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〘1㌻〙

第1章

1 元始はじめかみ天地てんち創造󠄃つくりたまへり 2 定形かたちなく曠空󠄃むなしくして黑暗󠄃やみわだおもてにありかみれいみづおもておほひたりき 3 かみひかりあれといひたまひければひかりありき 4 かみひかりよしたまへりかみひかり暗󠄃やみ分󠄃わかちたまへり 5 かみひかりひるなづ暗󠄃やみよるなづけたまへりゆふあり朝󠄃あさありきこれはじめなり

6 かみいひたまひけるはみづなか穹蒼おほぞらありてみづみづとを分󠄃わかつべし 7 かみ穹蒼おほぞらつくりて穹蒼おほぞらしたみづ穹蒼おほぞらうへみづとを判󠄄わかちたまへりすなはかくなりぬ 8 かみ穹蒼おほぞらてんなづけたまへりゆふあり朝󠄃あさありきこれ二日ふつかなり

9 かみいひたまひけるはてんしたみづ一處ひとところあつまりてかわけるつちあらはるべしとすなはかくなりぬ 10 かみかわけるつちなづみづ集合あつまれるをうみなづけたまへりかみこれよしたまへり 11 かみいひたまひけるは靑草あをくさ實蓏たねしやうずる草蔬くさ其類そのるゐしたがむすびみづからたねをもつ所󠄃ところむす發出いだすべしとすなはかくなりぬ 12 靑草あをくさ其類そのるゐしたが實蓏たねしやうずる草蔬くさ其類そのるゐしたがむすびてみづからたねをもつ所󠄃ところ發出いだせりかみこれをよしたまへり 13 ゆふあり朝󠄃あさありきこれ三日みつかなり

14 かみいひたまひけるはてん穹蒼おほぞら光明ひかりありてひるよるとを分󠄃わか又󠄂また天象しるしのため時節󠄄ときのためのためとしのためになるべし 15 又󠄂またてん穹蒼おほぞらにありててらひかりとなるべしとすなはかくなりぬ 16 かみふたつ巨󠄃おほいなるひかり造󠄃つくおほいなるひかりひるつかさどらしめちいさひかりよるつかさどらしめたまふまたほし造󠄃つくりたまへり 17 かみこれをてん穹蒼おほぞらおきてらさしめ 18 ひるよるつかさどらしめひかり暗󠄃やみ分󠄃わかたしめたまふかみこれをよしたまへり 19 ゆふあり朝󠄃あさありきこれ四日よつかなり

20 かみいひたまひけるはみづには生物いきものさはしやうとりてん穹蒼おほぞらおもてうへとぶべしと 21 かみ巨󠄃おほいなるうをみづさはしやうじてうごすべて生物いきもの其類そのるゐしたがひて創造󠄃つく又󠄂また羽翼つばさあるすべてとり其類そのるゐしたがひて創造󠄃つくりたまへりかみこれよしたまへり
 1㌻ 
22 かみこれしゆくしていはうめ繁息ふえうみみづ充牣󠇯みて又󠄂また禽鳥とり蕃息ふえよと 23 ゆふあり朝󠄃あさありきこれ五日いつかなり

24 かみいひたまひけるは生物いきもの其類そのるゐしたがひいだ家畜かちく昆蟲はふものけもの其類そのるゐしたがひいだすべしとすなはかくなりぬ 25 かみけもの其類そのるゐしたがひ造󠄃つく家畜かちく其類そのるゐしたがひ造󠄃つくすべて昆蟲はふもの其類そのるゐしたがひ造󠄃つくたまへりかみこれよしたまへり 26 かみいひたまひけるは我儕われらかたどりて我儕われらかたちごとくに我儕われらひと造󠄃つくこれうみうを天空󠄃そらとり家畜かちく全󠄃地ぜんち所󠄃ところすべて昆蟲はふものをさめしめんと〘1㌻〙 27 かみそのかたちごとくにひと創造󠄃つくりたまへりすなはかみかたちごとくにこれ創造󠄃つくりこれをとこをんな創造󠄃つくりたまへり 28 かみ彼等かれらしゆくかみ彼等かれらいひたまひけるはうめ繁殖ふえ滿盈みてこれ服󠄃從したがはせよ又󠄂またうみうを天空󠄃そらとりうご所󠄃ところすべて生物いきものをさめよ 29 かみいひたまひけるはわれ全󠄃地ぜんちおもてにある實蓏たねのなるすべて草蔬くさたねある木果このみすべてとを汝等なんぢらあたふこれはなんぢらのかてとなるべし 30 又󠄂またすべてけもの天空󠄃そらすべてとりおよびすべてものなどおよ生命いのちあるものにはわれ食󠄃物しよくもつとしてすべてあをくさあたふとすなはかくなりぬ 31 かみその造󠄃つくりたるすべてものたまひけるにはなはよかりきゆふあり朝󠄃あさありきこれ六日むいかなり

第2章

1 かく天地てんちおよびその衆群しうぐんこと〴〵なり 2 第七日なぬかめかみその造󠄃つくりたるわざをへたまへりすなはその造󠄃つくりたるわざをへ七日なぬか安息やすみたまへり 3 かみ七日なぬかしゆくしてこれ神聖󠄄きよめたまへりかみその創造󠄃つくりなしたまへるわざこと〴〵をへこの安息やすみたまひたればなり

4 ヱホバかみてん造󠄃つくりたまへる天地てんち創造󠄃つくられたるその由來ゆらいこれなり 5 すべて灌木いまにあらずすべて草蔬くさいまだしやうぜざりきはヱホバかみあめふらせたまはずまた土地つちたがへひとなかりければなり 6 きりよりのぼりて土地つちおもて遍󠄃あまねうるほしたり
 2㌻ 
7 ヱホバかみつちちりもつひと造󠄃つく生氣いのちのいきそのはな嘘入ふきいれたまへりひとすなは生靈いけるものとなりぬ 8 ヱホバかみエデンのひがしかたそのまうけその造󠄃つくりしひと其處そこおきたまへり 9 ヱホバかみみる美麗うるはし食󠄃くらふに各種もろ〳〵土地つちよりしやうぜしめ又󠄂またそのなか生命いのちおよび善惡ぜんあくしるしやうぜしめたまへり 10 かはエデンよりいでそのうる彼處かしこより分󠄃わかれてよつみなもととなれり 11 その第一だいいちはピソンといふこれきんあるハビラの全󠄃地ぜんちめぐものなり 12 そのきん又󠄂またブドラクと碧玉へきぎょく彼處かしこにあり 13 だいかははギホンといふこれはクシの全󠄃地ぜんちめぐものなり 14 だいさんかははヒデケルといふこれはアッスリヤのひがしながるゝものなりだいかははユフラテなり 15 ヱホバかみ其人そのひととりかれをエデンのそのこれをさこれまもらしめたまへり 16 ヱホバかみ其人そのひとめいじていひたまひけるはその各種すべてなんぢ意󠄃こころのまゝに食󠄃くらふことを 17 され善惡ぜんあくしるなんぢその食󠄃くらふべからずなんぢこれ食󠄃くらにはかならしぬべければなり

18 ヱホバかみいひたまひけるはひとひとりなるはよからずわれかれ適󠄄かな助者たすけかれのために造󠄃つくらんと 19 ヱホバかみつちすべてけもの天空󠄃そらすべてとり造󠄃つくりたまひてアダムのこれいかなづくるかをんとてこれかれ所󠄃ところ率󠄃ひきゐいたりたまへしアダムが生物いきものなづけたる所󠄃ところみなそのとなりぬ〘2㌻〙 20 アダムすべて家畜かちく天空󠄃そらとりすべてけものあたへたりされどアダムにはこれ適󠄄かな助者たすけみえざりき 21 こゝおいてヱホバかみアダムをふかねむらしめねむりしときその肋骨あばらぼねひとつにくをもて其處そのところ塡塞ふさぎたまへり 22 ヱホバかみアダムよりとりたる肋骨あばらぼねをんなつくこれをアダムの所󠄃ところつれきたりたまへり 23 アダムいひけるはこれこそわがほねほねわがにくにくなれこれをとこよりとりたるものなればこれをんななづくべしと 24 是故このゆえひとその父󠄃母ちちはははなれてそのつま好合二人ふたり一體いつたいとなるべし 25 アダムとそのつま二人ふたりとも裸體はだかにしてはぢざりき
 3㌻ 

第3章

1 ヱホバかみ造󠄃つくりたまひし生物いきものなかへびもつと狡猾さがへび婦󠄃をんなひけるはかみまこと汝等なんぢらそのすべて食󠄃くらふべからずといひたまひしや 2 婦󠄃をんなへびいひけるは我等われらその食󠄃くらふことを 3 されその中央なかある果實をばかみ汝等なんぢらこれ食󠄃くらふべからず又󠄂またこれさはるべからずおそらく汝等なんぢらしなんといひたまへり 4 へび婦󠄃をんないひけるは汝等なんぢらかならずしぬことあらじ 5 かみ汝等なんぢらこれ食󠄃くらには汝等なんぢらひら汝等なんぢらかみごとくなりて善惡ぜんあくしるいたるをりたまふなりと 6 婦󠄃をんなみれ食󠄃くらふ美麗うるはしくかつ智慧󠄄かしこからんがためしたはしきなるによりて遂󠄅つひその果實とり食󠄃くらまたこれおのれともなるをつとあたへければかれ食󠄃くらへり 7 こゝにおいて彼等かれらともひらけ彼等かれらその裸體はだかなるをすなは無花果樹いちじくつづりつくれり 8 彼等かれらそのうち淸凉すずし時分󠄃ころあゆみたまふヱホバかみこゑききしかばアダムとそのつますなはちヱホバかみかほ避󠄃さけそのあひだかくせり

9 ヱホバかみアダムをよびこれいひたまひけるはなんぢ何處いづこにをるや 10 かれいひけるはわれそのうちなんぢこゑ裸體はだかなるによりおそれてかくせりと 11 ヱホバいひたまひけるはなんぢはだかなるをなんぢつげしやなんぢなんぢ食󠄃くらふなかれとめいじたる食󠄃くらひたりしや 12 アダムいひけるはなんぢあたへわれともならしめたまひし婦󠄃をんなかれその果實われにあたへたればわれ食󠄃くらへりと 13 ヱホバかみ婦󠄃をんないひたまひけるはなんぢがなしたる此事このわざなにぞや婦󠄃をんないひけるはへびわれ誘惑まどはしてわれ食󠄃くらへりと 14 ヱホバかみへびいひたまひけるはなんぢこれなしたるによりなんぢすべて家畜かちくすべてけものよりも勝󠄃まさりてのろはるなんぢ腹行はらばひ一生いつしやうあひだちり食󠄃くらふべし 15 又󠄂またわれなんぢ婦󠄃をんなあひだおよびなんぢ苗裔すゑ婦󠄃をんな苗裔すゑあひだ怨恨うらみおかかれなんぢかしらくだなんぢかれくびすくだかん〘3㌻〙 16 又󠄂また婦󠄃をんないひたまひけるはわれおほいなんぢ懷姙はらみ劬勞くるしみすべしなんぢくるしみてうま又󠄂またなんぢをつとをしたひかれなんぢをさめん 17 又󠄂またアダムにいひたまひけるはなんぢそのつまことばきゝなんぢめいじて食󠄃くらふべからずといひたる食󠄃くらひしによりつちなんぢのためにのろはるなんぢ一生いつしやうのあひだ勞苦くるしみそれより食󠄃しよく
 4㌻ 
18 つち荊棘いばらあざみとをなんぢのためにしやうずべしまたなんぢ草蔬くさ食󠄃くらふべし 19 なんぢかほあせして食󠄃物しよくもつ食󠄃くら終󠄃つひつちかへらんそのなかよりなんぢとられたればなりなんぢちりなればちりかへるべきなりと 20 アダムそのつまをヱバとなづけたりかれすべて生物いけるものはゝなればなり 21 ヱホバかみアダムとそのつまのために皮衣かはごろもつくりて彼等かれらせたまへり

22 ヱホバかみいひたまひけるは夫人かのひと我等われらひとりごとくなりて善惡ぜんあくされおそらくはかれその生命いのち果實をもりて食󠄃くら限無かぎりなくいきんと 23 ヱホバかみかれをエデンのそのよりいだしそのとり造󠄃つくられたるところのつちたがへさしめたまへり 24 かくかみそのひと逐󠄃出おひいだしエデンのそのひがしにケルビムとおのづから旋轉まはほのほつるぎおき生命いのち途󠄃みち保守まもりたまふ

第4章

1 アダムそのつまエバをかれはらみてカインをみていひけるはわれヱホバによりて一個ひとりひとたりと 2 かれまたそのおとうとアベルをうめりアベルはひつじものカインはつちたがへものなりき 3 のちカインつちよりいづ携來もちきたりてヱホバに供物そなへものとなせり 4 アベルもまたそのひつじ初生うひごそのこえたるものをたづさへきたれりヱホバ、アベルとその供物そなへもの眷顧󠄃かへりみたまひしかども 5 カインとその供物そなへものをばかへりたまはざりしかばカインはなはいかかつそのおもてをふせたり 6 ヱホバ、カインにいひたまひけるはなんぢなんいかるやなんおもてをふするや 7 なんぢもしよきおこなはゞあぐることをえざらんやもしよきおこなはずばつみ門戶かどぐちかれなんぢしたなんぢかれをさめん 8 カインそのおとうとアベルにものがたりぬ彼等かれらにをりけるときカインそのおとうとアベルに起󠄃たちかゝりてこれころせり

9 ヱホバ、カインにいひたまひけるはなんぢおとうとアベルは何處いづこにをるやかれわれしらずわれあにわがおとうと守者まもりてならんやと
 5㌻ 
10 ヱホバいひたまひけるはなんぢなにをなしたるやなんぢおとうとこゑよりわれさけべり 11 さればなんぢのろはれて此地このちはなるべし此地このちそのくちひらきてなんぢおとうとなんぢよりうけたればなり 12 なんぢたがへすともふたゝびそのちからなんぢいたさじなんぢ吟行さまよ流離子さすらひびととなるべしと〘4㌻〙 13 カイン、ヱホバにいひけるはつみおほいにして負󠄅ふことあたはず 14 なんぢ今日けふ斯地このちおもてよりわれ逐󠄃出おひいだしたまふわれなんぢかほ觀󠇯ることなきにいたらんわれ吟行さまよ流離子さすらひびととならんおよわれ遇󠄃ものわれころさん 15 ヱホバかれいひたまひけるはしからずおよそカインをころもの七倍しちばいばつうけんとヱホバ、カインに遇󠄃ものかれうたざるため印誌しるしかれあたへたまへり

16 カイン、ヱホバの前󠄃まへはなれでエデンのひがしなるノドの住󠄃すめ 17 カインそのつまかれはらみエノクをうめりカインまちそのまちそのしたがひてエノクとなづけたり 18 エノクにイラデうまれたりイラデ、メホヤエルをみメホヤエル、メトサエルをみメトサエル、レメクをうめ 19 レメク二人ふたりつまめとれりひとりはアダとひとりはチラといへ 20 アダ、ヤバルをめりかれてんまく住󠄃すみ家畜かちく所󠄃ところもの先祖せんぞなり 21 そのおとうとはユバルとかれことふえとをとるすべてのもの先祖せんぞなり 22 又󠄂またチラ、トバルカインをうめかれあかがねてつもろ〳〵刃󠄃ものきたものなりトバルカインのいもうとをナアマといふ 23 レメクそのつまたちいひけるはアダとチラよわがこゑけレメクのつまよわがことばいれわれわが創傷いたでのためにひところすわがきづのために少年わかうどころ 24 カインのために七倍しちばいばつあればレメクのためには七十七ばいばつあらん

25 アダムまたそのつましりかれ男子をとこのこそのをセツとなづけたりかれかみわれにカインのころしたるアベルのかはりにほかたねあたへたまへりといひたればなり 26 セツにもまた男子をとこのこうまれたりかれそのをエノスとなづけたり此時このとき人々ひと〴〵ヱホバのよぶことをはじめたり
 6㌻ 

第5章

1 アダムのでんふみこれなりかみひと創造󠄃つくりたまひしかみかたどりてこれ造󠄃つくりたまひ 2 彼等かれら男女なんによ造󠄃つくりたまへり彼等かれら創造󠄃つくられしかみ彼等かれらしゆくしてかれらのをアダムとなづけたまへり 3 アダム百三十さいおよびてそのかたちしたがおのれかたどりそのをセツとなづけたり 4 アダムのセツをうみのちよはひは八百さいにして男子なんし女子によしうめ 5 アダムの生存いきながらへたるよはひ都合すべて九百三十さいなりきしかしてしね

6 セツ百五さいおよびてエノスをうめ 7 セツ、エノスをうみのち八百七ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ 8 セツのよはひ都合すべて九百十二さいなりきしかしてしね

9 エノス九十さいにおよびてカイナンをうめ 10 エノス、カイナンをうみのち八百十五ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ 11 エノスのよはひ都合すべて九百五さいなりきしかしてしね
〘5㌻〙
12 カイナン七十さいにおよびてマハラレルをうめ 13 カイナン、マハラレルをうみのち八百四十ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ 14 カイナンのよはひ都合すべて九百十さいなりきしかしてしね

15 マハラレル六十五さいおよびてヤレドをうめ 16 マハラレル、ヤレドをうみのち八百三十ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ 17 マハラレルのよはひ都合すべて八百九十五さいなりきしかしてしね

18 ヤレド百六十二さいおよびてエノクをうめ 19 ヤレド、エノクをうみのち八百ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ 20 ヤレドのよはひ都合すべて九百六十二さいなりきしかしてしね

21 エノク六十五さいおよびてメトセラをうめ 22 エノク、メトセラをうみのち三百ねんかみとともにあゆ男子なんし女子によしうめ
 7㌻ 
23 エノクのよはひ都合すべて三百六十五さいなりき 24 エノクかみともあゆみしがかみかれをりたまひければをらずなりき

25 メトセラ百八十七さいおよびてレメクをうめ 26 メトセラ、レメクをうみしのち七百八十二ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ 27 メトセラのよはひ都合すべて九百六十九さいなりきしかしてしね

28 レメク百八十二さいおよびて男子をとこのこ 29 そのをノアとなづけていひけるはこのはヱホバののろひたまひしれるわが操作はたらきわが勞苦ほねをりとにつきわれらをなぐさめん 30 レメク、ノアをうみのち五百九十五ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ 31 レメクのよはひ都合すべて七百七十七さいなりきしかしてしね

32 ノア五百さいなりきノア、セム、ハム、ヤペテをうめ

第6章

1 ひとおもて繁衍ふえはじまりて女子をんなのここれうまるゝにおよべるとき 2 かみたちひと女子むすめうつくしきをそのこの所󠄃ところものとりつまとなせり 3 ヱホバいひたまひけるはわがみたまながひとあらそはじかれにくなればなりされかれは百二十ねんなるべし 4 當時このころにネピリムありきまたそののちかみたちひとむすめ所󠄃ところりて子女こどもうましめたりしがそれ勇士ゆうしにして古昔いにしへ名聲あるひとなりき

5 ヱホバひとあくおほいなると其心そのこころ思念おもひすべ圖維はか所󠄃ところつねただあしきのみなるをたまへり 6 こゝおいてヱホバうへひと造󠄃つくりしことをいてこころうれへたまへり 7 ヱホバいひたまひけるは創造󠄃つくりしひとわれおもてより拭去ぬぐひさらひとよりけもの昆蟲はふもの天空󠄃そらとりにいたるまでほろぼさんわれこれ造󠄃つくりしことをくゆればなりと〘6㌻〙 8 されどノアはヱホバののまへにめぐみたり

 8㌻ 
9 ノアのでんこれなりノアは義人たゞしきひとにしてその完全󠄃まつたものなりきノアかみともあゆめり 10 ノアはセム、ハム、ヤペテのさんにんうめ 11 ときかみのまへにみだれて暴虐󠄃ばうぎやく滿盈ちたりき 12 かみたまひけるにみだれたりひとみなその道󠄃みちをみだしたればなり

13 かみノアにいひたまひけるはすべてひと末期をはりわが前󠄃まへ近󠄃ちかづけり彼等かれらのために暴虐󠄃ばうぎやくにみつればなりわれ彼等かれらとともに剪滅ほろぼさん 14 なんぢ松木まつのきをもてなんぢのために方舟はこぶね造󠄃つく方舟はこぶねうちつく瀝靑やにをもてその內外うちそとるべし 15 なんぢかくこれつくるべしすなはその方舟はこぶねながさは三百キユビトそのひろさは五十キユビトそのたかさは三十キユビト 16 又󠄂また方舟はこぶね導󠄃光牖あかりまどつくうへいちキユビトにこれつく終󠄃あぐべし又󠄂また方舟はこぶねそのかたはらまうくべし下牀したかいさんがいとにこれつくるべし 17 われ洪水こうずゐ起󠄃おこしてすべ生命いのち氣息いきあるにくなるもの天下てんかより剪滅ほろぼたたにをるものみなぬべし 18 されなんぢとはわれわが契約けいやくをたてんなんぢなんぢ子等こらなんぢつまおよびなんぢ子等こらつまとともにその方舟はこぶねるべし 19 又󠄂またもろ〳〵生物いきものすべにくなるものをばなんぢおのおのそのふたつ方舟はこぶねたづさへいりてなんぢとともにその生命いのちたもたしむべしそれ牝牡めをなるべし 20 とり其類そのるゐしたがけもの其類そのるゐしたがすべて昆蟲はふもの其類そのるゐしたがひておのおのふたつなんぢ所󠄃ところいたりてその生命いのちたもつべし 21 なんぢ食󠄃くらはるゝすべて食󠄃品くひものなんぢもととりこれなんぢ所󠄃ところあつむべしこれすなはなんぢ是等これらもの食󠄃品くひものとなるべし 22 ノアかくすべかみおのれめいじたまひしごとくしかせり

第7章

1 ヱホバ、ノアにいひたまひけるはなんぢなんぢいへみな方舟はこぶねいるべしわれなんぢがこのひとうちにてわが前󠄃まへただしきたればなり 2 すべて潔󠄄きよけもの牝牡めを七宛ななつづつなんぢもと潔󠄄きよからぬけもの牝牡めをふたつ 3 また天空󠄃そらとり雌雄めを七宛ななつづつとりたね全󠄃地ぜんちおもていきのこらしむべし 4 いま七日なぬかありてわれ四十にち四十あめふらしめわれ造󠄃つくりたる萬有あらゆるものおもてより拭去ぬぐひさら
 9㌻ 
5 ノア、ヱホバのすべおのれめいじたまひしごとくなせり

6 洪水こうずゐありけるときにノア六百さいなりき 7 ノアその子等こらそのつまおよびその子等こらつまとも洪水こうずゐ避󠄃さけ方舟はこぶねにいりぬ 8 潔󠄄きよけもの潔󠄄きよからざるけものとりおよびすべてもの 9 牝牡めを二宛ふたつづつノアにきたりて方舟はこぶねにいりぬかみのノアにめいじたまへるがごと 10 かくて七日なぬかのち洪水こうずゐのぞめり〘7㌻〙 11 ノアのよはひの六百さいの二ぐわつすなはそのつきの十七にちあたこの大淵おほわだみなもとみなやぶあまひらけて 12 あめ四十にち四十そそげり

13 このにノアとノアのセム、ハム、ヤペテおよびノアのつまその子等こらの三にんつま諸俱もろとも方舟はこぶねにいりぬ 14 彼等かれらおよびすべてけものそのるゐしたがすべて家畜かちく其類そのるゐしたがすべ昆蟲もの其類そのるゐしたがすべてとりすなは各樣もろ〳〵たぐひとりみな其類そのるゐしたがひてりぬ 15 すなは生命いのち氣息いきあるもろ〳〵にくなるもの二宛ふたつづつノアにきたりて方舟はこぶねにいりぬ 16 いりたるものもろ〳〵にくなるもの牝牡めをにしてみないりぬかみかれめいじたまへるがごとしヱホバすなはかれ閉置とぢこめたまへり 17 洪水こうずゐ四十にちにありきこゝにおいてみづ方舟はこぶねうかめて方舟はこぶねうへたかくあがれり 18 しかしてみづ瀰漫はびこりておほいしぬ方舟はこぶねみづおもてただよへり 19 みづはなはだおほい瀰漫はびこりければてん高山たかやまみなおほはれたり 20 みづはびこりて十五キユビトにのぼりければ山々やまやまおほはれたり 21 おほようごにくなるものとり家畜かちくけものすべて昆蟲ものおよびひとみなしね 22 すなはおほよそのはな生命いのち氣息いきのかよふものすべ乾土くがにあるものしね 23 かくつち表面おもてにある萬有あらゆるものひとより家畜けもの昆蟲はふもの天空󠄃そらとりにいたるまでこと〴〵拭去ぬぐひさりたまへり是等これらより拭去ぬぐひさられたりたゞノアおよびかれとともに方舟はこぶねにありしもののみのこれり 24 みづ百五十にちのあひだにはびこりぬ

第8章

1 かみノアおよびかれとともに方舟はこぶねにあるすべて生物いきものすべて家畜かちく眷念おもひたまひてかみすなはかぜうへふかしめたまひければみづりたり
 10㌻ 
2 またわだみなもとあま閉塞とぢふさがりててんよりのあめやみ 3 こゝおいみづ次第しだいより退󠄃しりぞき百五十にちてのちみづ 4 方舟はこぶねは七ぐわついたそのつきの十七にちにアララテのやまとどまりぬ 5 みづ次第しだいへりて十ぐわついたりしが十ぐわつ月朔ついたち山々やまやまいただきあらはれたり

6 四十にちてのちノアその方舟はこぶねつくりしまどひらき 7 からす放出はなちけるがみづかるるまで徃來ゆききしをれり 8 かれおもてよりみづ減少ひきしかをんとてまた鴿はと放出はなちいだしけるが 9 鴿はとそのあしうらとどむべきところずしてかれ還󠄃かへりて方舟はこぶねいたれりみづ全󠄃地ぜんちおもてにありたればなりかれすなはそののべこれとら方舟はこぶねうちにおのれの所󠄃ところ接入ひきいれたり 10 なほ又󠄂また七日なぬかまちふたた鴿はと方舟はこぶねより放出はなちけるが 11 鴿はとくれにおよびてかれ還󠄃かへれりそのくち橄欖かんらん新葉わかばありきこゝおいてノアよりみづ減少ひきしをしれり 12 なほ又󠄂また七日なぬかまちて鴿はと放出はなちけるがふたたかれ所󠄃ところかへらざりき
〘8㌻〙
13 六百一ねんの一げつ月朔ついたちみづかれたりノアすなは方舟はこぶねおひのぞきてしにつちおもてかはきてありぬ 14ぐわつの二十七にちいたりてかわきたり 15 こゝかみノアにかたりていひたまはく 16 なんぢおよびなんぢつまなんぢ子等こらなんぢ子等こらつまともに方舟はこぶねいづべし 17 なんぢとともにあるもろ〳〵にくなるすべて生物いきものもろ〳〵にくなるものすなはとり家畜かちくおよびすべて昆蟲はふもの率󠄃ひきゐいでよこれおほ生育そだちうへうみかつ殖增ふえますべし 18 ノアとその子等こらそのつまおよびその子等こらつまともにいでたり 19 すべてけものすべて昆蟲はふものおよびすべてとりなどおようごもの種類しゆるゐしたがひて方舟はこぶねよりいでたり

20 ノア、ヱホバのためにだんきづもろ〳〵潔󠄄きよけものもろ〳〵潔󠄄きよとりとり燔祭はんさいだんうへさゝげたり 21 ヱホバそのかうばしにほひぎたまひてヱホバその意󠄃こころいひたまひけるはわれふたたひとゆゑよりのろふことをせじひとこころ圖維はかるところその幼少時おさなきときよりしてあしかればなり又󠄂またわれかつなしたるごとふたゝもろ〳〵いけものほろぼさじ 22 のあらんかぎりは播種時たねまきどき收穫時かりいれどき寒熱さむさあつさ夏冬なつふゆおよびひるよるやむことあらじ
 11㌻ 

第9章

1 かみノアとその子等こらしゆくしてこれいひたまひけるはうめ增殖ふえ滿みて 2 すべて獸畜けもの天空󠄃そらすべてとりすべてものうみすべてうを汝等なんぢらおそ汝等なんぢらをののかん是等これら汝等なんぢらあたへらる 3 おほよいけ動物どうぶつ汝等なんぢら食󠄃しよくとなるべし菜蔬あをもののごとくわれこれみな汝等なんぢらあた 4 されにくその生命いのちなるそののまゝに食󠄃くらふべからず 5 汝等なんぢら生命いのちながすをばわれかならたださんけものこれをなすもひとをこれをすもわれたださんおほよひと兄弟きやうだいひと生命いのちとらわれただすべし 6 おほよひとながものひとそのながさんかみかたちのごとくにひと造󠄃つくりたまひたればなり 7 汝等なんぢらうめ增殖ふえおほくなりてそのうち增殖ふえ

