればなり
20 汝の神ヱホバを畏れ之に事へこれに附從がひその名を指て誓ふことをすべし
21 彼は汝の讃べき者また汝の神にして汝が目に見たる此等の大なる畏るべき事業をなしたまへり
22 汝の先祖等は僅か七十人にてエジプトに下りたりしに今汝の神ヱホバ汝をして天空󠄃の星のごとくに多くならしめたまへり〘262㌻〙
344㌻
第11章
1 然ば汝の神ヱホバを愛し常にその職守と法度と律法と誡命とを守るべし
2 汝らの子女は知ずまた見ざれば我これに言ず惟汝らに言ふ汝らは今日すでに汝らの神ヱホバの懲戒とその大なる事とその强き手とその伸たる腕とを知り
3 またそのエジプトの中においてエジプト王パロとその全󠄃國にむかひておこなひたまひし徴證と行爲とを知り
4 またヱホバがエジプトの軍勢とその馬とその車とに爲たまひし事すなはち彼らが汝らの後を追󠄃きたれる時に紅海の水を彼らの上に覆ひかゝらしめ之を滅ぼして今日までその跡方なからしめし事を知り
5 また此處にいたるまで曠野に於て汝らに爲たまひし事等を知り
6 またそのルベンの子孫なるエリアブの子等ダタンとアビラムに爲たまひし事すなはちイスラエルの全󠄃家の眞中において地その口を啓きて彼らとその家族とその天幕とその足下に立つ者とを呑つくしゝ事を知なり
7 即ち汝らはヱホバの行ひたまひし此諸の大なる作爲を目に覩たり
8 然ば汝ら我今日汝らに命ずる誡命を盡く守るべし然せば汝らは强くなり汝らが濟りゆきて獲んとする地にいりて之を獲ことを得
9 またヱホバが汝らと汝らの後の子孫にあたへんと汝らの先祖等に誓たまひし地乳󠄃と蜜との流るゝ國において汝らの日を長うすることを得ん
10 汝らが進󠄃みいりて獲んとする地は汝らが出來りしエジプトの地のごとくならず彼處にては汝ら種を播き足をもて之に灌漑げりその狀蔬菜園におけるが如し
11 然ど汝らが濟りゆきて獲ところの地は山と谷の多き地にして天よりの雨水を吸ふなり
12 その地は汝の神ヱホバの顧󠄃みたまふ者にして年の始より年の終󠄃まで汝の神ヱホバの目常にその上に在り
13 汝らもし我今日なんぢらに命ずる吾命令を善守りて汝らの神ヱホバを愛し心を盡し精神を盡して之に事へなば
345㌻
14 我なんぢらの地の雨を秋の雨春の雨ともに時に隨ひて降し汝らをしてその穀物を收入しめ且酒と油を獲せしめ
15 また汝の家畜のために野に草を生ぜしむべし汝は食󠄃ひて飽󠄄ん
16 汝ら自ら愼むべし心迷󠄃ひ飜へりて他の神々に事へこれを拜む勿れ
17 恐くはヱホバ汝らにむかひて怒を發して天を閉たまひ雨ふらず地物を生ぜずなりて汝らそのヱホバに賜れる美地より速󠄃かに滅亡るに至らん
〘263㌻〙
18 汝ら是等の我言を汝らの心と魂との中に藏めまた之を汝らの手に結びて徴となし汝らの目の間におきて誌となし
19 之をなんぢらの子等に敎へ家に坐する時も路を步む時も寢る時も興る時もこれを語り
20 また汝の家の柱となんぢの門に之を書記べし
21 然せばヱホバが汝らの先祖等に與へんと誓ひたまひし地に汝らのをる日および汝らの子等のをる日は數多くして天の地を覆ふ日の久きが如くならん
22 汝らもし我が汝らに命ずる此一切の誡命を善く守りてこれを行ひ汝等の神ヱホバを愛しその一切の道󠄃に步み之に附從がはゞ
23 ヱホバこの國々の民をことごとく汝らの前󠄃より逐󠄃はらひたまはん而して汝らは己よりも大にして能力ある國々を獲にいたるべし
24 凡そ汝らが足の蹠にて踏む處は皆汝らの有とならん即ち汝らの境界は曠野よりレバノンに亘りまたユフラテ河といふ河より西の海に亘るべし
25 汝らの前󠄃に立ことを得る人あらじ汝らの神ヱホバ汝らが踏いるところの地の人々をして汝らを怖ぢ汝らを畏れしめたまふこと其甞て汝らに言たまひし如くならん
26 視よ我今日汝らの前󠄃に祝福と呪詛とを置く
27 汝らもし我が今日なんぢらに命ずる汝らの神ヱホバの誡命に遵󠄅はゞ祝福を得ん
28 汝らもし汝らの神ヱホバの誡命に遵󠄅はず飜へりて我が今日なんぢらに命ずる道󠄃を離れ素知ざりし他の神々に從がひなば呪詛を蒙らん
346㌻
29 汝の神ヱホバ汝が徃て獲んとする地に汝を導󠄃きいりたまふ時は汝ゲリジム山に祝福を置きエバル山に呪詛をおくべし
30 この二山はヨルダンの彼旁アラバに住󠄃るカナン人の地において日の出る方の道󠄃の後にありギルガルに對ひてモレの橡樹と相去こと遠󠄄らざるにあらずや
31 汝らはヨルダンを濟り汝らの神ヱホバの汝らに賜ふ地に進󠄃みいりて之を獲んとす必ずこれを獲て其處に住󠄃ことを得ん
32 然ば我が今日なんぢらに授くるところの法度と律法を汝らことごとく守りて行ふべし
第12章
1 是は汝の先祖等の神ヱホバの汝に與へて獲させたまふところの地において汝らが世に生存ふる日の間常に守り行ふべき法度と律法となり
2 汝らが逐󠄃はらふ國々の民がその神々に事へし處は山にある者も岡にある者も靑樹の下にある者もみな之を盡く毀ち
3 その壇を毀ちその柱を碎きそのアシラ像を火にて燒きまたその神々の雕像を砍倒して之が名をその處より絕去べし〘264㌻〙
4 但し汝らの神ヱホバには汝ら是のごとく爲べからず
5 汝らの神ヱホバがその名を置んとて汝らの支派の中より擇びたまふ處なるヱホバの住󠄃居を汝ら尋󠄃ね求めて其處にいたり
6 汝らの燔祭と犧牲汝らの什一と汝らの手の擧祭汝らの願還󠄃と自意󠄃の禮物および汝らの牛羊の首出等を汝ら其處に携へ詣り
7 其處にて汝らの神ヱホバの前󠄃に食󠄃をなし又󠄂汝らと汝らの家族皆その手を勞して獲たる物をもて快樂を取べし是なんぢの神ヱホバの祝福によりて獲たるものなればなり
8 汝ら彼處にては我らが今日此に爲ごとく各々その目に善と見ところを爲べからず
9 汝らは尙いまだ汝らの神ヱホバの賜ふ安息と產業にいたらざるなり
10 然ど汝らヨルダンを渡り汝らの神ヱホバの汝らに與へて獲させたまふ地に住󠄃にいたらん時またヱホバ汝らの周󠄃圍の敵を除き汝らに安息を賜ひて汝等安泰に住󠄃ふにいたらん時は
347㌻
11 汝らの神ヱホバその名を置んために一の處を擇びたまはん汝ら其處に我が命ずる物を都て携へゆくべし即ち汝らの燔祭と犧牲と汝らの什一と汝らの手の擧祭および汝らがヱホバに誓願をたてゝ献んと誓ひし一切の佳物とを携へいたるべし
12 汝らは汝らの男子 女子 僕 婢とともに汝らの神ヱホバの前󠄃に樂むべしまた汝らの門の內にをるレビ人とも然すべし其は是は汝らの中間に分󠄃なく產業なき者なればなり
13 汝愼め凡て汝が自ら擇ぶ處にて燔祭を獻ることをする勿れ
14 唯汝らの支派の一の中にヱホバの選󠄄びたまはんその處に於て汝燔祭を獻げまた我が汝に命ずる一切の事を爲べし
15 彼處にては汝の神ヱホバの汝にたまふ祝福に循ひて汝その心に好む獸畜を汝の門の內に殺してその肉を食󠄃ふことを得即ち汚れたる人も潔󠄄き人もこれを食󠄃ふを得ること羚羊と牡鹿に於けるが如し
16 但しその血は食󠄃ふべからず水の如くにこれを地に灌ぐべし
17 汝の穀物と酒と油の什一および汝の牛羊の首出ならびに汝が立し誓願を還󠄃すための禮物と汝の自意󠄃の禮物および汝の手の擧祭の品は汝これを汝の門の內に食󠄃ふべからず
18 汝の神ヱホバの選󠄄びたまふ處において汝の神ヱホバの前󠄃に汝これを食󠄃ふべし即ち汝の男子 女子 僕 婢および汝の門の內にをるレビ人とともに之を食󠄃ひ汝の手を勞して獲たる一切の物をもて汝の神ヱホバの前󠄃に快樂を取べし
19 汝愼め汝が世に生存ふる日の間レビ人を棄る勿れ
〘265㌻〙
20 汝の神ヱホバ汝に言しごとくに汝の境界を廣くしたまふに及び汝心に肉を食󠄃ふことを欲して言ん我肉を食󠄃はんと然る時は汝すべてその心に好む肉を食󠄃ふことを得べし
21 もし汝の神ヱホバのその名を置んとて擇びたまへる處汝と離るゝこと遠󠄄からば我が汝に命ぜし如く汝そのヱホバに賜はれる牛羊を宰り汝の門の內にて凡てその心に好む者を食󠄃ふべし
348㌻
22 牡鹿と羚羊を食󠄃ふがごとく汝これを食󠄃ふことを得汚れたる者も潔󠄄き者も均くこれを食󠄃ふことを得るなり
23 唯堅く愼みてその血を食󠄃はざれ血はこれが生命なればなり汝その生命を肉とともに食󠄃ふべからず
24 汝これを食󠄃ふ勿れ水のごとくにこれを地に灌ぐべし
25 汝血を食󠄃はざれ汝もし斯ヱホバの善と觀たをふ事を爲ば汝の身と汝の後の子孫とに福祉あらん
26 唯汝の献げたる聖󠄄物と誓願の物とはこれをヱホバの擇びたまふ處に携へゆくべし
27 汝燔祭を獻る時はその肉と血を汝の神ヱホバの壇に供ふべくまた犧牲を獻る時はその血を汝の神ヱホバの壇の上に灌ぎその肉を食󠄃ふべし
28 わが汝に命ずる是等の言を汝聽て守れ汝かく汝の神ヱホバの善と觀正と觀たまふ事を爲ば汝と汝の後の子孫に永く福祉あらん
29 汝の神ヱホバ汝が徃て逐󠄃はらはんとする國々の民を汝の前󠄃より絕去たまひて汝つひにその國々を獲てその地に住󠄃にいたらん時は
30 汝みづから愼め彼らが汝の前󠄃に亡びたる後汝かれらに傚ひて罟にかゝる勿れまた彼らの神を尋󠄃求めこの國々の民は如何なる樣にてその神々に事へたるか我もその如くにせんと言ことなかれ
31 汝の神ヱホバに向ひては汝然す可らず彼らはヱホバの忌かつ憎みたまふ諸の事をその神にむかひて爲しその男子女子をさへ火にて焚てその神々に獻げたり
32 我が汝らに命ずるこの一切の言をなんぢら守りて行ふべし汝これを增なかれまた之を減すなかれ
第13章
1 汝らの中に預言者あるひは夢者興りて徴證と奇蹟を汝に見し
2 汝に吿て我らは今より汝と我とが是まで識ざりし他の神々に從ひて之に事へんと言ことあらんにその徴證または奇蹟これが言ごとく成とも
349㌻
3 汝その預言者または夢者の言に聽したがふ勿れ其は汝等の神ヱホバ汝らが心を盡し精神を盡して汝らの神ヱホバを愛するや否やを知んとて斯なんぢらを試みたまふなればなり〘266㌻〙
4 汝らは汝らの神ヱホバに從ひて步み之を畏れその誡命を守りその言に遵󠄅ひ之に事へこれに附從ふべし
5 その預言者または夢者をば殺すべし是は彼汝らをして汝らをエジプトの國より導󠄃き出し奴隸の家より贖ひ取たる汝らの神ヱホバに背かせんとし汝の神ヱホバの汝に步めと命ぜし道󠄃より汝を誘ひ出さんとして語るに因てなり汝斯して汝の中《
6 汝の母の生る汝の兄弟または汝の男子女子または汝の懷の妻または汝と身命を共にする汝の友潜に汝を誘ひて言あらん汝も汝の先祖等も識ざりし他の神々に我ら徃て事へん
7 即ち汝の周󠄃圍にある國々の神の或は汝に近󠄃く或は汝に遠󠄄くして地の此極より地の彼極までに鎭り坐る者に我ら事へんと斯言ことあるとも
8 汝これに從ふ勿れ之に聽なかれ之を惜み視る勿れ之を憐むなかれ之を庇ひ匿す勿れ
9 汝かならず之を殺すべし之を殺すには汝まづ之に手を下し然る後に民みな手を下すべし
10 彼はエジプトの國奴隸の家より汝を導󠄃き出したまひし汝の神ヱホバより汝を誘ひ離さんと求めたれば汝石をもて之を擊殺すべし
11 然せばイスラエルみな聞て懼れ重ねて斯る惡き事を汝らの中に行はざらん
12 汝聞に汝の神ヱホバの汝に與へて住󠄃しめたまへる汝の邑の一に
13 邪僻なる人々興り我らは今まで識ざりし他の神々に徃て事へんと言てその邑に住󠄃む人を誘ひ惑はしたりと言あらば
14 汝これを尋󠄃ね探り善問べし若その事眞にその言確にして斯る憎むべき事汝らの中に行はれたらば
350㌻
15 汝かならずその邑に住󠄃む者を刃󠄃にかけて擊ころしその邑とその中に居る一切の者およびその家畜を刃󠄃にかけて盡く擊ころすべし
16 またその中より獲たる掠取物は凡てこれをその衢に集め火をもてその邑とその一切の掠取物をことごとく焚て汝の神ヱホバに供ふべし是は永く荒邱となりて再び建なほさるゝこと無るべきなり
17 斯汝この詛はれし物を少許も汝の手に附おく勿れ然せばヱホバその烈しき怒を靜め汝に慈悲を加へて汝を憐れみ汝の先祖等に誓ひしごとく汝の數を衆くしたまはん
18 汝もし汝の神ヱホバの言を聽き我が今日なんぢに命ずるその一切の誡命を守り汝の神ヱホバの善と觀たまふ事を行はゞ是のごとくなるべし
第14章
1 汝らは汝等の神ヱホバの子等なり汝ら死る者のために己が身に傷くべからずまた己が目の間にあたる頂の髮を剃べからず〘267㌻〙
2 其は汝は汝の神ヱホバの聖󠄄民なればなりヱホバは地の面の諸の民の中より汝を擇びて己の寶の民となし給へり
3 汝穢はしき物は何をも食󠄃ふ勿れ
4 汝らが食󠄃ふべき獸畜は是なり即ち牛 羊 山羊
5 牡鹿 羚羊 小鹿 麣 麞 麈 麖など
6 凡て獸畜の中蹄の分󠄃れ割󠄅て二つの蹄を成る反蒭獸は汝ら之を食󠄃ふべし
7 但し反蒭者と蹄の分󠄃れたる者の中汝らの食󠄃ふべからざる者は是なり即ち駱駝 兎および山鼠是らは反蒭ども蹄わかれざれば汝らには汚れたる者なり
8 また豚是は蹄わかるれども反蒭ことをせざれば汝らには汚たる者なり汝ら是等の物の肉を食󠄃ふべからずまたその死體に捫るべからず
9 水にをる諸の物の中是のごとき者を汝ら食󠄃ふべし即ち凡て翅と鱗のある者は皆汝ら之を食󠄃ふべし
10 凡て翅と鱗のあらざる者は汝らこれを食󠄃ふべからず是は汝らには汚たる者なり
351㌻
11 また凡て潔󠄄き鳥は皆汝らこれを食󠄃ふべし
12 但し是等は食󠄃ふべからず即ち鵰 黄鷹 鳶
13 鸇 鷹 黑鷹 の類
14 各種の鴉の類
15 駝鳥 梟 鷗󠄁 雀鷹の類
16 鸛 鷺 白鳥
17 鸅鸕 大鷹 鷀󠄅
18 鶴 鸚鵡の類 鷸および蝙蝠
19 また凡て羽翼ありて匍ところの者は汝らには汚たる者なり汝らこれを食󠄃ふべからず
20 凡て羽翼をもて飛ところの潔󠄄き物は汝らこれを食󠄃ふべし
21 凡そ自ら死たる者は汝ら食󠄃ふべからず汝の門の內にをる他國の人に之を與へて食󠄃しむべし又󠄂これを異邦人に賣も可し汝は汝の神ヱホバの聖󠄄民なればなり汝山羊羔をその母の乳󠄃にて煮べからず
22 汝かならず年々に田畝に種蒔て獲ところの產物の什一を取べし
23 而して汝の神ヱホバの前󠄃すなはちヱホバのその名を置んとて擇びたまはん處において汝の穀物と酒と油の什一を食󠄃ひまた汝の牛羊の首出を食󠄃ひ斯して汝の神ヱホバを常に畏るゝことを學ぶべし
24 但しその路行に勝󠄃がたくして之を携へいたること能はざる時または汝の神ヱホバのその名を置んとて擇びたまへる處汝を離るゝこと餘りに遠󠄄き時は汝もし汝の神ヱホバの恩惠に潤ふ身ならば
25 その物を金に易へその金を包みて手に執り汝の神ヱホバの擇びたまへる處に徃き
26 凡て汝の心の好む物をその金に易べし即ち牛 羊 葡萄酒 濃酒など凡て汝が心に欲する物をもとめ其處にて汝の神ヱホバの前󠄃にこれを食󠄃ひ汝と汝の家族ともに樂むべし〘268㌻〙
27 汝の門の內にをるレビ人を棄る勿れ是は汝の中間に分󠄃なく產業なき者なればなり
28 三年の末に到る每にその年の產物の十分󠄃の一を盡く持出してこれを汝の門の內に儲蓄ふべし
29 然る時は汝の中間に分󠄃なく產業なきレビ人および汝の門の內にをる他國の人と孤子と寡婦󠄃など來りてこれを食󠄃ひて飽󠄄ん斯せば汝の神ヱホバ汝が手をもて爲ところの諸の事において汝に福祉を賜ふべし
352㌻
第15章
1 七年の終󠄃に至るごとに汝放釋を行ふべし
2 その放釋の例は是のごとし凡てその鄰に貸ことを爲しその債主は之を放釋べしその鄰またはその兄弟にこれを督促べからず是はヱホバの放釋と稱へらるればなり
3 異國の人には汝これを督促ことを得されど汝の兄弟に貸たる物は汝の手よりこれを放釋べし
4 斯せば汝らの中間に貧󠄃者なからん其は汝の神ヱホバその汝に與へて產業となさしめたまふ地において大に汝を祝福たまふべければなり
5 只汝もし謹みて汝の神ヱホバの言に聽したがひ我が今日なんぢに命ずるこの誡命を盡く守り行ふに於ては是のごとくなるべし
6 汝の神ヱホバ汝に言しごとく汝を祝福たまふべければ汝は衆多の國人に貸ことを得べし然ど借こと有じまた汝は衆多の國人を治めん然ど彼らは汝を治むることあらじ
7 汝の神ヱホバの汝に賜ふ地において若汝の兄弟の貧󠄃き人汝の門の中にをらばその貧󠄃しき兄弟にむかひて汝の心を剛愎にする勿れまた汝の手を閉る勿れ
8 かならず汝の手をこれに開き必ずその要󠄃むる物をこれに貸あたへてこれが乏しきを補ふべし
9 汝愼め心に惡き念を起󠄃し第七年放釋の年近󠄃づけりと言て汝の貧󠄃き兄弟に目をかけざる勿れ汝もし斯之に何をも與へずしてその人これがために汝をヱホバに訴へなば汝罪を獲ん
10 汝かならず之に與ふることを爲べしまた之に與ふる時は心に惜むこと勿れ其は此事のために汝の神ヱホバ汝の諸の事業と汝の手の諸の働作とに於て汝を祝福たまふべければなり
11 貧󠄃き者は何時までも國にたゆること無るべければ我汝に命じて言ふ汝かならず汝の國の中なる汝の兄弟の困難者と貧󠄃乏者とに汝の手を開くべし
353㌻
12 汝の兄弟たるヘブルの男またはヘブルの女汝の許に賣れたらんに若六年なんぢに事へたらば第七年に汝これを放ちて去しむべし〘269㌻〙
13 汝これを放ちて去しむる時は空󠄃手にて去しむべからず
14 汝の群と禾場と搾場の中より贈物を取て之が肩に負󠄅すべし即ち汝の神ヱホバの汝を祝福て賜ふところの物をこれに與ふべし
15 汝記憶べし汝はエジプトの國に奴隸たりしが汝の神ヱホバ汝を贖ひ出したまへり是故に我今日この事を汝に命ず
16 その人もし汝と汝の家を愛し汝と偕にをるを善として汝にむかひ我汝を離れて去を好まずと言ば
17 汝錐を取て彼の耳を戶に刺とほすべし然せば彼は永く汝の僕たるべし汝の婢にもまた是のごとくすべし
18 汝これを放ちて去しむるを難き事と見るべからず其は彼が六年汝に事へて働きしは工價を取る傭人の二倍に當ればなり汝斯なさば汝の神ヱホバ汝が凡て爲ところの事に於て汝をめぐみたまふべし
19 汝の牛羊の產る初子は皆これを聖󠄄別て汝の神ヱホバに歸せしむべし汝の牛の初子をもちゐて何の工作をも爲べからず又󠄂汝の羊の初子の毛を剪べからず
20 汝の神ヱホバの選󠄄びたまへる處にてヱホバの前󠄃に汝と汝の家族年々にこれを食󠄃ふべし
21 然どその畜もし疵ある者すなはち跛足盲目なるなど凡て惡き疵ある者なる時は汝の神ヱホバにこれを宰りて獻ぐべからず
22 汝の門の內にこれを食󠄃ふべし汚れたる者も潔󠄄き者も均くこれを食󠄃ふを得ること牡鹿と羚羊のごとし
23 但しその血はこれを食󠄃ふべからず水のごとくにこれを地に灌ぐべし
第16章
1 汝アビブの月を守り汝の神ヱホバに對ひて逾越節󠄄を行なへ其はアビブの月に於て汝の神ヱホバ夜の間に汝をエジプトより導󠄃き出したまひたればなり
2 汝すなはちヱホバのその名を置んとて擇びたまふ處にて羊および牛を宰り汝の神ヱホバの前󠄃に逾越節󠄄をなすべし
354㌻
3 酵いれたるパンを之とともに食󠄃ふべからず七日の間酵いれぬパン即ち憂患のパンを之とともに食󠄃ふべし其は汝エジプトの國より出る時は急󠄃ぎて出たればなり斯おこなひて汝その世に生存ふる日の間恒に汝がエジプトの國より出來し日を誌ゆべし
4 その七日の間は汝の四方の境の內にパン酵の見ること有しむべからず又󠄂なんぢが初の日の薄暮に宰りたる者の肉を翌󠄃朝󠄃まで存しおくべからず
5 汝の神ヱホバの汝に賜ふ汝の門の內にて逾越の牲畜を宰ることを爲べからず
6 惟汝の神ヱホバのその名を置んとて選󠄄びたまふ處にて汝薄暮の日の入る頃汝がエジプトより出たる時刻に逾越の牲畜を宰るべし〘270㌻〙
7 而して汝の神ヱホバの選󠄄びたまふ處にて汝これを燔て食󠄃ひ朝󠄃におよびて汝の天幕に歸り徃くべし
8 汝六日の間酵いれぬパンを食󠄃ひ第七日に汝の神ヱホバの前󠄃に會を開くべし何の職業をも爲べからず
9 汝また七七日を計ふべし即ち穀物に鎌をいれ初る時よりしてその七七日を計へ始むべきなり
10 而して汝の神ヱホバの前󠄃に七週󠄃の節󠄄筵を行なひ汝の神ヱホバの汝を祝福たまふ所󠄃にしたがひ汝の力に應じてその心に願ふ禮物を献ぐべし
11 斯して汝と汝の男子女子僕婢および汝の門の內に居るレビ人ならびに汝らの中間にをる賓旅と孤子と寡婦󠄃みなともに汝の神ヱホバのその名を置んとて選󠄄びたまふ處にて汝の神ヱホバの前󠄃に樂むべし
12 汝その昔エジプトに奴隸たりしことを誌え是等の法度を守り行ふべし
13 汝禾場と搾場の物を收藏たる時七日の間結茅節󠄄をおこなふべし
14 節󠄄筵をなす時には汝と汝の男子女子僕婢および汝の門の內なるレビ人賓旅孤子寡婦󠄃など皆ともに樂むべし
15 ヱホバの選󠄄びたまふ處にて汝七日の間なんぢの神ヱホバの前󠄃に節󠄄筵をなすべし汝の神ヱホバ汝の諸の產物と汝が手の諸の工事とについて汝を祝福たまふべければ汝かならず樂むことを爲べし
355㌻
16 汝の中間の男は皆なんぢの神ヱホバの擇びたまふ處にて一年に三次即ち酵いれぬパンの節󠄄と七週󠄃の節󠄄と結茅の節󠄄とに於てヱホバの前󠄃に出べし但し空󠄃手にてヱホバの前󠄃に出べからず
17 各人汝の神ヱホバに賜はる恩惠にしたがひて其力におよぶ程の物を献ぐべし
18 汝の神ヱホバの汝に賜ふ一切の邑々に汝の支派に循がひて士師と官人を立べし彼らはまだ義き審判󠄄をもて民を審判󠄄べし
19 汝裁判󠄄を枉べからず人を偏󠄃視るべからずまた賄賂を取べからず賄賂は智者の目を暗󠄃まし義者の言を枉ればなり
20 汝ただ公義を而已求むべし然せば汝生存へて汝の神ヱホバの汝に賜ふ地を獲にいたらん
21 汝の神ヱホバのために築くところの壇の傍にアシラの木像を立べからず
22 また汝の神ヱホバの惡みたまふ偶像を己のために造󠄃るべからず
第17章
1 凡て疵あり惡き處ある牛羊は汝これを汝の神ヱホバに献ぐべからず斯る者は汝の神ヱホバの忌嫌󠄃ひたまふ者なればなり
〘271㌻〙
2 汝の神ヱホバの汝に賜ふ邑々の中にて汝らの中間に若し或男または女汝の神ヱホバの目の前󠄃に惡事を行ひてその契󠄅約に悖り
3 徃て他の神々に事へてこれを拜み我が命ぜざる日や月や天の衆群などを拜むあらんに
4 その事を汝に吿る者ありて汝これを聞き細かにこれを査べ見るにその事眞にその言確にしてイスラエルの中に斯る憎むべき事行はれ居たらば
356㌻