8 かみノアおよびかれともにあるその子等こらつげいひたまひけるは 9 われ汝等なんぢら汝等なんぢらのち子孫しそん 10 および汝等なんぢらともなるもろ〳〵生物いきものすなは汝等なんぢらとともなるとり家畜かちくおよびもろ〳〵けもの契約けいやくたてすべ方舟はこぶねよりいでたるものよりもろ〳〵けものにまでいたらん 11 われ汝等なんぢら契約けいやくたてすべにくなるものふたた洪水こうずゐたたるゝことあらじ又󠄂またほろぼ洪水こうずゐふたたびあらざるべし 12 かみいひたまひけるはわれ汝等なんぢらおよび汝等なんぢらともなるすべて生物いきものあひだ世々よよかぎりなく所󠄃ところ契約けいやくしるしこれなり 13 われわがにじくもうち起󠄃おこさんこれわれとのあひだ契約けいやくしるしなるべし 14 すなはわれくもうへ起󠄃おこときにじくもうちあらはるべし〘9㌻〙 15 われすなはわれ汝等なんぢらおよびすべにくなるもろ〳〵生物いきものあひだのわが契約けいやく記念おもはんみづふたたもろ〳〵にくなるものほろぼ洪水こうずゐとならじ 16 にじくもうちにあらんわれこれかみにあるすべにくなるもろ〳〵生物いきものとのあひだなる永遠󠄄とこしへ契約けいやく記念おぼえん 17 かみノアにいひたまひけるはこれわれにあるもろ〳〵にくなるものとのあひだたてたる契約けいやくしるしなり

 12㌻ 
18 ノアの子等こら方舟はこぶねよりいでたるものはセム、ハム、ヤペテなりきハムはカナンの父󠄃ちゝなり 19 是等これらはノアのさんにんなり全󠄃地ぜんちたみ是等これらよりいで蔓延ひろがれり

20 ここにノアの農夫のうふとなりて葡萄園ぶだうばたけつくることをはじめしが 21 葡萄ぶだうしゆのみよひてんまくうちにありてはだかになれり 22 カナンの父󠄃ちゝハムその父󠄃ちゝのかくし所󠄃どころそとにありし二人ふたり兄弟きやうだいつげたり 23 セムとヤペテすなはころもとりともそのかた負󠄅後向うしろむきあゆみゆきてその父󠄃ちゝ裸體はだかおほへり彼等かれらかほうしろにしてその父󠄃ちゝ裸體はだかざりき 24 ノアさけさめてそのわかおのれなしたることれり 25 こゝおいかれいひけるはカナンのろはれよかれ僕輩しもべらしもべとなりてその兄弟きやうだいつかへん 26 又󠄂またいひけるはセムのかみヱホバはほむべきかなカナンかれしもべとなるべし 27 かみヤペテをおほいならしめたまはんかれはセムのてんまく居住󠄃すまはんカナンそのしもべとなるべし

28 ノア洪水こうずゐのち三百五十ねん生存いきながらへたりノアのよはひすべて九百五十ねんなりきしかしてしね

第10章

1 ノアのセム、ハム、ヤペテのでんこれなり洪水こうずゐのち彼等かれら子等こどもうまれたり

2 ヤペテのはゴメル、マゴグ、マデア、ヤワン、トバル、メセク、テラスなり 3 ゴメルのはアシケナズ、リパテ、トガルマなり 4 ヤワンのはエリシヤ、タルシシ、キツテムおよびドダニムなり 5 是等これらより諸國くにぐに洲島しまたみ派分󠄃わかいでおのおのその方言ことばその宗族やからその邦國くにとにしたがひてその住󠄃すめ

6 ハムのはクシ、ミツライム、フテおよびカナンなり 7 クシのはセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカなりラアマのはシバおよびデダンなり 8 クシ、ニムロデをうめかれはじめて權力ちからあるものとなれり 9 かれはヱホバの前󠄃まへにありて權力ちからある獵夫かりうどなりき是故このゆえにヱホバの前󠄃まへにあるかの權力ちからある獵夫かりうどニムロデのごとしといふことわざあり
 13㌻ 
10 かれくに起󠄃初はじまりはシナルののバベル、エレク、アツカデ、およびカルネなりき 11 そのよりかれアッスリヤにでニネベ、レホポテイリ、カラ 12 およびニネベとカラのあひだなるレセンをたてたりこれおほいなる城邑まちなり 13 ミツライム、ルデびとアナミびとレハビびとナフトびと〘10㌻〙 14 バテロスびとカスルびとおよびカフトリびとうめりカスルびとよりペリシテびといでたり

15 カナンその冢子うひごシドンおよびヘテ 16 エブスびとアモリびとギルガシびと 17 ヒビびとアルキびとセニびと 18 アルワデびとゼマリびとハマテびとうめのちいたりてカナンびと宗族やから蔓延ひろがりぬ 19 カナンびとさかひはシドンよりゲラルをてガザにいたりソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムに沿そひてレシヤにまでおよべり 20 是等これらはハムの子孫しそんにしてその宗族やからその方言ことばその土地とちその邦國くにしたがひてりぬ

21 セムはヱベルの全󠄃すべて子孫しそん先祖せんぞにしてヤペテのあになりかれにも子女こどもうまれたり 22 セムのはエラム、アシユル、アルパクサデ、ルデ、アラムなり 23 アラムのはウヅ、ホル、ゲテル、マシなり 24 アルパクサデ、シラをみシラ、エベルをうめ 25 エベルに二人ふたりうまれたり一人ひとりをペレグ(分󠄃わかれ)といふかれ邦國くに分󠄃わかれたればなりそのおとうとをヨクタンと 26 ヨクタン、アルモダデ、シヤレフ、ハザルマウテ、ヱラ 27 ハドラム、ウザル、デクラ 28 オバル、アビマエル、シバ 29 オフル、ハビラおよびヨバブをうめ是等これらみなヨクタンのなり 30 彼等かれら居住󠄃所󠄃すめるところはメシヤよりして東方ひがしやまセバルにまでいたれり 31 是等これらはセムの子孫しそんにしてその宗族やからその方言ことばその土地とちその邦國くにとにしたがひてりぬ

32 是等これらはノアの宗族やからにしてその血統ちすぢその邦國くにしたがひてりぬ洪水こうずゐのち是等これらより邦國くにぐにたみ派分󠄃わかいでたり
 14㌻ 

第11章

1 全󠄃地ぜんちひとつ言語ことばひとつ音󠄃おんのみなりき 2 こゝ人衆ひと〴〵ひがしうつりてシナルの平󠄃野ひらの其處そこ居住󠄃すめ 3 彼等かれらたがひいひけるは去來いざ甎石かはらつくこれやかんと遂󠄅つひいしかはり甎石かはら灰󠄃沙しつくひかはり石漆ちやんたり 4 又󠄂またいひけるは去來いざまちたふとをそのたふいただきてんにいたらしめんかくして我等われらあげ全󠄃地ぜんち表面おもてることをまぬかれんと 5 ヱホバ降臨くだりてかの人衆ひと〴〵たつまちたふとをたまへり 6 ヱホバいひたまひけるはたみひとつにしてみなひとつ言語ことばもちいますでこれはじめたりされすべそのなさんと圖維はかこと禁止とどられざるべし 7 去來いざ我等われらくだ彼處かしこにて彼等かれら言語ことばみだたがひ言語ことば通󠄃つうずることをざらしめんと 8 ヱホバ遂󠄅つひ彼等かれら彼處かしこより全󠄃地ぜんち表面おもてちらしたまひければ彼等かれらまちたつることをやめたり 9 是故このゆえそのはバベル(淆亂みだれ)とばるはヱホバ彼處かしこ全󠄃地ぜんち言語ことばみだしたまひしによりてなり彼處かしこよりヱホバ彼等かれら全󠄃地ぜんちおもてちらしたまへり
〘11㌻〙
10 セムのでんこれなりセム百さいにして洪水こうずゐのちの二ねんにアルパクサデをうめ 11 セム、アルパクサデをうみのち五百ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ

12 アルパクサデ三十五さいおよびてシラをうめ 13 アルパクサデ、シラをうみのち四百三ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ

14 シラ三十さいにおよびてエベルをうめ 15 シラ、エベルをうみのち四百三ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ

16 エベル三十四さいにおよびてペレグをうめ 17 エベル、ペレグをうみのち四百三十ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ

18 ペレグ三十さいにおよびてリウをうめ 19 ペレグ、リウをうみのち二百九ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ

20 リウ三十二さいにおよびてセルグをうめ 21 リウ、セルグをうみのち二百七ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ

 15㌻ 
22 セルグ三十ねんにおよびてナホルをうめ 23 セルグ、ナホルをうみしのち二百ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ

24 ナホル二十九さいおよびてテラをうめ 25 ナホル、テラをうみのち百十九ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしうめ

26 テラ七十さいおよびてアブラム、ナホルおよびハランをうめ

27 テラのでんこれなりテラ、アブラム、ナホルおよびハランをうみハラン、ロトをうめ 28 ハランはその父󠄃ちゝテラにさきだちてその生處うまれどころなるカルデアのウルにてしにたり 29 アブラムとナホルとつまめとれりアブラムのつまをサライといひナホルのつまをミルカといひてハランのむすめなりハランはミルカの父󠄃ちゝにしてまたイスカの父󠄃ちゝなりき 30 サライは石女うまずめにしてなかりき 31 テラ、カナンのゆかんとてそのアブラムとハランのなるそのまごロトおよびそのアブラムのつまなるそのよめサライをひきつれともにカルデアのウルをいでたりしがハランにいと其處そこ住󠄃すめ 32 テラのよはひは二百五さいなりきテラはハランにてしね

第12章

1 こゝにヱホバ、アブラムにいひたまひけるはなんぢくになんぢしんぞくわかなんぢ父󠄃ちゝいへはなれてなんぢしめさんそのいた〘12㌻〙 2 われなんぢおほいなる國民たみなんぢめぐなんぢおほいならしめんなんぢ祉福さいはいもととなるべし 3 われなんぢしゆくするものしゆくなんぢのろもののろはんてんもろ〳〵宗族やからなんぢによりて福禔さいはひえん 4 アブラムすなはちヱホバの自己おのれいひたまひしことしたがひいでたりロトかれともゆけりアブラムはハランをいでたるとき七十五さいなりき 5 アブラムそのつまサライとそのおとうとロトおよびそのあつめたるすべて所󠄃有もちものとハランにてたる人衆ひと〴〵たづさへてカナンのゆかんとて遂󠄅つひにカナンのいたれり 6 アブラムその經過󠄃とほりてシケムのところおよびモレの橡樹かしのきいたれり其時そのときにカナンびとその住󠄃すめ
 16㌻ 
7 こゝにヱホバ、アブラムに顯現あらはれてわれなんぢ苗裔すゑ此地このちあたへんといひたまへり彼處かしこにてかれおのれ顯現あらはれたまひしヱホバにだんきづけり 8 かれ其處そこよりベテルのひがしやまうつりてそのてんまくはれ西にしにベテルひがしにアイありき彼處かしこにてかれヱホバにだんきづきヱホバのよべ 9 アブラムなほ進󠄃すゝみみなみ遷󠄇うつれり

10 こゝ饑饉ききんそのにありければアブラム、エジプトに寄寓とゞまらんとて彼處かしこくだれり饑饉ききんそのはなはだしかりければなり 11 かれ近󠄃ちかきたりてエジプトにいらんとするときそのつまサライにいひけるはわれなんぢ美麗うつくし婦󠄃人をんななるを 12 是故このゆえにエジプトびとなんぢときこれかれつまなりといひわれころさんされなんぢをば生存いかしおか 13 請󠄃なんぢわがいもうとなりとしからわれなんぢゆゑによりてやすらかにしてわがいのちなんぢのために生存いき 14 アブラム、エジプトにいたりしときエジプトびとこの婦󠄃をんなはなは美麗うつくしとなせり 15 またパロの大臣だいじんかれかれをパロの前󠄃まへめければ婦󠄃をんな遂󠄅つひにパロのいへめしれられたり 16 こゝおいてパロかれのためにあつくアブラムをあつかひてアブラム遂󠄅つひひつじうししもべしもめ牝牡めを驢馬ろばおよび駱駝らくだおほるにいたれり 17 ときにヱホバ、アブラムのつまサライのゆゑによりておほいなるわざはひてパロとそのいへなやましたまへり 18 パロ、アブラムをめしいひけるはなんぢわれになしたる此事このことなにぞやなんぢ何故なにゆゑかれなんぢつまなるをわれつげざりしや 19 なんぢ何故なにゆゑかれはわがいもうとなりといひしやわれほとんどかれをわがつまにめとらんとせりされなんぢつまこゝにあり挈去つれさるべしと 20 パロすなはかれこと人々ひと〴〵めいじければかれそのつまおよびそのもてすべてもの送󠄃おくりさらしめたり

第13章

1 アブラムそのつまおよびそのもてすべてものともにエジプトをいでみなみのぼれりロトかれともにありき 2 アブラムはなはだ家畜かちく金銀きんぎんとめ 3 かれみなみよりそのたび進󠄃すゝみてベテルにいたりベテルとアイのあひだなるその以前󠄃さきてんまくはりたるところいたれり〘13㌻〙 4 すなはかれはじめ其處そこきづきたるだんのあるところなり彼處かしこにアブラム、ヱホバのよべ
 17㌻ 
5 アブラムとともゆきしロトもひつじうしおよびてんまくもて 6 その彼等かれらのせともをらしむることあたはざりき彼等かれらその所󠄃有もちものおほかりしによりともることをざりしなり 7 斯有かゝりしかばアブラムの家畜かちく牧者ぼくしやとロトの家畜かちく牧者ぼくしやあひだ競爭あらそひありきカナンびととペリジびと此時このときその居住󠄃すめ 8 アブラム、ロトにいひけるは我等われら兄弟きやうだいひとなれば請󠄃われなんぢあひだおよびわが牧者ぼくしやなんぢ牧者ぼくしやあひだ競爭あらそひあらしむるなか 9 みななんぢ前󠄃まへにあるにあらずや請󠄃われはなれよなんぢもしひだりにゆかばわれみぎにゆかん又󠄂またなんぢみぎにゆかばわれひだりにゆかんと 10 こゝおいてロトあげてヨルダンのすべての低地くぼち瞻望󠄇のぞみけるにヱホバ、ソドムとゴモラとをほろぼたまはざりし前󠄃さきなりければゾアルにいたるまであまねく潤澤うるほひてヱホバのそのごとくエジプトのごとくなりき 11 ロトすなはちヨルダンの低地くぼちこと〴〵えらみとりてひがしうつれりかく彼等かれら彼此たがひわかれたり 12 アブラムはカナンの住󠄃すめ又󠄂またロトは低地くぼち諸邑まち〳〵住󠄃そのてんまく遷󠄇うつしてソドムにいたれり 13 ソドムのひとあしくしてヱホバの前󠄃まへおほいなる罪人つみびとなりき

14 ロトのアブラムにほかれしのちヱホバ、アブラムにいひたまひけるはなんぢあげなんぢところより西東にしひがしきたみなみ瞻望󠄇のぞ 15 おほよなんぢ所󠄃ところわれこれながなんぢなんぢすゑあたふべし 16 われなんぢ後裔すゑ塵沙すなごとくなさんもしひと塵沙すなかぞふることをなんぢ後裔すゑかぞへらるべし 17 なんぢ起󠄃たちたてよこその巡󠄃めぐるべしわれこれなんぢあたへんと 18 アブラム遂󠄅つひてんまく遷󠄇うつしてきたりヘブロンのマムレのかしばやし住󠄃彼處かしこにてヱホバにだんきづけり

第14章

1 當時そのときシナルのわうアムラペル、エラサルのわうアリオク、エラムのわうケダラオメルおよびゴイムのわうテダル 2 ソドムのわうベラ、ゴモラのわうビルシア、アデマのわうシナブ、ゼボイムのわうセメベルおよびベラ(すなはいまのゾアル)のわうたゝかひをなせり
 18㌻ 
3 是等これらの五にんわうみな結合むすびあひてシデムのたにいたれり其處そのところいま鹽海しほうみなり 4 彼等かれらは十二ねんケダラオメルにつか第十三年じふさんねんめそむけり 5 第十四年じふよねんめにケダラオメルおよびかれともなる王等わうたちきたりてアシタロテカルナイムのレパイムびと、ハムのズジびと、シヤベキリアタイムのエミびと 6 およびセイルざんのホリびとうち曠野あらのほとりなるエルパランにいたれ〘14㌻〙 7 彼等かれらかへりてエンミシパテ(すなはいまのカデシ)にいたりアマレクびとくにこと〴〵うち又󠄂またハザゾンタマルに住󠄃すめるアモリびとうて 8 こゝにソドムのわうゴモラのわうアデマのわうゼボイムのわうおよびベラ(すなはいまのゾアル)のわういでてシデムのたににて彼等かれらたゝかひをまじへたり 9 すなはかのにん王等わうたちエラムのわうケダラオメル、ゴイムのわうテダル、シナルのわうアムラペル、エラサルのわうアリオクのにんたゝかへり 10 シデムのたにには地瀝靑ちやんあなおほかりしがソドムとゴモラの王等わうたちにげ其處そこおちいりぬ其餘そのほかものやま遁逃󠄄のがれたり 11 こゝおい彼等かれらソドムとゴモラのすべてものそのすべて食󠄃しよくれうとりれり 12 彼等かれらアブラムのをひロトとそのものとりされかれソドムに住󠄃すみたればなり

13 こゝ遁逃󠄄者のがれたるものきたりてヘブルびとアブラムにこれつげたりときにアブラムはアモリびとマムレのかしばやし住󠄃すめりマムレはエシコルの兄弟きやうだい又󠄂またアネルの兄弟きやうだいなり是等これらはアブラムと契約けいやくむすべるものなりき 14 アブラムその兄弟きやうだいとりこにせられしをきゝしかばそのじゆくれんしたるいへ三百十八にん率󠄃ひきゐてダンまで追󠄃おひいたり 15 その家臣けらい分󠄃わかちてじやうじて彼等かれら彼等かれら擊破うちやぶりてダマスコのひだりなるホバまで彼等かれら追󠄃おひゆけり 16 アブラムかくすべてもの奪回とりかへまたその兄弟きやうだいロトとそのものおよび婦󠄃人をんな人民たみ取回とりかへせり

 19㌻ 
17 アブラム、ケダラオメルおよびかれともなる王等わうら擊破うちやぶりてかへれるときソドムのわうシヤベのたにすなはいまわうたに)にてかれ迎󠄃むかへたり 18 ときにサレムのわうメルキゼデク、パンとさけ携出もちいだせりかれ至高いとたかかみ祭司さいしなりき 19 かれアブラムをしゆくしていひけるはねがはくは天地てんちぬしなる至高いとたかきかみアブラムを祝福めぐみたまへ 20 ねがはくはなんぢてきなんぢわたしたまひし至高いとたかきかみ稱譽ほまれあれとアブラムすなはかれそのすべてもの什分󠄃じうぶんいちおくれり 21 こゝにソドムのわうアブラムにいひけるはひとわれあたものなんぢれと 22 アブラム、ソドムのわういひけるはわれ天地てんちぬしなる至高いとたかかみヱホバをさし 23 一本ひとすじいとにても鞋帶くつひもにてもすべなんぢ所󠄃屬ものわれとらざるべしおそらくはなんぢわれアブラムをとましめたりといは 24 たゞ少者わかものすで食󠄃くらひたるものおよびわれともゆきひとアネル、エシコルおよびマムレの分󠄃ぶんのぞくべし彼等かれらには彼等かれら分󠄃ぶんとらしめよ

第15章

1 是等これらことのちヱホバのことば異象まぼろしうちにアブラムにのぞみいはくアブラムよおそるるなかれわれなんぢ干櫓たてなりなんぢたまものはなはだおほいなるべし〘15㌻〙 2 アブラムいひけるはしゆヱホバよなにわれあたへんとしたまふやわれなくしてこのダマスコのエリエゼルいへ相續人あとつぎなり 3 アブラム又󠄂またいひけるはなんぢたねわれにたまはずわれいへわが嗣子よつぎとならんとすと 4 ヱホバのことばかれにのぞみていはこのものなんぢ嗣子よつぎとなるべからずなんぢよりいづものなんぢ嗣子よつぎとなるべしと 5 かくてヱホバかれそとたづさいだしていひたまひけるはてん望󠄇のぞみてほしかずるかをよと又󠄂またかれいひたまひけるはなんぢ子孫しそんかくのごとくなるべしと 6 アブラム、ヱホバをしんずヱホバこれをかれとなしたまへり 7 又󠄂またかれいひたまひけるはわれ此地このちなんぢあたへてこれたもたしめんとてなんぢをカルデアのウルより導󠄃みちびいだせるヱホバなり
 20㌻ 
8 かれいひけるはしゆヱホバよわれいかにしてわれこれたもつことをるべきや 9 ヱホバかれいひたまひけるはさんさいうしさんさい山羊やぎさんさい牡羊をひつじやまばとおよびわか鴿いへばとわがためにれと 10 かれすなは是等これらみなとりこれなかよりそのさきたるものおの〳〵相對あひむかはしめておけたゞとりさかざりき 11 鷙鳥あらきとりその死體しかばねうへくだときはアブラムこれおひはらへり

12 かくころアブラムふかねむりしがそのおほい暗󠄃くらきをおぼえておそれたり 13 ときにヱホバ、アブラムにいひたまひけるはなんぢたしかるべしなんぢ子孫しそん他人ひとくに旅人たびゞととなりてその人々ひと〴〵服󠄃事つかへん彼等かれら四百ねんのあひだこれなやまさん 14 又󠄂またその服󠄃事つかへたる國民くにたみわれこれさばかんそののち彼等かれらおほいなる財貨たからたづさへていで 15 なんぢ安然やすらかなんぢ父󠄃祖せんぞ所󠄃ところにゆかんなんぢ遐齡よきよはひいたりてはうむらるべし 16 だいおよびて彼等かれらこゝ返󠄄かへりきたらんはアモリびとあくいま貫盈みたざればなり 17 かくいり黑暗󠄃くらやみとなりしときけむり火焔ほのほいづかまどその切剖きりさきたるものなか通󠄃過󠄃とほれ 18 このにヱホバ、アブラムと契約けいやくをなしていひたまひけるはわれ此地このちをエジプトのかはよりかの大河おほかはすなはちユフラテかはまでなんぢ子孫しそんあた 19 すなはちケニびとケナズびとカデモニびと 20 ヘテびとペリジびとレパイムびと 21 アモリびとカナンびとギルガシびとヱブスびとこれなり

第16章

1 アブラムのつまサライ子女こどもうまざりきかれ一人ひとり侍女つかへめありしがエジプトびとにしてそのをハガルといへ 2 サライ、アブラムにいひけるはよヱホバわがむことをとゞめたまひければ請󠄃侍女つかへめ所󠄃ところわれかれよりして子女こどもることあらんとアブラム、サライのことばきゝいれたり 3 アブラムのつまサライその侍女つかへめなるエジプトびとハガルをとりこれそのをつとアブラムにあたへてつまとなさしめたりこれはアブラムがカナンのじふねん住󠄃みたるのちなりき〘16㌻〙 4 こゝにおいてアブラム、ハガルの所󠄃ところるハガル遂󠄅つひはらみければおのれはらめるをその女主によしゆ藐視みさげたり
 21㌻ 
5 サライ、アブラムにいひけるはわがかうむれる害󠄅がいなんぢすべしわれわが侍女つかへめなんぢふところあたへたるにかれおのれはらめるをわれ藐視みさねがはくはヱホバわれなんぢあひだことさばきたまへ 6 アブラム、サライにいひけるはなんぢ侍女つかへめなんぢうちにありなんぢよしゆる所󠄃ところかれすべしサライすなはかれくるしめければかれサライのかほ避󠄃さけ逃󠄄にげたり

7 ヱホバの使者つかひ曠野あらのいづみかたはらすなはちシユルのみちにあるいづみかたはらにてかれ遭󠄃ひて 8 いひけるはサライの侍女つかへめハガルよなんぢ何處いずこよりきたれるや又󠄂また何處いずこゆくかれいひけるはわれ女主によしゆサライのかほをさけて逃󠄄にぐるなり 9 ヱホバの使者つかひかれいひけるはなんぢ女主によしゆもと返󠄄かへそのまかすべし 10 ヱホバの使者つかひ又󠄂またかれひけるはわれおほいなんぢ子孫しそんそのかず衆多おほくしてかぞふることあたはざらしめん 11 ヱホバの使者つかひ又󠄂またかれいひけるはなんぢはらめり男子をとこのこまんそのをイシマエル(神聽知かみきこしめす)となづくべしヱホバなんぢ艱難くるしみ聽知きこしめしたまへばなり 12 かれ野驢馬のろばごとひととならんそのすべてひとてきすべてひとはこれにてきすべしかれそのすべて兄弟きやうだいひがし住󠄃すまんと 13 ハガルおのれさとしたまへるヱホバのをアタエルロイ(なんぢたまふかみなり)とよべりかれいふわれたるのちなほいくるやと 14 こゝをもてそのゐどはベエルラハイロイ(われいくもの)とばるこれはカデシとベレデのあひだにあり

15 ハガル、アブラムの男子をのこめりアブラム、ハガルのめるそのをイシマエルとづけたり 16 ハガル、イシマエルをアブラムにめるときアブラムは八十六さいなりき

第17章

1 アブラム九十九さいときヱホバ、アブラムにあらはれてこれいひたまひけるはわれ全󠄃ぜんのうかみなりなんぢわが前󠄃まへあゆみて完全󠄃まつたかれよ 2 われわが契約けいやくわれなんぢあひだおほいなんぢ子孫しそんまさ 3 アブラムすなは俯伏ふしたりかみ又󠄂またかれつげいひたまひけるは
 22㌻ 
4 われなんぢとわが契約けいやくなんぢ衆多おほく國民くにたみ父󠄃ちゝとなるべし 5 なんぢこののちアブラムとぶべからずなんぢをアブラハム(衆多おほくひと父󠄃ちゝ)とよぶべしわれなんぢ衆多おほく國民くにたみ父󠄃ちゝなせばなり 6 われなんぢをして衆多おほく子孫しそんせしめ國々くに〴〵たみなんぢより起󠄃おこさん王等わうたちなんぢよりいづべし 7 われわが契約けいやくわれなんぢおよびなんぢのち世々よゝ子孫しそんとのあひだたて永久とこしなへ契約けいやくとなしなんぢおよびなんぢのち子孫しそんかみとなるべし〘17㌻〙 8 われなんぢなんぢのち子孫しそんこのなんぢ寄寓やどれすなはちカナンの全󠄃地ぜんちあたへて永久とこしなへ產業もちものとなさんしかしてわれ彼等かれらかみとなるべし

9 かみまたアブラハムにいひたまひけるはされなんぢなんぢのち世々よゝ子孫しそんわが契約けいやくまもるべし 10 汝等なんぢらうち男子をとこのこみな割󠄅禮かつれいうくべしこれわれ汝等なんぢらおよびなんぢのち子孫しそんあひだ契約けいやくにして汝等なんぢらまもるべきものなり 11 汝等なんぢらそのやうかは割󠄅きるべしこれわれ汝等なんぢらあひだ契約けいやくしるしなり 12 汝等なんぢら代々よゝ男子をとこのこいへうまれたるもの異邦人ことくにびとよりかねにてかひたるなんぢ子孫しそんならざるものみなうまれて八日やうかいたらば割󠄅禮かつれいうくべし 13 なんぢいへうまれたるものなんぢかねにてかひたるもの割󠄅禮かつれいうけざるべからずかくわが契約けいやく汝等なんぢらにありて永久とこしなへ契約けいやくとなるべし 14 割󠄅禮かつれいうけざる男兒をのこすなはそのやうかは割󠄅きらざるものわが契約けいやくやぶるによりて其人そのひとそのたみうちよりたゝるべし

15 かみ又󠄂またアブラハムにいひたまひけるはなんぢつまサライはそのをサライとぶべからずそのをサラとなすべし 16 われかれめぐかれよりしてまたなんぢ一人ひとり男子をとこのこさづけんわれかれめぐかれをして諸邦くに〴〵たみはゝとならしむべしもろ〳〵たみ王等わうたちかれよりいづべし 17 アブラハム俯伏ふしわら其心そのこゝろいひけるは百歳ひゃくさいひといかうまるゝことあらんや又󠄂またサラは九十さいなればいかうむことをなさんやと 18 アブラハム遂󠄅つひかみにむかひてねがはくはイシマエルのなんぢのまへに生存いきながらへんことをと 19 かみいひたまひけるはなんぢつまサラかならうまなんぢそのをイサクとなづくべしわれかれおよびそののち子孫しそん契約けいやくたて永久とこしなへ契約けいやくとなさん
 23㌻ 
20 又󠄂またイシマエルのことつきてはわれなんぢねがひきゝたりわれかれめぐみて多衆おほく子孫しそんさしめおほいかれ子孫しそんすべしかれ十二の君王きみうまわれかれおほいなる國民くにたみとなすべし 21 されどわが契約けいやくわれ翌󠄃年あくるとしいまごろサラがなんぢうま所󠄃ところのイサクとこれたつべし

22 かみアブラハムとものいふことをかれはなれてのぼたまへり 23 こゝおいてアブラハムかみおのれいひたまへるごとこのそのイシマエルとすべそのいへうまれたるものおよびすべそのかねにてかひたるものすなはちアブラハムのいへひとうちなるすべてをとこひききたりてそのやうかは割󠄅きりたり 24 アブラハムはそのやうかは割󠄅きられたるとき九十九さい 25 そのイシマエルはそのやうかは割󠄅きられたるとき十三さいなりき 26 このアブラハムとそのイシマエル割󠄅禮かつれいうけたり 27 又󠄂またそのいへひといへうまれたるものかねにて異邦人ことくにびとよりかひたるものみなかれとともに割󠄅禮かつれいうけたり〘18㌻〙