5 汝その惡き事を行へる男または女を汝の門に曵いだし石をもてその男または女を擊殺すべし
6 殺すべき者は二人の證人または三人の證人の口に依てこれを殺すべし惟一人の證人の口のみをもて之を殺すことは爲べからず
7 斯る者を殺すには證人まづその手を之に加へ然る後に民みなその手を加ふべし汝かく惡事を汝らの中より除くべし
8 汝の門の內に訟へ爭ふ事おこるに當りその事件もし血を相流す事または權理を相爭ふ事または互に相擊たる事などにして汝に裁判󠄄かぬる者ならば汝起󠄃あがりて汝の神ヱホバの選󠄄びたまふ處に上り徃き
9 祭司なるレビ人と當時の士師とに詣りて問べし彼ら裁判󠄄の言詞を汝に示さん
10 ヱホバの選󠄄びたまふ處にて彼らが汝に示す命令の言のごとくに汝行ひ凡て彼らが汝に敎ふるごとくに愼みて爲べし
11 即ち故らが汝に敎ふる律法の命令に循がひ彼らが汝に吿る裁判󠄄に依て行ふべし彼らが汝に示す言に違󠄇ふて右にも左にも偏󠄃るべからず
12 人もし自ら壇斷にしその汝の神ヱホバの前󠄃に立て事ふる祭司またはその士師に聽したがはざる有ばその人を殺しイスラエルの中より惡を除くべし
13 然せば民みな聞て畏れ重て壇斷に事をなさざらん
14 汝の神ヱホバの汝に賜ふ地に汝いたり之を獲て其處に住󠄃におよべる時汝もし我周󠄃圍の一切の國人のごとくに我も王をわが上に立んと言あらば
15 只なんぢの神ヱホバの選󠄄びたまふ人を汝の上にたてて王となすべしまた汝の上に王を立るには汝の兄弟の中の人をもてすべし汝の兄弟ならざる他國の人を汝の上に立べからず
16 但し王となれる者は馬を多く得んとすべからず又󠄂馬を多く得んために民を率󠄃てエジプトに還󠄃るべからず其はヱホバなんぢらに向ひて汝らはこの後かさねて此路に歸るべからずと宣ひたればなり
357㌻
17 また妻を多くその身に有て心を迷󠄃すべからずまた金銀を己のために多く蓄積べからず
18 彼その國の位に坐するにいたらば祭司なるレビ人の前󠄃にある書よりしてこの律法を一の書に書寫さしめ〘272㌻〙
19 世に生存ふる日の間つねにこれを己の許に置て誦み斯してその神ヱホバを畏るることを學びこの律法の一切の言と是等の法度を守りて行ふべし
20 然せば彼の心その兄弟の上に高ぶること無くまたその誡命を離れて右にも左にもまがること無してその子女とともにその國においてイスラエルの中にその日を永うすることを得ん
第18章
1 祭司たるレビ人およびレビの支派は都てイスラエルの中に分󠄃なく產業なし彼らはヱホバの火祭の品とその產業の物を食󠄃ふべし
2 彼らはその兄弟の中間に產業を有じヱホバこれが產業たるたり即ちその曾て之に言たまひしが如し
3 祭司が民より受べき分󠄃は是なり即ち凡て犧牲を献ぐる者は牛にもあれ羊にもあれその肩と兩方の頬と胃とを祭司に與ふべし
4 また汝の穀物と酒と油の初および羊の毛の初をも之にあたふべし
5 其は汝の神ヱホバ汝の諸の支派の中より彼を選󠄄び出し彼とその子孫をして永くヱホバの名をもて立て奉事をなさしめたまへばなり
6 レビ人はイスラエルの全󠄃地の中何の處に居る者にもあれその寄寓たる汝の邑を出てヱホバの選󠄄びたま處に到るあらば
7 その人はヱホバの前󠄃に侍るその諸兄弟のレビ人とおなじくその神ヱホバの名をもて奉事をなすことを得べし
8 その人の得て食󠄃ふ分󠄃は彼らと同じ但しその父󠄃の遺󠄃業を賣て獲たる物はこの外に彼に屬す
358㌻
9 汝の神ヱホバの汝に賜ふ池にいたるに及びて汝その國々の民の憎むべき行爲を傚ひ行ふなかれ
10 汝らの中間にその男子女子をして火の中を通󠄃らしむる者あるべからずまた卜筮する者邪法を行なふ者禁厭する者魔󠄃術を使ふ者
11 法印を結ぶ者憑鬼する者巫覡の業をなす者死人に詢ことをする者あるべからず
12 凡て是等の事を爲す者はヱホバこれを憎たまふ汝の神ヱホバが彼らを汝の前󠄃より逐󠄃はらひたまひしも是等の憎むべき事のありしに因てなり
13 汝の神ヱホバの前󠄃に汝完き者たれ
14 汝が逐󠄃はらふ故の國々の民は邪法師卜筮師などに聽ことをなせり然ど汝には汝の神ヱホバ然する事を許したまはず
15 汝の神ヱホバ汝の中汝の兄弟の中より我のごとき一箇の預言者を汝のために興したまはん汝ら之に聽ことをすべし
16 是まったく汝が集會の日にホレブにおいて汝の神ヱホバに求めたる所󠄃なり即ち汝言けらく我をして重てこの我神ヱホバの聲を聞しむる勿れまた重てこの大なる火を見さする勿れ恐くは我死んと〘273㌻〙
17 是においてヱホバ我に言たまひけるは彼らの言る所󠄃は善し
18 我かれら兄弟の中より汝のごとき一箇の預言者を彼らのために興し我言をその口に授けん我が彼に命ずる言を彼ことごとく彼らに吿べし
19 凡て彼が吾名をもて語るところの吾言に聽したがはざる者は我これを罰せん
20 但し預言者もし我が語れと命ぜざる言を吾名をもて縱肆に語りまたは他の神々の名をもて語ることを爲すならばその預言者は殺さるべし
21 汝あるひは心に謂ん我ら如何にしてその言のヱホバの言たまふ者にあらざるを知んと
22 然ば若し預言者ありてヱホバの名をもて語ることをなすにその言就ずまた效あらざる時は是ヱホバの語りたまふ言にあらずしてその預言者が縱肆に語るところなり汝その預言者を畏るるに及ばす
359㌻
第19章
1 汝の神ヱホバこの國々の民を滅し絕ち汝の神ヱホバこれが地を汝に賜ふて汝つひにこれを獲その邑々とその家々に住󠄃にいたる時は
2 汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地の中に三の邑を汝のために區別べし
3 而して汝これに道󠄃路を開きまた汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地の全󠄃體を三の區に分󠄃ち凡て人を殺せる者をして其處に逃󠄄れしむべし
4 人を殺せる者の彼處に逃󠄄れて生命を全󠄃うすべきその事は是のごとし即ち凡て素より惡むことも無く知ずしてその鄰人を殺せる者
5 例ば人木を伐んとてその鄰人とともに林に入り手に斧を執て木を斫んと擊おろす時にその頭の鐵柯より脫󠄁てその鄰人にあたりて之を死しめたるが如き是なり斯る人は是等の邑の一に逃󠄄れて生命を全󠄃うすべし
6 恐くは復仇する者心熱してその殺人者を追󠄃かけ道󠄃路長きにおいては遂󠄅に追󠄃しきて之を殺さん然るにその人は素より之を惡みたる者にあらざれば殺さるべき理あらざるなり
7 是をもて我なんぢに命じて三の邑を汝のために區別べしと言り
8 汝の神ヱホバ汝の先祖等に誓ひしごとく汝の境界を廣め汝の先祖等に與へんと言し地を盡く汝に賜ふにいたらん時
9 即ち汝我が今日なんぢに命ずるこの一切の誡命を守りてこれを行なひ汝の神ヱホバを愛し恒にその道󠄃に步まん時はこの三の外にまた三の邑を增加ふべし〘274㌻〙
10 是汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地に辜なき者の血を流すこと無らんためなり斯せずばその血汝に歸せん
11 然どもし人その隣人を惡みて之を附覘ひ起󠄃かかり擊てその生命を傷ひて之を死しめ而してこの邑の一に逃󠄄れたる事あらば
12 その邑の長老等人を遣󠄃て之を其處より曵きたらしめ復仇者の手にこれを付して殺さしむべし
13 汝かれを憫み視るべからず辜なき者の血を流せる咎をイスラエルより除くべし然せば汝に福祉あらん
360㌻
14 汝の神ヱホバの汝に與へて獲させたまふ地の中において汝が嗣ぐところの產業に汝の先人の定めたる汝の鄰の地界を侵すべからず
15 何の惡にもあれ凡てその犯すところの罪は只一人の證人によりて定むべからず二人の證人の口によりまたは三人の證人の口によりてその事を定むべし
16 もし僞妄の證人起󠄃りて某の人は惡事をなせりと言たつること有ば
17 その相爭ふ二人の者ヱホバの前󠄃に至り當時の祭司と士師の前󠄃に立べし
18 然る時士師詳細にこれを査べ視るにその證人もし僞妄の證人にしてその兄弟にむかひて虛妄の證をなしたる者なる時は
19 汝兄弟に彼が蒙らさんと謀れる所󠄃を彼に蒙らし斯して汝らの中より惡事を除くべし
20 然せばその遺󠄃れる者等聞て畏れその後かさねて斯る惡き事を汝らの中におこなはじ
21 汝憫み視ることをすべからず生命は生命眼は眼齒は齒手は手足は足をもて償はしむべし
第20章
1 汝その敵と戰はんとて出るに當り馬と車を見また汝よりも數多き民を見るもこれに懼るる勿れ其は汝をエジプトの國より導󠄃き上りし汝の神ヱホバなんぢとともに在せばなり
2 汝ら戰鬪に臨む時は祭司進󠄃みいで民に吿て
3 之に言べしイスラエルよ聽け汝らは今日なんぢらの敵と戰はんとて進󠄃み來れり心に臆する勿れ懼るるなかれ倉皇なかれ彼らに怖るなかれ
4 其は汝らの神ヱホバ汝らとともに行き汝らのために汝らの敵と戰ひて汝らを救ひたまふべければなりと
5 斯てまた有司等民に吿て言べし誰か新しき家を建て之に移らざる者あるかその人は家に歸りゆくべし恐くは自己戰鬪に死て他の人これに移らん
6 誰か菓物園を作りてその果を食󠄃はざる者あるかその人は家に歸りゆくべし恐くは自己戰鬪に死て他の人これを食󠄃はん
361㌻
7 誰か女と契󠄅りて之を娶らざる者あるかその人は家に歸りゆくべし恐くは自己戰鬪に死て他の人これを娶らんと〘275㌻〙
8 有司等なほまた民に吿て言べし誰か懼れて心に臆する者あるかその人は家に歸りゆくべし恐くはその兄弟たちの心これが心のごとく挫けんと
9 有司等かく民に吿ることを終󠄃たらば軍勢の長等を立て民を率󠄃しむべし
10 汝ある邑に進󠄃みゆきて之を攻んとする時は先これに平󠄃穩に降ることを勸むべし
11 その邑もし平󠄃穩に降らんと答へてその門を汝に開かば其處なる民をして都て汝に貢を納󠄃しめ汝に事へしむべし
12 其もし平󠄃穩に汝に降ることを肯んぜずして汝と戰かはんとせば汝これを攻べし
13 而して汝の神ヱホバこれを汝の手に付したまふに至らば刃󠄃をもてその中の男を盡く擊殺すべし
14 惟その婦󠄃女嬰孩家畜および凡てその邑の中にて汝が奪ひ獲たる物は盡く己に取べし抑汝がその敵より奪ひ獲たる物は汝の神ヱホバの汝に賜ふ者なれば汝これをもて樂むべし
15 汝を離るることの遠󠄄き邑々すなはち是等の國々に屬せざるところの邑々には凡てかくのごとく行なふべし
16 但し汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふこの國々の邑々においては呼吸する者を一人も生し存べからず
17 即ちヘテ人 アモリ人 カナン人 ペリジ人 ヒビ人 ヱブス人などは汝かならずこれを滅ぼし盡して汝の神ヱホバの汝に命じたまへる如くすべし
18 斯するは彼らがその神々にむかひて行ふところの憎むべき事を汝らに敎へて之を傚ひおこなはしめ汝らをして汝らの神ヱホバに罪を獲せしむる事のなからんためなり
19 汝久しく邑を圍みて之を攻取んとする時においても斧を振ふて其處の樹を砍枯すべからず是は汝の食󠄃となるべき者なり且その城攻において田野の樹あに人のごとく汝の前󠄃に立ふさがらんや
20 但し果を結ばざる樹と知る樹はこれを砍り枯し汝と戰ふ邑にむかひて之をもて雲梯を築きその降るまで之を攻るも宜し
362㌻
第21章
1 汝の神ヱホバの汝に與へて獲させたまふ地において若し人殺されて野に仆れをるあらんに之を殺せる者の誰なるかを知ざる時は
2 汝の長老等と士師等出きたりその人の殺されをる處よりその四周󠄃の邑々までを度るべし
3 而してその人の殺されをる處に最も近󠄃き邑すなはちその邑の長老等は未だ使はず未だ軛を負󠄅せて牽ざるところの少き牝牛を取り〘276㌻〙
4 邑の長老等その牝牛を耕すことも種蒔こともせざる流つきせぬ谷に牽ゆきその谷において牝牛の頸を折べし
5 その時は祭司たるレビの子孫等其處に進󠄃み來るべし彼らは汝の神ヱホバが選󠄄びて己に事へしめまたヱホバの名をもて祝することを爲しめたまふ者にて一切の訴訟と一切の爭競は彼らの口によりて決定るべきが故なり
6 而してその人の殺されをりし處に最も近󠄃き邑の長老等その谷にて頸を折たる牝牛の上において手を洗ひ
7 答へて言べし我らの手はこの血を流さず我らの目はこれを見ざりしなり
8 ヱホバよ汝が贖ひし汝の民イスラエルを赦したまへこの辜なき者の血を流せる罰を汝の民イスラエルの中に降したまふ勿れと斯せば彼らその血の罪を赦されん
9 汝かくヱホバの善と觀たまふ事をおこなひその辜なき者の血を流せる咎を汝らの中より除くべし
10 汝出て汝の敵と戰ふにあたり汝の神ヱホバこれを汝の手に付したまひて汝これを俘虜となしたる時
11 汝もしその俘虜の中に貌美しき女あるを見てこれを悅び取て妻となさんとせば
12 汝の家の中にこれを携へゆくべし而して彼はその髮を剃り爪を截り
13 まだ俘虜の衣服󠄃を脫󠄁すてて汝の家に居りその父󠄃母のために一月のあひだ哀哭べし然る後なんぢ故の處に入りてこれが夫となりこれを汝の妻とすべし
14 その後汝もし彼を好まずなりなば彼の心のままに去ゆかしむべし決して金のためにこれを賣べからず汝すでにこれを犯したれば之を嚴く待遇󠄃べからざるなり
363㌻
15 人二人の妻ありてその一人は愛する者一人は惡む者ならんにその愛する者と惡む者の二人ともに男の子を生ありてその長子もし惡む婦󠄃の產る者なる時は
16 その子等に己の所󠄃有を嗣しむる日にその惡む婦󠄃の產る長子を措てその愛する婦󠄃の產る子を長子となすべからず
17 必ずその惡む者の產る子を長子となし己の所󠄃有を分󠄃つ時にこれには二倍を與ふべし是は己の力の始にして長子の權これに屬すればなり
18 人にもし放肆にして背悖る子ありその父󠄃の言にも母の言にも順はず父󠄃母これを責るも聽ことをせざる時は
19 その父󠄃母これを執へてその處の門にいたり邑の長老等に就き
20 邑の長老たちに言べし我らの此子は放肆にして背悖る者我らの言にしたがはざる者放蕩にして酒に耽る者なりと
21 然る時は邑の人みな石をもて之を擊殺すべし汝かく汝らの中より惡事を除き去べし然せばイスラエルみな聞て懼れん
〘277㌻〙
22 人もし死にあたる罪を犯して死刑に遇󠄃ことありて汝これを木に懸て曝す時は
23 翌󠄃朝󠄃までその體を木の上に留おくべからず必ずこれをその日の中に埋むべし其は木に懸らるる者はヱホバに詛はるる者なればなり斯するは汝の神ヱホバの汝に賜ふて產業となさしめたまふ地の汚れざらんためなり
第22章
1 汝の兄弟の牛または羊の迷󠄃ひをるを見てこれを見すて置べからず必ずこれを汝の兄弟に牽ゆきて歸すべし
2 汝の兄弟もし汝に近󠄃からざるか又󠄂は汝かれを知ざる時はこれを汝の家に牽ゆきて汝の許におき汝の兄弟の尋󠄃ねきたるに及びて之を彼に還󠄃すべし
3 汝の兄弟の驢馬におけるも是のごとく爲しまたその衣服󠄃におけるも斯なすべし凡て汝の兄弟の失ひたる遺󠄃失物を得たる時も汝かく爲べし之を見すておくべからず
364㌻
4 また汝の兄弟の驢馬または牛の途󠄃に踣れをるを見て見すておくべからず必ずこれを助け起󠄃すべし
5 女は男の衣服󠄃を纒ふべからずまた男は女の衣裳を著べからず凡て斯する者は汝の神ヱホバこれを憎みたまふなり
6 汝鳥の巢の路の頭または樹の上または土の上にあるを見んに雛または卵その中にありて母鳥その雛または卵の上に伏をらばその母鳥を雛とともに取べからず
7 かならずその母鳥を去しめ唯その雛のみをとるべし然せば汝福祉を獲かつ汝の日を永うすることを得ん
8 汝新しき家を建る時はその屋蓋の周󠄃圍に欄杆を設くべし是は人その上より墮てこれが血の汝の家に歸すること無らんためなり
9 汝菓物園に異類の種を混て播べからず然せば汝が播たる種より產する物および汝の菓物園より出る菓物みな聖󠄄物とならん
10 汝牛と驢馬とを耦せて耕すことを爲べからず
11 汝毛と麻󠄃とをまじへたる衣服󠄃を著べからず
12 汝が上に纒ふ衣服󠄃の裾の四方に繸をつくべし
13 人もし妻を娶り之とともに寢て後これを嫌󠄃ひ
14 我この婦󠄃人を娶りしが之と寢たる時にその處女なるを見ざりしと言て誹謗の辭抦を設けこれに惡き名を負󠄅せなば
15 その女の父󠄃と母その女の處女なる證跡を取り門にをる邑の長老等にこれを差出し
16 而してその女の父󠄃長老等に言べし我この人にわが女子を與へて妻となさしめしにこの人これを嫌󠄃ひ〘278㌻〙
17 誹謗の辭抦を設けて言ふ我なんぢの女子の處女なるを見ざりしと然るに吾女子の處女なりし證跡は此にありと斯いひてその父󠄃母かの布を邑の長老等の前󠄃に展べし
18 然る時は邑の長老等その人を執へてこれを鞭ち
365㌻
19 又󠄂これに銀百シケルを罰してその女の父󠄃に償はしむべし其はイスラエルの處女に惡き名を負󠄅せたればなり斯てその人はこれを妻とすべし一生これを去ことを得ず
20 然どこの事もし眞にしてその女の處女なる證跡あらざる時は
21 その女をこれが父󠄃の家の門に曵いだしその邑の人々石をもてこれを擊ころすべし其は彼その父󠄃の家にて淫なる事をなしてイスラエルの中に惡をおこなひたればなり汝かく惡事を汝らの中より除くべし
22 もし夫に適󠄄し婦󠄃と寢る男あるを見ばその婦󠄃と寢たる男と其婦󠄃とをともに殺し斯して惡事をイスラエルの中より除くべし
23 處女なる婦󠄃人すでに夫に適󠄄の約をなせる後ある男これに邑の內に遇󠄃てこれを犯さば
24 汝らその二人を邑の門に曵いだし石をもてこれを擊ころすべし是その女は邑の內にありながら叫ぶことをせざるに因りまたその男はその鄰の妻を辱しめたるに因てなり汝かく惡事を汝らの中より除くべし
25 然ど男もし人に適󠄄の約をなしし女に野にて遇󠄃ひこれを强て犯すあらば之を犯しし男のみを殺すべし
26 その女には何をも爲べからず女には死にあたる罪なし人その鄰人に起󠄃むかひてこれを殺せるとその事おなじ
27 其は男野にてこれに遇󠄃たるが故にその人に適󠄄の約をなしし女叫びたれども拯ふ者なかりしなり
28 男もし未だ人に適󠄄の約をなさざる處女なる婦󠄃に遇󠄃ひこれを執へて犯すありてその二人見あらはされなば
29 これを犯せる男その女の父󠄃に銀五十シケルを與へて之を己の妻とすべし彼その女を辱しめたれば一生これを去るべからざるなり
30 人その父󠄃の妻を娶るべからずその父󠄃の被を掀開べからず
366㌻
第23章
1 外腎を傷なひたる者または玉莖を切りたる者はヱホバの會に入べからず
2 私子はヱホバの會にいるべからず是は十代までもヱホバの會にいるべからざるなり
3 アンモン人およびモアブ人はヱホバの會にいる可らず彼らは十代までも何時までもヱホバの會にいるべからざるなり〘279㌻〙
4 是汝らがエジプトより出きたりし時に彼らはパンと水とをもて汝らを途󠄃に迎󠄃へずメソポタミアのペトル人ベオルの子バラムを倩ひて汝を詛はせんと爲たればなり
5 然れども汝の神ヱホバ、バラムに聽ことを爲給はずして汝の神ヱホバその呪詛を變て汝のために祝福となしたまへり是汝の神ヱホバ汝を愛したまふが故なり
6 汝一生いつまでも彼らのために平󠄃安をもまた福祿をも求むべからず
7 汝エドム人を惡べからず是は汝の兄弟なればなりまたエジプト人を惡むべからず汝もこれが國に客たりしこと有ばなり
8 彼等の生たる子等は三代におよばばヱホバの會にいることを得べし
9 汝軍旅を出して汝の敵を攻る時は諸の惡き事を自ら謹むべし
10 汝らの中間にもし夜中計ずも汚穢にふれて身の潔󠄄からざる人あらば陣營の外にいづべし陣營の內に入べからず
11 而して薄暮に水をもて身を洗ひ日の入て後陣營に入べし
12 汝陣營の外に一箇の處を設けおき便する時は其處に徃べし
13 また器具󠄄の中に小鍬を備へおき外に出て便する時はこれをもて土を掘り身を返󠄄してその汝より出たる物を蓋ふべし
14 其は汝の神ヱホバ汝を救ひ汝の敵を汝に付さんとて汝の陣營の中を步きたまへばなり是をもて汝の陣營を聖󠄄潔󠄄すべし然せば汝の中に汚穢物あるを見て汝を離れたまふこと有ざるべし
15 その主人を避󠄃て汝の許に逃󠄄きたる僕をその主人に交すべからす
16 その者をして汝らの中に汝とともに居しめ汝の一の邑の中にて之が善と見て擇ぶ處に住󠄃しむべし之を虐󠄃遇󠄃べからず
367㌻
17 イスラエルの女子の中に娼妓あるべからずイスラエルの男子の中に男娼あるべからず
18 娼妓の得たる價および狗の價を汝の神ヱホバの家に携へいりて何の誓願にも用ゐるべからず是等はともに汝の神ヱホバの憎みたまふ者なればなり
19 汝の兄弟より利息を取べからず即ち金の利息食󠄃物の利息など凡て利息を生ずべき物の利息を取べからず
20 他國の人よりは汝利息を取も宜し惟汝の兄弟よりは利息を取べからず然ば汝が徃て獲ところの地において汝の神ヱホバ凡て汝が手に爲ところの事に福祥をくだしたまふべし
21 汝の神ヱホバに誓願をかけなば之を還󠄃すことを怠るべからず汝の神ヱホバかならずこれを汝に要󠄃めたまふべし怠る時は汝罪あり〘280㌻〙
22 汝誓願をかけざるも罪を獲ること有じ
23 汝が口より出しし事は守りて行ふべし凡て自意󠄃の禮物は汝の神ヱホバに汝が誓願し口をもて約せしごとくに行ふべし
24 汝の鄰の葡萄園に至る時汝意󠄃にまかせてその葡萄を飽󠄄まで食󠄃ふも宜し然ど器の中に取いるべからず
25 また汝の鄰の麥圃にいたる時汝手にてその穗を摘食󠄃ふも宜し然ど汝の鄰の麥圃に鎌をいるべからず
第24章
1 人妻を取てこれを娶れる後恥べき所󠄃のこれにあるを見てこれを好まずなりたらば離緣狀を書てこれが手に交しこれをその家より出すべし
2 その婦󠄃これが家より出たる後徃て他の人に嫁ぐことをせんに
3 後の夫もこれを嫌󠄃ひ離緣狀を書てその手にわたして之を家より出し又󠄂はこれを妻にめとれるその後の夫死るあるも
4 是は已に身を汚玷したるに因て之を出したるその先の夫ふたたびこれを妻にめとるべからず是ヱホバの憎みたまふ事なればなり汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地に汝罪を負󠄅すなかれ
368㌻