第18章

1 ヱホバ、マムレのかしばやしにてアブラハムに顯現あらはれたまへりかれあつ時刻ころてんまくいりくちしゐたりしが 2 あげたるにさんにんひとその前󠄃まへたてかれてんまくいりくちよりはしゆきこれ迎󠄃むか 3 かゞめていひけるはしゆわれもしなんぢのまへにめぐみたるならば請󠄃しもべ通󠄃とほ過󠄃すごすなかれ 4 請󠄃少許すこしみづとりきたらしめ汝等なんぢらあし濯󠄄あらひてした休憩やすみたまへ 5 われひとくちのパンをとりきたらん汝等なんぢらこゝろなぐさめてしかのち過󠄃すぎゆくべし汝等なんぢらしもべ所󠄃ところきたればなり彼等かれらなんぢいへるごとく 6 こゝにおいてアブラハムてんまく急󠄃いそぎいりてサラのもといたりていひけるは速󠄃すみやかこまかきこなさんセヤをこねてパンをつくるべしと 7 しかしてアブラハムうしむれはせゆきこうしやはらかにしてものりきたりて少者わかものわたしければ急󠄃いそぎてこれ調理とゝの 8 かくてアブラハム牛酪ぎうらく牛乳󠄃ちちおよびその調理とゝのへたるこうしとり彼等かれらのまへにそなしたにてそのかたはらたて彼等かれらすなは食󠄃くらへり

 24㌻ 
9 彼等かれらアブラハムにいひけるはなんぢつまサラは何處いずくにあるやかれてんまくにあり 10 その一人ひとり明年あくるとしいまごろわれかならなんぢ返󠄄かへるべしなんぢつまサラに男子をとこのこあらんサラそのうしろなるてんまくいりくちにありてきゝゐたり 11 そも〳〵アブラハムとサラは年邁としすゝおいいたるものにしてサラには婦󠄃人をんなつねことすでやみたり 12 是故このゆえにサラこゝろわらひていひけるはわれ老衰おとろしゆまたおいたるのちなればわれたのしみあるべけんや 13 ヱホバ、アブラハムにいひたまひけるは何故なにゆゑにサラはわらひてわれおいたればはたしてうむことあらんとふや 14 ヱホバにあにがたことあらんやときいたらばわれさだめたるときなんぢかへるべしサラに男子をとこのこあらんと 15 サラおそれたればうけがはずしてわれわらはずとへりヱホバいひたまひけるはいなやなんぢわらへるなり

16 かくその人々ひと〴〵彼處かしこより起󠄃たちてソドムのかた望󠄇のぞみければアブラハム彼等かれら送󠄃おくらんとてともゆけ 17 ヱホバたまひけるはわれなさんとすることをアブラハムにかくすべけんや 18 アブラハムはかならおほいなるつよ國民くにたみとなりててんたみみなかれよりさいはひうるいたるべきにあらずや 19 われかれをしてそののち兒孫こどもら家族かぞくとにめいじヱホバの道󠄃みちまもりて公儀たゞしき公道󠄃おほやけおこなはしめんためかれをしれりこれヱホバ、アブラハムにそのかつかれつきいひことおこなはんためなり 20 ヱホバ又󠄂またいひたまふソドムとゴモラの號呼さけびおほいなるに又󠄂またそのつみはなはおもきより 21 われいまくだりてその號呼さけびわれいたれるごとくかれら全󠄃まつたおこなひたりしやをんとすもししからずばわれるにいたらんと
〘19㌻〙
22 その人々ひと〴〵其處そこよりかへしてソドムにおもむけりアブラハムはほヱホバのまへにたて 23 アブラハム近󠄃ちかよりていひけるはなんぢ義者たゞしきものをも惡者あしきものともほろぼしたまふや 24 もしまちうちに五十にん義者たゞしきものあるもなんぢ其處そのところほろぼしそのうちの五十にん義者たゞしきもののためにこれをゆるしたまはざるや 25 なんぢかくごとなし義者たゞしきもの惡者あしきものともころすがごときはこれあるまじきことなり又󠄂また義者たゞしきもの惡者あしきもの均等ひとしくするがごときもあるまじきことなりてんさばもの公儀たゞしきおこなべきにあらずや
 25㌻ 
26 ヱホバいひたまひけるはわれもしソドムにおいまちうちに五十にん義者たゞしきものその人々ひと〴〵のために其處そのところこと〴〵ゆるさん 27 アブラハムこたへていひけるはわれちり灰󠄃はひなれどもあへわがしゆ言上まう 28 もし五十にん義者たゞしきものうちにんかけたらんになんぢにんかけたるためにまちこと〴〵ほろぼしたまふやヱホバいひたまひけるはわれもし彼處かしこに四十五にんほろぼさゞるべし 29 アブラハム又󠄂またかさねてヱホバに言上まうしていひけるはもし彼處かしこに四十にんえなば如何いかんヱホバいひたまふわれ四十にんのためにこれをなさじ 30 アブラハムひけるは請󠄃ふわがしゆいからずしていはしめたまへもし彼處かしこに三十にんえなば如何いかんヱホバいひたまふわれ三十にん彼處かしここれなさ 31 アブラハムわれあへてわがしゆ言上まうもし彼處かしこに二十にんえなば如何いかんヱホバいひたまふわれ二十にんのためにほろぼさじ 32 アブラハム請󠄃ふわがしゆいからずしていま一度ひとたびいはしめたまへもしかしこに十にんえなば如何いかんヱホバいひたまふわれにんのためにほろぼさじ 33 ヱホバ、アブラハムとものいふことを終󠄃をへてゆきたまへりアブラハムおのれの所󠄃ところにかへりぬ

第19章

1 その二個ふたり天使てんのつかひ黄昏ゆふぐれにソドムにいたるロトときにソドムのもんたりしがこれを起󠄃たち迎󠄃むかかうべにさげて 2 いひけるはわがしゆ請󠄃しもべいへのぞあし濯󠄄あらひて宿やどりつとに起󠄃おき途󠄃みち遄征すゝみたまへ彼等かれらいな我等われら街衢ちまた宿やどらんと 3 されかたしひければ遂󠄅つひかれ所󠄃ところのぞみてそのいへるロトすなは彼等かれらのためにふるまひまうたねいれぬパンをやき食󠄃くらはしめたり 4 かくいまいねざる前󠄃まへまち人々ひと〴〵すなはちソドムのひとおいたるもわかきも諸共もろとも四方八方よもやもよりきたたれるたみみなそのいへかこ 5 ロトをよびこれいひけるは今夕このゆふべなんぢつきたるひと何處いずくにをるや彼等かれら我等われら所󠄃ところたづさいだ我等われらこれらん 6 ロトいりくちいでそのうしろ彼等かれら所󠄃もといたりて 7 いひけるは請󠄃兄弟きやうだいあしことすなかれ
 26㌻ 
8 われいまをとこしら二人ふたりむすめあり請󠄃われこれたづさいで爾等なんぢらよしゆるごとこれになせよたゞこの人等ひとたちすでわがいへかげいりたればなにをもこれになすなかれ〘20㌻〙 9 彼等かれらなんぢ退󠄃しりぞ又󠄂またいひけるは此人このひときたやどれるなるにつね士師さばきびととならんとすされ我等われら彼等かれらくはふるよりもおほくの害󠄅がいなんぢくはへんと遂󠄅つひ彼等かれらはげしく其人そのひとロトにせま前󠄃すゝみよりてそのやぶらんとせしに 10 かの二人ふたりそののばしロトをいへうちひきいれてその 11 いへいりくちにをる人衆ひと〴〵をしておほいなるもちひさきともくらましめければ彼等かれら遂󠄅つひいりくちたづぬるに困憊つかれたり

12 かく二人ふたりロトにいひけるはほかなんぢぞくするものありやなんぢ婿むこむすこむすめおよびすべまちにをりてなんぢぞくするものこの所󠄃ところよりたづさいづべし 13 此處このところ號呼さけびヱホバの前󠄃まへおほいになりたるにより我等われらこれほろぼさんとすヱホバ我等われら遣󠄃つかはしてこれほろぼさしめたまふ 14 ロトいでそのむすめめと婿むこつげいひけるはヱホバがまちほろぼしたまふべければ爾等なんぢら起󠄃たち此處このところいでよとされ婿むここれ戲言たはふれごと視爲みなせ 15 あかつきおよび天使てんのつかひロトをうながしていひけるは起󠄃たちこゝなるなんぢつま二人ふたりむすめたづさへよおそらくはなんぢまちあくとともにほろぼされん 16 しかるにかれ遲延ためらひしかば二人ふたりそのそのつまその二人ふたりむすめとりこれ導󠄃みちびいだまちそとおけりヱホバかくかれ仁慈あはれみくはへたまふ 17 すでこれ導󠄃みちびいだしてその一人ひとりいひけるは逃󠄄遁のがれなんぢ生命いのちすくうしろ回顧󠄃かへりみるなかれ低地くぼちうちとゞまるなかれやまのがれよしからずばなんぢほろぼされん 18 ロト彼等かれらいひけるはわがしゆ請󠄃かくしたまふなかれ 19 しもべなんぢのまへにめぐみたりなんぢおほいなる仁慈あはれみわれほどこしてわが生命いのちすくひたまふわれやまのがるあたはずおそらくは災害󠄅わざはひおよびてしぬるにいたらん 20 このまちにげゆくに近󠄃ちかくしてかつちひさわれをして彼處かしこのがれしめよしからばわが生命いのち全󠄃まつたからんこれちひさまちなるにあらずや 21 天使てんのつかひこれにいひけるはわれ此事このことつきてもまたなんぢねがひいれたればなんぢふところのまちほろぼさじ
 27㌻ 
22 急󠄃いそぎて彼處かしこのがれよなんぢ彼處かしこいたるまではわれ何事なにごとをもなすずとこれよりそのまちはゾアル(ちひさし)とよば

23 ロト、ゾアルにいたれるときうへのぼれり 24 ヱホバ硫黄いわうをヱホバの所󠄃ところよりすなはてんよりソドムとゴモラにふらしめ 25 そのまち低地くぼちそのまち居民ひとおよびおふるところのものこと〴〵ほろぼしたまへり 26 ロトのつまうしろ回顧󠄃かへりみたればしほはしらとなりぬ 27 アブラハムその朝󠄃あさつと起󠄃おきそのかつてヱホバの前󠄃まへたちたるところいた 28 ソドム、ゴモラおよび低地くぼち全󠄃面おもて望󠄇のぞるにその烟燄けむりかまけむりのごとくに騰上たちのぼれり
〘21㌻〙
29 かみ低地くぼちまちほろぼしたまふときすなはちロトの住󠄃すめまちほろぼしたまふときあたかみアブラハムを眷念おもひかくその滅亡ほろびうちよりロトをいだしたまへり

30 かくてロト、ゾアルにることをおそれたればその二人ふたりむすめともにゾアルをいでのぼりてやまその二人ふたり女子むすめとともに巖穴󠄄いはや住󠄃すめ 31 こゝ長女あね季女いもとにいひけるは我等われら父󠄃ちゝいたり又󠄂また此地このちには我等われらあひ道󠄃みちひとあらず 32 され我等われら父󠄃ちゝさけのませてとも父󠄃ちゝよりんと 33 遂󠄅つひそのよる父󠄃ちゝさけのま長女あねむすめいりその父󠄃ちゝともいねたりしかるにロトはむすめ起󠄃臥おきふししらざりき 34 翌󠄃日あくるひ長女あねむすめ季女おとむすめいひけるはわれ昨夜きのふのよわが父󠄃ちゝいねたり我等われらこの又󠄂また父󠄃ちゝさけをのませんなんぢいりともいねよわれらの父󠄃ちゝよりることをえんと 35 すなはそのまた父󠄃ちゝさけをのませ季女おとむすめ起󠄃たち父󠄃ちゝともいねたりロトまたむすめ起󠄃臥おきふししらざりき 36 かくロトの二人ふたりむすめその父󠄃ちゝによりてはらみたり 37 長女あねむすめそのをモアブとなづすなはいまのモアブびと先祖せんぞなり 38 季女おとむすめまたそのをベニアンミとなづすなはいまのアンモニびと先祖せんぞなり
 28㌻ 

第20章

1 アブラハム彼處かしこよりうつりてみなみいたりカデシとシユルのあひだりゲラルに寄留とゞまれ 2 アブラハムそのつまサラをわがいもうとなりといひしかばゲラルのわうアビメレクびと遣󠄃つかはしてサラをめしいれたり 3 しかるにかみよるゆめにアビメレクにのぞみてこれいひたまひけるはなんぢそのめしいれたる婦󠄃人をんなのためにしぬるなるべしかれをつとあるものなればなり 4 アビメレクいまかれ近󠄃ちかづかざりしかばしゆなんぢたゞしたみをもころしたまふや 5 かれわれこれはわがいもうとなりといひしにあらずや又󠄂また婦󠄃をんなみずからかれはわがあになりといひたりわれ全󠄃まつたこゝろ潔󠄄いさぎよをもてこれをなせり 6 かみ又󠄂またゆめこれいひたまひけるはしかわれなんぢ全󠄃まつたこゝろをもてこれをなせるをりたればわれなんぢとゞめてつみわれをかさしめざりきかれふるるをゆるさざりしはこれがためなり 7 されかれつまかへかれ預言者よげんしやなればなんぢのためにいのなんぢをして生命いのちたもたしめんなんぢもしかへさずばなんぢなんぢぞくするものみなかならずしぬるべきをるべし

8 こゝおいてアビメレクその朝󠄃あさつと起󠄃おき臣僕しもべこと〴〵此事このことみなかたきかせければ人々ひと〴〵いたおそれたり 9 かくてアビメレク、アブラハムをめしこれいひけるはなんぢ我等われらなにすやわれなにあしことなんぢになしたればなんぢおほいなるつみわれとわがくにかうむらしめんとせしかなんぢなすべからざる所󠄃爲わざわれしたり〘22㌻〙 10 アビメレク又󠄂またアブラハムにいひけるはなんぢなに此事このことなしたるや 11 アブラハムいひけるはわれ此處このところはかならずかみおそれざるべければわがつまのためにひとわれころさんとおもひたるなり 12 又󠄂またわれまことにわがいもうとなりかれはわが父󠄃ちゝにしてわがはゝにあらざるが遂󠄅つひわがつまとなりたるなり 13 かみわれをしてわが父󠄃ちゝいへはなれて遊󠄃周󠄃ゆきめぐらしめたまへるときあたりてわれかれなんぢ我等われらいたところにてわれなんぢあになりとこれなんぢわれほどこめぐみなりといひたり 14 アビメレクすなはひつじうししもべしもめとりてアブラハムにあたそのつまサラこれかへせり
 29㌻ 
15 しかしてアビメレクいひけるはわがなんぢのまへにありなんぢこのむところに住󠄃 16 又󠄂またサラにいひけるはわれなんぢあにぎんせんまいあたへたりこれなんぢおよびすべてひとにありし事等ことどもにつきてなんぢおほものなりかくなんぢ償贖つくのひたり 17 こゝおいてアブラハムかみいのりければかみアビメレクとそのつまおよびしもめいやしたまひて彼等かれらむにいたる 18 ヱホバさきにはアブラハムのつまサラのゆゑをもてアビメレクのいへものたいをことごとくとぢたまへり

第21章

1 ヱホバそのいひごとくサラを眷顧󠄃かへりみたまふすなはちヱホバそのつげしごとくサラにおこなひたまひしかば 2 サラ遂󠄅つひはらかみのアブラハムにつげたまひし期日きにちおよびてとしおいたるアブラハムに男子をとこのこうめ 3 アブラハムそのうまれたるすなはちサラがおのれうめをイサクとなづけたり 4 アブラハムかみめいじたまひしごと八日やうかそのイサクに割󠄅禮かつれいおこなへり 5 アブラハムはそのイサクのうまれたるときひやくさいなりき 6 サラいひけるはかみわれわらはしめたまふものみなわれとともにわらはん 7 又󠄂またいひけるはたれかアブラハムにサラ子女こども乳󠄃ちゝのましむるにいたらんといひしものあらんしかるかれとしおゆるにおよびて男子をとこのこうみたりと

8 さてその長育そだちて遂󠄅つひ乳󠄃はなるイサクの乳󠄃はなるゝにアブラハムおほいなる饗宴ふるまひまうけたり 9 ときにサラ、エジプトびとハガルがアブラハムにうみたるわらふを 10 アブラハムにいひけるはこのしもめその遂󠄅出おひいだこのしもめわがイサクととも嗣子よつぎとなるべからざるなりと 11 アブラハムそののためにいた此事このことうれへたり 12 かみアブラハムにいひたまひけるは童兒わらべのため又󠄂またなんぢしもめのためにこれうれふるなかれサラがなんぢいふところのことばこと〴〵これはイサクよりいづものなんぢすゑとなへらるべければなり〘23㌻〙 13 又󠄂またしもめなんぢたねなればわれこれひとつくにとなさん 14 アブラハム朝󠄃あさつと起󠄃おきてパンとみづ革嚢かはぶくろとをりハガルにあたへてこれそのかた負󠄅おはそのたづさへてさらしめければかれゆきてベエルシバの曠野あらの躑躅さまよひしが
 30㌻ 
15 革嚢かはぶくろみづ遂󠄅つひつきたれば灌木した 16 わがしぬるをるに忍󠄄しのびずといひてはるかに箭逹やごろへだてゝこれむかしぬかく相嚮あひむかひてこゑをあげて 17 かみその童兒わらべこゑきゝたまふかみ使つかひすなはてんよりハガルをよびこれいひけるはハガルよ何事なにごとぞやおそるるなかれかみ彼處かしこにをる童兒わらべこゑきゝたまへり 18 起󠄃たち童兒わらべ起󠄃おここれなんぢいだくべしわれこれおほいなるくにとなさんと 19 かみハガルのひらきたまひければみづゐどあるをゆきて革嚢かはぶくろみづみた童兒わらべのましめたり 20 かみ童兒わらべともいまかれ遂󠄅つひ成長ひとゝな曠野あらのりて射者ゆみいるものとなり 21 パランの曠野あらの住󠄃すめそのはゝかれのためにエジプトのくによりつま迎󠄃むかへたり

22 當時このときアビメレクとその軍勢ぐんぜいかしらピコル、アブラハムにかたりいひけるはなんぢ何事なにごとなすにもかみなんぢとともにいま 23 されなんぢわれとわがとわがまごいつはりをなさゞらんことをいまこゝかみをさしてわれちか厚情󠄃あつきこゝろをもてなんぢをあつかふごとくなんぢわれこのなんぢ寄留とゞまとになすべし 24 アブラハムわれちかはん 25 アブラハム、アビメレクの臣僕しもべみづゐどうばひたることにつきてアビメレクをせめければ 26 アビメレクわれたれ此事このことなせしをしらなんぢわれつげしこと又󠄂またわれ今日けふまできゝしことなし 27 アブラハムすなはひつじうしとりこれをアビメレクにあたかく二人ふたり契約けいやくむすべり 28 アブラハムこひつじなゝつ分󠄃わかおきければ 29 アビメレク、アブラハムになんぢこのなゝつこひつじ分󠄃わかちおくはなんのためなるや 30 アブラハムいひけるはなんぢわがよりこのなゝつこひつじりてこれゐどほりたる證據あかしとならしめよと彼等かれら二人ふたり彼處かしこちかひしによりて 31 其處そのところをベエルシバ(盟約ちかひゐど)となづけたり 32 かく彼等かれらベエルシバにて契約けいやくむすびアビメレクとその軍勢ぐんぜいかしらピコルは起󠄃たちてペリシテびとくにかへりぬ 33 アブラハム、ベエルシバにやなぎ永遠󠄄とこしなへいまかみヱホバの彼處かしこよべ
 31㌻ 
34 かくしてアブラハムひさしくペリシテびと留寄とゞまりぬ

第22章

1 是等これらことのちかみアブラハムをこゝろみんとてこれをアブラハムよとよびたまふかれわれこゝにあり 2 ヱホバいひたまひけるはなんぢなんぢあいする獨子ひとりごすなはちイサクをたづさへてモリアのいたりわがなんぢしめさんとする彼所󠄃かしこやまおいかれ燔祭はんさいとしてさゝぐべし〘24㌻〙 3 アブラハム朝󠄃あさつと起󠄃おきその驢馬ろばくらおき二人ふたり少者わかものそのイサクをたづさかつ燔祭はんさい柴薪たきぎりて起󠄃たちかみおのれしめしたまへるところにおもむきけるが 4 三日みつかにおよびてアブラハムあげはるかそのところたり 5 こゝおいてアブラハムその少者わかものいひけるはなんぢ驢馬ろばとともにこゝとゞまわれ童子わらべ彼處かしこにゆきて崇拜をがみまたなんぢかへら 6 アブラハムすなは燔祭はんさい柴薪たきぎとりそのイサクに負󠄅おはかたなとり二人ふたりともにゆけ 7 イサク父󠄃ちゝアブラハムにかたり父󠄃ちゝよとかれこたへわれここにありといひければイサクすなは柴薪たきぎされ燔祭はんさいこひつじ何處いづくにあるや 8 アブラハムいひけるはかみみづか燔祭はんさいこひつじそなへたまはんと二人ふたりとも進󠄃すゝみゆきて

9 遂󠄅つひかみかれしめしたまへるところいたれりこゝにおいてアブラハム彼處かしこだんきづ柴薪たきぎ臚列ならそのイサクをしばりてこれだん柴薪たきぎうへせたり 10 かくしてアブラハムかたなりてそのころさんとす 11 ときにヱホバの使者つかひてんよりかれよびてアブラハムよアブラハムよとへりかれわれこゝにあり 12 使者つかひいひけるはなんぢ童子わらべつくるなかれまたなにをもかれなすべからずなんぢすなはなんぢ獨子ひとりごをもわがためにをしまざればわれいまなんぢかみおそるるをると 13 こゝにアブラハムあげればうしろ牡綿羊をひつじありてそのつの林叢やぶかゝりたりアブラハムすなはゆきその牡綿羊をひつじとらこれそのかはり燔祭はんさいとしてさゝげたり 14 アブラハムそのところをヱホバエレ(ヱホバ預備そなへたまはん)となづこれより今日こんにちもなほ人々ひと〴〵やまにヱホバ預備そなへたまはんといふ
 32㌻ 
15 ヱホバの使者つかひふたゝびてんよりアブラハムをよび 16 いひけるはヱホバ諭󠄄さとしたまふわれおのれさしちかなんぢこのことなんぢすなはなんぢ獨子ひとりごをしまざりしにより 17 われおほいなんぢめぐ又󠄂またおほいなんぢ子孫しそんしてそらほしごとはまいさごごとくならしむべしなんぢ子孫しそんそのてきもんとら 18 又󠄂またなんぢ子孫しそんによりててんたみみな福祉さいはひべしなんぢわがことば遵󠄅したがひたるによりてなりと 19 かくてアブラハムその少者わかもの所󠄃ところかへみなたちてともにベエルシバにいたれりアブラハムはベエルシバに住󠄃すめ

20 是等これらことのちアブラハムにつぐものありてふミルカまたなんぢ兄弟きやうだいナホルにしたがひてうめ 21 長子あにはウヅそのおとうとはブヅそのつぎはケムエルこれはアラムの父󠄃ちゝなり 22 そのつぎはケセデ、ハゾ、ピルダシ、ヱデラフ、ベトエル 23 ベトエルはリベカをうめこのはちにんはミルカがアブラハムの兄弟きやうだいナホルにうみたるものなり〘25㌻〙 24 ナホルの妾名そばめなはルマといふものまたテバ、ガハム、タハシおよびマアカをうめ

第23章

1 サラ百二十七さいなりきこれすなはちサラのよはひとしなり 2 サラ、キリアテアルバにてしねこれはカナンののヘブロンなりアブラハムいたりてサラのためにかなしかつなけ 3 かくてアブラハムにん前󠄃まへより起󠄃いでてヘテの子孫ひと〴〵かたりていひけるは 4 われ汝等なんぢらうち賓旅たびびとなり寄居者やどれるものなり請󠄃汝等なんぢらうちにてわれ墓地はかどころあたへて所󠄃有もちものとなしわれをしてにんいだはうむることをせしめよ 5 ヘテの子孫ひと〴〵アブラハムにこたへこれ 6 わがしゆ我等われらきゝたまへ我等われらうちにありてなんぢかみごときみなり我等われら墓地はかどころ佳者よきものえらみてなんぢにんはうむ我等われらうち一人ひとりその墓地はかどころなんぢにをしみてなんぢをしてそのにんはうむらしめざるものなかるべし 7 こゝおいてアブラハム起󠄃そのたみヘテの子孫ひと〴〵むかひかゞ 8 しかして彼等かれらかたらひていひけるはもしわれをしてわがにんいだはうむるをせしむること汝等なんぢら意󠄃こゝろならば請󠄃われきゝわがためにゾハルのエフロンにもと
 33㌻ 
9 かれをしてその極端はしもてるマクペラの洞穴󠄄ほらあなわれあたへしめよかれその十分󠄃じふぶんあたひとりこれわれあた汝等なんぢらうちにてわが所󠄃有もちものなる墓地はかどころとなさば 10 ときにエフロン、ヘテの子孫ひと〴〵うちしゐたりヘテびとエフロン、ヘテの子孫ひと〴〵すなはすべそのまちもんものきけ前󠄃まへにてアブラハムにこたへていひけるは 11 わがしゆわれきゝたまへそのわれなんぢあた又󠄂またそのうち洞穴󠄄ほらあなわれこれなんぢあたわれわがたみなる衆人ひと〴〵前󠄃まへにてこれなんぢにあたふなんぢにんはうむ 12 こゝおいてアブラハムそのたみ前󠄃まへかゞめたり 13 しかしてかれそのたみきけ前󠄃まへにてエフロンにかたりていひけるはなんぢもしこれうけがはゞ請󠄃われわれそのあたひなんぢつぐのはんなんぢこれわれよりわれわがにん彼處かしこはうむらん 14 エフロン、アブラハムにこたへいひけるは 15 わがしゆわれきゝたまへかのぎん四百シケルにあたこれわれなんぢあひだあに道󠄃いふたらんやされなんぢにんはうむ 16 アブラハム、エフロンのことばしたがひエフロンがヘテの子孫ひと〴〵きけ前󠄃まへにていひたる所󠄃ところぎんはか商買あきうどうち通󠄃用つうようぎん四百シケルをこれあたへたり

17 マムレの前󠄃まへなるマクペラにるエフロンのそのなか洞穴󠄄ほらあななかその四周󠄃まはりさかひにあるみな 18 ヘテの子孫ひと〴〵前󠄃まへすなはすべそのまちもの前󠄃まへにてアブラハムの所󠄃有もちものさだまりぬ 19 厥後そののちアブラハムそのつまサラをマムレの前󠄃まへなるマクペラの洞穴󠄄ほらあなはうむれりこれすなはちカナンののヘブロンなり〘26㌻〙 20 そのそのうち洞穴󠄄ほらあなはヘテの子孫ひと〴〵これをアブラハムの所󠄃有もちものなる墓地はかどころさだめたり

第24章

1 アブラハムとしすゝみおいたりヱホバすべてことおいてアブラハムをめぐみたまへり 2 こゝにアブラハムそのすべて所󠄃有もちものつかさどそのいへ年邁としよりなるしもべいひけるは請󠄃なんぢわがもゝしたいれ 3 われなんぢをしててんかみかみヱホバをさしちかはしめんすなはなんぢわがともむカナンびとむすめうちよりわがつまめとるなかれ 4 なんぢわが故國くにわがしんぞくいたりてわがイサクのためにつまめと
 34㌻ 
5 しもべかれいひけるはもしをんなわれしたがひて此地このちきたることをこのまざることあらんときわれなんぢかのなんぢ出來いできたりし導󠄃みちびかへるべきか 6 アブラハムかれいひけるはなんぢつゝしみてわが彼處かしこたづさへかへるなかれ 7 てんかみヱホバわれ導󠄃みちびきてわが父󠄃ちゝいへとわがしんぞくはなれしめわれかたわれちかひてなんぢ子孫しそん此地このちあたへんといひたまひしものその使つかひ遣󠄃つかはしてなんぢさきだたしめたまはんなんぢ彼處かしこよりわがつまめとるべし 8 もしをんななんぢしたがきたことこのまざるときなんぢわがこのちかひとかるべしたゝわが彼處かしこたづさへかへるなかれ 9 こゝおいしもべその主人あるじアブラハムのもゝしたいれ此事このことについてかれちかへり

10 かくしもべその主人しゆじん駱駝らくだうちより十頭とを駱駝らくだりていでたてりすなはその主人しゆじんもろ〳〵佳物よきものにとりて起󠄃たちてメソポタミアにきナホルのまちいた 11 その駱駝らくだまちそとにてゐどかたはら跪伏ふさしめたり其時そのとき黄昏ゆふぐれにて婦󠄃女等をんなども水汲みづくみにいづるときなりき 12 かくしてかれいひけるはわが主人しゆじんアブラハムのかみヱホバよねがはくは今日けふわれにそのものあはしめわが主人しゆじんアブラハムに恩惠めぐみほどこたま 13 われこの水井みづゐどかたはらまちひとむすめみづくみ 14 われ童女むすめむかひて請󠄃なんぢかめをかたむけてわれのましめよといはんにかれこたへてわれまたなんぢ駱駝らくだにものましめんといはかれなんぢしもべイサクのためさだたまひしものなるべしさすればわれなんぢわが主人しゆじん恩惠めぐみほどこたまふをらん 15 かれものいふことを終󠄃をふるまへによリベカかめかたにのせていできたるかれはアブラハムの兄弟きやうだいナホルのつまミルカのベトエルにうまれたるものなり 16 その童女むすめみるはなはうつくしくかつ處女をとめにしていまひと適󠄄ゆきしことあらずかれゐどくだそのかめみづみてのぼりしかば 17 しもべはせゆきてこれにあひ請󠄃われをしてなんぢかめより少許すこしみづのましめよといひけるに 18 かれしゆのみたまへといひてすなは急󠄃いそそのかめにおろしてこれにのましめたりしが〘27㌻〙
 35㌻ 
19 のませをはりてなんぢ駱駝らくだのためにもそののみをはるまでみづくみ飽󠄄あかしめん 20 急󠄃いそぎてそのかめみづばちにあけ又󠄂またくまんとてゐどにはせゆきそのすべて駱駝らくだのためにみたり 21 其人そのひとこれつめヱホバがその途󠄃みち幸福さいはひをくだしたまふやいなややをしらんとしてもくたり 22 こゝ駱駝らくだのみをはりしかば其人そのひとおもさ半󠄃はんシケルのきんはな一箇ひとつおもさじふシケルのきん手釧うでわ二箇ふたつをとりて 23 いひけるはなんぢたれむすめなるや請󠄃われつげなんぢ父󠄃ちゝいへ我等われら宿やど隙地ところありや 24 をんなかれいひけるはわれはミルカがナホルにみたるベトエルのむすめなり 25 又󠄂またかれにいひけるはいへにはわら飼草かひばおほくありかつ宿やど隙地ところもあり 26 こゝおい其人そのひとふしてヱホバををが 27 いひけるはわが主人しゆじんアブラハムのかみヱホバは讃美ほむべきかなわが主人しゆじん慈惠みめぐみ眞實まこととをきたまはずわれ途󠄃みちにありしにヱホバわれわが主人しゆじん兄弟きやうだいいへにみちびきたまへり