5 人あらたに妻を娶りたる時は之を軍に出すべからずまた何の職務をもこれに任すべからずその人は一年家に間居してその娶れる妻を慰むべし
6 人その磨礱を質におくべからず是その生命をつなぐ物を質におくなればなり
7 イスラエルの子孫の中なるその兄弟を拐帶してこれを使ひまたはこれを賣る人あるを見ばその拐帶者を殺し然して汝らの中より惡を除くべし
8 汝癩病を愼み凡て祭司たるレビ人が汝らに敎ふる所󠄃を善く守りて行ふべし即ち我が彼らに命ぜしごとくに汝ら守りて行ふべし
9 汝らがエジプトより出きたれる路にて汝の神ヱホバがミリアムに爲たまひしところの事を誌えよ
10 凡て汝の鄰に物を貸あたふる時は汝みづからこれが家にいりてその質物を取べからず
11 汝は外に立をり汝が貸たる人その質物を外に持いだして汝に付すべし
12 その人もし困苦者ならば之が質物を留おきて睡眠に就べからず
13 かならず日の入る頃その質物を之に還󠄃すべし然せばその人おのれの上衣をまとふて睡眠につくことを得て汝を祝せん是汝の神ヱホバの前󠄃において汝の義となるべし
14 困苦る貧󠄃き傭人は汝の兄弟にもあれ又󠄂は汝の地にてなんぢの門の內に寄寓る他國の人にもあれ之を虐󠄃ぐべからず〘281㌻〙
15 當日にこれが値をはらふべし日の入るまで延すべからず其は貧󠄃き者にてその心にこれを慕へばなり恐らくは彼ヱホバに汝を訴ふるありて汝罪を獲ん
369㌻
16 父󠄃はその子等の故によりて殺さるべからず子等はその父󠄃の故によりて殺さるべからず各人おのれの罪によりて殺さるべきなり
17 汝他國の人または孤子の審判󠄄を曲べからずまた寡婦󠄃の衣服󠄃を質に取べからず
18 汝誌ゆべし汝はエジプトに奴隸たりしが汝の神ヱホバ汝を其處より贖ひいだしたまへり是をもて我この事をなせと汝に命ずるなり
19 汝田野にて穀物を刈る時もしその一束を田野に忘れおきたらば返󠄄りてこれを取べからず他國の人と孤子と寡婦󠄃とにこれを取すべし然せば汝の神ヱホバ凡て汝が手に作ところの事に祝福を降したまはん
20 汝橄欖を打落す時は再びその枝をさがすべからずその遺󠄃れる者を他國の人と孤子と寡婦󠄃とに取すべし
21 また葡萄園の葡萄を摘とる時はその遺󠄃れる者を再びさがすべからず他國の人と孤子と寡婦󠄃とにこれを取すべし
22 汝誌ゆべし汝はエジプトの國に奴隸たりしなり是をもて我この事を爲せと汝に命ず
第25章
1 人と人との間に爭辯ありて來りて審判󠄄を求むる時は士師これを鞫きその義き者を義とし惡き者を惡とすべし
2 その惡き者もし鞭つべき者ならば士師これを伏せその罪にしたがひて數のごとく自己の前󠄃にてこれを扑すべし
3 これを扑ことは四十を逾べからず若これを逾て是よりも多く扑ときは汝その汝の兄弟を賤め視にいたらん
4 穀物を碾す牛に口籠をかく可らず
5 兄弟ともに居んにその中の一人死て子を遺󠄃さざる時はその死たる者の妻いでて他人に嫁ぐべからず其夫の兄弟これの所󠄃に入りこれを娶りて妻となし斯してその夫の兄弟たる道󠄃をこれに盡し
370㌻
6 而してその婦󠄃の生ところの初子をもてその死たる兄弟の後を嗣しめその名をイスラエルの中に絕ざらしむべし
7 然どその人もしその兄弟の妻をめとることを肯ぜずばその兄弟の妻門にいたりて長老等に言べし吾夫の兄弟はその兄弟の名をイスラエルの中に興ることを肯ぜず吾夫の兄弟たる道󠄃を盡すことをせずと〘282㌻〙
8 然る時はその邑の長老等かれを呼よせて諭すべし然るも彼堅く執て我はこれを娶ることを好まずと言ば
9 その兄弟の妻長老等の前󠄃にて彼の側にいたりこれが鞋をその足より脫󠄁せその面に唾して答て言べしその兄弟の家を興ることを肯ぜざる者には斯のごとくすべきなりと
10 またその人の名は鞋を脫󠄁たる者の家とイスラエルの中に稱へらるべし
11 人二人あひ爭そふ時に一人の者の妻その夫を擊つ者の手より夫を救はんとて進󠄃みより手を伸てその人の陰所󠄃を執ふるあらば
12 汝その婦󠄃の手を切おとすべし之を憫れみ視るべからず
13 汝の嚢の中に一箇は大く一箇は小き二種の權衡石をいれおくべからず
14 汝の家に一箇は大く一箇は小き二種の升斗をおくべからず
15 唯十分󠄃なる公正き權衡を有べくまた十分󠄃なる公正き升斗を有べし然せば汝の神ヱホバの汝にたまふ地に汝の日永からん
16 凡て斯る事をなす者凡て正しからざる事をなす者は汝の神ヱホバこれを憎みたまふなり
17 汝らがエジプトより出きたりし時その路においてアマレクが汝に爲たりし事を記憶よ
18 即ち彼らは汝を途󠄃に迎󠄃へ汝の疲れ倦たるに乘じて汝の後なる弱󠄃き者等を攻擊り斯かれらは神を畏れざりき
19 然ば汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地において汝の神ヱホバ汝にその周󠄃圍の敵を盡く攻ふせて安泰ならしめたまふに至らば汝アマレクの名を天が下より塗抹て之をおぼゆる者なからしむべし
371㌻
第26章
1 汝その神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地にいりこれを獲てそこに住󠄃にいたらば
2 汝の神ヱホバの汝に與へたまへる地の諸の土產の初を取て筐にいれ汝の神ヱホバのその名を置んとて選󠄄びたまふ處にこれを携へゆくべし
3 而して汝當時の祭司に詣り之にいふべし我は今日なんぢの神ヱホバに申さん我はヱホバが我らに與へんと我らの先祖等に誓ひたまひし地に至れりと
4 然る時は祭司汝の手よりその筐をとりて汝の神ヱホバの壇のまへに之を置べし
5 汝また汝の神ヱホバの前󠄃に陳て言べし我先祖は憫然なる一人のスリア人なりしが僅少の人を將てエジプトに下りゆきて其處に寄寓をりそこにて終󠄃に大にして强く人口おほき民となれり
6 然るにエジプト人我らに害󠄅を加へ我らを惱まし辛き力役を我らに負󠄅せたりしに因て
7 我等先祖等の神ヱホバに向ひて呼はりければヱホバわれらの聲を聽き我らの艱難と勞苦と虐󠄃遇󠄃を顧󠄃みたまひ〘283㌻〙
8 而してヱホバ强き手を出し腕を伸べ大なる威嚇と徴證と奇跡とをもてエジプトより我らを導󠄃きいだし
9 この處に我らを携へいりてこの地すなはち乳󠄃と蜜との流るる地を我らに賜へり
10 ヱホバよ今我なんぢが我に賜ひし地の產物の初を持きたれりと斯いひて汝その筐を汝の神ヱホバの前󠄃にそなへ汝の神ヱホバの前󠄃に禮拜をなすべし
11 而して汝は汝の神ヱホバの汝と汝の家に降したまへる諸の善事のためにレビ人および汝の中間なる旅客とともに樂むべし
12 第三年すなはち十に一を取の年に汝その諸の產物の什一を取りレビ人と客旅と孤子と寡婦󠄃とにこれを與へて汝の門の內に食󠄃ひ飽󠄄しめたる時は
13 汝の神ヱホバの前󠄃に言べし我は聖󠄄物を家より執いだしまたレビ人と客旅と孤子と寡婦󠄃とにこれを與へ全󠄃く汝が我に命じたまひし命令のごとくせり我は汝の命令に背かずまたこれを忘れざるなり
372㌻
14 我はこの聖󠄄物を喪の中に食󠄃ひし事なくをた汚穢たる身をもて之を携へ出しし事なくまた死人のためにこれを贈りし事なきなり我はわが神ヱホバの言に聽したがひて凡て汝が我に命じたまへるごとく行へり
15 願くは汝の聖󠄄住󠄃所󠄃なる天より臨み觀汝の民イスラエルと汝の我らに與へし地とに福祉をくだしたまへ是は我がわれらの先祖等に誓ひたまひし乳󠄃と蜜との流るる地なり
16 今日汝の神ヱホバこれらの法度と律法とを行ふことを汝に命じたまふ然ば汝心を盡し精心を盡してこれを守りおこなふべし
17 今日なんぢヱホバを認󠄃めて汝の神となし且その道󠄃に步みその法度と誡法と律法とを守りその聲に聽したがはんと言り
18 今日ヱホバまたその言しごとく汝を認󠄃めてその寶の民となし且汝にその諸の誡命を守れと言たまへり
19 ヱホバ汝の名譽と聲聞と榮耀とをしてその造󠄃れる諸の國の人にまさらしめたまはん汝はその神ヱホバの聖󠄄民となることその言たまひしごとくならん
第27章
1 モーセ、イスラエルの長老等とともにありて民に命じて曰ふ我が今日なんぢらに命ずるこの誡命を汝ら全󠄃く守るべし
2 汝らヨルダンを濟り汝の神ヱホバが汝に與へたまふ地にいる時は大なる石數箇を立て石灰󠄃をその上に塗り
3 旣に濟りて後この律法の諸の言語をその上に書すべし然すれば汝の神ヱホバの汝にたまふ地なる乳󠄃と蜜の流るる國に汝いるを得ること汝の先祖等の神ヱホバの汝に言たまひしごとくならん〘284㌻〙
4 即ち汝らヨルダンを濟るにおよばば我が今日なんぢらに命ずるその石をエバル山に立て石灰󠄃をその上に塗べし
5 また其處に汝の神ヱホバのために石の壇一座を築くべし但し之を築くには鐵の器を用ゐるべからず
6 汝新石をもて汝の神ヱホバのその壇を築きその上にて汝の神ヱホバに燔祭を献ぐべし
373㌻
7 汝また彼處にて酬恩祭を獻げその物を食󠄃ひて汝の神ヱホバの前󠄃に樂むべし
8 汝この律法の諸の言語をその石の上に明白に書すべし
9 モーセまた祭司たるレビ人とともにイスラエルの全󠄃家に吿て曰ふイスラエルよ謹みて聽け汝は今日汝の神ヱホバの民となれり
10 然ば汝の神ヱホバの聲に聽從ひ我が今日汝に命ずる之が誡命と法度をおこなふべし
11 その日にモーセまた民に命じて言ふ
12 汝らがヨルダンを渡りし後是らの者ゲリジム山にたちて民を祝すべし即ちシメオン、レビ、ユダ、イツサカル、ヨセフおよびベニヤミン
13 また是らの者はエバル山にたちて呪詛ことをすべし即ちルベン、ガド、アセル、ゼブルン、ダンおよびナフタリ
14 レビ人大聲にてイスラエルの人々に吿て言べし
15 偶像は工人の手の作にしてヱホバの憎みたまふ者なれば凡てこれを刻みまたは鑄造󠄃りて密に安置く人は詛はるべしと民みな對へてアーメンといふべし
16 その父󠄃母を輕んずる者は詛はるべし民みな對てアーメンといふべし
17 その鄰の地界を侵す者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
18 盲者をして路に迷󠄃はしむる者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
19 客旅孤子および寡婦󠄃の審判󠄄を枉る者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
20 その父󠄃の妻と寢る者はその父󠄃を辱しむるなれば詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
21 凡て獸畜と交る者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
22 その父󠄃の女子またはその母の女子たる己の姉妹と寢る者は詛はるべし民みな對へてアーメンとふべし
23 その妻の母と寢る者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
374㌻
24 暗󠄃の中にその鄰を擊つ者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
25 報酬をうけて無辜者を殺してその血を流す者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
26 この律法の言を守りて行はざる者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし〘285㌻〙
第28章
1 汝もし善く汝の神ヱホバの言に聽したがひ我が今日なんぢに命ずるその一切の誡命を守りて行はば汝の神ヱホバ汝をして地の諸の國人の上に立しめたまふべし
2 汝もし汝の神ヱホバの言に聽したがふ時はこの諸の福祉汝に臨み汝におよばん
3 汝は邑の內にても福祉を得田野にても福祉を得ん
4 また汝の胎の產汝の地の產汝の家畜の產汝の牛の產汝の羊の產に福祉あらん
5 また汝の飯籃と汝の捏盤に福祉あらん
6 汝は入にも福祉を得出るにも福祉を得べし
7 汝の敵起󠄃て汝を攻るあればヱホバ汝をして之を打敗らしめたまふべし彼らは一條の路より攻きたり汝の前󠄃にて七條の路より逃󠄄はしらん
8 ヱホバ命じて福祉を汝の倉庫に降しまた汝が手にて爲ところの事に降し汝の神ヱホバの汝に與ふる地においてヱホバ汝を祝福たまふべし
9 汝もし汝の神ヱホバの誡命を守りてその道󠄃に步まばヱホバ汝に誓ひしごとく汝を立て己の聖󠄄民となしたまふべし
10 然る時は地の民みな汝がヱホバの名をもて稱へらるるを視て汝を畏れん
11 ヱホバが汝に與へんと汝の先祖等に誓ひたまひし地においてヱホバ汝の佳物すなはち汝の身の產と汝の家畜の產と汝の地の產とを饒にしたまふべし
12 ヱホバその寶の藏なる天を啓き雨をその時にしたがびて汝の地に降し汝の手の諸の行爲に祝福をたまはん汝は許多の國々の民に貸ことをなすに至らん借ことなかるべし
375㌻
13 ヱホバ汝をして首とならしめたまはん尾とはならしめたまはじ汝は只上におらん下には居じ汝もし我が今日汝に命ずる汝の神ヱホバの誡命に聽したがひてこれを守りおこなはばかならず斯のごとくなるべし
14 汝わが今日汝に命ずるこの言語を離れ右または左にまがりて他の神々にしたがひ事ふることをすべからず
15 汝もし汝の神ヱホバの言に聽したがはず我が今日なんぢに命ずるその一切の誡命と法度とを守りおこなはずば此もろもろの呪詛汝に臨み汝におよぶべし
16 汝は邑の內にても詛はれ田野にても詛はれん
17 また汝の飯籃も汝の捏盤も詛はれん
18 汝の胎の產汝の地の產汝の牛の產汝の羊の產も詛はれん
19 汝は入にも詛はれ出るにも詛はれん
20 ヱホバ汝をしてその凡て手をもて爲ところにおいて呪詛と恐懼と鑓責を蒙らしめたまふべければ汝は滅びて速󠄃かに亡はてん是は汝惡き事をおこなひて我を棄るによりてなり〘286㌻〙
21 ヱホバ疫病を汝の身に着せて遂󠄅に汝をその徃て得るとこるの地より滅ぼし絕たまはん
22 ヱホバまた癆瘵と熱病と傷寒と瘧疾と刀劍と枯死と汚腐とをもて汝を擊なやましたまふべし是らの物汝を追󠄃ひ汝をして滅びうせしめん
23 汝の頭の上なる天は銅のごとくになり汝の下なる地は鐵のごとくになるべし
24 ヱホバまた雨のかはりに沙と灰󠄃とを汝の地に降せたまはん是らの物天より汝の上に下りて遂󠄅に汝を滅ぼさん
25 ヱホバまた汝をして汝の敵に打敗られしめたまふべし汝は彼らにむかひて一條の路より進󠄃み彼らの前󠄃にて七條の路より逃󠄄はしらん而して汝はまた地の諸の國にて虐󠄃遇󠄃にあはん
26 汝の死屍は空󠄃の諸の鳥と地の獸の食󠄃とならん然るもこれを逐󠄃はらふ者あらじ
376㌻
27 ヱホバまたエジプトの瘍瘡と痔と癰と癢とをもて汝を擊たまはん汝はこれより愈ることあらじ
28 ヱホバまた汝を擊ち汝をして狂ひ且目くらみて心に驚き悸れしめたまはん
29 汝は瞽者が暗󠄃にたどるごとく眞晝においても尙たどらん汝その途󠄃によりて福祉を得ることあらじ汝は只つねに虐󠄃げられ掠められんのみ汝を救ふ者なかるべし
30 汝妻を娶る時は他の人これと寢ん汝家を建るもその中に住󠄃ことを得ず葡萄園を作るもその葡萄を摘とることを得じ
31 汝の牛汝の目の前󠄃に宰らるるも汝は之を食󠄃ふことを得ず汝の驢馬は汝の目の前󠄃にて奪ひさられん再び汝にかへることあらじ又󠄂なんぢの羊は汝の敵の有とならん然ど汝にはこれを救ふ道󠄃あらじ
32 汝の男子と汝の女子は他邦の民の有とならん汝は終󠄃日これを慕ひ望󠄇みて目を喪ふに至らん汝の手には何の力もあらじ
33 汝の地の產物および汝の努苦て得たる物は汝の識ざる民これを食󠄃はん汝は只つねに虐󠄃げられ窘められん而已
34 汝はその目に見るところの事によりて心狂ふに至らん
35 ヱホバ汝の膝と脛とに惡くして愈ざる瘍瘡を生ぜしめて終󠄃に足の蹠より頭の頂にまでおよぼしたまはん
36 ヱホバ汝と汝が立たる王とを携へて汝も汝の先祖等も知ざりし國々に移し給はん汝は其處にて木または石なる他の神々に事ふるあらん
37 汝はヱホバの汝を遣󠄃はしたまふ國々にて人の詑異む者となり諺語となり諷刺とならん
38 汝は多分󠄃の種を田野に携へ出すもその刈とるとこるは少かるべし蝗これを食󠄃ふべければなり〘287㌻〙
39 汝葡萄園を作りてこれに培ふもその酒を飮ことを得ずまたその果を斂むることを得じ蟲これを食󠄃ふべければなり
40 汝の國には遍󠄃く橄欖の樹あらん然ど汝はその油を身に膏ことを得じ其果みな墮べければなり
41 汝男子女子を擧くるもこれを汝の有とすることを得じ皆擄へゆかるべければなり
42 汝の諸の樹および汝の地の產物はみな蝗これを取て食󠄃ふべし
377㌻
43 汝の中間にある他國の人はますます高くなりゆきて汝の上に出で汝はますます卑くなりゆかん
44 彼は汝に貸ことをせん汝は彼に貸ことを得じ彼は首となり汝は尾とならん
45 この諸の災禍汝に臨み汝を追󠄃ひ汝に及びてつひに汝を滅ぼさん是は汝その神ヱホバの言に聽したがはず其なんぢに命じたまへる誡命と法度とを守らざるによるなり
46 是等の事は恒になんぢと汝の子孫の上にありて徴證となり人を驚かす者となるべし
47 なんぢ萬の物の豐饒なる中にて心に歡び樂みて汝の神ヱホバに事へざるに因り
48 饑ゑ渇きかつ裸になり萬の物に乏しくしてヱホバの汝に攻きたらせたまふところの敵に事ふるに至らん彼鐵の軛をなんぢの頸につけて遂󠄅に汝をほろぼさん
49 即ちヱホバ遠󠄄方より地の極所󠄃より一の民を鵰の飛がごとくに汝に攻きたらしめたまはん是は汝がその言語を知ざる民
50 その面の猛惡なる民にして老たる者の身を顧󠄃みず幼稚者を憐まず
51 汝の家畜の產と汝の地の產を食󠄃ひて汝をほろぼし穀物をも酒をも油をも牛の產をも羊の產をも汝のために遺󠄃さずして終󠄃に全󠄃く汝を滅さん
52 その民は汝の全󠄃國において汝の一切の邑々を攻圍み遂󠄅にその汝が賴む堅固なる高き石垣をことごとく打圮し汝の神ヱホバの汝にたまへる國の中なる一切の邑々をことごとく攻圍むべし
53 汝は敵に圍まれ烈しく攻なやまさるるによりて終󠄃にその汝の神ヱホバに賜はれる汝の胎の產なる男子女子の肉を食󠄃ふにいたらん
54 汝らの中の柔生育にして軟弱󠄃なる男すらもその兄弟とその懷の妻とその遺󠄃れる子女とを疾視
55 自己の食󠄃ふその子等の肉をこの中の誰にも與ふることを好まざらん是は汝の敵汝の一切の邑々を圍み烈しく汝を攻なやまして何物をも其人に遺󠄃さざればなり
378㌻
56 又󠄂汝らの中の柔生育にして纎弱󠄃なる婦󠄃女すなはちその柔生育にして纎弱󠄃なるがために足の蹠を土につくることをも敢てせざる者すらもその懷の夫とその男子とその女子とを疾視
57 己の足の間より出る胞衣と己の產ところの子を取て密にこれを食󠄃はん是は汝の敵なんぢの邑々を圍み烈しくこれを攻なやますによりて何物をも得ざればなり
〘288㌻〙
58 汝もしこの書に記したるこの律法の一切の言を守りて行はず汝の神ヱホバと云榮ある畏るべき名を畏れずば
59 ヱホバ汝の災禍と汝の子孫の災禍を烈しくしたまはん其災禍は大にして久しくその疾病は重くして久しかるべし
60 ヱホバまた汝が懼れし疾病なるエジプトの諸の疾病を持きたりて汝の身に纒ひ附しめたまはん
61 また此律法の書に載ざる諸の疾病と諸の災害󠄅を汝の滅ぶるまでヱホバ汝に降したまはん
62 汝らは空󠄃の星のごとくに衆多かりしも汝の神ヱホバの言に聽したがはざるによりて殘り寡に打なさるべし
63 ヱホバさきに汝らを善して汝等を衆くすることを喜びしごとく今はヱホバ汝らを滅ぼし絕すことを喜びたまはん汝らは其徃て獲ところの地より拔さらるべし
64 ヱホバ地のこの極よりかの極までの國々の中に汝を散したまはん汝は其處にて汝も汝の先祖等も知ざりし木または石なる他の神々に事へん
65 その國々の中にありて汝は安寧を得ずまた汝の足の跖を休むる所󠄃を得じ其處にてヱホバ汝をして心慄き目昏み精神亂れしめたまはん
66 汝の生命は細き糸に懸るが如く汝に見ゆ汝は夜晝となく恐怖をいだき汝の生命おぼつかなしと思はん
67 汝心に懼るる所󠄃によりまた目に見る所󠄃によりて朝󠄃においては言ん嗚呼夕ならば善らんとまた夕においては言ん嗚呼朝󠄃ならば善らんと
68 ヱホバなんぢを舟にのせ彼の昔わが汝に吿て汝は再びこれを見ることあらじと言たるその路より汝をエジプトに曵ゆきたまはん彼處にて人汝らを賣て汝らの敵の奴婢となさん汝らを買ふ人もあらじ
379㌻
第29章
1 ヱホバ、モーセに命じモアブの地にてイスラエルの子孫と契󠄅約を結ばしめたまふその言は斯のごとし是はホレブにてかれらと結びし契󠄅約の外なる者なり
2 モーセ、イスラエルの全󠄃家を呼あつめて之に言けるは汝らはヱホバがエジプトの地において汝らの目の前󠄃にてパロとその臣下とその全󠄃地とに爲たまひし一切の事を觀たり
3 即ち其大なる試煉と徴證と大なる奇跡とを汝目に觀たるなり
4 然るにヱホバ今日にいたるまで汝らの心をして悟ることなく目をして見ることなく耳をして聞ことなからしめたまへり
5 四十年の間われ汝らを導󠄃きて曠野を通󠄃りしが汝らの身の衣服󠄃は古びず汝の足の鞋は古びざりき〘289㌻〙
6 汝らはまたパンをも食󠄃はず葡萄酒をも濃酒をも飮ざりき斯ありて汝らは我が汝らの神ヱホバなることを知り
7 汝らこの處に來りし時ヘシボンの王シホンおよびバシヤンの王オグ我らを迎󠄃へて戰ひしが我らこれを打敗りて
8 その地を取りこれをルベン人とガド人とマナセの半󠄃支派とに與へて產業となさしめたり
9 然ば汝らこの契󠄅約の言を守りてこれを行ふべし然れば汝らの凡て爲ところに祥あらん
10 汝らみな今日なんぢらの神ヱホバの前󠄃に立つ即ち汝らの首領等なんぢらの支派なんぢらの長老等および汝らの牧司等などイスラエルの一切の人
11 汝らの小き者等汝らの妻ならびに汝らの營の中にをる客旅など凡て汝のために薪を割󠄅る者より水を汲む者にいたるまで皆ヱホバの前󠄃に立て
12 汝の神ヱホバの契󠄅約に入んとし又󠄂汝の神ヱホバの汝にむかひて今日なしたまふところの誓に入んとす