28 こゝ童女むすめはせゆきそのはゝいへこれことつげたり 29 リベカに一人ひとりあにありそのをラバンといふラバンはせいでゐどにゆきて其人そのひともとにつく 30 すなはちかれはなおよびそのいもうと手釧うでわ又󠄂またそのいもうとリベカが其人そのひとかくわれいへりといふをきゝ其人そのひと所󠄃もといたるにゐどかたはらにて駱駝らくだわきにたちゐたれば 31 これいひけるはなんぢヱホバにめぐまるゝもの請󠄃なんそとにたつやわれいへそなかつ駱駝らくだのために所󠄃ところをそなへたり 32 こゝおい其人そのひといへにいりぬラバンすなはその駱駝らくだ負󠄅わら飼草かひば駱駝らくだにあたへ又󠄂またみづをあたへて其人そのひとあしその從者ともびとあしをあらはしめ 33 かくしてかれ前󠄃まへ食󠄃しよくをそなへたるにかれわれはわがことをのぶるまでは食󠄃くらはじとラバンかたれといひければ 34 かれふわれはアブラハムのしもべなり 35 ヱホバおほいにわが主人しゆじんをめぐみたまひておほいなるものとならしめ又󠄂またひつじうし金銀きんぎんしもべしもめ駱駝らくだ驢馬ろばをこれにたまへり 36 わが主人しゆじんつまサラとしおいてのちわが主人しゆじん男子なんしをうみければ主人しゆじんその所󠄃有もちものこと〴〵これあた 37 わが主人しゆじんわれちかはせてわがすめるカナンのひと女子むすめうちよりわがつまめとるなかれ
 36㌻ 
38 なんぢわが父󠄃ちゝいへにゆきわがしん`ぞくにいたりわがのためにつまをめとれと 39 われわが主人しゆじんにいひけるはもしをんなわれにしたがひてきたらずば如何いかん 40 かれわれにいひけるはわがつかふるところのヱホバその使者つかひなんぢとともに遣󠄃つかはしてなんぢ途󠄃みち幸福さいはひくだしたまはんなんぢわがしんぞくわが父󠄃ちゝいへよりわがつまをめとるべし 41 なんぢわがしんぞくいたれるときはわがちかひとかさるべしもし彼等かれらなんぢにあたへずばなんぢはわがちかひをゆるさるべしと〘28㌻〙 42 われ今日けふゐどいたりていひけらくわが主人しゆじんアブラハムのかみヱホバねがはくはわがゆく途󠄃みち幸福さいはひくだしたまへ 43 われはこの井水ゐみずかたはらみづくみにいづる處女をとめあらんときわれかれにむかひて請󠄃なんぢかめより少許すこしみづわれにのましめよといはんに 44 もしわれこたへてなんぢわれまたなんぢ駱駝らくだのためにもくまんといはこれヱホバがわが主人しゆじんのためにさだまたまひしをんななるべし 45 われこゝろうちものいふことを終󠄃をふるまへにリベカそのかめかたにのせて出來いできたゐどにくだりてみづみたるによりわれかれ請󠄃われにのましめよといひければ 46 かれ急󠄃いそそのかめかたよりおろしていひけるはめまたなんぢ駱駝らくだにものましめんとこゝおいわれのみしがかれまた駱駝らくだにものましめたり 47 われかれとふなんぢたれむすめなるやといひければミルカがナホルにうみたるベトエルのむすめなりといふこゝおいわれそのはなをつけその手釧うでわをつけたり 48 しかしてわれふしてヱホバををがわが主人しゆじんアブラハムのかみヱホバを頌美ほめたりヱホバわれたゞし途󠄃みち導󠄃みちびきてわが主人しゆじん兄弟きやうだいむすめそののためにめとしめんとしたまへばなり 49 されば汝等なんぢらもしわが主人しゆじんにむかひて慈惠めぐみ眞誠まことをもてことをなさんとおもはばわれつげしからざるもまたわれつげされわれみぎひだりにおもむくをえん

50 ラバンとベトエルこたへいひけるは此事このことはヱホバより我等われらなんぢ善惡よしあしふあたはず 51 よリベカなんぢ前󠄃まへにをるたづさへてゆきかれをしてヱホバのいひたまひしごとなんぢ主人しゆじんつまとならしめよ 52 アブラハムのしもべ彼等かれらことばきゝふしてヱホバををがめり
 37㌻ 
53 こゝおいしもべぎん飾󠄃品かざりきん飾󠄃品かざりおよび衣服󠄃ころもをとりいだしてリベカにあたまたそのあにはゝ寶物たからものをあたへたり 54 こゝおいかれおよびその從者ともびと食󠄃飮くひのみして宿やどりしが朝󠄃あさ起󠄃おきたるときかれいふわれをしてわが主人しゆじん還󠄃かへらしめよ 55 リベカのあにはゝいひけるは童女むすめすうじつあひだすくなくもとを我等われらともにをらしめよしかるのちかれゆくべし 56 彼人かのひとこれいふヱホバわが途󠄃みち福祉さいはひをくだしたまひたるなればわれとゞむるなかれわれかへしてわが主人しゆじんゆかしめよ 57 彼等かれらいひけるは童女むすめをよびてそのことばとはんと 58 すなはちリベカをよびこれいひけるはなんぢ此人このひとともゆくかれゆか 59 こゝおい彼等かれらいもうとリベカとその乳󠄃媼うばおよびアブラハムのしもべその從者ともびと遣󠄃おくさらしめたり 60 すなは彼等かれらリベカをしゆくしてこれにいひけるはわれらのいもうとなんぢ千萬ちよろずひとはゝとなれなんぢ子孫しそんをしてそのあたもんとらしめよ

61 こゝおいてリベカ起󠄃たちその童女等めのわらはどもとともに駱駝らくだにのりて其人そのひとにしたがひしもべすなはちリベカを導󠄃みちびきてさりぬ〘29㌻〙 62 こゝにイサク、ラハイロイのゐどみちよりきたれりみなみくに住󠄃居すみゐたればなり 63 しかしてイサク黄昏ゆふぐれいで默想おもひはかりをなしたりしがあげしに駱駝らくだきたるあり 64 リベカをあげてイサクを駱駝らくだをおりて 65 しもべにいひけるはをあゆみて我等われらにむかひもの何人なにびとなるぞしもべわが主人しゆじんなりといひければリベカ覆衣かつぎをとりてをおほへり 66 こゝしもべそのすべてなしたることをイサクに 67 イサク、リベカをそのはゝサラのてんまく携至つれいたりリベカをめとりてそのつまとなしてこれをあいしたりイサクははゝにわかれてのちこゝ慰籍なぐさめたり

第25章

1 アブラハムふたゝびつまめとそのをケトラといふ 2 かれジムラン、ヨクシヤン、メダン、ミデアン、イシバク、シユワをうめ 3 ヨクシヤン、シバとデダンをむデダンのはアッシユリびとレトシびとリウミびとなり 4 ミデアンのはエパ、エペル、ヘノク、アビダ、エルダアなり是等これらみなケトラの子孫しそんなり
 38㌻ 
5 アブラハムその所󠄃有もちものこと〴〵くイサクにあたへたり 6 アブラハムの妾等そばめたちにはアブラハムそのいけうちものをあたへてこれをしてそのイサクをはなれてひがしにさりてひがしくにいたらしむ 7 アブラハムの生存いきながらへたるよはひすなはち百七十五ねんなりき 8 アブラハムよきよはひおよ老人としよりとなりとし滿みちいきたえしにそのたみくはゝ 9 そのイサクとイシマエルこれをヘテびとゾハルのエフロンのなるマクペラの洞穴󠄄ほらあなはうむれりこれはマムレの前󠄃まへにあり 10 すなはちアブラハムがヘテの子孫ひと〴〵よりかひたるなり彼處かしこにアブラハムとそのつまサラはうむらる 11 アブラハムのしにたるのちかみそのイサクをめぐみたまふイサクはベエルラハイロイのほとり住󠄃すめ

12 サラの侍婢こしもとなるエジプトびとハガルがアブラハムにうみたるイシマエルのでんのごとし 13 イシマエルのその名氏その世代したがひていへかくのごとしイシマエルの長子うひごはネバヨテなりそのつぎはケダル、アデビエル、ミブサム 14 ミシマ、ドマ、マツサ 15 ハダデ、テマ、ヱトル、ネフシ、ケデマ 16 是等これらはイシマエルのなり是等これらその郷黨さとそのえいにしたがひていへものにしてそのくにしたがひていへば十二の牧伯きみなり 17 イシマエルのよはひは百三十七さいなりきかれいきたえしにそのたみにくははる 18 イシマエルの子等こらはハビラよりエジプトの前󠄃まへなるシユルまでのあひだ居住󠄃すみてアッスリヤまでにおよべりイシマエルはそのすべての兄弟きやうだいたちのまへにすめり
〘30㌻〙
19 アブラハムのイサクのでんのごとしアブラハム、イサクをうめ 20 イサク四十さいにしてリベカをつまめとれりリベカはパダンアラムのスリアびとベトエルのむすめにしてスリアびとラバンのいもうとなり 21 イサクそのつまなきによりこれがためにヱホバに祈願ねがひをたてければヱホバそのねがひをきゝたまへり遂󠄅つひそのつまリベカはらみしが 22 そのはらうちあらそひければしからばわれいかでかくてあるべきといひゆきてヱホバにとふ 23 ヱホバかれいひたまひけるはふたつ國民くにたみなんぢたいにありふたつたみなんぢはらよりいでわかれんひとつたみひとつたみよりもつよかるべしあにおとうとつかへんと
 39㌻ 
24 かくて臨月うみづきみちてしにはらには孿ふたごありき 25 さきいでたるものあかくして躰中からだぢうけごろもごとそのをエサウとなづけたり 26 そののちおとうといでたるがそのにエサウのくびすとれそのをヤコブとなづけたりリベカが彼等かれらうみときイサクは六十さいなりき

27 こゝ童子わらべひととなりしがエサウはたくみなる獵人かりうどにしてひととなりヤコブは質樸すなほなるひとにしててんまくをるものとなれり 28 イサクはしかたしむによりてエサウをあいしたりしがリベカはヤコブをあいしたり 29 こゝにヤコブあつものたりときにエサウよりきたりてつか 30 エサウ、ヤコブにむかひわれつかれたれば請󠄃その紅羮あかきもの其處そこにある紅羮あかきものわれにのませよといふこゝをもてかれはエドム(あか)ととなへらる 31 ヤコブいひけるは今日けふなんぢとくけんわれ 32 エサウいふわれしなんとしてこのとくけんわれなにえきをなさんや 33 ヤコブまたいひけるは今日けふわれちかへとかれすなはちちかひそのとくけんをヤコブにうり 34 こゝおいてヤコブ、パンと扁豆あぢまめあつものとをエサウにあたへければ食󠄃くひかつのみ起󠄃たちされかくエサウとくけん藐視かろんじたり

第26章

1 アブラハムのときにありし最初はじめ饑饉ききんほか又󠄂またそのくに饑饉ききんありければイサク、ゲラルにゆきてペリシテびとわうアビメレクのもとにいたれり 2 ときにヱホバかれにあらはれていひたまひけるはエジプトにくだるなかれわがなんぢしめすところのにをれ 3 なんぢ此地このちにとどまれわれなんぢともにありてなんぢめぐまんわれ是等これらくにこと〴〵なんぢおよびなんぢ子孫しそんあたなんぢ父󠄃ちゝアブラハムにちかひたる誓言ちかひおこなふべし 4 われなんぢ子孫しそんましそらほしのごとくなしなんぢ子孫しそんすべ是等これらくにあたへんなんぢ子孫しそんによりててん國民たみみな福祉さいはひべし 5 はアブラハムわがことばしたがひわが職守つとめとわが誡命いましめとわが憲法のりとわが律法おきてまもりしによりてなり
 40㌻ 
6 イサクすなはちゲラルにをりしが 7 ところひとそのつまことをとへばわがいもうとなりとふリベカはみる美麗うつくしかりければそのところひとリベカのゆゑをもてわれころさんとおもひかれをわがつまいふをおそれたるなり〘31㌻〙 8 イサクひさし彼處かしこにをりしのち一日あるひペリシテびとわうアビメレクまどより望󠄇のぞみてイサクがそのつまリベカと嬉戲たはむるるをたり 9 こゝおいてアビメレク、イサクをめしいひけるはかれかならなんぢつまなりなんぢなんぞわがいもうとといひしやイサクかれいひけるはおそらくはわれかれのためにしぬるならんとおもひたればなり 10 アビメレクいひけるはなんぢなんぞ此事このこと我等われらになすやたみ一人ひとりもし輕々かろ〴〵しくなんぢつまいぬることあらんそのときなんぢつみ我等われらかうむらしめんと 11 アビメレクすなはちすべてたみみなめいじて此人このひとそのつまにさはるものはかならころすべしといへ

12 イサクかの種播たねまきそのとしひやくばいたりヱホバかれめぐみたまふ 13 其人そのひとおほいになりゆきて進󠄃すゝみさかんになり遂󠄅つひはなはおほいなるものとなれり 14 すなはひつじうし僕從しもべおほもちしかばペリシテびとかれそねみたり 15 その父󠄃ちゝアブラハムのその父󠄃ちゝ僕從しもべほりたるすべてゐどはペリシテびとこれをふさぎてつちこれにみてたり 16 こゝにアビメレク、イサクにいひけるはなんぢおほい我等われらよりも强大つよければ我等われらをはなれてれと 17 イサクすなは彼處かしこをさりてゲラルのたにてんまくはり其處そこ住󠄃すめ

18 その父󠄃ちゝアブラハムのほりたる水井みづゐどをイサクこゝふたゝほれはアブラハムのしにたるのちペリシテびとこれふさぎたればなりかくしてイサクその父󠄃ちゝこれなづけたるをもてそのとなせり 19 イサクのしもべたにほり其處そこみづわきいづゐどたり 20 ゲラルの牧者ぼくしやこのみづ我儕われら所󠄃屬ものなりといひてイサクのしもべあらそひければイサクそのゐどをエセク(競爭あらそひ)となづけたり彼等かれらおのれこれ競爭あらそひたるによりてなり 21 こゝおい又󠄂またほかゐどほりしが彼等かれらこれをもあらそひければそのをシテナ(あた)となづけたり
 41㌻ 
22 イサクすなは彼處かしこより遷󠄇うつりてほかゐどほりけるが彼等かれらこれをあらそはざりければそのをレホボテ(廣塲ひろば)となづけていひけるはいまヱホバ我等われら處所󠄃ところひろくしたまへり我等われら此地このち繁衍ふえまさ

23 かくかれ其處そこよりベエルシバにのぼりしが 24 そのヱホバかれにあらはれていひたまひけるはわれなんぢ父󠄃ちゝアブラハムのかみなりおそるるなかれわれなんぢともにありてなんぢめぐわがしもべアブラハムのためになんぢ子孫しそんまさんと 25 こゝおい彼處かしこだんきづきてヱホバのてんまく彼處かしこはれ彼處かしこにてイサクのしもべゐどほれ

26 こゝにアビメレクそのともアホザテおよその軍勢ぐんぜいかしらピコルとともにゲラルよりイサクのもときたりければ〘32㌻〙 27 イサク彼等かれら汝等なんぢらわれにくわれをして汝等なんぢらをはなれてらしめたるなるになんわがもときたるや 28 彼等かれらいひけるは我等われら確然たしかにヱホバがなんぢともにあるをたれば我等われらあひだすなは我等われらなんぢあひだ誓詞ちかひなんぢ契約けいやくむすばんとおもへり 29 なんぢ我等われら惡事あしきことをなすなかれ我等われらなんぢ害󠄅がいせずたゞ善事よきことのみをなんぢになしかつなんぢ安然やすらかさらしめたればなりなんぢはヱホバのめぐみたまふものなり 30 イサクすなは彼等かれらのために酒宴しゆえんまうけたれば彼等かれら食󠄃くらかつのめ 31 かく朝󠄃あさつと起󠄃おきたがひあひちかへりしかしてイサク彼等かれらさらしめたれば彼等かれらイサクをはなれて安然やすらかにかへりぬ 32 そのイサクのしもべきたりてそのほりたるゐどにつきてこれつげ我等われらみづたりといへり 33 すなはこれをシバとなづく此故このゆゑそのまち今日こんにちまでベエルシバ(誓詞ちかひゐど)といふ

34 エサウ四十さいときヘテびとむすめユデテとヘテびとエロンのむすめバスマテをつまめとれ 35 彼等かれらはイサクとリベカのこゝろ愁煩うれひとなれり

第27章

1 イサクおいくもりてるあたはざるにおよびてその長子ちやうしエサウをよびこれわがよといひければこたへてわれこゝにありといふ
 42㌻ 
2 イサクいひけるはわれいまおい何時いつしぬるやをしら 3 され請󠄃なんぢうつはなんぢゆみとりでわがためにしかかり 4 わがこの美味びみつくわれにもちきたりて食󠄃くらはしめよわれしぬるまへにこゝろなんぢしゆくせん

5 イサクがそのエサウにかたときにリベカきゝゐたりエサウはしかかりもちきたらんとてゆけ 6 こゝおいてリベカそのヤコブにかたりていひけるはわれきゝゐたるになんぢ父󠄃ちゝなんぢあにエサウにかたりていひけらく 7 わがためにしかをとりきたり美味びみつくりてわれにくはせよしぬるまへにわれヱホバの前󠄃まへにてなんぢしゆくせんと 8 されわがわがことばにしたがひわがなんぢめいずるごとくせよ 9 なんぢ群畜むれ所󠄃ところにゆきて彼處かしこより山羊やぎ二箇ふたつわれにとりきたれわれこれをもてなんぢ父󠄃ちゝのためにそのこの美味びみつくらん 10 なんぢこれ父󠄃ちゝにもちゆきて食󠄃くはしめそのしぬ前󠄃まへなんぢしゆくせしめよ 11 ヤコブそのはゝリベカにいひけるはあにエサウはぶかひとにしてわれ滑澤なめらかなるひとなり 12 おそらくは父󠄃ちゝわれさはることあらんしからばわれあざむもの父󠄃ちゝえんさればめぐみをえずしてかへつ呪詛のろひをまねかん 13 そのはゝかれにいひけるはわがなんぢのろはるゝ所󠄃ところわれせんたゞわがことばにしたがひゆきとりきたれと 14 こゝにおいてかれゆきはゝ所󠄃もとにもちきたりければはゝすなはち父󠄃ちゝこのむところの美味びみつくれり〘33㌻〙 15 しかしてリベカいへうちおのれ所󠄃ところにある長子ちやうしエサウの美服󠄃びふくをとりてこれ季子おとごヤコブに 16 又󠄂また山羊やぎかはをもてそのそのくび滑澤なめらかなるところとをおほ 17 そのつくりたる美味びみとパンをヤコブのにわたせり

18 かれすなは父󠄃ちゝもとにいたりてわが父󠄃ちゝよといひければわれこゝにありわがなんぢたれなると 19 ヤコブ父󠄃ちゝにいひけるはわれなんぢ長子ちやうしエサウなりわれなんぢわれめいじたるごとくなせり請󠄃起󠄃おきしわがしかにくをくらひてなんぢこゝろわれしゆくせよ 20 イサクそのいひけるはわがなんぢいかにしてかく速󠄃すみやかたるやかれなんぢかみヱホバこれわれにあはせたまひしがゆゑなり
 43㌻ 
21 イサク、ヤコブにいひけるはわが請󠄃近󠄃ちかくよれわれなんぢさはりなんぢがまことにわがエサウなるやいなやをしらん 22 ヤコブ父󠄃ちゝイサクに近󠄃ちかよりければイサクこれにさはりていひけるはこゑはヤコブのこゑなれどもはエサウのなりと 23 かれそのあにエサウののごとくぶかかりしによりこれ辨別わきまへずして遂󠄅つひこれしゆくしたり 24 すなはちイサクいひけるはなんぢはまことにわがエサウなるやかれしかりといひければ 25 イサクいひけるはわれもちきたれわがしか食󠄃くらひてわがこゝろなんぢしゆくせんとこゝおいてヤコブかれもとにもちきたりければ食󠄃くらへり又󠄂またさけをもちきたりければのめ 26 かくて父󠄃ちゝイサクかれにいひけるはわが近󠄃ちかくよりてわれ接吻くちつけせよと 27 かれすなはち近󠄃ちかよりてこれ接吻くちつけしければそのころも馨香かをりをかぎてかれしゆくしていひけるは嗚呼あゝわがかをりはヱホバのめぐみたまへる馨香かをりのごとし 28 ねがはくはかみてんつゆあぶらおよび饒多おほくこくさけなんぢにたまへ 29 もろ〳〵たみなんぢにつかへもろ〳〵くになんぢかゞめなんぢ兄弟きやうだいたちしゆとなりなんぢはゝ子等こらなんぢをかゞめんなんぢのろものはのろはれなんぢしゆくものしゆくせらるべし

30 イサク、ヤコブをしゆくすることを終󠄃をへてヤコブ父󠄃ちゝイサクの前󠄃まへよりいでさりしときにあたりてあにエサウかりよりかへきた 31 おのれまた美味びみをつくりてこれその父󠄃ちゝもとにもちゆき父󠄃ちゝにいひけるは父󠄃ちゝ起󠄃おきそのしか食󠄃くらひてこゝろわれしゆくせよ 32 父󠄃ちゝイサクかれにいひけるはなんぢたれなるやかれいふわれなんぢなんぢ長子ちやうしエサウなり 33 イサクはなはだおほい戰兢ふるひていひけるはしからかのしかかりこれわれにもちきたりしものたれぞやわれなんぢがきたるまへにもろ〳〵もの食󠄃くらひてかれしゆくしたればかれまことに祝福めぐみをうべし 34 エサウ父󠄃ちゝことばきゝおほいなげいたなき父󠄃ちゝにいひけるは父󠄃ちゝわれしゆくせよわれをもしゆくせよ 35 イサクいひけるはなんぢおとうといつはりてきたなんぢめぐみうばひたり〘34㌻〙 36 エサウいひけるはかれをヤコブ(推除者おしのくるもの)となづくるはうべならずやかれわれをおしのくることこれにて二次ふたゝびなりさきにはわがとくけんうばいまはわがめぐみうばひたり又󠄂またなんぢめぐみをわがためにのこしおかざりしや
 44㌻ 
37 イサクこたへてエサウにいひけるはわれかれなんぢしゆとなしその兄弟きやうだいこと〴〵しもべとしてかれにあたへたり又󠄂またこくさけとをかれさづけたりされわがわれなになんぢになすをえん 38 エサウ父󠄃ちゝいひけるは父󠄃ちゝ父󠄃ちゝめぐみ唯一ただひとつならんや父󠄃ちゝわれしゆくせよわれをもしゆくせよとこゑをあげてなき 39 父󠄃ちゝイサクこたへかれにいひけるはなんぢ住󠄃所󠄃すみか膏腴あぶらにはなれうへよりのてんつゆにはなるべし 40 なんぢかたなをもてをわたりなんぢおとうとつかへされなんぢつなぎはなるゝときそのくびきなんぢくびよりふるひおとすを

41 エサウ父󠄃ちゝのヤコブをしゆくしたるそのめぐみためにヤコブをにくめりすなはちエサウこゝろいひけるは父󠄃ちゝ近󠄃ちかければ其時そのときわれおとうとヤコブをころさんと 42 長子ちやうしエサウのこのことばリベカにきこえければ季子おとごヤコブをよばよせてこれいひけるはなんぢあにエサウなんぢころさんとおもひてみづかなぐさ 43 さればわがわがことばにしたがひ起󠄃たちてハランにゆきわがあにラバンのもとにのがれ 44 なんぢあにいかりとくるまでしばらかれとともに 45 なんぢあに鬱憤いきどほりとけなんぢをはなれなんぢかれになしたることわするゝにいたらばわれひとをやりてなんぢ彼處かしこよりむかへんわれなん一日いちにちのうちに汝等なんぢら二人ふたりうしなふべけんや

46 リベカ、イサクにいひけるはわれはヘテのをんなどものためにいとふにいたるヤコブもし此地このちかのをんなどもごときヘテのをんなうちよりつまめとらばわがいくるもなん利益かひあらんや

第28章

1 イサク、ヤコブをよびこれしゆくこれめいじていひけるはなんぢカナンのをんなうちよりつまめとるなかれ 2 起󠄃たちてパダンアラムになんぢはゝ父󠄃ちゝベトエルのいへにいたり彼處かしこにてなんぢはゝあにラバンのむすめうちよりつまめと 3 ねがはくは全󠄃ぜんのうかみなんぢめぐなんぢをして子女おほせしめかつなんぢ子孫しそんましなんぢをして多衆おほくたみとならしめ 4 又󠄂またアブラハムにあたへんとやくそくせしめぐみなんぢおよびなんぢともなんぢ子孫しそんたまなんぢをしてかみがアブラハムにあたへたまひしこのなんぢ寄寓やどれたもたしめたまはんことをと
 45㌻ 
5 かくてイサク、ヤコブを遣󠄃つかはしければパダンアラムにゆきてラバンの所󠄃もとにいたれりラバンはスリアびとベトエルのにしてヤコブとエサウのはゝなるリベカのあになり
〘35㌻〙
6 エサウはイサクがヤコブをしゆくしてこれをパダンアラムにつかはし彼處かしこよりつまめとらしめんとしたるを又󠄂またこれしゆくなんぢはカナンのをんなうちよりつまをめとるなかれといひてこれめいじたることを 7 又󠄂またヤコブがその父󠄃母ちゝはゝことばしたがひてパダンアラムにゆきしをたり 8 エサウまたカナンのをんなその父󠄃ちゝイサクのこゝろにかなはぬをたり 9 こゝにおいてエサウ、イシマエルの所󠄃ところにゆきてそのもてつまほか又󠄂またアブラハムのイシマエルのむすめネバヨテのいもうとマハラテをつまにめとれり

10 こゝにヤコブ、ベエルシバよりいでたちてハランのかたにおもむきけるが 11 一處あるところにいたれるときくれたればすなは其處そこ宿やどそのところいしをとりまくらとなしてそのところふしいねたり 12 ときかれゆめみはしだてにたちゐてそのいたゞきてんいたれるを又󠄂またかみ使者つかひそれにのぼりくだりするをたり 13 ヱホバそのうへたちいひたまはくわれなんぢ祖父󠄃ちゝアブラハムのかみイサクのかみヱホバなりなんぢ偃臥ふすところのわれこれなんぢなんぢ子孫しそんあたへん 14 なんぢ子孫しそん塵沙すなのごとくなりて西東にしひがしきたみなみひろがるべし又󠄂またてんもろ〳〵やからなんぢなんぢ子孫しそんによりて福祉さいはひをえん 15 またわれなんぢとともにありてすべなんぢゆくところにてなんぢをまもりなんぢ此地このち率󠄃返󠄄ひきかへるべしわれはわがなんぢにかたりしことおこなふまでなんぢをはなれざるなり 16 ヤコブをさましていひけるはまことにヱホバ此處このところにいますにわれしらざりきと 17 すなは惶懼おそれていひけるはおそるべきかな此處このところこれすなはかみ殿いへほかならずこれてんもんなり

18 かくてヤコブ朝󠄃あさつと起󠄃そのまくらとなしたるいしこれたてはしらとなしあぶらそのうへそゝ 19 其處そこをベテル(神殿かみのいへ)となづけたりそのまちはじめはルズといへり
 46㌻ 
20 ヤコブすなはちかひをたてゝいひけるはもしかみわれとともにいましこのわがゆく途󠄃みちにてわれをまもり食󠄃くらふパンところもわれにあたへ 21 われをしてわが父󠄃ちゝいへ安然やすらかかへることをせしめたまはゞヱホバをわがかみとなさん 22 又󠄂またわがはしらにたてたるこのいしかみいへとなさん又󠄂またなんぢがわれにたまふものみなかならそのじふ分󠄃ぶんいちなんぢにさゝげん