13 然ばヱホバさきに汝に言しごとくまた汝の先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓ひしごとく今日なんぢを立て己の民となし己みづから汝の神となりたまはん
380㌻
14 我はただ汝らと而已此契󠄅約と誓とを結ぶにあらず
15 今日此にてわれらの神ヱホバの前󠄃に我らとともにたちをる者ならびに今日われらとともに此にたち居ざる者ともこれを結ぶなり
16 我らは如何にエジプトの地に住󠄃をりしか如何に國々を通󠄃り來りしか汝らこれを知り
17 汝らはまた木石金銀にて造󠄃れる憎むべき物および偶像のその國々にあるを見たり
18 然ば汝らの中に今日その心に我らの神ヱホバを離れて其等の國々の神に徃て事ふる男女宗族支派などあるべからず又󠄂なんぢらの中に葶藶または茵蔯を生ずる根あるべからず
19 斯る人はこの呪詛の言を聞もその心に自ら幸福なりと思ひて言ん我はわが心を剛愎にして事をなすも尙平󠄃安なり終󠄃には醉飽󠄄る者をもて渇ける者を除くにいたらんと
20 是のごとき人はヱホバかならず之を赦したまはじ還󠄃てヱホバの忿怒と嫉妬の火これが上に燃えまたこの書にしるしたる災禍みなその身に加はらんヱホバつひにその人の名を天が下より抹さりたまふべし
21 ヱホバすなはちイスラエルの諸の支派の中よりその人を分󠄃ちてこれに災禍を下しこの律法の書にしるしたる契󠄅約中の諸の呪詛のごとくしたまはん
〘290㌻〙
22 汝等の後に起󠄃る汝らの子孫の代の人および遠󠄄き國より來る客旅この地の災禍を見またヱホバがこの地に流行せたまふ疾病を見て言ところあらん
23 即ち彼ら見るにその全󠄃地は硫黄となり鹽となり且燒土となりて種も蒔れず產する所󠄃もなく何の草もその上に生せずして彼の昔ヱホバがその震怒と忿恨とをもて毀ちたましソドム、ゴモラ、アデマ、ゼポイムの毀たれたると同じかるべければ
24 彼らも國々の人もみな言んヱホバ何とて斯この地になしたるやこの烈しき大なる震怒は何事ぞやと
25 その時人應へて曰ん彼らはその先祖たちの神ヱホバがエジプトの地より彼らを導󠄃きいだして彼らと結びたるその契󠄅約を棄て
381㌻
26 徃て己の識ずまた授らざる他の神々に事へてこれを拜みたるが故なり
27 是をもてヱホバこの地にむかひて震怒を發しこの書にしるしたる諸の災禍をこれに下し
28 而してヱホバ震怒と忿恨と大なる憤怨をもて彼らをこの地より拔とりてこれを他の國に投やれりその狀今日のごとし
29 隱微たる事は我らの神ヱホバに屬する者なりまた顯露されたる事は我らと我らの子孫に屬し我らをしてこの律法の諸の言を行はしむる者なり
第30章
1 我が汝らの前󠄃に陳たるこの諸の祝福と呪詛の事すでに汝に臨み汝その神ヱホバに逐󠄃やられたる諸の國々において此事を心に考ふるにいたり
2 汝と汝の子等ともに汝の神ヱホバに起󠄃かへり我が今日なんぢに命ずる所󠄃に全󠄃たく循がひて心をつくし精神をつくしてヱホバの言に聽したがはば
3 汝の神ヱホバ汝の俘擄を解て汝を憐れみ汝の神ヱホバ汝を顧󠄃みその汝を散しし國々より汝を集めたまはん
4 汝たとひ天涯に逐󠄃やらるるとも汝の神ヱホバ其處より汝を集め其處より汝を携へかへりたまはん
5 汝の神ヱホバ汝をしてその先祖の有ちし地に歸らしめたまふて汝またこれを有つにいたらんヱホバまた汝を善し汝を增て汝の先祖よりも衆からしめたまはん
6 而して汝の神ヱホバ汝の心と汝の子等の心に割󠄅禮を施こし汝をして心を盡し精神をつくして汝の神ヱホバを愛せしめ斯して汝に生命を得させたまふべし
7 汝の神ヱホバまた汝の敵と汝を惡み攻る者とにこの諸の災禍をかうむらせたまはん
8 然ど汝は再びヱホバの言に聽したがひ我が今日なんぢに命ずるその一切の誡命を行ふにいたらん
9 然る時は汝の神ヱホバ汝をして汝が手をかくる諸の物と汝の胎の產と汝の家畜の產と汝の地の產に富しめて汝を善したまはん即ちヱホバ汝の先祖たちを悅こびしごとく再び汝を悅こびて汝を善したまはん〘291㌻〙
382㌻
10 是は汝その神ヱホバの言に聽したがひ此律法の書にしるされたる誡命と法度を守り心をつくし精神を盡して汝の神ヱホバに歸するによりてなり
11 我が今日なんぢに命ずる誡命は汝が理會がたき者にあらずまた汝に遠󠄄き者にあらず
12 是は天に在ならねば汝は誰か我らのために天にのぼりてこれを我らに持くだり我らにこれを聞せて行はせんかと曰ふにおよばず
13 また是は海の外にあるならねば汝は誰か我らのために海をわたりゆきてこれを我らに持きたり我らにこれを聞せて行はせんかと曰におよばず
14 是言は甚だ汝に近󠄃くして汝の口にあり汝の心にあれば汝これを行ふことを得べし
15 視よ我今日生命と福德および死と災禍を汝の前󠄃に置り
16 即ち我今日汝にむかひて汝の神ヱホバを愛しその道󠄃に步みその誡命と法度と律法とを守ることを命ずるなり然なさば汝生ながらへてその數衆くならんまた汝の神ヱホバ汝が徃て獲るところの地にて汝を祝福たまふべし
17 然ど汝もし心をひるがへして聽從がはず誘はれて他の神々を拜みまたこれに事へなば
18 我今日汝らに吿ぐ汝らは必ず滅びん汝らはヨルダンを渡りゆきて獲るところの地にて汝らの日を永うすることを得ざらん
19 我今日天と地を呼て證となす我は生命と死および祝福と呪詛を汝らの前󠄃に置り汝生命をえらぶべし然せば汝と汝の子孫生存らふることを得ん
20 即ち汝の神ヱホバを愛してその言を聽き且これに附從がふべし斯する時は汝生命を得かつその日を永うすることを得ヱホバが汝の先祖アブラハム、イサク、ヤコブに與へんと誓ひたまひし地に住󠄃ことを得ん
第31章
1 茲にモーセ徃てイスラエルの一切の人にこの言をのべたり
2 即ちこれに言けるは我は今日すでに百二十歳なれば最早出入をすること能はず且またヱホバ我にむかひて汝はこのヨルダンを濟ることを得ずと宣へり
383㌻
3 汝の神ヱホバみづから汝に先だちて渡りゆき汝の前󠄃よりこの國々の人を滅ぼしさりて汝にこれを獲させたまふべしまたヱホバのかつて宣まひしごとくヨシユア汝を率󠄃ゐて濟るべし
4 ヱホバさきにアモリ人の王シホンとオグおよび之が地になしたる如くまた彼らにも爲てこれを滅ぼしたまはん〘292㌻〙
5 ヱホバかれらを汝らの前󠄃に付したまふべければ汝らは我が汝らに命ぜし一切の命令のごとくこれに爲べし
6 汝ら心を强くしかつ勇め彼らを懼るる勿れ彼らの前󠄃に慄くなかれ其は汝の神ヱホバみづから汝とともに徃きたまへばなり必ず汝を離れず汝を棄たまはじ
7 斯てモーセ、ヨシユアを呼びイスラエルの一切の人の目の前󠄃にてこれに言ふ汝はこの民とともに徃き在昔ヱホバがかれらの先祖たちに與へんと誓ひたまひし地に入るべきが故に心を强くしかつ勇め汝彼らにこれを獲さすることを得べし
8 ヱホバみづから汝に先だちて徃きたまはんまた汝とともに居り汝を離れず汝を棄たまはじ懼るる勿れ驚くなかれ
9 モーセこの律法を書きヱホバの契󠄅約の櫃を舁ところのレビの子孫たる祭司およびイスラエルの諸の長老等に授けたり
10 而してモーセ彼らに命じて言けるは七年の末年すなはち放釋の年の節󠄄期にいたり結茅の節󠄄において
11 イスラエルの人皆なんぢの神ヱホバの前󠄃に出んとてヱホバの選󠄄びたまふ處に來らんその時に汝イスラエルの一切の人の前󠄃にこの律法を誦てこれに聞すべし
12 即ち男女子等および汝の門の內なる他國の人など一切の民を集め彼らをしてこれを聽かつ學ばしむべし然すれば彼等汝らの神ヱホバを畏れてこの律法の言を守り行はん
384㌻
13 また彼らの子等のこれを知ざる者も之を聞て汝らの神ヱホバを畏るることを學ばん汝らそのヨルダンを濟りゆきて獲ところの地に存ふる日の間つねに斯すべし
14 ヱホバまたモーセに言たまひけるは視よ汝の死る日近󠄃しヨシユアを召てともに集會の幕屋に立て我かれに命ずるところあらんとモーセとヨシユアすなはち徃て集會の幕屋に立けるに
15 ヱホバ幕屋において雲の柱の中に現はれたまへりその雲の柱は幕屋の門口の上に駐まれり
16 ヱホバ、モーセに言たまひけるは汝は先祖たちとともに寢らん此民は起󠄃あがりその徃ところの他國の神々を慕ひて之と姦淫を行ひかつ我を棄て我が彼らとむすびし契󠄅約を破らん
17 その日には我かれらにむかひて怒を發し彼らを棄て吾面をかれらに隱すべければ彼らは呑ほろぼされ許多の災害󠄅と艱難かれらに臨まん是をもてその日に彼ら言ん是等の災禍の我らにのぞむは我らの神ヱホバわれらとともに在さざるによるならずやと
18 然るも彼ら諸の惡をおこなひて他の神々に歸するによりて我その日にはかならず吾面をかれらに隱さん〘293㌻〙
19 然ば汝ら今この歌を書きイスラエルの子孫にこれを敎へてその口に念ぜしめ此歌をしてイスラエルの子孫にむかひて我の證とならしめよ
20 我かれらの先祖たちに誓ひし乳󠄃と蜜の流るる地にかれらを導󠄃きいらんに彼らは食󠄃ひて飽󠄄き肥太るにおよばば飜へりて他の神々に歸してこれに事へ我を輕んじ吾契󠄅約を破らん
21 而して許多の災禍と艱難彼らに臨むにいたる時はこの歌かれらに對ひて證をなす者とならん其はこの歌かれらの口にありて忘るることなかるべければなり我いまだわが誓ひし地に彼らを導󠄃きいらざるに彼らは早く已に思ひ量る所󠄃あり我これを知ると
22 モーセすなはちその日にこの歌を書てこれをイスラエルの子孫に敎へたり
23 ヱホバまたヌンの子ヨシユアに命じて曰たまはく汝はイスラエルの子孫を我が其に誓ひし地に導󠄃きいるべきが故に心を强くしかつ勇め我なんぢとともに在べしと
385㌻
24 モーセこの律法の言をことごとく書に書しるすことを終󠄃たる時
25 モーセ、ヱホバの契󠄅約の櫃を舁ところのレビ人に命じて言けるは
26 この律法の書をとりて汝らの神ヱホバの契󠄅約の櫃の傍にこれを置き之をして汝にむかひて證をなす者たらしめよ
27 我なんぢの悖る事と頑梗なるとを知る見よ今日わが生存へて汝らとともにある間すら汝らはヱホバに悖れり况てわが死たる後においてをや
28 汝らの諸支派の長老等および牧伯たちを吾許に集めよ我これらの言をかれらに語り聞せ天と地とを呼てかれらに證をなさしめん
29 我しる我が死たる後には汝ら必らず惡き事を行ひ我が汝らに命ぜし道󠄃を離れん而して後の日に災害󠄅なんぢらに臨まん是なんぢらヱホバの惡と觀たまふ事をおこなひ汝らの手の行爲をもてヱホバを怒らするによりてなり
30 かくてモーセ、イスラエルの全󠄃會衆にこの歌の言をことごとく語り聞せたり
第32章
1 天よ耳を傾むけよ我語らん地よ吾口の言を聽け
2 わが敎は雨の降るがごとし吾言は露のおくがごとく靀の若艸の上にふるごとく細雨の靑艸の上にくだるが如し
3 我はヱホバの御名を頌揚ん我らの神に汝ら榮光を歸せよ
4 ヱホバは磐にましましてその御行爲は完くその道󠄃はみな正しまた眞實ある神にましまして惡きところ無し只正くして直くいます
5 彼らはヱホバにむかひて惡き事をおこなふ者にてその子にはあらず只これが玷となるのみ其人と爲は邪僻にして曲れり〘294㌻〙
6 愚にして智慧󠄄なき民よ汝らがヱホバに報ゆること是のごとくなるかヱホバは汝の父󠄃にして汝を贖ひまた汝を造󠄃り汝を建たまはずや
7 昔の日を憶え過󠄃にし世代の年を念へよ汝の父󠄃に問べし彼汝に示さん汝の中の年老に問べし彼ら汝に語らん
386㌻
8 至高者人の子を四方に散して萬の民にその產業を分󠄃ちイスラエルの子孫の數に照して諸の民の境界を定めたまへり
9 ヱホバの分󠄃はその民にしてヤユブはその產業たり
10 ヱホバこれを荒野の地に見これに獸の吼る曠野に遇󠄃ひ環りかこみて之をいたはり眼の珠のごとくにこれを護りたまへり
11 鵰のその巢雛を喚起󠄃しその子の上に翺翔ごとくヱホバその羽を展て彼らを載せその翼をもてこれを負󠄅たまへり
12 ヱホバは只獨にてかれを導󠄃きたまへり別神はこれとともならざりき
13 ヱホバかれに地の高處を乘とほらせ田園の產物を食󠄃はせ石の中より蜜を吸しめ磐の中より油を吸しめ
14 牛の乳󠄃 羊の乳󠄃 羔羊の脂 バシヤンより出る牡羊 牡山羊および小麥の最も佳き者をこれに食󠄃はせたまひき汝はまた葡萄の汁の紅き酒を飮り
15 然るにヱシユルンは肥て踢ことを爲す汝は肥太りて大きくなり己を造󠄃りし神を棄て己が救拯の磐を輕んず
16 彼らは別神をもて之が嫉妬をおこし憎むべき者をもて之が震怒を惹く
17 彼らが犧牲をささぐる者は鬼にして神にあらず彼らが識ざりし鬼神近󠄃頃新に出たる者汝らの遠󠄄つ親の畏まざりし者なり
18 汝を生し磐をば汝これを棄て汝を造󠄃りし神をば汝これを忘る
19 ヱホバこれを見その男子女子を怒りてこれを棄たまふ
20 すなはち曰たまはく我わが面をかれらに隱さん我かれらの終󠄃を觀ん彼らはみな背き悖る類の者眞實あらざる子等なり
21 彼らは神ならぬ者をもて我に嫉妬を起󠄃させ虛き者をもて我を怒らせたれば我も民ならぬ者をもて彼らに嫉妬を起󠄃させ愚なる民をもて彼らを怒らせん
22 即ちわが震怒によりて火燃いで深き陰府に燃いたりまた地とその產物とを燒つくし山々の基をもやさん
387㌻
23 我禍災をかれらの上に積かさね吾矢をかれらにむかひて射つくさん
24 彼らは饑て痩おとろへ熱の病患と惡き疫とによりて滅びん我またかれらをして獸の齒にかからしめ地に匍ふ者の毒にあたらしめん
25 外には劒內には恐惶ありて少き男をも少き女をも幼兒をも白髮の人をも滅ぼさん
26 我は曰ふ我彼等を吹掃ひ彼らの事をして世の中に記憶らるること無らしめんと〘295㌻〙
27 然れども我は敵人の怒を恐る即ち敵人どれを見あやまりて言ん我らの手能くこれを爲り是はすべてヱホバの爲るにあらずと
28 彼らはまつたく智慧󠄄なき民なりその中には知識ある者なし
29 嗚呼彼らもし智慧󠄄あらば之を了りてその身の終󠄃を思慮らんものを
30 彼らの磐これを賣ずヱホバごれを付さずば爭か一人にて千人を逐󠄃ひ二人にて萬人を敗ることを得ん
31 彼らの磐は我らの磐にしかず我らの敵たる者等も然認󠄃めたり
32 彼らの葡萄の樹はソドムの葡萄の樹またゴモラの野より出たる者その葡萄は毒葡萄その球は苦し
33 その葡萄酒は蛇の毒のごとく蝮の惡き毒のごとし
34 是は我の許に蓄へあり我の庫に封じこめ有にあらずや
35 彼らの足の躚かん時に我仇をかへし應報をなさんその災禍の日は近󠄃く其がために備へられたる事は迅󠄄速󠄃にいたる
36 ヱホバつひにその民を鞫きまたその僕に憐憫をくはへたまはん其は彼らの力のすでに去うせて繋がれたる者も繋がれざる者もあらずなれるを見たまへばなり
37 ヱホバ言たまはん彼らの神々は何處にをるや彼らが賴める磐は何處ぞや
38 即ちその犧牲の膏油を食󠄃ひその灌祭の酒を飮たる者は何處にをるや其等をして起󠄃て汝らを助けしめ汝らを護しめよ
39 汝ら今觀よ我こそは彼なり我の外には神なし殺すこと活すこと擊こと愈すことは凡て我是を爲す我手より救ひ出すことを得る者あらず
388㌻
40 我天にむかひて手をあげて言ふ我は永遠󠄄に活く
41 我わが閃爍く刃󠄃を磨ぎ審判󠄄をわが手に握る時はかならず仇をわが敵にかへし我を惡む者に返󠄄報をなさん
42 我わが箭をして血に醉しめ吾劍をして肉を食󠄃しめん即ち殺るる者と擄らるる者の血を之に飮せ敵の髮おほき首の肉をこれに食󠄃はせん
43 國々の民よ汝らヱホバの民のために歡悅をなせ其はヱホバその僕の血のために返󠄄報をなしその敵に仇をかへしその地とその民の汚穢をのぞきたまへばなり
44 モーセ、ヌンの子ヨシユアとともに到りてこの歌の言をことごとく民に誦きかせたり
45 モーセこの言語をことごとくイスラエルの一切の人に吿をはりて
46 これに言けるは我が今日なんぢらに對ひて證するこの一切の言語を汝ら心に藏め汝らの子等にこの律法の一切の言語を守りおこなふことを命ずべし
47 抑この言は汝らには虛しき言にあらず是は汝らの生命なりこの言によりて汝らはそのヨルダンを濟りゆきて獲ところの地にて汝らの生命を永うすることを得るなり
〘296㌻〙
48 この日にヱホバ、モーセに吿て言たまはく
49 汝ヱリコに對するモアブの地のアバリム山に登りてネボ山にいたり我がイスラエルの子孫にあたへて產業となさしむるカナンの地を觀わたせよ
50 汝はその登れる山に死て汝の民に列ならん是汝の兄弟アロンがホル山に死てその民に列りしごとくなるべし
51 是は汝らチンの曠野なるカデシのメリバの水の邊においてイスラエルの子孫の中間にて我に悖りイスラエルの子孫の中に我の聖󠄄きことを顯さざりしが故なり
52 然ども汝は我がイスラエルの子孫に與ふる地を汝の前󠄃に觀わたすことを得ん但しその地には汝いることを得じ
389㌻
第33章
1 神の人モーセその死る前󠄃にイスラエルの子孫を祝せりその祝せし言は是のごとし云く
2 ヱホバ、シナイより來りセイルより彼らにむかひて昇りバランの山より光明を發ちて出で千萬の聖󠄄者の中間よりして格りたまへりその右の手には輝やける火ありき
3 ヱホバは民を愛したまふ其聖󠄄者は皆その手にあり皆その足下に坐りその言によりて起󠄃あがる
4 モーセわれらに律法を命ぜり是はヤコブの會衆の產業たり
5 民の首領等イスラエルの諸の支派あひ集れる時に彼はヱシユルンの中に王たりき
6 ルベンは生ん死はせじ然どその人數は寡少ならん
7 ユダにつきては斯いふヱホバよユダの聲を聽きこれをその民に引かへしたまへ彼はその手をもて己のために戰はん願くは汝これを助けてその敵にあたらしめたまへ
8 レビについては言ふ汝のトンミムとウリムは汝の聖󠄄人に歸す汝かつてマツサにて彼を試みメリバの水の邊にてかれと爭へり
9 彼はその父󠄃またはその母につきて言り我はこれを見ずと又󠄂彼は自己の兄弟を認󠄃ずまた自己の子等を顧󠄃みざりき是はなんぢの言に遵󠄅がひ汝の契󠄅約を守りてなり
10 彼らは汝の式例をヤコブに敎へ汝の律法をイスラエルに敎へ又󠄂香を汝の鼻の前󠄃にそなへ燔祭を汝の壇の上にささぐ
11 ヱホバよ彼の所󠄃有を祝し彼が手の作爲を悅こびて納󠄃れたまへ又󠄂起󠄃てこれに逆󠄃らふ者とこれを惡む者との腰を摧きて復起󠄃あがることあたはざらしめたまへ
12 ベニヤミンについては言ふヱホバの愛する者安然にヱホバとともにあり日々にその庇護をかうむりてその肩の間に居ん〘297㌻〙
13 ヨセフについては言ふ願くはその地ヱホバの祝福をかうむらんことを即ち天の寶物なる露淵の底なる水
14 日によりて產する寶物月によりて生ずる寶物
390㌻
15 古山の嶺の寶物老嶽の寶物
16 地の寶物地の中の產物および柴の中に居たまひし者の恩惠などヨセフの首に臨みその兄弟と別になりたる者の頂に降らん
17 彼の牛の首出はその身に榮光ありてその角は兕の角のごとく之をもて國々の民を衝たふして直に地の四方の極にまで至る是はエフライムの萬々是はマナセの千々なり
18 ゼブルンについては言ふゼブルンよ汝は外に出て快樂を得よイツサカルよ汝は家に居て快樂を得よ
19 彼らは國々の民を山に招き其處にて義の犧牲を献げん又󠄂海の中に盈る物を得て食󠄃ひ沙の中に藏れたる物を得て食󠄃はん
20 ガドについては言ふガドをして大ならしむる者は讃べき哉ガドは獅子のごとくに伏し腕と首の頂とを掻裂ん
21 彼は初穗の地を自己のために選󠄄べり其處には大將の分󠄃もこもれり彼は民の首領等とともに至りイスラエルとともにヱホバの公義と審判󠄄とをなこなへり
22 ダンについては言ふダンは小獅子のごとくバシヤンより跳り出づ
23 ナフタリについては言ふナフタリよ汝は大に福祉をかうむりヱホバの恩惠にうるほふて西と南の部を獲ん
24 アセルについては言ふアセルは他の子等よりも幸福なりまた其兄弟等にこえて惠まれその足を膏の中に浸さん
25 汝の門閂は鐵のごとく銅のごとし汝の能力は汝が日々に需むるところに循はん
26 ヱシユルンよ全󠄃能の神のごとき者は外に無し是は天に乘て汝を助け雲に駕てその威光をあらはしたまふ
27 永久に在す神は住󠄃所󠄃なり下には永遠󠄄の腕あり敵人を汝の前󠄃より驅はらひて言たまふ滅ぼせよと
28 イスラエルは安然に住󠄃をりヤコブの泉は穀と酒との多き地に獨り在らんその天はまた露をこれに降すべし
29 イスラエルよ汝は幸福なり誰か汝のごとくヱホバに救はれし民たらんヱホバは汝を護る楯汝の榮光の劍なり汝の敵は汝に諂ひ服󠄃せん汝はかれらの高處を踐ん
391㌻
第34章
1 斯てモーセ、モアブの平󠄃野よりネボ山にのぼりヱリコに對するピスガの嶺にいたりければヱホバ之にギレアデの全󠄃地をダンまで見し
2 ナフタリの全󠄃部エフライムとマナセの地およびユダの全󠄃地を西の海まで見し
3 南の地と棕櫚の邑なるヱリコの谷の原をゾアルまで見したまへり〘298㌻〙
4 而してヱホバかれに言たまひけるは我がアブラハム、イサク、ヤコブにむかひ之を汝の子孫にあたへんと言て誓ひたりし地は是なり我なんぢをして之を汝の目に觀ことを得せしむ然ど汝は彼處に濟りゆくことを得ずと
5 斯の如くヱホバの僕モーセはヱホバの言の如くモアブの地に死り
6 ヱホバ、ベテペオルに對するモアブの地の谷にこれを葬り給へり今日までその墓を知る人なし
7 モーセはその死たる時百二十歳なりしがその目は曚まずその氣力は衰へざりき
8 イスラエルの子孫モアブの地において三十日のあひだモーセのために哭泣をなしけるがモーセのために哭き哀しむ日つひに滿り
9 ヌンの子ヨシユアは心に智慧󠄄の充る者なりモーセその手をこれが上に按たるによりて然るなりイスラエルの子孫は之に聽したがひヱホバのモーセに命じたまひし如くおこなへり
10 イスラエルの中にはこの後モーセのごとき預言者おこらざりきモーセはヱホバが面を對せて知たまへる者なりき
11 即ちヱホバ、エジプトの地においてかれをパロとその臣下とその全󠄃地とにつかはして諸々の徴證と奇蹟を行はせたまへり
12 またイスラエルの一切の人の目の前󠄃にてモーセその大なる能力をあらはし大なる畏るべき事を行へり〘299㌻〙
392㌻