第29章

1 かくてヤコブその途󠄃みちにすゝみてひがしひとにいたりて 2 るにゐどありてひつじむれみつそのかたはらふしゐたりこのゐどよりむれみづかへばなりおほいなる石井いしゐどくちにあり 3 ひつじむれみな其處そこあつまときゐどくちよりいしをまろばしてひつじ水飼みづかまたもとのごとくゐどくちいしをのせおくなり 4 ヤコブ人々ひと〴〵いひけるは兄弟きやうだいいづくよりきたれるや彼等かれらいふ我等われらはハランよりきた〘36㌻〙 5 ヤコブ彼等かれらにいひけるは汝等なんぢらナホルのラバンをしるや彼等かれらしるといふ 6 ヤコブ又󠄂またかれらにいひけるはかれやすきや彼等かれらいふやすかれむすめラケルひつじともきたると 7 ヤコブなほたか家畜かちくあつむべきときにあらずひつじみづかひてゆきぼくせよ 8 彼等かれらいふ我等われらしかするあたはずむれみなあつまるにおよびゐどくちよりいしをまろばしてひつじみづかふべきなり 9 ヤコブなほ彼等かれらかたれるときにラケル父󠄃ちゝひつじとともにきたこれ牧居かひゐたればなり 10 ヤコブそのはゝあにラバンのむすめラケルおよびそのはゝあにラバンのひつじしかばヤコブ進󠄃すゝみよりてゐどくちよりいしをまろばしはゝあにラバンのひつじみづかひたり 11 しかしてヤコブ、ラケルに接吻くちつけしてこゑをあげて啼哭なき 12 すなはちヤコブ、ラケルにおのれはその父󠄃ちゝ兄弟きやうだいにしてリベカのなることをつげければかれはしりゆきて父󠄃ちゝつげたり

13 ラバンそのいもうとヤコブのこときゝしかばはせゆきてこれ迎󠄃むかこれいだきて接吻くちつけこれいへ導󠄃みちびきいたれりヤコブすなはちこれことこと〴〵くラバンに述󠄃のべたり
 47㌻ 
14 ラバンかれにいひけるはなんぢまことにわがこつにくなりとヤコブ一月ひとつきあひだかれとともに 15 こゝにラバン、ヤコブにいひけるはなんぢはわが兄弟きやうだいなればとて空󠄃むなしわれ役事つかふべけんやなに報酬むくひ望󠄇のぞむやわれつげ 16 ラバン二人ふたり女子むすめもてあねはレアといひいもうとはラケルといふ 17 レアは弱󠄃よわかりしがラケルはうつくしくしてかほよ 18 ヤコブ、ラケルをあいしたればわれなんぢ季女おとむすめラケルのために七ねんなんぢつかへ 19 ラバンいひけるはかれほかひとにあたふるよりもなんぢにあたふるはわれとも 20 ヤコブ七ねんあひだラケルのためにつとめたりしがかれあいするがためこれすうじつごと見做みなせ

21 こゝにヤコブ、ラバンにいひけるはわが滿みちたればわがつまをあたへてわれをしてかれのところにいることをせしめよ 22 こゝおいてラバンところひとこと〴〵あつめて酒宴ふるまひまうけたりしが 23 よひおよびてそのむすめレアをたづさへてこれをヤコブにつれきたれりヤコブすなはかれところにいりぬ 24 ラバンまたその侍婢つかへめジルパをむすめレアにあたへて侍婢つかへめとなさしめたり 25 朝󠄃あさにいたりてるにレアなりしかばヤコブ、ラバンにいひけるはなんぢなんぞ此事このことわれになしたるやわれラケルのためになんぢ役事つかへしにあらずやなんぢなんぞわれあざむくや 26 ラバンいひけるはあねよりさきいもうととつがしむることわがくににてなさざるところなり 27 その七日なぬか過󠄃すご我等われらこれをもなんぢあたへんされなんぢこれがためになほねんわれつかへてつとむべし 28 ヤコブすなはかくなしてその七日なぬかをすごせしかばラバンそのむすめラケルをもこれにあたへてつまとなさしむ〘37㌻〙 29 またラバンその侍婢つかへめビルハをむすめラケルにあたへて侍婢つかへめとなさしむ 30 ヤコブまたラケルの所󠄃ところにいりぬかれレアよりもラケルをあいなほねんラバンにつかへたり

31 ヱホバ、レアの嫌󠄃きらはるゝをそのたいをひらきたまへりされどラケルははらみなきものなりき 32 レアはらみてそのをルベンとなづけていひけるはヱホバまことにわが艱苦なやみ顧󠄃かへりみたまへりさればいまをつとわれあいせんと
 48㌻ 
33 かれふたゝびはらみてみヱホバわが嫌󠄃きらはるゝをきゝたまひしによりてわれこれをもたまへりといひそのをシメオンとなづけたり 34 かれまたはらみてわれにんうみたればをつといまよりわれ膠漆したしまんといへりこれによりてそのをレビとなづけたり 35 かれまたはらみてわれいまヱホバを讃美ほめんといへりこれによりてそのをユダとなづけたりこゝにいたりてうむことやみぬ

第30章

1 ラケルおのれがヤコブにうまざるをそのあねねたみヤコブにいひけるはわれあたへよしからずばわれしなんと 2 ヤコブ、ラケルにむかひていかりはつしてなんぢはらをやどらしめざるものかみなりわれかみかはるをえんや 3 ラケルいふわがしもめビルハをかれところかれうみてわがひざおかしからわれもまたかれによりてをうるにいたらんと 4 その仕女つかへめビルハをかれにあたへてつまとなさしめたりヤコブすなはかれところにいる 5 ビルハ遂󠄅つひにはらみてヤコブにうみければ 6 ラケルいひけるはかみわれかんがまたわがこゑきゝいれてわれをたまへりとこれによりてそのをダンとなづけたり 7 ラケルの仕女つかへめビルハふたゝはらみてつぎをヤコブにうみければ 8 ラケルわれかみあらそひをもてあねあらそひて勝󠄃かちぬといひてそのをナフタリとなづけたり

9 こゝにレアうむことのやみたるをしかばその仕女つかへめジルパをとりてこれをヤコブにあたへてつまとなさしむ 10 レアの仕女つかへめジルパ、ヤコブにうみければ 11 レアふくきたれりといひてそのをガドとなづけたり 12 レアの仕女つかへめジルパ次子つぎのこをヤコブにうみければ 13 レアいふわれさいはひなり女等むすめたちわれさいはひなるものとなさんとそのをアセルとなづけたり

14 こゝむぎかりにルベンいでゆきてにて戀茄こひなすこれをはゝレアのもとにもちきたりければラケル、レアにいひけるは請󠄃われなんぢ戀茄こひなすをあたへよ
 49㌻ 
15 レアかれにいひけるはなんぢのわがをつととりしはちひさことならんやしかるになんぢまたわが戀茄こひなすをもとらんとするやラケルいふされなんぢ戀茄こひなすのためにをつとこのなんぢいぬべし〘38㌻〙 16 くれにおよびてヤコブよりきたりければレアこれをいでむかへていひけるはわれまことにわが戀茄こひなすをもてなんぢやとひたればなんぢわれ所󠄃ところにいらざるべからずヤコブすなはそのかれといねたり 17 かみレアにきゝたまひければかれはらみてだいをヤコブにうめ 18 レアいひけるはわれわが仕女つかへめをつとあたへたればかみわれそのあたひをたまへりとそのをイツサカルとなづけたり 19 レアまたはらみてだいろくをヤコブにうめ 20 レアいひけるはかみわれ嘉賚よきたまものたまわれろくにん男子をのこうみたればをつといまよりわれともにすまんとそのをゼブルンとなづけたり 21 そののちかれ女子をんなのこそのをデナとなづけたり 22 こゝかみラケルをおもかみかれきゝそのたいひらきたまひければ 23 かれはらみて男子をのこうみかみわが恥辱はぢそゝぎたまへりと 24 すなはそのをヨセフとなづけてふヱホバ又󠄂またほかわれくはへたまはん

25 こゝにラケルのヨセフをむにおよびてヤコブ、ラバンにいひけるはわれかへして故郷ふるさとわがくにゆかしめよ 26 わがなんぢつかへたる所󠄃ところつまわれあたへてわれさらしめよわがなんぢになしたる役事つとめなんぢこれるなり 27 ラバンかれにいひけるはもしなんぢの意󠄃こゝろにかなはゞねがはくはとゞまわれヱホバがなんぢのためにわれめぐみしをうらなたり 28 又󠄂またなんぢ望󠄇のぞあたひをのべよわれこれあたふべし 29 ヤコブかれにいひけるはなんぢ如何いかにわがなんぢつかへしか如何いかなんぢ家畜かちくかひしかを 30 わがきたれる前󠄃まへなんぢもちたるもの鮮少わづかなりしがまし遂󠄅つひぐんをなすにいたわがきたりてよりヱホバなんぢめぐみたまへりしかれどもわれ何時いつわがいへなすにいたらんや 31 かれわれなになんぢあたへんかヤコブいひけるはなんぢなにものをもわれあたふるにおよばずなんぢもし此事このことわれになさばわれまたなんぢむれ牧守かひまもらん 32 すなはわれ今日けふあまねなんぢむれをゆきめぐりてそのうちよりすべぶちなるものまだらなるものうつ綿羊ひつじうちすべくろものうつ山羊やぎうちまだらなるものぶちなるものうつさんこれわがあたひなるべし
 50㌻ 
33 のちなんぢきたりてわが傭値あたひをしらぶるときわがわれにかはりてこたへをなすべしもしわが所󠄃もと山羊やぎぶちならざるものまだらならざるものあり綿羊ひつじくろからざるものあらばみなぬすめものとなすべし 34 ラバンいふなんぢことばごとくなさんことをねが 35 こゝおいかれその牡山羊をやぎ斑入ふいりなるもの斑點まだらなるものうつすべ山羊やぎ斑駮ぶちなるもの斑點まだらなるものすべしろいろあるものうつ又󠄂また綿羊ひつじうちすべくろものうつしてその子等こらわたせり 36 しかしてかれおのれとヤコブのあひだ三日みつかへだたりをたてたりヤコブはラバンののこりむれ
〘39㌻〙
37 こゝにヤコブ楊柳やなぎかへでくはあをえだかははぎ白紋理しろすじつくえだしろ所󠄃ところをあらはし 38 そのかはをはぎたるえだむれきたりてむところの水槽みづぶねみづはちたてむれむかはしめむれをしてみづのみのきたときはらましむ 39 むれすなはちえだ前󠄃まへはらみて斑入ふいりもの斑駮ぶちなるもの斑點まだらなるものうみしかば 40 ヤコブその羔羊區分󠄃わかちラバンのむれかほそのむれ斑入ふいりなるものくろものむかはしめたりしがおのれむれをば一所󠄃ひとところおきてラバンのむれうちにいれざりき 41 又󠄂また家畜かちく壯健つよものはらみたるときはヤコブ水槽みづぶねうちにてその家畜かちく前󠄃まへかのえだえだかたはらにおいてはらましむ 42 され家畜かちく羸弱󠄃よわかるときこれおかこれより羸弱󠄃者よわきものはラバンのとなり壯健者つよきものはヤコブのとなれり 43 こゝおい其人そのひとおほい富饒ゆたかになりておほく家畜かちくしもめしもべおよび駱駝らくだ驢馬ろばもつにいたれり

第31章

1 こゝにヤコブ、ラバンの子等こらがヤコブわが父󠄃ちゝ所󠄃有ものこと〴〵うばわが父󠄃ちゝ所󠄃有ものによりてこのすべて榮光さかえたりといふをきけ 2 またヤコブ、ラバンのかほるにおのれたいすること疇昔まへごとくならず 3 ときにヱホバ、ヤコブにいひたまへるはなんぢ父󠄃ちゝくににかへりなんぢしんぞくいたわれなんぢともにをらんと 4 こゝおいてヤコブひとをやりてラケルとレアをまねきてむれ所󠄃ところいたらしめ
 51㌻ 
5 これにいひけるはわれ汝等なんぢら父󠄃ちゝかほるにそのわれたいすること疇昔まへごとくならずされどわが父󠄃ちゝかみわれともにいますなり 6 汝等なんぢらがしるごとくわれちからつくしてなんぢらの父󠄃ちゝつかへたるに 7 汝等なんぢら父󠄃ちゝわれあざむきて十次とたびもわがあたひかへたりしかれどもかみかれわれ害󠄅がいするをゆるしたまはず 8 かれ斑駮ぶちなるものなんぢ傭値あたひなるべしといへばむれうむところみな斑駮ぶちなり斑入ふいりものなんぢあたひなるべしといへばむれうむところみな斑入ふいりなり 9 かくかみなんぢらの父󠄃ちゝ家畜かちくとりわれあたへたまへり 10 むれはらときあたりてわれゆめをあげてしにむれうへのれ牡羊をひつじみな斑入ふいりもの斑駮ぶちなるもの白點まだらなるものなりき 11 ときかみ使者つかひゆめうちわれふヤコブよとわれここにありとこたへければ 12 すなはなんぢをあげてむれうへのれ牡羊をひつじみな斑入ふいりもの斑駮ぶちなるもの白點まだらなるものなりわれラバンがすべなんぢすところをかんがみる 13 われはベテルのかみなりなんぢ彼處かしこにてはしらあぶらそゝ彼處かしこにてわれちかひたてたりいま起󠄃たち斯地このちいでなんぢしんぞくくにかへれと 14 ラケルとレアこたへかれにいひけるは我等われら父󠄃ちゝいへなほわれらの分󠄃ぶんあらんや我等われら產業さんげふあらんや〘40㌻〙 15 我等われら父󠄃ちゝ他人たにんのごとくせらるるにあらずや父󠄃ちゝ我等われらまた我等われらかね蝕减くひへらしたればなり 16 かみがわが父󠄃ちゝよりとりたまひし財寶たから我等われらとわれらの子女こども所󠄃屬ものなりされすべかみなんぢいひたまひしこと

17 こゝおいてヤコブ起󠄃たち子等こどもつま駱駝らくだ 18 そのたるすべて家畜かちくすべて所󠄃有もちものすなはちパダンアラムにてみづからたるところの家畜かちくたづささりてカナンのをる所󠄃ところその父󠄃ちゝイサクの所󠄃もとにおもむけり 19 ときにラバンはひつじきらんとてゆきてありラケルその父󠄃ちゝのテラピムをぬすめり 20 ヤコブはそのさることをスリアびとラバンにつげずしてひそか忍󠄄しのびいでたり 21 すなはかれそのすべて所󠄃有もちものたづさへて逃󠄄にげ起󠄃たちかはわたりギレアデのやまにむかふ

22 ヤコブの逃󠄄にげさりしこと三日みつかにおよびてラバンにきこえければ 23 かれ兄弟きやうだい率󠄃ひきゐてそのあと追󠄃ひしが七日路なぬかぢをへてギレアデのやまにてこれ追󠄃及おひつき
 52㌻ 
24 かみよるゆめにスリアびとラバンにのぞみてなんぢつゝしみてよきあしきもヤコブに道󠄃いふなかれとこれつげたまへり 25 ラバン遂󠄅つひにヤコブに追󠄃及おひつきしがヤコブはやまてんまくはりゐたればラバンもその兄弟きやうだいともにギレアデのやまてんまくをはれり 26 しかしてラバン、ヤコブにいひけるはなんぢわれしらしめずして忍󠄄しのびいでわがむすめかたなをもてとらへたるもののごとくにひきゆけなんぞかゝることをなすや 27 何故なにゆゑなんぢひそか逃󠄄にげさりわれをはなれて忍󠄄しのびいでわれにつげざりしやわれ歡喜よろこび歌謠うたつゞみことをもてなんぢ送󠄃おくりしならんを 28 なんわれをしてわがまごむすめ接吻くちつけするをざらしめしやなんぢ愚妄おろかなることをなせり 29 汝等なんぢら害󠄅がいをくはふるのちからわがにありされ汝等なんぢら父󠄃ちゝかみ昨夜さくやわれつげなんぢつゝしみてよきあしきもヤコブにいふべからずといへり 30 なんぢいま父󠄃ちゝいへいたこひかへらんとねがふはよけれどもなんぞわがかみぬすみたるや 31 ヤコブこたへてラバンにいひけるはおそらくはなんぢしひむすめわれよりとるならんとおもひておそれたればなり 32 なんぢかみもてものこれいかしおくなかれ我等われら兄弟きやうだいたち前󠄃まへにてなんぢなにものわれもとにあるかをみわけてこれなんぢれとはヤコブ、ラケルがこれぬすみしをしらざればなり

33 こゝおいてラバン、ヤコブのてんまくりレアのてんまくりまた二人ふたりしもめてんまくにいりしがいださゞればレアのてんまくいでてラケルのてんまくにいる 34 ラケルすでにテラピムをとりこれ駱駝らくだくらしたにいれてそのうへしければラバン遍󠄃あまねてんまくうちをさぐりたれどもいださゞりき 35 ときにラケル父󠄃ちゝにいひけるは婦󠄃女をんなつね習例ならはしことわがにあれば父󠄃ちゝ前󠄃まへ起󠄃たつあたはずねがはくはしゆこれいかたまふなかれとここをもてかれさがしたれども遂󠄅つひにテラピムをいださざりき
〘41㌻〙
36 こゝおいてヤコブいかりてラバンをせむすなはちヤコブこたへてラバンにいひけるはわれなにあやまちありなにつみありてかなんぢ火急󠄃はげしわれをおふや
 53㌻ 
37 なんぢわがものこと〴〵さぐりたるがなんぢいへなにものいだしたるやこゝにわが兄弟きやうだいなんぢ兄弟きやうだい前󠄃まへそれおき我等われら二人ふたりあひだをさばかしめよ 38 われこの二十ねんなんぢとともにありしがなんぢ綿羊ひつじ山羊やぎそのうみそこねしことなし又󠄂またなんぢむれ綿羊ひつじわれ食󠄃くらはざりき 39 又󠄂またかみさかれたるものわれこれをなんぢ所󠄃もともちきたらずしてみづかこれおぎなへり又󠄂またひるぬすまるるもよるぬすまるるもなんぢわがよりこれ要󠄃もとめたり 40 われかくありつひるあつさよるさむさをかされてねむるのいとまなく 41 この二十ねんなんぢいへにありたりなんぢ二人ふたりむすめために十四ねんなんぢむれのために六ねんなんぢつかへたりしかるなんぢ十次とたびもわがあたひかへたり 42 もしわが父󠄃ちゝかみアブラハムのかみイサクのかしこものわれとともにいますにあらざればなんぢいまかならわれ空󠄃手むなしでにてさらしめしならんかみわが苦難なやみとわが勞苦はたらきをかへりみて昨夜さくやなんぢせめたまへるなり

43 ラバンこたへてヤコブにいひけるはむすめはわがむすめ子等こらはわがむれはわがむれなんぢものみなわが所󠄃屬ものなりわれ今日けふこのわがむすめとそのうみたる子等こらなにをなすをえんや 44 されきたわれなんぢ二人ふたり契約けいやくをむすびこれわれなんぢあひだ證憑あかしとなすべし 45 ここおいてヤコブいしりこれをたてはしらとなせり 46 ヤコブ又󠄂またその兄弟きやうだいたちいしをあつめよといひければすなはいしをとりてつかつくれりかく彼等かれら彼處かしこにてつかうへ食󠄃しよく 47 ラバンこれをエガルサハドタ(證憑あかしつか)となづけヤコブこれをギレアデ(證憑あかしつか)となづけたり 48 ラバンこのつか今日けふわれとなんぢのあひだ證憑あかしたりといひしによりてそのはギレアデとととなへらる 49 又󠄂またミヅパ(觀望󠄇樓ものみ)ととなへらるかれ我等われらたがひにわかるゝにおよべるときねがはくはヱホバわれなんぢあひだかんがみたまへといひたればなり 50 かれ又󠄂またいふなんぢもしわがむすめをなやましあるひはわがむすめのほかにつまをめとらばひとわれらとともなるものなきもかみなんぢのあひだにいましてあかしをなしたまふ 51 ラバン又󠄂またヤコブにいふわがわれとなんぢのあひだにたてたるこのつかはしらをみよ 52 このつかあかしとならんはしらあかしとならんわれこのつかこえなんぢ害󠄅がいせじなんぢこのつかこのはしらこえわれ害󠄅がいせざれ
 54㌻ 
53 アブラハムのかみナホルのかみ彼等かれら父󠄃ちゝかみわれらのあひださばきたまへとヤコブすなはちその父󠄃ちゝイサクのかしこものをさしてちかへり 54 かくてヤコブやまにて犧牲いけにへをさゝげその兄弟きやうだいまねきてパンを食󠄃くらはしむ彼等かれらパンを食󠄃くらひてやま宿やどれり〘42㌻〙 55 ラバン朝󠄃あさつと起󠄃そのまごむすめ接吻くちつけしてこれしゆくせりしかしてラバンゆきてその所󠄃ところにかへりぬ

第32章

1 こゝにヤコブその途󠄃みち進󠄃すゝみしがかみ使者つかひこれにあふ 2 ヤコブこれをかみぢんえいなりといひてそのところをマハナイム(えい)となづけたり

3 かくてヤコブおのれより前󠄃さき使者つかひをつかはしてセイルのエドムのにをるそのあにエサウの所󠄃もとにいたらしむ 4 すなはこれめいじて汝等なんぢらかくわがしゆエサウにいふべしなんぢしもべヤコブかくいふわれラバンの所󠄃ところ寄寓やどりいままでとゞまれり 5 われうし驢馬ろばひつじしもべしもめありひとをつかはしてわがしゆなんぢ前󠄃まへめぐみをえんことをねがふなりと 6 使者つかひヤコブにかへりていひけるは我等われらなんぢあにエサウのもといたれりかれ四百にんをしたがへてなんぢをむかへんとてきたると 7 これによりヤコブおほいにおそれかつくるしみおのれとともにある人衆ひと〴〵およびひつじうし駱駝らくだ二隊ふたくみにわかちて 8 いひけるはエサウもしひとつくみきたりてこれをうたば遺󠄃のこれるところの一隊ひとくみ逃󠄄のがるべし 9 ヤコブまたいひけるはわが父󠄃ちゝアブラハムのかみわが父󠄃ちゝイサクのかみヱホバよなんぢかつわれにつげてなんぢくににかへりなんぢしんぞくいたわれなんぢをよくせんといひたまへり 10 われはなんぢがしもべにほどこしたまひし恩惠めぐみ眞實まことひとつうくるにたらざるなりわれわがつゑのみをもちてこのヨルダンをわたりしがいま二隊ふたくみともなるにいたれり 11 ねがはくはわがあによりエサウのよりわれをすくひいだしたまへわれかれをおそるおそらくはかれきたりてわれをうちはゝとにおよばん 12 なんぢかつわれかならずなんぢめぐなんぢ子孫しそんはまいさごおほくしてかぞふべからざるがごとくなさんといひたまへりと

 55㌻ 
13 かれその彼處かしこ宿やどりそのにいりしものうちよりあにエサウへの禮物おくりものをえらべり 14 すなは山羊やぎ二百牡山羊をやぎ二十ひつじ二百牡羊をひつじ二十 15 乳󠄃ちゝ駱駝らくだその三十 うし四十 牡牛をうし驢馬ろば二十 驢馬ろば 16 しかしてそのむれむれとをわかちてこれしもべわたしもべにいひけるはわれさきだちて進󠄃すゝむれむれとのあひだへだてておくべし 17 又󠄂またその前󠄃者さきのものめいじていひけるはわがあにエサウなんぢにあひなんぢとふなんぢたれひとにして何處いづくにゆくやこのなんぢのまへなるものたれ所󠄃有ものなるやといはば 18 なんぢしもべヤコブの所󠄃有ものにしてわがしゆエサウにたてまつる禮物おくりものなりかれもわれらのうしろにをるといふべしと 19 かれかくだいものだいさんものおよびすべ群々むれ〳〵にしたがひゆくものめいじていふ汝等なんぢらエサウにあふときはかくのごとこれにいふべし〘43㌻〙 20 かつ汝等なんぢらいへよなんぢのしもべヤコブわれらのうしろにをるとヤコブおもへらくわれわが前󠄃さきにおくる禮物おくりものをもてかれなだめてしかるのちそのかほさらかれわれを接遇󠄃うけいるることあらんと 21 これによりて禮物おくりものかれにさきだちてかれそのぢんえいうち宿やどりしが

22 そのおきいでて二人ふたりつま二人ふたり仕女つかへめおよびじふいちにん導󠄃みちびきてヤボクのわたりをわたれり 23 すなは彼等かれらをみちびきてかはわたらしめ又󠄂またそのもてものわたせり 24 しかしてヤコブ一人ひとり遺󠄃のこりしがひとありてあくるまでこれ角力ちからくらべ 25 其人そのひとおのれのヤコブに勝󠄃かたざるをてヤコブのもゝ樞骨つがひふれしかばヤコブのもゝ樞骨つがひ其人そのひと角力ちからくらべするとき挫離はづれたり 26 其人そのひと夜明よあけんとすればわれをさらしめよといひければヤコブいふなんぢわれをしゆくせずばさらしめずと 27 こゝおい其人そのひとかれにいふなんぢなになるやかれいふヤコブなり 28 其人そのひといひけるはなんぢかさねてヤコブととなふべからずイスラエルととなふべしなんぢかみひととにちからをあらそひて勝󠄃かちたればなりと 29 ヤコブとふ請󠄃なんぢつげよといひければ其人そのひと何故なにゆゑにわがをとふやといひてすなは其處そこにてこれしゆくせり 30 こゝてヤコブそのところをベニエル(かみかほ)となづけてわれかほかほをあはせてかみとあひてわが生命いのちなほいくるなりと
 56㌻ 
31 かくかれのいづるときにベニエルを過󠄃すぎたりしがそのもゝのために步行あゆみはかどらざりき 32 是故このゆえにイスラエルの子孫ひと〴〵今日こんにちにいたるまでもゝつがひ巨󠄃筋おほすぢ食󠄃くらはずこれ彼人かのひとがヤコブのもゝ巨󠄃筋おほすぢふれたるによりてなり

第33章

1 こゝにヤコブをあげてみしにエサウ四百にんをひきゐてきたりしかばすなは子等こども分󠄃わかちてレアとラケルと二人ふたり仕女つかへめとにわた 2 仕女つかへめとその子等こども前󠄃まへにおきレアとその子等こどもつぎにおきラケルとヨセフをあとにおきて 3 みづから彼等かれら前󠄃さき進󠄃すゝ七度なゝたびにかゞめて遂󠄅つひあに近󠄃ちかづきけるに 4 エサウはしりてこれを迎󠄃むかいだきてそのくびをかゝへてこれ接吻くちつけすしかして二人ふたりともに啼泣なけ 5 エサウをあげて婦󠄃人をんな子等こどもていひけるは是等これらなんぢとともなるものたれなるやヤコブいひけるはかみしもべさづけたまひしなりと 6 とき仕女つかへめそのとともに近󠄃ちかよりてはい 7 レアもまたそのとともに近󠄃ちかよりてはいそののちにヨセフとラケルちかよりてはい 8 エサウ又󠄂またいひけるはわがあへるこのもろ〳〵むれなにのためなるやヤコブいふしゆ前󠄃まへめぐみんがためなり 9 エサウいひけるはおとうとよわがもつところのものたれなんぢ所󠄃有もちものなんぢみづかこれてよ〘44㌻〙 10 ヤコブいひけるはいなわれもしなんぢ前󠄃まへめぐみをえたらんには請󠄃ふわがよりこの禮物おくりものうけわれなんぢかほをみるにかみかほをみるがごとくなりなんぢまたわれをよろこぶ 11 かみわれをめぐみたまひてもつところのものたれりされば請󠄃ふわがなんぢにたてまつる禮物おくりものうけよとかれしひければ終󠄃つひうけたり 12 エサウいひけるは我等われらいでたちてゆかんわれなんぢにさきだつべし 13 ヤコブかれにいひけるはしゆのしりたまふごとく子等こども幼弱󠄃わか又󠄂またもてひつじうしわれにしたがふもし一日いちにちこれをおひすごさばむれみなしな 14 請󠄃ふわがしゆしもべにさきだちて進󠄃すゝみたまへわれはわが前󠄃まへにゆくところの家畜かちく子女こどもあしにまかせてしづか導󠄃みちびきすゝみセイルにてわがしゆいたらん
 57㌻ 
15 エサウいひけるはしからわれわがひきゐるひとすうにんなんぢ所󠄃ところにのこさんヤコブいひけるはなんこれもちゐんやわれをしてしゆ前󠄃まへめぐみせしめよ 16 こゝおいてエサウはこのその途󠄃みちにしたがひてセイルに還󠄃かへりぬ 17 かくてヤコブ、スコテに進󠄃すゝみておのれのためにいへ又󠄂また家畜かちくのためにこやつくれりこれによりてそのところをスコテ(こや)といふ

18 ヤコブ、パダンアラムよりきたりてつゝがなくカナンのにあるシケムのまちいたまち前󠄃まへにそのてんまく 19 遂󠄅つひにそのてんまくをはりしところのをシケムの父󠄃ちゝハモルの子等こらによりきんひやくまいにてかひとり 20 彼處かしこだんをきづきてこれをエル、エロヘ、イスラエル(イスラエルのかみなるかみ)となづけたり

第34章

1 レアのヤコブにうみたるむすめデナそのくに婦󠄃女をんなんとていでゆきしが 2 そのくに君主きみなるヒビびとハモルのシケムこれをこれをひきいれこれといねてこれをはづかしむ 3 しかしてそのこゝろふかくヤコブのむすめデナをしたひてかれこのをんなあいしこのをんなこゝろをいひなだむ 4 かくてシケムその父󠄃ちゝハモルにかたこのわかむすめをわがつまよといへり 5 ヤコブかれがその女子むすめデナをけがしたることをきゝしかどもその子等こら家畜かちくかひにをりしによりてそのかへるまでヤコブもくしゐたり 6 シケムの父󠄃ちゝハモル、ヤコブのもとにいできたりてこれかたらふ 7 こゝにヤコブの子等こらよりきたりしがこれきゝしかばその人々ひと〴〵うれへかついたいかれりはシケムがヤコブのむすめいねてイスラエルにおろかなることをなしたるによれかくのごときことはなすべからざるものなればなり 8 ハモル彼等かれらかたりていひけるはわがシケムこゝろになんぢのむすめふねがはくはかれをシケムにあたへてつまとなさしめよ〘45㌻〙 9 なんぢわれらと婚姻こんいんをなしなんぢらのむすめわれらにあたへわれらのむすめなんぢらにめと 10 かくして汝等なんぢらわれらとともにるべし汝等なんぢら前󠄃まへにありこゝ住󠄃すみ貿易あきなひをなしこゝにて產業もちもの 11 シケム又󠄂またデナの父󠄃ちゝ兄弟きやうだいにいひけるはわれをして汝等なんぢらのまへにめぐみせしめよなんぢらがわれにいふところのものわれあたへん
 58㌻ 
12 いかにおほいなる聘物おくりもの禮物れいもつ要󠄃もとむるもなんぢらがわれにふごとくあたへんたゞこのむすめわれにあたへてつまとなさしめよ 13 ヤコブの子等こらシケムとその父󠄃ちゝハモルにいつはりてこたへたりすなはちシケムがそのいもうとデナをけがしたるによりて 14 彼等かれらこれにかたりていひけるは我等われらこのことなすあたはず割󠄅禮かつれいをうけざるものにわれらのいもうとをあたふるあたはずこれわれらの恥辱はぢなればなり 15 されかくせば我等われらなんぢらにゆるさんなんぢらのうち男子をとこみな割󠄅禮かつれいをうけてわれらのごとくならば 16 我等われら女子むすめ汝等なんぢらにあたへなんぢらの女子むすめをわれらにめとなんぢらとともにをりてひとつたみとならん 17 汝等なんぢらもし我等われらきかずして割󠄅禮かつれいをうけずば我等われら女子むすめをとりてさるべしと

18 彼等かれらことばハモルとハモルのシケムのこゝろにかなへり 19 このわかひとヤコブのむすめあいするによりてそのことをなすをおそくせざりきかれはその父󠄃ちゝいへうちにてもつともたふとばれたるものなり 20 ハモルとそのシケムすなはちそのまちもんにいたりまち人々ひと〴〵かたりていひけるは 21 この人々ひと〴〵我等われらむつま彼等かれらをして此地このち住󠄃すみこゝ貿易あきなひをなさしめよひろくしてかれらをいるるにたるなりわれかれらのむすめつまにめとりわれらのむすめをかれらにあたへん 22 もしたゞわれらのうち男子をとこみなかれらが割󠄅禮かつれいをうくるごとく割󠄅禮かつれいうけなばこの人々ひと〴〵われらにきゝ我等われらともにをりひとつたみとなるべし 23 しからばかれらの家畜かちく財產もちものそのもろ〳〵けもの我等われら所󠄃有ものとなるにあらずやたゞかれらにきかんしからばかれらわれらとともにをるべしと 24 まちもんいりするものみなハモルとそのシケムにきゝしたがひまちもんいりする男子をとこみな割󠄅禮かつれいうけたり 25 かく三日みつかにおよび彼等かれらそのいたみをおぼゆるときヤコブの二人ふたりすなはちデナの兄弟きやうだいなるシメオンとレビおの〳〵かたなをとりゆきおもひよらざるときまちおそ男子をとここと〴〵ころ 26 利刄やいばをもてハモルとそのシケムをころしシケムのいへよりデナをたづさへいでたり 27 しかしてヤコブの子等こらゆきてそのころされしものそのまちをかすめたりこれ彼等かれらがそのいもうとけがしたるによりてなり
 59㌻ 
28 またそのひつじうし驢馬ろばおよびそのまちにあるものにあるもの 29 ならびにそのもろ〳〵貨財たからうばひその子女こどもつまこと〴〵とりこにしいへうちなるものこと〴〵かすめたり〘46㌻〙 30 ヤコブ、シメオンとレビにいひけるは汝等なんぢらわれわづらはしわれをしてこのくにひとすなはちカナンびととペリジびとうち避󠄃嫌󠄃いまれしむわれかずすくなければかれあつまりてわれをせめわれをころさんしからわれとわがいへほろぼさるべし 31 かれらいふかれあにわれらのいもうと娼妓あそびめのごとくしてよからんや

第35章

1 こゝかみヤコブにいひたまひけるは起󠄃たちてベテルにのぼりて彼處かしこなんぢさきあにエサウのかほをさけて逃󠄄にぐときなんぢにあらはれしかみ彼處かしこにてだんをきづけと 2 ヤコブすなはちその家人いへのひとおよびすべおのれとともなるものにいふ汝等なんぢらうちにある異神ことなるかみきよめて衣服󠄃ころもかへ 3 我等われら起󠄃たちてベテルにのぼらん彼處かしこにてわれわが苦患くるしみわれこたへわがゆくところの途󠄃みちにてわれとともにいませしかみだんをきづくべし 4 こゝおい彼等かれらそのにある異神ことなるかみおよびそのみゝにあるみゝこと〴〵くヤコブにあたへしかばヤコブこれをシケムのほとりなる橡樹かしのきもとうづめたり 5 かく彼等かれらいでたちしがかみその四周󠄃まはり邑々まち〳〵をしておそれしめたまひければヤコブのあと追󠄃ものなかりき 6 ヤコブおよこれともなるすべてひと遂󠄅つひにカナンのにあるルズにいたこれすなはちベテルなり 7 かれかしこにだんをきづき其處そのところをエルベテルとなづけたりあにかほをさけて逃󠄄にぐときかみこゝにておのれにあらはれたまひしによりてなり 8 ときにリベカの乳󠄃媼うばデボラしにたればこれをベテルのしもにて橡樹かしのきもとはうむれりこれによりてそのをアロンバクテ(哀哭なげきかし)といふ

9 ヤコブ、パダンアラムよりかへりしときかみまたこれにあらはれてこれしゆくしたまふ 10 かみかれにいひたまはくなんぢはヤコブといふなんぢかさねてヤコブとよぶべからずイスラエルをなんぢとなすべしとそのをイスラエルとよびたまふ 11 かみまたかれにいひたまふわれ全󠄃ぜんのうかみなりうめふえ國民たみおよびおほく國民たみなんぢよりいで又󠄂また王等わうたちなんぢのこしよりいでん
 60㌻ 
12 わがアブラハムおよびイサクにあたへわれこれをなんぢにあたへんわれなんぢののち子孫しそんにそのをあたふべしと 13 かみかれとものいひたまひしところよりかれをはなれてのぼりたまふ 14 こゝおいてヤコブかみおのれものいひたまひしところはしらすなはちいしはしらそのうへさけそゝぎまたそのうへあぶらそゝげり 15 しかしてヤコブかみおのれとものいひたまひしところをベテルとなづけたり

16 かくてヤコブベテルよりいでたちしがエフラタにいたるまではなほみちへだゝりあるところにてラケルさんにのぞみそのさんおもかりき 17 かれなんざんにのぞめるとき產婆とりあげをんなこれにいひけるはおそるるなかれなんぢまたこのをとこたり〘47㌻〙 18 かれにのぞみてそのたましひさらんとするときそのをベノニ(わが苦痛くるしみ)とよびたりされその父󠄃ちゝこれをベニヤミン(右手みぎのて)となづけたり 19 ラケルしにてエフラタの途󠄃みちはうむらるこれすなはちベテレヘムなり 20 ヤコブそのはかはしらたてたりこれはラケルのはかはしらといひて今日こんにちまで 21 イスラエルまたいでたちてエダルのたふさきにそのてんまくはれ 22 イスラエルかの住󠄃すめときにルベンゆき父󠄃ちゝそばめビルハといねたりイスラエルこれを
    それヤコブのは十二にんなり
23 すなはちレアのはヤコブの長子ちやうしルベンおよびシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルンなり 24 ラケルのはヨセフとベニヤミンなり 25 ラケルの仕女つかへめビルハのはダンとナフタリなり 26 レアの仕女つかへめジルパのはガドとアセルなり是等これらはヤコブのにしてパダンアラムにてかれうまれたるものなり 27 ヤコブ、キリアテアルバのマムレにゆきてその父󠄃ちゝイサクにいたれりこれすなはちヘブロンなり彼處かしこはアブラハムとイサクの寄寓やどりしところなり

 61㌻ 
28 イサクのよはひは百八十さいなりき 29 イサクおいとし滿氣息いきたえにてそのたみにくはゝれりそのエサウとヤコブこれをはうむる

第36章

1 エサウのでんはかくのごとしエサウはすなはちエドムなり 2 エサウ、カナンのむすめうちよりつまをめとれりすなはちヘテびとエロンのむすめアダおよびヒビびとヂベオンのむすめなるアナのむすめアホリバマこれなり 3 又󠄂またイシマエルのむすめネバヨテのいもうとバスマテをめとれり 4 アダはエリパズをエサウにみバスマテはリウエルを 5 アホリバマはヱウシ、ヤラムおよびコラをうめ是等これらはエサウのにしてカナンのおいかれうまれたるものなり 6 エサウそのつまむすこむすめおよびそのいへすべてひとならび家畜かちくすべて畜類けものおよびそのカナンのにてたるもろ〳〵ものたづさへておとうとヤコブをはなれてほかにゆけり 7 二人ふたり富有もちものおほくしてともにをるあたはざればなりかれらが寄寓やどりしところのはかれらの家畜かちくのためにかれらをいるるをえざりき 8 こゝおいてエサウ、セイルやま住󠄃すめりエサウはすなはちエドムなり

9 セイルやまにをりしエドミびと先祖せんぞエサウのでんはかくのごとし 10 エサウののごとしエサウのつまアダのはエリパズ、エサウのつまバスマテのはリウエル 11 エリパズのはテマン、オマル、ゼポ、ガタムおよびケナズなり〘48㌻〙 12 テムナはエサウのエリパズのめかけにしてアマレクをエリパズにうめ是等これらはエサウのつまアダのなり 13 リウエルのごとしナハテ、ゼラ、シヤンマおよびミザ是等これらはエサウのつまバスマテのなり 14 ヂベオンのむすめなるアナのむすめにしてエサウのつまなるアホリバマののごとしかれヱウシ、ヤラムおよびコラをエサウにうめ

 62㌻ 
15 エサウの子孫しそんこうたるもののごとしエサウの冢子うひごエリパズのにはテマンこうオマルこうゼボこうケナズこう 16 コラこうガタムこうアマレクこう是等これらはエリパズよりいでたるこうにしてエドムのにありき是等これらはアダのなり 17 エサウのリウエルののごとしナハテこうゼラこうシヤンマこうミザこう是等これらはリウエルよりいでたるこうにしてエドムのにありき是等これらはエサウのつまバスマテのなり 18 エサウのつまアホリバマののごとしヱウシこうヤラムこうコラこう是等これらはアナのむすめにしてエサウのつまなるアホリバマよりいでたるこうなり 19 是等これらはエサウすなはちエドムの子孫しそんにしてそのこうたるものなり

20 もとより此地このち住󠄃すまひしホリびとセイルののごとしロタン、シヨバル 、ヂベオン、アナ 21 デシヨン、エゼル、デシヤン是等これらはセイルのホリびとうちこうにしてエドムのにあり 22 ロタンのはホリ、ヘマムなりロタンのいもうとはテムナ 23 シヨバルののごとしアルワン、マナハテ、エバル、シボ、オナム 24 ヂベオンののごとしすなはちアヤとアナこのアナその父󠄃ちゝヂベオンの驢馬ろばかひをりしとき曠野あらのにて溫泉おんせん發見みいだせ 25 アナののごとしデシヨンおよびアホリバマ、アホリバマはアナのむすめなり 26 デシヨンののごとしヘムダン、エシバン、イテラン、ケラン 27 エゼルののごとしビルハン、ザワン、ヤカン 28 デシヤンののごとしウヅ、アラン 29 ホリびとこうたるもののごとしロタンこうシヨバルこうヂベオンこうアナこう 30 デシヨンこうエゼルこうデシヤンこう是等これらはホリびとこうにしてその所󠄃領くににしたがひてセイルのにあり

31 イスラエルの子孫ひと〴〵をさむるわういまだあらざる前󠄃さきにエドムのをさめたるわうのごとし 32 ベオルのベラ、エドムにわうたりそのみやこはデナバといふ 33 ベラしにてボヅラのゼラのヨバブこれにかはりてわうとなる
 63㌻ 
34 ヨバブしにてテマンびとのホシヤムこれにかはりてわうとなる 35 ホシヤムしにてベダデのハダデこれにかはりわうとなるかれモアブのにてミデアンびとうちしことありそのまちはアビテといふ〘49㌻〙 36 ハダデしにてマスレカのサムラこれにかはりてわうとなる 37 サラムしにかはほとりなるレホボテのサウルこれにかはりてわうとなる 38 サウルしにてアクボルのバアルハナンこれにかはりてわうとなる 39 アクボルのバアルハナンしにてハダルこれにかはりてわうとなるそのみやこはパウといふそのつまはメヘタベルといひてマテレデのむすめなりマテレデはメザハブのむすめなり

40 エサウよりいでたるこうはその宗族やから居處ところしたがひていへばのごとしテムナこうアルワこうエテテこう 41 アホリバマこうエラこうピノンこう 42 ケナズこうテマンこうミブザルこう 43 マグデエルこうイラムこう是等これらはエドムのこうにしてその領地りやうち居處すまひによりていへものなりエドミびと先祖せんぞはエサウこれなり

第37章

1 ヤコブはカナンの住󠄃すめすなはちその父󠄃ちゝ寄寓やどりなり 2 ヤコブのでんのごとしヨセフ十七さいにしてその兄弟きやうだいともひつじふヨセフは童子わらべにしてその父󠄃ちゝつまビルハのおよびジルパのともたりしが彼等かれらあしこと父󠄃ちゝにつぐ 3 ヨセフは老年子としよりごなるがゆゑにイスラエルそのすべて兄弟きやうだいよりもふかくこれをあいしこれがためにいろどれころもつくれり 4 その兄弟きやうだい父󠄃ちゝがそのすべて兄弟きやうだいよりもふかかれあいするをかれにく穩和やはらかかれにものいふことをせざりき

5 こゝにヨセフゆめをみてその兄弟きやうだいつげければ彼等かれらいよ〳〵これをにくめり 6 ヨセフ彼等かれらにいひけるは請󠄃ふわがたるこのゆめ 7 我等われらはたけなか禾束たばをむすびたるにわが禾束たばおきかつたてしかして汝等なんぢら禾束たばめぐりたちてわが禾束たばはいせり 8 その兄弟きやうだいたちこれにいひけるはなんぢまことにわれらのきみとなるやまこと我等われらををさむるにいたるやとそのゆめとそのことばのためにます〳〵これをにくめり
 64㌻ 
9 ヨセフ又󠄂またひとつゆめをみてこれをその兄弟きやうだい述󠄃のべていひけるはわれまたゆめをみたるにつきと十一のほしわれをはいせりと 10 すなはちこれをその父󠄃ちゝ兄弟きやうだい述󠄃のべければ父󠄃ちゝかれをいましめてかれにいふなんぢしこのゆめなにぞやわれなんぢはゝとなんぢの兄弟きやうだいまことにゆきてかゞみなんぢはいするにいたらんやと 11 かゝりしかばその兄弟きやうだいかれをねためりされどその父󠄃ちゝはこのことばをおぼえたり

12 こゝにその兄弟きやうだいシケムにゆきて父󠄃ちゝひつじかひゐたりしかば 13 イスラエル、ヨセフにいひけるはなんぢ兄弟きやうだいはシケムにてひつじかひをるにあらずやきたなんぢ彼等かれらにつかはさんヨセフ父󠄃ちゝにいふわれこゝにあり 14 父󠄃ちゝかれにいひけるは請󠄃ゆきなんぢ兄弟きやうだいむれつゝがなきやいなてかへりてわれにつげよとかれをヘブロンのたにより遣󠄃つかはしければ遂󠄅つひにシケムにいたる。〘50㌻〙 15 あるひとかれに遇󠄃ふにかれにさまよひをりしかば其人そのひとかれにとふなんぢなにをたづぬるやといひければ 16 かれいふわれはわが兄弟きやうだいたちをたづぬ請󠄃ふかれらがひつじをかひをる所󠄃ところをわれにつげ 17 そのひといひけるは彼等かれらこゝをされりわれかれらがドタンにゆかんといふをきゝたりとこゝおいてヨセフその兄弟きやうだいあとをおひゆきドタンにてこれ遇󠄃

18 ヨセフの彼等かれら近󠄃ちかづかざる前󠄃まへかれこれはるかてこれをころさんとはか 19 たがひにいひけるは作夢者ゆめみるものきたる 20 去來いざかれをころしてあななげいれあるあしけものこれを食󠄃くらひたりといはしかしてかれゆめ如何いかになるかをるべし 21 ルベンきゝてヨセフを彼等かれらよりすくひださんとしていひけるは我等われらこれをころすべからず 22 ルベンまたかれらにいひけるはをながすなかれこれ曠野あれのこのあななげいれてをこれにつくるなかれとこれ彼等かれらよりすくひだして父󠄃ちゝかへさんとてなりき 23 こゝにヨセフ兄弟きやうだいもといたりければ彼等かれらヨセフのころもすなはちそのたるいろどれころも 24 かれとらへあななげいれたりあな空󠄃からにしてそのなかみづあらざりき

 65㌻ 
25 かくして彼等かれらすわりてパンを食󠄃くらをあげてしに一群ひとくみのイシマエルびと駱駝らくだ香物かうもつ乳󠄃香にうかう沒藥もつやくをおはせてエジプトにくだりゆかんとてギレアデよりきた 26 ユダその兄弟きやうだいにいひけるは我儕われらおとうとをころしてそのかくすもなにえきかあらん 27 去來いざかれをイシマエルびとうらかれ我等われら兄弟きやうだいわれらのにくなればわれらのをかれにつくべからずと兄弟きやうだいこれをよしとす 28 ときにミデアンの商旅あきうど經過󠄃とほりければヨセフをあなよりひきあげぎん二十まいにてヨセフをイシマエルびとうれ彼等かれらすなはちヨセフをエジプトにたづさへゆきぬ

29 こゝにルベンかへりてあなにいたりしにヨセフあなにをらざりしかばそのころも 30 兄弟きやうだいもとにかへりて童子わらべはをらず嗚呼あゝわれ何處いづくにゆくべきや 31 かく彼等かれらヨセフのころもをとり牡山羊をやぎをころしてそのころもぬら 32 そのいろどれころも父󠄃ちゝにおくり遣󠄃つかはしていひけるは我等われらこれをたりなんぢのころもなるやいなやれと 33 父󠄃ちちこれをりていふわがころもなりあしけものかれをくらへりヨセフはかならずさかれしならんと 34 ヤコブそのころも麻󠄃布あさぬのこしにまとひひさしくそののためになげけり 35 そのむすこむすめみな起󠄃たちてかれをなぐさむれどもその慰謝なぐさめをうけずしてわれなげきつゝ陰府よみにくだりてわがのもとにゆかんといふかくその父󠄃ちちかれのためになき〘51㌻〙 36 さてミデアンびとはエジプトにてパロの侍衞ぢゑいかしらポテパルにヨセフをうれ

第38章

1 當時そのころユダ兄弟きやうだいをはなれてくだりアドラムびとはヒラといふもの近󠄃邊ほとりてんまくをはりしが 2 ユダかしこにてカナンびとはシュアといふもの女子むすめこれをめとりてその所󠄃ところにいる 3 かれはらみて男子なんしみければユダそのをエルとなづく 4 かれふたたびはらみて男子なんしみそのをオナンとなづけ 5 またかさねてはらみて男子なんしみてそのをシラとなづくこのをうみけるときユダはクジブにありき 6 ユダその長子ちやうしエルのためにつまをむかふそのをタマルといふ
 66㌻ 
7 ユダの長子ちやうしエル、ヱホバの前󠄃まへあくをなしたればヱホバこれをしなしめたまふ 8 こゝにユダ、オナンにいひけるはなんぢあにつま所󠄃ところにいりてこれをめとりなんぢあにをしてたねをえせしめよ 9 オナンそのたねおのれのものとならざるをしりたればあにつま所󠄃ところにいりしときあにをえせしめざらんためにもらしたり 10 かくなせしことヱホバのあしかりければヱホバかれをもしなしめたまふ 11 ユダそのよめタマルにいひけるは嫠婦󠄃やもめとなりてなんぢ父󠄃ちゝいへにをりわがシラのひととなるをてとおそらくはシラもまたその兄弟きやうだいのごとくしぬるならんとおもひたればなりタマルすなはちゆきてその父󠄃ちゝいへにをる

12 かさなりてのちシュアのむすめユダのつましにたりユダなぐさめをいれてそのともアドラムびとヒラとともにテムナにのぼりその羊毛ひつじのけもの所󠄃ところにいたる 13 こゝにタマルにつげてよなんぢのしうとはそのひつじきらんとてテムナにのぼるといふものありしかば 14 かれそのやもめ服󠄃ころも脫󠄁ぬぎすて被衣かつぎをもてをおほひつゝみテムナの途󠄃みちかたはらにあるエナイムのいりくちはシラびととなりたれどもおのれこれがつまにせられざるをたればなり 15 かれそのかほおほひゐたりしかばユダこれを娼妓あそびめならんとおもひ 16 途󠄃みちかたはらにてかれ請󠄃きたりてわれをしてなんぢ所󠄃ところにいらしめよといふはそのつまなるをしらざればなりかれいひけるはなんぢなにわれにあたへてわが所󠄃ところにいらんとするや 17 ユダいひけるはわれむれより山羊やぎをおくらんかれいふなんぢそれをおくるまでしるしをあたへんか 18 ユダなにしるしをなんぢにあたふべきやといふにかれなんぢいんひもなんぢつゑをといひければすなはちこれをあたへてかれ所󠄃ところにいりぬかれユダによりはらめり 19 かれ起󠄃たちりその被衣かつぎをぬぎすて嫠婦󠄃やもめ服󠄃ころもをまとふ 20 かくてユダ婦󠄃をんなよりしるしをとらんとてそのともアドラムびとたくして山羊やぎをおくりけるがかれ婦󠄃をんなざれば〘52㌻〙
 67㌻ 
21 そのところひととふ途󠄃みちかたはらなるエナイムの娼妓あそびめ何處いづこにをるやといふにこゝには娼妓あそびめなしといひければ 22 ユダのもとにかへりていふわれかれいださずまたそのところひとこゝには娼妓あそびめなしといへりと 23 ユダいひけるはかれにとらせおけおそらくはわれら笑抦ものわらひとならんわれこの山羊やぎをおくりたるになんぢかれをざるなりと

24 三月みつきばかりありてのちユダにつぐものありていふなんぢよめタマル姦淫かんいんをなせりまたその姦淫かんいんによりてはらめりユダいひけるはかれひきいだしてやくべし 25 かれひきいだされしときそのしうとにいひつかはしけるはこれをもてるひとによりてわれはらめりとかれすなはち請󠄃ふこのいんひもつゑたれ所󠄃屬ものなるかを辨別みわけよといふ 26 ユダこれを見識みしりていひけるはかれわれよりもたゞしわれかれをわがわがシラにあたへざりしによりてなりとふたゝびこれをらざりき 27 かくてさんときにいたりてるにそのはら孿ふたごあり 28 そのうむときいでしかば產婆とりあげをんなこれさきにいづといひてあかいとをとりてそのにしばりしが 29 ひきこむるにあたりて兄弟きやうだいいでたればなんぢなんぞやぶりいづるやそのやぶりなんぢせんといへりゆゑにそのはペレヅ(やぶり)とよば 30 その兄弟きやうだい絳線あかいとのあるもののちにいづそのはゼラとよばる

第39章

1 ヨセフたづさへられてエジプトにくだりしがエジプトびとポテパル、パロのしん侍衞ぢゑいかしらなるものかれ其處そこにたづさへくだれるイシマエルびとよりこれを 2 ヱホバ、ヨセフとともにいまかれ享通󠄃者さかゆるものとなりてその主人しゆじんなるエジプトびといへにをる 3 その主人しゆじんヱホバのかれとともにいますをまたヱホバがかれのすべてなすところを享通󠄃さかえしめたまふをたり 4 これによりてヨセフかれのこゝろにかなひてその近󠄃侍そばづかへとなるかれヨセフにそのいへつかさどらしめその所󠄃有もてるものこと〴〵くそのゆだねたり 5 かれヨセフにそのいへとそのもてすべてものをつかさどらせしときよりしてヱホバ、ヨセフのためにそのエジプトびといへめぐみたまふすなはちヱホバの祝福めぐみかれがいへはたけもてすべてものにおよぶ
 68㌻ 
6 かれそのもてものをことごとくヨセフのにゆだねその食󠄃くらふパンのほかなにもかへりみざりきそれヨセフは容貌かたちうるはしくしてかほうつくしかりき

7 これらのことのちその主人しゆじんつまヨセフにをつけてわれいねよといふ 8 ヨセフいなみて主人しゆじんつまにいひけるはよわが主人しゆじんいへうちものをかへりみずそのもてるものことごとくわがゆだ 9 このいへにはわれよりおほいなるものなし又󠄂また主人しゆじんなにをもわれきんぜずたゞなんぢのぞくのみなんぢはそのつまなればなりされわれいかでこのおほいなるあくをなしてかみつみををかすをえんや〘53㌻〙 10 かれ日々ひゞにヨセフにいひよりたれどもヨセフきかずしてこれといねずまたともにをらざりき 11 當時そのころヨセフそのつとめをなさんとていへにいりしがいへひと一箇ひとりもそのうちにをらざりき 12 ときかの婦󠄃をんなそのころもとらへわれといねよといひければヨセフころもかれすておきてそとにげいでたり 13 かれヨセフがそのころもおのれすておきてにげいでしを 14 そのいへ人々ひと〴〵よびてこれにいふよヘブルびと我等われら所󠄃ところにつれきたり我等われらにたはむれしむかれわれといねんとてわれ所󠄃ところにいりきたりしかばわれおほごゑによばはれり 15 かれわがこゑをあげてよばはるをきゝしかばそのころもをわがもとにすておきてそとにげいでたりと 16 そのころもかたはらおき主人しゆじんいへかへるを 17 かくてかれこのことばのごとく主人しゆじんにつげていふなんぢわれらにたづさへきたりしヘブルのしもべわれにたはむれんとてわがもとにいりきたりしが 18 われこゑをあげてよばはりしかばそのころもわがもとにすておきてにげいでたり

19 主人しゆじんそのつまおのれにつげてなんぢしもべかくのごとくわれになせりといふことばきゝいかりはつせり 20 ここおいてヨセフの主人しゆじんかれとらへてひとやにいるそのひとやわう囚徒めしうどつな所󠄃ところなりヨセフ彼處かしこにてひとやにをりしが 21 ヱホバ、ヨセフとともにいましてこれ仁慈あはれみくは典獄ひとやをさ恩顧󠄃めぐみをこれにえさせたまひければ
 69㌻ 
22 典獄ひとやをさひとやにある囚人めしうどをことごとくヨセフのまかせたり其處そこになす所󠄃ところことみなヨセフこれをなすなり 23 典獄ひとやをさそのまかせたる所󠄃ところことなにをもかへりみざりきはヱホバ、ヨセフとともにいませばなりヱホバかれのなすところをさかえしめたまふ

第40章

1 これらのことのちエジプトわう酒人さかびと膳夫かしはでそのしゆエジプトわうつみををかす 2 パロその二人ふたりしんすなはち酒人さかびとかしら膳夫かしはでかしらいかりて 3 これ侍衞じゑいかしらいへうちなるひとや幽囚とらふヨセフがつながれをる所󠄃ところなり 4 侍衞じゑいかしらヨセフをして彼等かれらそばはべらしめたればヨセフこれにつかふ彼等かれら幽囚とらはれてたり 5 ここひとやつながれたるエジプトわう酒人さかびと膳夫かしはで二人ふたりともに一夜ひとようちおの〳〵ゆめたりそのゆめはおのおのその解明ときあかしにかなふ 6 ヨセフ朝󠄃あさおよびて彼等かれら所󠄃ところいりるに彼等かれら物憂ものうげ 7 こゝおいてヨセフその主人しゆじんいへおのれとともに幽囚とらはれをるパロのしんとふ汝等なんぢらなにゆゑに今日けふかほいろあしきやといふに 8 彼等かれらこれにいふ我等われらゆめたれどこれものなしとヨセフ彼等かれらにいひけるはことかみによるにあらずや請󠄃われ述󠄃のべ
〘54㌻〙
9 酒人さかびとかしらそのゆめをヨセフに述󠄃のべこれにいふわれゆめうちしにわが前󠄃まへひとつ葡萄樹ぶだうづるあり 10 そのつるみつえだありいではなひらきて葡萄ぶだうなりふさをなしてうみたるがごとくなりき 11 ときにパロのさかづきわがにありわれ葡萄ぶだうとりてこれをパロのさかづきしぼりそのさかづきをパロのさゝげたり 12 ヨセフかれにいひけるはその解明ときあかしかくのごとしみつえだ三日みつかなり 13 いまより三日みつかうちにパロなんぢのかうべなんぢもと所󠄃ところにかへさんなんぢさき酒人さかびとたりしときになせしごとくパロのさかづきをそのさゝぐるにいたらん 14 され請󠄃なんぢよくならんときわれをおもひてわれ恩惠めぐみをほどこしわがことをパロにのべてこのいへよりわれをいだ 15 われはまことにヘブルびとよりさらはしものなればなりまたここにてもわれらうにいれらるるがごときことはなさざりしなり

 70㌻ 
16 こゝ膳夫かしはでかしらその解明ときあかしよかりしをてヨセフにいふわれゆめたるにしろきパン三筐みかごわがかしらにありて 17 そのうへかごには膳夫かしはでがパロのためにつくりたる各種さま〴〵くひものありしがとりわがかしらかごうちよりこれをくらへり 18 ヨセフこたへていひけるはその解明ときあかしはかくのごとしみつかご三日みつかなり 19 いまより三日みつかうちにパロなんぢかうべあげはなしてなんぢかけんしかしてとりなんぢにくをくらひとるべしと 20 第三日みつかめはパロの誕辰うまれびなればパロそのすべて臣僕けらい筵席ふるまひをなし酒人さかびとかしら膳夫かしはでかしらをしてかうべをその臣僕けらいうちもたげしむ 21 すなはちパロ酒人さかびとかしらをそのつとめにかへしければかれさかづきをパロのさゝげたり 22 されど膳夫かしはでかしらかけらるヨセフの彼等かれら解明ときあかせるがごとし 23 しかるに酒人さかびとかしらヨセフをおぼえずしてこれわすれたり

第41章

1 ねんのちパロゆめみることありすなはかはほとりにたちて 2 るになゝつうるはしきこえたるうしかはよりのぼりてあし食󠄃くら 3 そののちまたなゝつみにくやせたるうしかはよりのぼりかはふちにてかのうしそばにたちしが 4 そのみにくやせたるうしかのうるはしきこえたるなゝつうし食󠄃くらひつくせりパロこゝにいたりてめさ 5 かれまたねむりふたゝゆめみるにひとつくきなゝつこえたるいできたる 6 そののちに又󠄂またしなびて東風こちやけたるなゝついできたりしが 7 そのなゝつのしなびたるかのなゝつこえみのりたる呑盡のみつくせりパロめさめみるゆめなりき 8 パロ朝󠄃あさにおよびてその心安こころやすからずひとをつかはしてエジプトの法術士はふじゆつしとその博士はかせみなことごとくこれにそのゆめ述󠄃のべたりされこれをパロにときうるものなかりき
〘55㌻〙
9 とき酒人さかびとかしらパロにつげていふわれ今日けふわが過󠄃あやまちをおもひいづ 10 かつてパロそのしもべいかりわれ膳夫かしはでかしら侍衞じゑいかしらいへ幽囚とらへたまひしとき 11 われかれともに一夜ひとよのうちにゆめおの〳〵その解明ときあかしにかなふゆめをみたりしが 12 彼處かしこ侍衞じゑいかしらしもべなるわかきヘブルびとわれらとともにあり我等われらこれにのべたればかれわれらのゆめときそのゆめにしたがひて各人おの〳〵解明ときあかしをなせり
 71㌻ 
13 しかしてそのことかれがときたるごとくなりてわれはわがつとめにかへりかれかけらる

14 こゝおいてパロひとをやりてヨセフをしければ急󠄃いそぎてこれをひとやよりいだせりヨセフすなはちひげころもをかへてパロのもとにいりきた 15 パロ、ヨセフにいひけるはわれゆめをみたれどこれをとくものなしきくなんぢゆめをきゝてこれくことをうると 16 ヨセフ、パロにこたへていひけるはわれによるにあらずかみパロの平󠄃安へいあんつげたまはん 17 パロ、ヨセフにいふわれゆめかはきしにたちてるに 18 かはよりなゝつこえたるうるはしきうしのぼりてあし食󠄃くら 19 のちまた弱󠄃よわはなはみにくやせたるなゝつうしのぼりきたるそのあしことエジプト全󠄃國ぜんこくにわがいまざるほどなり 20 そのやせたるみにくうしさきなゝつこえたるうし食󠄃くらひつくしたりしが 21 すではらにいりてもそのはらにいりしことしれずなほ前󠄃さきのごとくみにくかりきわれここにいたりてめさめたり 22 われまたゆめるになゝつみのりたるひとつくきにいできたる 23 そののちにまたいぢけしなびて東風こちにやけたるなゝつしやうじたりしが 24 そのしなびたるかのなゝつよきのみつくせりわれこれを法術士はふじゆつしつげたれどもわれにこれをしめすものなし

25 ヨセフ、パロにいひけるはパロのゆめひとつなりかみそのなさんとする所󠄃ところをパロにしめしたまへるなり 26 なゝつよきうしは七ねんなゝつよきも七ねんにしてゆめひとつなり 27 そののちにのぼりしなゝつやせたるみにくうしは七ねんにしてその東風こちにやけたるなゝつ空󠄃穗しひなほは七ねん饑饉ききんなり 28 これはわがパロにまうすところなりかみそのなさんとするところをパロにしめしたまふ 29 エジプトの全󠄃地ぜんちに七ねんおほいなるほうねんあるべし 30 そののちに七ねんきやうねんおこらんしかしてエジプトのにありしほうさくみなわするるにいたるべし饑饉ききんくにほろぼさん 31 のちにいたるその饑饉ききんはなはだはげしきにより前󠄃さきほうさくくにうちれざるにいたらん
 72㌻ 
32 パロのふたゝびゆめをかさねたまひしはかみがこのことをさだめて速󠄃すみやかこれをなさんとしたまふなり〘56㌻〙 33 さればパロ慧󠄄さとかしこひとをえらみてこれにエジプトのくにをさめしめたまふべし 34 パロこれをなしこくちう官吏くわんりおきてその七ねんほうねんうちにエジプトのくに分󠄃ぶんいちとりたまふべし 35 しかしてその官吏くわんりをしてきたらんとするそのとしすべてりやう食󠄃しよくあつめてその穀物こくもつをパロのたくはへしめりやう食󠄃しよく邑々まち〳〵にかこはしめたまふべし 36 そのりやう食󠄃しよくくにのために畜藏たくはへおきてエジプトのくににのぞむ七ねん饑饉ききんそなくにをして饑饉ききんのためにほろびざらしむべし

37 パロとそのすべて臣僕けらい此事このことよしとす 38 ここおいてパロその臣僕けらいにいふ我等われらかみみたまのやどれるかくのごときひといだすをえんやと 39 しかしてパロ、ヨセフにいひけるはかみこれこと〴〵なんぢにしめしたまひたればなんぢのごとく慧󠄄さとかしこものなかるべし 40 なんぢわがいへつかさどるべしわがたみみななんぢくちにしたがはんたゞくらゐにおいてのみわれなんぢよりおほいなるべし 41 パロ、ヨセフにいひけるはわれなんぢをエジプト全󠄃國ぜんこく冢宰つかさとなすと 42 パロすなはち指環ゆびわをそのより脫󠄁はづしてこれをヨセフのにはめこれしろぬのかねくさりをそのくびにかけ 43 これをしておのれのもてるつぎくるまのらしめしたにゐよとその前󠄃まへよばしむかくかれをエジプト全󠄃國ぜんこく冢宰つかさとなせり 44 パロ、ヨセフにいひけるはわれはパロなりエジプト全󠄃國ぜんこくなんぢ允准ゆるしをえずしてあしをあぐるものなかるべしと 45 パロ、ヨセフのをザフナテパネアとなづけまたオンの祭司さいしポテパルのむすめアセナテをこれにあたへてつまとなさしむヨセフいでてエジプトのをめぐる

46 ヨセフはエジプトのわうパロのまへにたちとき三十さいなりきヨセフ、パロのまへをいで遍󠄃あまねくエジプトの巡󠄃めぐれり 47ねんほうねんうちやまなしてものしやう 48 ヨセフすなはちエジプトのにありしその七ねんりやう食󠄃しよくあつめてそのりやう食󠄃しよく邑々まち〳〵をさすなはまち周󠄃圍まはり田圃たはたりやう食󠄃しよくそのまちうちをさ
 73㌻ 
49 ヨセフ海隅はまいさごのごとくはなはおほ穀物こくもつたくは遂󠄅つひかぞふることをやむるにいたかずかぎりなければなり 50 饑饉ききんとしのいたらざる前󠄃まへにヨセフに二人ふたりうまるこれはオンの祭司さいしポテパルのむすめアセナテのうみたるものなり 51 ヨセフその冢子うひごをマナセ(わすれ)となづけてかみわれをしてわがもろ〳〵苦難くるしみとわが父󠄃ちゝいへすべてことをわすれしめたまふと 52 又󠄂またつぎをエフライム(おほうまる)となづけていふかみわれをしてわが艱難なやみにておほくのをえせしめたまふと 53 こゝにエジプトのくにの七ねんほうねんをはり〘57㌻〙 54 ヨセフのいひしごとく七ねんきやうねんきたりはじむその饑饉ききんもろ〳〵くににありされどエジプト全󠄃國ぜんこくには食󠄃物しよくもつありき 55 エジプト全󠄃國ぜんこくうゑときたみさけびてパロに食󠄃物しよくもつふパロ、エジプトのすべてひとにいひけるはヨセフにかれ汝等なんぢらにいふところをなせと 56 饑饉ききん全󠄃地ぜんちおもてにありヨセフすなはちもろ〳〵倉廩くらをひらきてエジプトびとうりわたせり饑饉ききんますますエジプトのくににはげしくなる 57 饑饉ききんもろ〳〵くににはげしくなりしかば諸國くにぐにひとエジプトにきたりヨセフにいたりて穀物こくもつ

第42章

1 ヤコブ、エジプトに穀物こくもつあるをしかばその子等こらにいひけるは汝等なんぢらなんぞたがひにかほあはするや 2 ヤコブまたいふわれエジプトに穀物こくもつありときけ彼處かしこにくだりて彼處かしこより我等われらのためにかひきたれしからばわれらいくるををまぬかれんと 3 ヨセフの十にん兄弟きやうだいエジプトにて穀物こくもつをかはんとてくだりゆけり 4 されどヨセフのおとうとベニヤミンはヤコブこれをその兄弟きやうだいとともに遣󠄃つかはさざりきおそらくは災難わざはひかれのにのぞむことあらんとおもひたればなり 5 イスラエルの子等こら穀物こくもつかはんとてきたれものとともにきたはカナンの饑饉ききんありたればなり 6 ときにヨセフはくに總督つかさにしてくにすべてひとうることをなせりヨセフの兄弟きやうだいきたりてその前󠄃まへふしはい
 74㌻ 
7 ヨセフその兄弟きやうだいてこれをしりたれどもしらざるもののごとくして荒々あら〳〵しくこれにものいふすなは彼等かれら汝等なんぢら何處いづくよりきたれるやといへば彼等かれらいふりやう食󠄃しよくかはんためにカナンのよりきたれりと 8 ヨセフはその兄弟きやうだいをしりたれども彼等かれらはヨセフをしらざりき 9 ヨセフそのさき彼等かれらことゆめみたるゆめおもひいだし彼等かれらいひけるは汝等なんぢら間者かんじやにしてこのくにすきうかゞはんとてきたれるなり 10 彼等かれらこれにいひけるはわがしゆしからずただりやう食󠄃しよくをかはんとてしもべきたれるなり 11 我等われらはみな一箇ひとりひとにして篤實まことなるものなりしもべ間者かんじやにあらず 12 ヨセフ彼等かれらにいひけるはいな汝等なんぢら此地このくにすきうかゞはんとてきたれるなり 13 彼等かれらいひけるはしもべは十二にん兄弟きやうだいにしてカナンの一箇ひとりひとなり季子すゑのこ今日けふ父󠄃ちゝとともにをる又󠄂また一人ひとりはをらずなりぬ 14 ヨセフかれらにいひけるはわが汝等なんぢらにつげて汝等なんぢら間者かんじやなりといひしはこのことなり 15 汝等なんぢらかくしてその眞實まことをあかすべしパロの生命いのちをさしてちか汝等なんぢら末弟すゑのおとうとここにきたるにあらざれば汝等なんぢらこゝをいづるをえじ 16 汝等なんぢら一人ひとりをやりて汝等なんぢらおとうとをつれきたらしめよ汝等なんぢらをばつなぎおきて汝等なんぢらことばをためしなんぢらのうち眞實まことあるやいなやをみんパロの生命いのちをさしてちか汝等なんぢらはかならず間者かんじやなりと〘58㌻〙 17 彼等かれらみなともに三日みつかのあひだ幽囚とらへおけり

18 三日みつかにおよびてヨセフかれらにいひけるはわれかみおそ汝等なんぢらかくなして生命いのちをえよ 19 汝等なんぢらもし篤實まことなるものならばなんぢらの兄弟きやうだい一人ひとりをしてこのひとやつながれしめ汝等なんぢら穀物こくもつをたづさへゆきてなんぢらの家々いへ〳〵うゑをすくへ 20 たゞなんぢらの末弟すゑのおとうとわれにつれきたるべしさすればなんぢらのことば眞實まことあらはれて汝等なんぢらをまぬかるべし彼等かれらすなはちかくなせり 21 こゝかれらたがひにいひけるは我等われらおとうとことによりてまことつみあり彼等かれらかれわれらに只管ひたすらにねがひしときにそのこゝろくるしみながらこれきかざりきゆゑにこのくるしみわれらにのぞめるなり 22 ルベンかれらにこたへていひけるはわれなんぢらにいひて童子わらべつみををかすなかれといひしにあらずやしかるに汝等なんぢらきかざりき是故このゆえまたかれをながせしつみをたゞさると
 75㌻ 
23 彼等かれらはヨセフがこれするをしらざりきたがひ通󠄃辨つうべんをもちひたればなり 24 ヨセフ彼等かれらはなれゆきてまたかれらにかへりてこれとかたり遂󠄅つひにシメオンをかれらのうちよりりそののまへにてこれしばれり 25 しかしてヨセフめいじてそのうつは穀物こくもつをみたしめその人々ひと〴〵かねふくろ返󠄄かへさしめ又󠄂また途󠄃みち食󠄃しよくこれにあたへしむヨセフかくかれらになせり

26 彼等かれらすなはち穀物こくもつ驢馬ろばにおはせて其處そこをさりしが 27 その一人ひとり旅邸やどりにて驢馬ろばくひものあたへんとてふくろをひらきそのかねたりふくろくちにありければなり 28 かれその兄弟きやうだいにいひけるはわがかね返󠄄かへしてありふくろなかにありとこゝにおいて彼等かれらきも消󠄃おそれてたがひにかみわれらになしたまふ此事このことなんぞやといへり 29 かくて彼等かれらカナンのにかへりて父󠄃ちゝヤコブの所󠄃ところにいたりそのにありし事等ことどもこと〴〵これにつげていひけるは 30 かのくにしゆ荒々あら〳〵しく我等われらにものいひわれらをもてくにうかゞものとなせり 31 われかれにいふ我等われら篤實まことなるものなり間者かんじやにあらず 32 われらは十二にん兄弟きやうだいにしておな父󠄃ちゝなり一人ひとりはをらずなりすゑのは今日けふ父󠄃ちゝとともにカナンのにありと 33 くにしゆなるそのひとわれらにいひけるはわれかくして汝等なんぢら篤實まことなるをしらん汝等なんぢら兄弟きやうだい一人ひとりわがもとにのこしりやう食󠄃しよくをたづさへゆきてなんぢらの家々いへ〳〵うゑをすくへ 34 しかしてなんぢらのすゑおとうとをわがもとにつれきたれさすればわれなんぢらが間者かんじやにあらずして篤實まことなるものたるをしらんわれなんぢらの兄弟きやうだい汝等なんぢら返󠄄かへ汝等なんぢらをしてこのくににて交易かうえきをなさしむべしと
〘59㌻〙
35 こゝ彼等かれらそのふくろあけたるに各人おの〳〵金包かねづつみそのふくろのなかにあり彼等かれらとその父󠄃ちゝ金包かねづつみておそれたり 36 その父󠄃ちゝヤコブ彼等かれらにいひけるは汝等なんぢらわれをしてうしなはしむヨセフはをらずなりシメオンもをらずなりたるにまたベニヤミンをとらんとすこれみなわがにかゝるなり 37 ルベン父󠄃ちゝつげていふわれもしかれなんぢにつれかへらずばわがふたりのころかれをわがにわたせわれこれをなんぢにつれかへらん 38 ヤコブいひけるはわがはなんぢらとともにくだるべからずかれあにしにかれひとり遺󠄃のこりたればなりもしなんぢらがゆくところの途󠄃みちにて災難わざはひかれのにおよばゞ汝等なんぢらはわが白髮しらがをしてかなしみてはかにくだらしむるにいたらん
 76㌻ 

第43章

1 饑饉ききんそのにはげしかりき 2 こゝ彼等かれらエジプトよりもちきたりし穀物こくもつ食󠄃くひつくせしとき父󠄃ちゝかられらにふたゝびゆきて少許すこしりやう食󠄃しよくかひきたれといひければ 3 ユダ父󠄃ちゝにかたりていひけるは彼人かのひとかたく我等われらをいましめていふなんぢらのおとうとなんぢらとともにあるにあらざればなんぢらはわがかほをみるべからずと 4 なんぢもしおとうとをわれらとともに遣󠄃つかはさば我等われらくだりなんぢのためにりやう食󠄃しよくふべし 5 されどなんぢもしかれをつかはさずば我等われらくだらざるべしはかのひとわれらにむかひ汝等なんぢらおとうとなんぢらとともにあるにあらざればなんぢわがかほをみるべからずといひたればなりと 6 イスラエルいひけるは汝等なんぢらなにゆゑに汝等なんぢらなほおとうとのあることを彼人かのひとにつげてわれあしくなすや 7 彼等かれらいふ其人そのひとわれらの模樣ありさまとわれらのしんぞくとひたゞしてなんぢらの父󠄃ちゝなほ生存いきながらへをるや汝等なんぢらおとうとをもつやといひしによりそのことば條々かど〳〵にしたがひてかれにつげたるなり我等われらいかでかかれ汝等なんぢらおとうとをつれくだれといふならんとしるをえん 8 ユダ父󠄃ちゝイスラエルにいひけるは童子わらべをわれとともに遣󠄃つかはせ我等われらたちてゆかしからば我儕われらなんぢおよびわれらの子女こどもいくることををまぬかるべし 9 われかれうけあはんなんぢわがにかれをわれもしかれなんぢにつれかへりてなんぢのまへにおかずばわれ永遠󠄄とこしなへつみをおはん 10 我儕われらもし濡滯ためらふことなかりしならばかならずすでにゆきてふたゝびかへりしならん 11 父󠄃ちゝイスラエル彼等かれらにいひけるはしからかくなせ汝等なんぢらくにめいぶつうつはにいれたづさへくだりて彼人かのひと禮物れいもつとせよ乳󠄃香にうかう少許すこしみつ少許すこし香物かうもつ沒藥もつやく胡桃くるみおよび巴旦杏はだんきやう
 77㌻ 
12 又󠄂またいちばいかねりゆけ汝等なんぢらふくろくち返󠄄かへしてありしかのかねふたゝにたづさへゆくべしおそらくは差謬あやまりにてありしならん 13 かつまたなんぢらのおとうとたづさ起󠄃たちて ふたゝび其人そのひと所󠄃ところにゆけ〘60㌻〙 14 ねがはくは全󠄃ぜんのうかみそのひとのまへにて汝等なんぢら矜恤あはれみそのひとをして汝等なんぢらほか兄弟きやうだいとベニヤミンをはなちかへさしめたまはんことをもしわれわかるべくあらばわかれんと 15 こゝおいてかの人々ひと〴〵その禮物れいもついちばいかねりベニヤミンをたづさへて起󠄃たちてエジプトにくだりヨセフの前󠄃まへ

16 ヨセフ、ベニヤミンのかれらとともなるをてその家宰いへづかさにいひけるはこの人々ひと〴〵いへ導󠄃みちびけものほふりとゝのへよこの人々ひと〴〵卓午ひるわれとともに食󠄃しよくをなすべければなり 17 其人そのひとヨセフのいひしごとくなし其人そのひとこの人々ひと〴〵をヨセフのいへ導󠄃みちびけり 18 人々ひと〴〵ヨセフのいへ導󠄃みちびかれたるによりておそれいひけるははじめにわれらのふくろにかへりてありしかねことのために我等われらはひきいれらるこれわれらを抑留とりおさへて我等われらにせまりとらへて奴隸どれいとなしかつわれらの驢馬ろばとらんとするなりと 19 彼等かれらすなはちヨセフの家宰いへづかさ進󠄃すゝみよりていへいりくちにてこれにかたりて 20 いひけるはしゆ我等われらまこと最初はじめくだりてりやう食󠄃しよくかひたり 21 しかるに我等われら旅邸やどりいたりてふくろひらるに各人おの〳〵かねそのふくろくちにありてそのかねりやう全󠄃まつたかりしされ我等われらこれをにもちかへれり 22 又󠄂またりやう食󠄃しよくほかかねをもにもちくだる我等われらかねふくろにいれたるものたれなるかわれらはしらざるなり 23 かれいひけるはなんぢやすんぜよおそるるなかれなんぢらのかみなんぢらの父󠄃ちゝかみ財寶たから汝等なんぢらふくろにおきてなんぢらにたまひしなりなんぢらのかねわれにとゞけりと遂󠄅つひにシメオンを彼等かれら所󠄃ところにたづさへいだせり 24 かくて其人そのひとこの人々ひと〴〵をヨセフのいへ導󠄃みちびみづをあたへてそのあし濯󠄄あらはしめ又󠄂またその驢馬ろば飼草かひばをあたふ 25 彼等かれら其處そこにて食󠄃しよくをなすなりときゝしかば禮物れいもつ調ととのへてヨセフの日午ひるきたるをまつ

 78㌻ 
26 こゝにヨセフいへにかへりしかば彼等かれらその禮物れいもついへにもちきたりてヨセフのもとにいたりふしてこれをはい 27 ヨセフかれらの安否あんぴをとふていふ汝等なんぢら父󠄃ちゝなんぢらがさきにかたりしその老人らうじんつゝがなきやなほいきながらへをるや 28 彼等かれらこたへてわれらの父󠄃ちゝなんぢしもべつゝがなくしてなほいきながらへをるといひをかゞめれいをなす 29 ヨセフをあげてそのはゝなるおのれおとうとベニヤミンをていひけるはこれなんぢらがさきわれにかたりしなんぢらのわか兄弟きやうだいなるや又󠄂またいふわがねがはくはかみなんぢをめぐみたまはんことをと 30 ヨセフそのおとうとのためにこゝろやくるがごとくなりしかば急󠄃いそぎてそのなくべきところを尋󠄃たづしつにいりて其處そこなけ 31 しかしてかほをあらひてみづからおさへて食󠄃しよくをそなへよといふ〘61㌻〙 32 すなはちヨセフはヨセフ彼等かれら彼等かれらばい食󠄃しよくするエジプトびとはエジプトびと別々べつべつこれそなはエジプトびとヘブルびととも食󠄃しよくすることをえざるによるそのことエジプトびとけがらはしとするところなればなり 33 かくて彼等かれらヨセフの前󠄃まへすわるに長子ちやうしをばそのちやうたるにしたがひてすわらせわかものをばその幼少わかきにしたがひてすわらせければその人々ひと〴〵おどろきあへり 34 ヨセフおのれのまへよりさら彼等かれらそなふベニヤミンのさらほかひとのよりもばいおほかりきかれらのみてヨセフとともにたのしめり

第44章

1 こゝにヨセフその家宰いへづかさめいじていふこの人々ひと〴〵ふくろにその負󠄅おひうるほどりやう食󠄃しよくみた各人おの〳〵かねをそのふくろくち 2 またわがさかづきすなはちぎんさかづきわかものふくろくちいれてその穀物こくもつ金子かねとともにあらしめよとかれがヨセフがいひしことばのごとくなせり 3 かくてのあくるにおよびてその人々ひと〴〵驢馬ろばをかへしけるが 4 かれら城邑まちをいでてなほほどとほからぬにヨセフ家宰いへづかさにいひけるは起󠄃たちてかの人々ひと〴〵あと追󠄃ひおひつきしときこれにいふべしなんぢらなんぞあくをもてぜんにむくゆるや 5 それはわがしゆがもちひて又󠄂またもちひてつねうらなものにあらずやなんぢらかくなすはしと
 79㌻ 
6 こゝおい家宰いへづかさかれらにおひつきてこのことばをかれらにいひければ 7 かれらこれにいふしゆなにゆゑにこのことをいひたまふやしもべきはめてこのことをなさず 8 われらのふくろくちにありしかねはカナンのよりなんぢ所󠄃ところにもちかへれりされ我等われらいかでなんぢしゆいへより金銀きんぎんをぬすまんや 9 しもべうちたれあたるもそのものしぬべし我等われらまたわがしゆ奴隸どれいとなるべし 10 かれいひけるはさらばなんぢらのことばのごとくせんそれあたりしものはわが奴隸どれいとなるべし汝等なんぢらとがなしと 11 こゝにおいて彼等かれら急󠄃いそぎておの〳〵そのふくろにおろしおの〳〵そのふくろをひらきしかば 12 かれすなはちさが長者としうへよりはじめて少者とししたにをはるにさかづきはベニヤミンのふくろにありき 13 斯有かゝりしかば彼等かれらそのころもきおのおのその驢馬ろば負󠄅おはせてまちにかへる

14 しかしてユダとその兄弟きやうだいヨセフのいへにいたるにヨセフなほ其處そこにをりしかばその前󠄃まへ 15 ヨセフかれらにいひけるは汝等なんぢらがなしたるこのことなにぞやわれのごときひとうらなひうるものなるをしらざるや 16 ユダいひけるは我等われらしゆなにをいはんやなにをのべんや如何いかにしてわれらの正直たゞしきをあらはさんやかみしもべつみ摘發あらはしたまへりされ我等われらおよびこのさかづきあたりしものともしゆ奴隸どれいとなるべし〘62㌻〙 17 ヨセフいひけるはきはめてしかせじさかづきあたりしひとはわが奴隸どれいとなるべし汝等なんぢら安然やすらか父󠄃ちゝにかへりのぼるべし

18 ときにユダかれに近󠄃ちかよりていひけるはわがしゆ請󠄃しもべをしてしゆみゝ一言ひとこといふをえせしめよしもべにむかひていかりはつしたまふなかれなんぢはパロのごとくにいますなり 19 さきにわがしゆしもべとふ汝等なんぢら父󠄃ちゝあるやおとうとあるやといひたまひしかば 20 我等われらしゆにいへり我等われらにわが父󠄃ちゝあり老人らうじんなり又󠄂またその老年子としよりごなる少者わかうどありそのあにしにてそのはゝ遺󠄃のこせるはたゞこれのみゆゑ父󠄃ちゝこれをあいすと 21 なんぢまたしもべにいひたまはくかれわがもとにつれくだりわれをしてこれをつくることをえせしめよと
 80㌻ 
22 われらしゆにいへり童子わらべ父󠄃ちゝはなるるをえずもし父󠄃ちゝをはなるゝならば父󠄃ちゝしぬべしと 23 なんぢまたしもべにいひたまはくなんぢらのすゑおとうと汝等なんぢらとともにくだるにあらざれば汝等なんぢらふたゝびわがかほるべからずと 24 我等われらすなはちなんぢのしもべわが父󠄃ちゝ所󠄃もとにかへりのぼりてしゆことばをこれにつげたり 25 われらの父󠄃ちゝふたゝびゆきて少許すこしりやう食󠄃しよくかひきたれといひければ 26 われらいふわれらくだりゆくことをえずわれらのすゑおとうとわれらとともにあらばくだりゆくべしすゑおとうとわれらとともにあるにあらざれば彼人かのひとかほをみるをえざればなりと 27 なんぢのしもべわが父󠄃ちゝわれらにいふなんぢらのしるごとくわがつまわれに二人ふたりうみしが 28 その一人ひとりいでてわれをはなれたればかならさきころされしならんとおもへりわれいまにいたるまでかれ 29 なんぢらこれをもわがそばよりとりゆかんにもし災害󠄅わざはひこれにおよぶあらば遂󠄅つひにわが白髮しらがをしてかなしみてはかにくだらしむるにいたらんと 30 そも〳〵父󠄃ちゝ生命いのち童子わらべ生命いのちとはあひむすびてあればわれなんぢのしもべわが父󠄃ちゝかへりいたらんとき童子わらべもしわれらとともをらずば如何いかんぞや 31 父󠄃ちゝ童子わらべをらざるをしぬるにいたらんしかればしもべなんぢのしもべわれらの父󠄃ちゝ白髮しらがをしてかなしみてはかにくだらしむるなり 32 しもべわが父󠄃ちゝ童子わらべことうけあひてわれもしこれなんぢにつれかへらずば永久とこしなへつみ父󠄃ちゝ負󠄅おはんといへり 33 されば請󠄃しもべをして童子わらべにかはりをりてしゆ奴隸どれいとならしめ童子わらべをしてその兄弟きやうだいとともにかへりのぼらしめたまへ 34 われいかでか童子わらべ伴󠄃ともなはずして父󠄃ちゝもとのぼりゆくべけんおそらくは災害󠄅わざはひ父󠄃ちゝにおよぶを

第45章

1 こゝにヨセフそのそばにたてる人々ひと〴〵のまへにみづかしのぶあたはざるにいたりければひとみなわれをはなれていでよとよばはれりこゝをもてヨセフがおのれ兄弟きやうだいにあかしたるとき一人ひとりこれとともにたつものなかりき〘63㌻〙 2 ヨセフこゑをあげてなけりエジプトびとこれをきパロのいへまたこれを 3 ヨセフすなはちその兄弟きやうだいにいひけるはわれはヨセフなりわが父󠄃ちゝはなほいきながらへをるやと兄弟きやうだいその前󠄃まへおどろおそれてこれにこたふるをえざりき
 81㌻ 
4 ヨセフ兄弟きやうだいにいひけるは請󠄃われにちかよれとかれらすなはち近󠄃ちかよりければわれはなんぢらのおとうとヨセフなんぢらがエジプトにうりたるものなり 5 されど汝等なんぢらわれをこゝにうりしをもてうれふるなかれうらむるなかれかみ生命いのちをすくはしめんとてわれ汝等なんぢら前󠄃さきにつかはしたまへるなり 6 この二ねんのあひだ饑饉ききんくにうちにありしがなほねんあひだたがへすこともかることもなかるべし 7 かみ汝等なんぢらあとにつたへんため又󠄂またおほいなるすくひをもてなんぢらの生命いのちすくはんためにわれ汝等なんぢら前󠄃さき遣󠄃つかはしたまへり 8 されわれこゝにつかはしたるもの汝等なんぢらにはあらずかみなりかみわれをもてパロの父󠄃ちゝとなしその全󠄃家ぜんかしゆとなしエジプト全󠄃國ぜんこくつかさとなしたまへり 9 汝等なんぢらいそぎ父󠄃ちゝもとにのぼりゆきてこれにいへなんぢヨセフかくかみわれをエジプト全󠄃國ぜんこくしゆとなしたまへりわが所󠄃ところにくだれ遲疑ためらふなかれ 10 なんぢゴセンの住󠄃すむべしかくなんぢなんぢなんぢおよびなんぢのひつじうしならびなんぢのすべてもつところのものわれの近󠄃方ちかくにあるべし 11 なほ五ねん饑饉ききんあるによりわれ其處そこにてなんぢを養󠄄やしなはんおそらくはなんぢとなんぢの家族かぞくおよびなんぢのすべもつところのもの匱乏とぼしくならん 12 汝等なんぢらとわがおとうとベニヤミンのるごとく汝等なんぢらにこれをいふものはわがくちなり 13 汝等なんぢらわがエジプトにてうく顯榮さかえとなんぢらがたる所󠄃ところとをみなこと〴〵父󠄃ちゝにつげよなんぢ急󠄃いそぎて父󠄃ちゝこゝにみちびきくだるべし 14 しかしてヨセフそのおとうとベニヤミンのくびかゝへてなくにベニヤミンもヨセフのくびをかゝへて 15 ヨセフまたそのすべて兄弟きやうだい接吻くちつけこれをいだきてこののち兄弟きやうだいヨセフとものい

16 こゝにヨセフの兄弟きやうだいきたれりといふこゑパロのいへにきこえければパロとその臣僕しもべこれをよろこ 17 パロすなはちヨセフにいひけるはなんぢ兄弟きやうだいいふべし汝等なんぢらかく汝等なんぢらけものもの負󠄅おはゆきてカナンのいた 18 なんぢらの父󠄃ちゝとなんぢらの家族かぞくたづさへてわれにきたれわれなんぢらにエジプトの嘉物よきものをあたへん汝等なんぢらくに膏腴あぶら食󠄃くらふことをうべしと
 82㌻ 
19 いまなんぢめいをうく汝等なんぢらかく汝等なんぢらエジプトのよりくるまとりゆきてなんぢらの子女こどもつま汝等なんぢら父󠄃ちゝ導󠄃みちびきてきた 20 また汝等なんぢらうつはおしるなかれエジプト全󠄃國ぜんこく嘉物よきものなんぢらの所󠄃屬ものなればなり
〘64㌻〙
21 イスラエルの子等こらすなはちかくなせりヨセフ、パロのめいにしたがひて彼等かれらくるまをあたへかつ途󠄃みち餱糧くひものをかれらにあたへたり 22 又󠄂またかれらにみなおのおのころも一襲ひとかさねあたへたりしがベニヤミンにはぎんびやくころも五襲いつかさねをあたへたり 23 かれまたかくのごとく父󠄃ちゝおくれりすなは驢馬ろば十疋とをにエジプトの嘉物よきものをおはせ驢馬ろば十疋とを父󠄃ちゝ途󠄃みちようそなふる穀物こくもつかてにくをおはせておくれり 24 かくして兄弟きやうだいをかへしてさらしめこれにいふ汝等なんぢら途󠄃みちにてあひあらそふなかれと 25 かれらエジプトよりのぼりてカナンのにゆきその父󠄃ちゝヤコブにいたり 26 これにつげてヨセフはなほいきてをりエジプト全󠄃國ぜんこくつかさとなりをるといふしかるにヤコブのこゝろなほ寒冷ひやゝかなりきはこれをしんぜざればなり 27 彼等かれらまたヨセフのおのれにいひたることばをことごとくこれにつげたりその父󠄃ちゝヤコブ、ヨセフがおのれをのせんとておくりしくるまをみるにおよびてそのおのれにかへれり 28 イスラエルすなはちいふたれりわがヨセフなほいきをるわれしなざるまへにゆきこれ

第46章

1 イスラエルそのおのれにつけるすべてものとともにいでたちベエルシバにいたりてその父󠄃ちゝイサクのかみ犧牲いけにへをさゝぐ 2 かみよる異象まぼろしにイスラエルにかたりてヤコブよヤコブよといひたまふ 3 ヤコブわれこゝにありといひければかみいひたまふわれかみなりなんぢ父󠄃ちゝかみなりエジプトにくだることをおそるるなかれわれ彼處かしこにてなんぢおほいなる國民たみとなさん 4 われなんぢともにエジプトにくだるべしまたかならずなんぢ導󠄃みちびきのぼるべしヨセフをなんぢのうへにおかんと 5 かくてヤコブ、ベエルシバをたちいでたりイスラエルの子等こらすなはちパロののせんとておくりたるくるま父󠄃ちゝヤコブとおのれ子女こどもつま
 83㌻ 
6 その家畜かちくとカナンのにてえたる貨財もちものをたづさへかくしてヤコブとその子孫まごこみなともにエジプトにいたれり 7 ヤコブかくそのおよびそのむすめむすめすなはちその子孫まごこみなともなひてエジプトににつれゆけり

8 イスラエルののエジプトにくだれるもののごとしヤコブとその子等こらヤコブの長子うひごはルベン 9 ルベンのはヘノク、パル、ヘヅロン、カルミ 10 シメオンのはヱムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハルおよびカナンの婦󠄃をんなのうめるシヤウル 11 レビのはゲルシヨン、コハテ、メラリ 12 ユダのエル、オナン、シラ、ペレヅ、ゼラたゞしエルとオナンはカナンのしにたりペレヅのはヘヅロンおよびハムルなり 13 イツサカルのはトラ、プワ、ヨブ、シムロン〘65㌻〙 14 ゼブルンのはセレデ、エロン、ヤリエルなり 15 是等これらおよび女子むすめデナはレアがパダンアラムにてヤコブにうみたるものなりその男子なんし女子によしあはせて三十三にんなりき 16 ガドのはゼボン、ハギ、シユニ、エヅポン、エリ、アロデ、アレリ 17 アセルのはヱムナ、イシワ、イスイ、ベリアおよびそのいもうとサラならびにベリアのヘベルとマルキエルなり 18 是等これらはラバンがそのむすめレアにあたへたるジルパのなりかれ是等これらをヤコブにうめり都合あはせて十六にん 19 ヤコブのつまラケルのはヨセフとベニヤミンなり 20 エジプトのくににてヨセフにマナセとエフライムうまれたりこれはオンの祭司さいしポテパルのむすめアセナテがうみたるものなり 21 ベニヤミンのはベラ、ベケル、アシベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシ、ムツピム、ホパム、アルデ 22 是等これらはラケルのにしてヤコブにうまれたるものなり都合あはせて十四にん 23 ダンのはホシム 24 ナフタリのはヤジエル、グニ、ヱゼル、シレム 25 是等これらはラバンがそのむすめラケルにあたへたるビルハのなりかれこれらをヤコブにうめり都合あはせてにん 26 ヤコブとともにエジプトにいたりしものはヤコブのつまをのぞきて六十六にんなりきこれみなヤコブのよりいでたるものなり
 84㌻ 
27 エジプトにてヨセフにうまれたる二人ふたりありヤコブのいへひとのエジプトにいたりしものはあはせて七十にんなりき

28 ヤコブあらかじめユダをヨセフにつかはしおのれをゴセンにみちびかしむしかしてみなゴセンのにいたる 29 ヨセフそのくるまとゝのへゴセンにのぼりて父󠄃ちゝイスラエルをむかこれにまみえてそのくびいだくびをかゝへてひさし 30 イスラエル、ヨセフにいふなんぢなほいきてをりわれなんぢかほることをえたればいましぬるもしと 31 ヨセフその兄弟きやうだいたち父󠄃ちゝ家族かぞくとにいひけるはわれのぼりてパロにつげてこれにいふべしわが兄弟きやうだいとわが父󠄃ちゝ家族かぞくカナンのにをりしものわれのところにきたれり 32 その人々ひと〴〵牧者ぼくしやにしてぼくちくひとなり彼等かれらそのひつじうしおよびそのもてすべてものをたづさへきたれりと 33 パロもし汝等なんぢらめし汝等なんぢらげふいかなるやととふことあらば 34 しもべ幼少いとけなきよりいまいたるまでぼくちくひとなり我儕われら先祖せんぞもともにしかりといへしからばなんぢらゴセンのにすむことをえん牧者ぼくしやみなエジプトびとけがらはしとするものなればなり

第47章

1 こゝにヨセフゆきてパロにつげていひけるはわが父󠄃ちゝ兄弟きやうだいおよびそのひつじうしすべて所󠄃有物もちものカナンのよりいたれりかれらはゴセンのにをると〘66㌻〙 2 その兄弟きやうだいうちより五にんをとりてこれをパロにまみえしむ 3 パロ、ヨセフの兄弟きやうだいにいひけるはなんぢらのげふなになるか彼等かれらパロにいふしもべ牧者ぼくしやなりわれらも先祖せんぞもともにしかりと 4 かれら又󠄂またパロにいひけるはこのくにやどらんとて我等われらはきたるはカナンの饑饉ききんはげしくしてしもべむれをやしなふ牧場まきばなければなりされば請󠄃しもべをしてゴセンのにすましめたまへ
 85㌻ 
5 パロ、ヨセフにかたりていふなんぢ父󠄃ちゝ兄弟きやうだいなんぢ所󠄃ところにきたれり 6 エジプトのはなんぢの前󠄃まへにありところなんぢ父󠄃ちゝ兄弟きやうだいをすましめよすなはちゴセンのにかれらをすましめよなんぢもし彼等かれらうち才能ちからあるものあるをしらばその人々ひと〴〵をしてわが家畜かちくをつかさどらしめよ 7 ヨセフまた父󠄃ちゝヤコブをひきていりパロの前󠄃まへにたゝしむヤコブ、パロをしゆく 8 パロ、ヤコブにいふなんぢよはひ幾何いくばくなるか 9 ヤコブ、パロにいひけるはわがたびとしつきは百三十ねんにいたるよはひ僅少わづかにしてかつあしかりいまだわが先祖せんぞよはひたびにはおよばざるなり 10 ヤコブ、パロをしゆくしパロのまへよりいでさりぬ 11 ヨセフ、パロのめいぜしごとくその父󠄃ちゝ兄弟きやうだい居所󠄃すみかあたへエジプトのくにうちすなはちラメセスのをかれらにあたへて所󠄃有もちものとなさしむ 12 ヨセフその父󠄃ちゝ兄弟きやうだい父󠄃ちゝ全󠄃家ぜんかにそのかずにしたがひて食󠄃物くひものをあたへて養󠄄やしなへり

13 却説さて饑饉ききんははなはだはげしくして全󠄃國ぜんこく食󠄃物くひものなくエジプトのくにとカナンのくに饑饉ききんのために弱󠄃よわれり 14 ヨセフ穀物こくもつうりあたへてエジプトのとカナンのにありしかねをことごとくあつしかしてヨセフそのかねをパロのいへにもちきたる 15 エジプトのくにとカナンのくにかねつきたればエジプトびとみなヨセフにいたりていふ我等われら食󠄃物くひものをあたへよ如何いかんぞなんぢの前󠄃まへしぬべけんやかねすでにたえたり 16 ヨセフいひけるは汝等なんぢら家畜かちくをいだせかねもしたえたらばわれなんぢらの家畜かちくにかへてあたふべしと 17 かれらすなはちその家畜かちくをヨセフにひききたりければヨセフそのむまひつじむれうしむれおよび驢馬ろばにかへて食󠄃物くひものをかれらにあたへそのすべての家畜かちくのためにそのとしのあひだ食󠄃物くひものをあたへてこれをやしなふ 18 かくてそのとしくれけるが明年あくるとしにいたりて人衆ひと〴〵またヨセフにきたりてこれにいふ我等われらしゆかくすところなしわれらのかねつきたりまたわれらのけものむれしゆしゆのまへにいだすべきものなにものこりをらずただわれらの身體からだでんあるのみ
 86㌻ 
19 われらいかんぞわれらのでんとともになんぢのまへに死亡しにほろぶべけんや我等われらとわれらのでん食󠄃物くひものかへかひとれ我等われらでんとともにパロのしもべとならんまた我等われらたねをあたへよしからばわれらいくるをえてしぬるにいたらずでん荒蕪あるゝにいたらじ
〘67㌻〙
20 こゝおいてヨセフ、エジプトのでんをことごとくかひとりてパロに納󠄃はエジプトびと饑饉ききんにせまりて各人おの〳〵その田圃たはたうりたればなりこゝによりてはパロの所󠄃有ものとなれり 21 またたみはエジプトのこのさかひはてよりかのさかひはてものまでヨセフこれを邑々まち〳〵にうつせり 22 たゞ祭司さいしでんかひとらざりき祭司さいしはパロより祿ろくをたまはりをればパロのあたふ祿ろく食󠄃はみたるによりてそのでんうらざればなり 23 こゝにヨセフたみにいひけるはわれ今日けふ汝等なんぢらとなんぢらのでんをかひてパロに納󠄃よこの種子たねなんぢらにあたまくべし 24 しかして收穫とりいれの五分󠄃ぶんの一をパロにいだ分󠄃ぶんをなんぢらにとり田圃たはたたねとしなんぢらの食󠄃しよくとしなんぢらの家族かぞく子女こども食󠄃しよくとせよ 25 人衆ひとびといひけるはなんぢわれらの生命いのちすくひたまへりわれらしゆのまへにめぐみをえんことをねがふ我等われらパロのしもべとなるべしと 26 ヨセフ、エジプトのでんおきてをたてその五分󠄃ぶんの一をパロにをさめしむそのこと今日けふにいたるたゞ祭司さいしでんのみパロのものとならざりき

27 イスラエル、エジプトのくにおいてゴセンのにすみ彼處そこ產業もちものそのかずましおほいふえたり 28 ヤコブ、エジプトのくにに十七ねんいきながらへたりヤコブの年齒よはいあはせて百四十七ねんなりき 29 イスラエルしぬちかよりければそのヨセフをよびてこれにいひけるはわれもしなんぢのまへにめぐみるならば請󠄃ふなんぢのをわがもゝしたにいれねんごろ眞實まことをもてわれをあつかへわれをエジプトにはうむるなかれ 30 われ先祖せんぞたちとともにふさんことをねがふなんぢわれをエジプトよりかきいだして先祖せんぞたちはかにはうむれヨセフいふわれなんぢがいへるごとくなすべしと
 87㌻ 
31 ヤコブまたわれちかへといひければすなはちちかへりイスラエルとこかみにてをがみをなせり

第48章

1 是等これらことのちなんぢ父󠄃ちゝやまひにかゝるとヨセフにつぐものありければヨセフ二人ふたりマナセとエフライムをともなひていた 2 ひとヤコブにつげなんぢヨセフなんぢのもとにきたるといひければイスラエルおしとこ 3 しかしてヤコブ、ヨセフにいひけるはさき全󠄃ぜんのうかみカナンののルズにてわれにあらはれてわれしゆく 4 われにいひたまひけらくわれなんぢをしておほをえせしめなんぢをふやしなんぢ衆多おほくたみとなさんわれこのなんぢのち子孫しそんにあたへて永久とこしなへ所󠄃有もちものとなさしめんと 5 わがエジプトにきたりてなんぢつくまへにエジプトにてなんぢうまれたる二人ふたりエフライムとマナセ是等これらはわがとなるべしルベンとシメオンのごとく是等これらはわがとならん〘68㌻〙 6 是等これらのちになんぢがたるなんぢのものとすべし又󠄂またその產業さんげふはその兄弟きやうだいをもてとなへらるべし 7 わがことをいはんにわれむかしパダンよりきたれるときラケルわれにしたがひをりて途󠄃みちにてカナンのしね其處そこはエフラタまでなほ途󠄃みちへだたりあるところなりわれ彼處かしこにてかれをエフラタの途󠄃みちにはうむれり(エフラタはすなはちベテレヘムなり)

8 かくてイスラエル、ヨセフの子等こども是等これらたれなるやといひければ 9 ヨセフ父󠄃ちゝにいふこれかみこゝにてわれにたまひし子等こどもなりと父󠄃ちゝすなはちいふ請󠄃かれらを我所󠄃わがもとにつれきたれわれこれをしゆくせんと 10 イスラエルの年壽としのためにくもりるをえざりしがヨセフかれらをそのもとにつれきたりければこれ接吻くちつけしてこれをいだけり 11 しかしてイスラエル、ヨセフにいひけるはわれなんぢのかほるあらんとはおもはざりしにかみなんぢのたねをもわれにしめしたまふと 12 ヨセフかれらをそのひざあひだよりいだしふしはいせり 13 しかしてヨセフ、エフライムをみぎとりてヤコブにひだりにむかはしめマナセをひだりとりてヤコブのみぎにむかはしめ二人ふたりをみちびきてかれにつきければ
 88㌻ 
14 イスラエルみぎをのべて季子おとごエフライムのかうべひだりをのべてマナセのかうべにおけりマナセは長子うひごなれどもことさらにかくそのをおけるなり 15 かくしてヨセフをしゆくしていふわが父󠄃ちゝアブラハム、イサクのつかへしかみわがうまれてより今日けふまでわれをやしなひたまひしかみ 16 われをしてもろ〳〵災禍わざはひあがなはしめたまひし天使てんのつかひねがはくはこの童子わらべどもめぐみたまへねがはくは是等これらものわがとわが父󠄃ちゝアブラハム、イサクのをもてとなへられんことをねがはくは是等これらうち繁殖ふえひろがるにいたれ 17 ヨセフ父󠄃ちゝみぎをエフライムのかうべおけるをてよろこばず父󠄃ちゝをあげてこれをエフライムのかうべよりマナセのかうべにうつさんとす 18 ヨセフすなはち父󠄃ちゝにいひけるはにあらず父󠄃ちゝこれ長子うひごなればみぎをそのかうべおきたまへ 19 父󠄃ちゝこばみていひけるはわれるわがよわれしるかれひとつたみとなりかれおほいなるものとならんしかれどもそのおとうとかれよりもおほいなるものとなりてその子孫しそん多衆おほく國民たみとなるべしと 20 この彼等かれらしゆくしていふイスラエルなんぢさしひとしゆくねがはくはかみなんぢをしてエフライムのごとくマナセのごとくならしめたまへといふにいたらんとすなはちエフライムをマナセのさきにたてたり 21 イスラエルまたヨセフにいひけるはよわれはしなんされどかみなんぢらとともにいまして汝等なんぢら先祖せんぞたちくににみちびきかへりたまふべし〘69㌻〙 22 かつわれひとつ分󠄃ぶんをなんぢの兄弟きやうだいよりもおほくなんぢにあたふこれわがかたなゆみてアモリびとよりとりたるものなり

第49章

1 ヤコブその子等こどもよびていひけるはなんぢらあつまれわれのちなんぢらが遇󠄃あはんところのこと汝等なんぢらにつげん 2 汝等なんぢらつどひてけヤコブの子等こらなんぢらの父󠄃ちゝイスラエルに 3 ルベンなんぢはわが冢子うひごわがいきほひわがちからはじめ威光ゐくわう卓越すぐれたるもの權威けんゐ卓越すぐれたるものなり
 89㌻ 
4 なんぢみづわきあがるがごときものなれば卓越すぐるゝざるべしなんぢ父󠄃ちゝとこにのぼりてけがしたればなり嗚呼あゝかれはわがどこにのぼれり 5 シメオン、レビは兄弟きやうだいなりそのつるぎぼう逆󠄃ぎやくうつはなり 6 わがたましひよかれらのせきにのぞむなかれわがたからよかれらの集會あつまりにつらなるなかれ彼等かれらそのいかりにまかせてひとをころしその意󠄃こゝろにまかせてうし筋截すじきりたればなり 7 そのいかりはげしかればのろふべしそのいきどほりあらくあればのろふべしわれかれらをヤコブのうち分󠄃わかちイスラエルのうちちらさん 8 ユダよなんぢ兄弟きやうだいほむものなりなんぢはなんぢのてきくびおさへんなんぢの父󠄃ちゝ子等こどもなんぢの前󠄃まへかゞま 9 ユダは獅子しゝごとしわがなんぢ所󠄃掠物えものをさきてかへりのぼるかれ牡獅子をじゝのごとく牝獅めじゝのごとくうづくまるたれこれをおこすことをせん 10 つゑユダをはなれずのりたつものそのあしあひだをはなるゝことなくしてシロのきたときにまでおよばんかれもろ〳〵たみしたがふべし 11 かれその驢馬ろば葡萄ぶだうつなぎその牝驢馬めろば葡萄ぶだうつるつながん又󠄂またそのころもさけにあらひその服󠄃きぬ葡萄ぶだうしるにあらふべし 12 そのさけによりてあかくその乳󠄃ちゝによりてしろ 13 ゼブルンは海邊うみべにすみふねとま海邊うみべ住󠄃すまはんそのさかひはシドンにおよぶべし 14 イッサカルはひつじをりあひだたくまし驢馬ろばごと 15 かれみて安泰やすきよしとしそのくにたのしとしかたをさげて負󠄅にな租税みつぎをいだしてしもべとなるべし 16 ダンはイスラエルのほか支派わかれごとそのたみさばかん 17 ダンはみちかたはらへびのごとく途󠄃邊みちべにあるまむしのごとしむまくびすかみてその騎者のるものをしてうしろおちしむ 18 ヱホバよわれなんぢ拯救すくひまて 19 ガドは軍勢ぐんぜいこれにせまらんされどかれ返󠄄かへつてそのうしろにせまらん 20 アセルよりいづる食󠄃物くひものよかるべしかれわう食󠄃くら美味うまきものをいださん 21 ナフタリははなたれたるめじかのごとしかれ美言よきことばをいだすなり 22 ヨセフはむすのごとしすなはいづみかたはらにあるをむすぶのごとしそのえだつひにかき〘70㌻〙
 90㌻ 
23 射者いるものかれをなやましかれかれをにくめり 24 されどかれのゆみはなほつよくありかれひぢちからありこれヤコブの全󠄃能者ぜんのうしやによりてなりそれよりイスラエルのいはなる牧者ぼくしやいづ 25 なんぢ父󠄃ちゝかみによるかれなんぢをたすけん全󠄃能者ぜんのうしやによるかれなんぢをめぐまんうへなるてんふくしたによこたはるわだふく乳󠄃哺ちゝふくはらふくなんぢにきたるべし 26 父󠄃ちゝなんぢしゆくすることはわが父󠄃祖ちゝしゆくしたる所󠄃ところ勝󠄃まさり恒久とこしなへやま限極かぎりにまでおよばん是等これら祝福めぐみはヨセフのかうべしその兄弟きやうだいべつになりたるもの頭頂いたゞきすべし 27 ベニヤミンはものおほかみなり朝󠄃あしたにその所󠄃掠物えものくらゆふべにその所󠄃攫物ぶんどりものをわかたん

28 是等これらはイスラエルの十二じふに支派わかれなりかくその父󠄃ちゝかれらにかた彼等かれらしゆくせりすなはちそのしゆくすべき所󠄃ところにしたがひて彼等かれら諸人すべてしゆくせり 29 ヤコブまた彼等かれらめいじてこれにいひけるはわれはわがたみにくははらんとすヘテびとエフロンのはたけにある洞穴󠄄ほらあなにわが先祖せんぞたちとともにわれをはうむれ 30 その洞穴󠄄ほらあなはカナンのにてマムレのまへなるマクペラのはたけにありこれはアブラハムがヘテびとエフロンよりはたけとともにかひ所󠄃有もちもの墓所󠄃はかどころとなせしものなり 31 アブラハムとそのつまサラ彼處かしこにはうむられイサクとそのつまリベカ彼處かしこはうむられたりわれまたかしこにレアをはうむれり 32 かのはたけとそのうち洞穴󠄄ほらあなはヘテの子孫ひと〴〵よりかひたるものなり 33 ヤコブそのめいずることを終󠄃をへときあしとこをさめていきたえてそのたみにくはゝる

第50章

1 ヨセフ父󠄃ちゝかほこれをいだきてこれ接吻くちつけ 2 しかしてヨセフそのしもべなるしやめいじてその父󠄃ちゝくすりぬらしむしやイスラエルにくすりぬれり 3 すなはちこれがために四十にちもちしかばねくすりぬるにはこの日數ひかずもちふべければなりエジプトびと七十にちあひだこれがためになげけり

 91㌻ 
4 哀哭なげきすぎしときヨセフ、パロのいへにかたりていひけるはわれもし汝等なんぢら前󠄃まへ恩惠めぐみるならば請󠄃ふパロのみゝにまうして 5 わが父󠄃ちゝわれしなばカナンのにわがほりおきたるはかわれをはうむれといひてわれちかはしめたりされ請󠄃ふわれをしてのぼりて父󠄃ちゝはうむらしめたまへまたかへりきたらんと 6 パロいひけるはなんぢ父󠄃ちゝなんぢをちかはせしごとくのぼりてこれはうむるべし 7 こゝおいてヨセフ父󠄃ちゝはうむらんとてのぼるパロのもろ〳〵しんパロのいへ長老としよりたちエジプトの長老としよりたち 8 およびヨセフの全󠄃家ぜんかとその兄弟きやうだいたちおよびその父󠄃ちゝいへこれとともにのぼたゞその子女こどもひつじうしはゴセンのにのこせり 9 またくるま騎兵きへいヨセフにしたがひてのぼりそのくみははなはだおほいなりき〘71㌻〙 10 彼等かれらつひにヨルダンのさきなるアタデの禾場うちばいたかしこにておほいいたかなしむヨセフすなはち七日なぬか父󠄃ちゝのためになげきぬ 11 そのくに居人ひとなるカナンびとアタデの禾場うちば哀哭なげきこれはエジプトびといたくなげくなりといへりこれによりて其處そこをアベルミツライム(エジプトびと哀哭なげき)ととなふヨルダンのさきにあり 12 ヤコブの子等こらそのめいぜられたるごとくこれになせり 13 すなはちヤコブの子等こらかれをカナンのかきゆきてこれをマクペラのはたけ洞穴󠄄ほらあなにはうむれりこれはアブラハムがヘテびとエフロンよりはたけとともにかひとりて所󠄃有もちもの墓所󠄃はかどころとなせしものにてマムレの前󠄃まへにあり 14 ヨセフ父󠄃ちゝはうむりてのちその兄弟きやうだいおよびすべおのれとともにのぼりて父󠄃ちゝをはうむれるものとともにエジプトにかへりぬ

15 ヨセフの兄弟きやうだいその父󠄃ちゝしにたるをていひけるはヨセフあるいはわれらをうらむることあらん又󠄂またかならずわれらがかれになしたるもろ〳〵あくにむくゆるならんと 16 すなはちヨセフにいひおくりけるはなんぢの父󠄃ちゝしぬるまへにめいじていひけらく 17 なんぢかくヨセフにいふべしなんぢ兄弟きやうだいなんぢあくをなしたれどもこひねがはくはその罪咎つみとがをゆるせとされ請󠄃なんぢ父󠄃ちゝかみしもべとがをゆるせとヨセフそのことばきゝ啼泣なけ
 92㌻ 
18 兄弟きやうだいもまたみづからきたりヨセフのかほ前󠄃まへ我儕われらなんぢしもべとならんといふ 19 ヨセフかれらにいひけるはおそるるなかれわれあにかみにかはらんや 20 汝等なんぢらわれ害󠄅がいせんとおもひたれどもかみはそれをよきにかはらせ今日こんにちのごとくおほくたみ生命いのちすくふにいたらしめんとおもひたまへり 21 ゆゑなんぢらおそるゝなかれわれなんぢらとなんぢらの子女こどもをやしなはんと彼等かれらをなぐさめねんごろこれにかたれり

22 ヨセフ父󠄃ちゝ家族かぞくとともにエジプトにすめりヨセフは百十さいいきながらへたり 23 ヨセフ、エフライムのさんせい子女こどもをみるにいたれりマナセのマキルの子女こどももうまれてヨセフのひざにありき 24 ヨセフその兄弟きやうだいたちにいひけるはわれしなかみかならず汝等なんぢら眷顧󠄃かへりみなんぢらを此地このちよりいだしてそのアブラハム、イサク、ヤコブにちかひしにいたらしめたまはんと 25 ヨセフかみかならず汝等なんぢらをかへりみたまはんなんぢらわがほねをこゝよりたづさへのぼるべしといひてイスラエルの子孫こらちかはしむ 26 ヨセフ百十さいにしてしにたればこれくすりぬりてひつぎにをさめてエジプトにおけり〘72㌻〙
 93㌻